私と私は同じ私か?

  

男は暴君にいった

「私が罪人であるという証拠は

どこにあるのでしょう?」

すると暴君はいった

「それはすでにいった」

 

「しかしそれは単なる証拠ではありませんか」

そう男がいうと暴君はいった

「確かに証拠ではある。

ではお前は何を言いたいのか?」

 

男はいった

「証拠は私が罪人であることを

証明するのでしょうか?」

すると暴君は聞いた。

「証明とはなにか?」

「確実にそうであるということです」

 

「そうなのかね?」

「そうですとも。

そして証拠とやらから導いた私の罪とは

それはなんでしょうか?王よ?」

男に問われると暴君は答えた。

「推測ではないかな」

 

すると男は笑みを浮かべていった

「では私の罪は証明されておりません。

推測とは確実にそうであるということではないからです

私の罪とやらは確実ではありません」

すると暴君はいった

「なるほど」

すると兵士と男が見守る前で暴君は退席し、

そして暴君は戻ってきて、

そしていった

「私はそなたを処断することに決めている」

 

「なぜですか?私はいったではありませんか王よ」

「何が?」

「私がいったことをあなたは聞いたはずです、

そして私に答えたではありませんか王よ」

すると暴君はいった

「先ほどお前の話を聞いたという者と

私が同じ者であると

どうやって知ったのかね?」

 

そして王はいった

「そなたは先ほどお前と話した者と

私とを同じ人物であると推測したのではないか?

そなたは私をずっと見ていなかったのだ、

推測なくしてどうして同じ人物であるといえようか?

そなたは同じ者であると推測したから

改めて訴えたのではなかったか?

推測しているのに

推測は証明でなく推測は不確実であり

ゆえに無罪にしてくれと改めて訴えたのではなかったか?」

暴君はそういうと兵士にいった

「この男のやっていることは矛盾している」

   

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