試してみる

 

「王よあなたの言うことだけが正しいのではありませんぞ」

そう男がいうと暴君は答えた

「そりゃあそうだろう」

すると、

男はすこしいらいらして言った。

「王よあなたは分かっておりません」

「何を?」

男は言った。

「すべての人のいうことはそれなりにもっともなのですぞ」

「そうかね?」

「そうですとも、皆の言うことはそれぞれ同じ価値なのです」

「そうは思えないがな」

暴君がそういうと男は言った。

「王のいうことも、

私のいうことも、

あるいは道ばたの子供のいうことも

それらは等しく同じ価値なのです」

 

そこで暴君は聞いた

「すると私がそなたの首をはねる。

そう言ったらそなたはなんと答えるのかね?」

「それは困ります」

男がいうと暴君は意外そうにいった

「首をはねるという私の言葉も

それが困るというそなたの言葉も同じ価値ではないのかな?

だとしたらはねてもかまわないではないか」

暴君は自分の言葉を試してみて、

それから傍らにいた兵士に向って

いった

「同じとは思えないのだがなあ、

そなたはどう思う?」

兵士は困った顔をした

 

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