記事タイトル:カルポイド 


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お名前: 北村@   
 やまなかさん>カンブリア爆発とも関連があるのですが、カルポイドの話題なので、
新しく書き込みました。

 他の方も読んでいるので少し詳しく話ますが、
カルポイドとは一般的には棘皮動物、つまりウニやヒトデ・ナマコといった動物群に
所属する奇妙な生き物たちのことです。この動物は非常に変な姿をしていて、身体がまったく左右対称ではありません。要するに右と左でまったく形が異なります。動物(普通は左右対称)
としても
棘皮動物(<おおかたは放射対称)としても異常きわまりない姿をしています。
 もっとも大きさは1〜2cm 程度ですが・・・。(姿を知りたい人は以下の文献を見るか、
あるいは中山書房の『動物系統学』:多分やまなかさんの職場の資料室には
あるのではないでしょうか??:か『深海生物図鑑』 pp227 を参考にしてください)

 この”奇妙な棘皮動物”が実は私達、脊索動物(<おおむね脊椎動物と考えてもらえれば・・)
の祖先ではないか、と主張しているのはジェフリーという研究者で、岩波書店の『科学』
 vol.66 no.4 pp306~311 と蒼樹書房の『無脊椎動物の進化』 pp353~354 で紹介されています。
 ジェフリーの説は結論を聞いただけではとてつもなく過激なもので、曰く、

 奇妙な棘皮動物カルポイドは脊索動物の祖先である。

 昆虫や軟体動物、プラナリアといった動物たちに対して私達、脊索動物の身体は
90度ねじれている(>乱暴に要約すると私達の身体はもともとの祖先の身体から背中と腹が
逆転してしまっている)

 というものです。とんでもない話に聞こえますが、それなりな根拠と、かなりな説得力
を持つ仮説のようです。実際、ロンギスクアマのヒトとタコの”なんちゃって分岐図”
にも書き込んでありますが、軟体動物の神経は腹側を通るのに対して、私達、脊索動物の
神経は(当然のごとく)背中側を走っています。要するに、私達の身体の構造は、他の
動物に対して反対になってしまっているんですよね。どうも進化の過程でとんでもないことが
起こったらしく。ジェフリーは身体の右半分を失ってしまった私達の祖先が、残った
左半身から改めて身体を作り直したのだと主張しています。

 そうか・・・こういうことを書けなかったんですよね、深海生物図鑑では・・・
 いや、理解し切れてなかったので・・・・。

 追伸:先に上げた科学の同じ記事でカンブリア爆発に関する別の見解が書いてあるので
参考になると思います。私もこの記事をすっかり忘れていました・・。人と話をするのは
大事なことだと痛感した次第です。

 では皆様、これから出かけますので取急ぎ。
[2001/03/19 14:04:27]

お名前: やまなか   
昨日のことですが、カルオポイドについて書かれた書籍を見つけました。
書籍名「脊椎動物の起源」著者:Henry Gee、訳:藤沢弘介 出版社:培風館
です。
内容は、「脊椎動物に進化するやや前の段階にあたるとされている脊索動物・半策動物・棘皮
動物の動物群を対象として、現在認められている通説や歴史的背景及び最新の知見を紹介する
内容」となっています。その本における引用文献は、1995年までですが、前書きで2000年まで
の情報についても触れられています。
この中では、かなりの量をさいて、「ジェフリーズのカルシコダータ説」についての解説とそれ
を批判する説を述べています。
まだ、ようやく一通り読んだところなので、内容についてのコメントはできませんが、ひとまず
お知らせまで。
[2001/03/25 12:17:47]

お名前: 北村@   
 やまなかさん>情報ありがとうございました。いやはや、フットワークの重い生活
を長々と続けていると、大事なものを見落としていることを思い知らされてしまいます。
さっそく購入してみます。(安かったらいいなあ〜〜)

 『カルシコダータ説』の解説と批判>おお〜〜。批判があるということは活発な
議論の対象になっているということなのでしょう。
なかなか面白いことになってきました。読まなくては。
[2001/03/25 20:14:59]

お名前: 北村   
 やまなかさん、皆さん>『脊椎動物の起源 H.ジー著 藤沢弘介 培風館』買いました。
 まだ、序文、序論を読んだだけですが、すごいですねこれは。最新の知識ウンヌン以前に
論理や議論の骨子や方法論、科学哲学、議論の歴史を把握した人間が書いたということが
伝わってくる本です。(<凄い失礼なこと書いてますが、北村を大目に見て下さい)
 他の方も読むと思いますので、著者を紹介すると、
Hnry Gee 氏は1991年ケンブリッジ大学を卒業、動物学でPh.D。
1987年からネイチャーのスタッフ、現在、生命科学部門の編集主幹

 だそうです。

 さあ、面白いことになってきました!!!
[2001/03/26 21:38:55]

お名前: やまなか   
北村さん、早速買われたのですね。
まず、一通り読んでから、カルコシーダ説の批判部分を読み返し、また最初から読み始めたとこ
ろです。
分岐分類学の考え方は、おぼろげに掴めたのですが、”年代にはあまりとらわれない”とする
考え方は、違和感を覚えました。基本的には、現生生物の分類に適用するのがいいのでしょうが
化石生物を取り込むと、なんか、すっきりしないように思えます。
自分が知っている系統分類は、種の同定から始まって、比較してグループ分け、その間の関係の
推定であり、それには、形態はもちろん、生態・分布(生物地理)、生理の観点から積み上げて
のことでした。特に、分布は、海洋の場合、水平、垂直、移動(=回遊)に着目します。
でも、すべて化石の場合は、生態面は不明のことが多いから、形態に頼らざるを得ないのかな。
===========================================
ところで、蒲郡市にある生命の海科学館行かれた方はいますか。
ネットで見るとおもしろそうなんですが、家からは遠いので行く機会がありません。
[2001/03/29 06:59:29]

お名前: 北村@   
 やまなかさん>私はまだ1章をウロウロしています。読みやすいのですが、
仕事におわれていまして・・・。(ああっもう)

 分岐分類学に関してですが、こんな文章を目にしたことがあります。

 時間は生物の形質ではない

 すみません。引用してよいものかどうかわからないものなので、ここでは話の出所を
書けません。

 ところで、去年の終わりに開かれた進化学会のポスターセッションの場で、

 ”化石をクラドグラム(=分岐図)に取り込むことは本来、分岐点の位置にくる
ものを解析の対象にするのだから問題であるという話があったのですが??”

 という突っ込んだやりとりがありました。
確か、以上のような内容であったと思いますが、少なくとも、こういうことが議論の
対象になったことが一時あったのでしょう。

 北村はそれが問題になるとは思えないのですが、漠然とそう考えるだけで根拠が思い付きません。

 ところで、この手の方法論(?)に関わる議論はSystematic Zoology などで
行なわれているようなのですが・・・、いやはや今の北村には手におえません。

 一方で、北村は現生種の問題や分類、記載、検討、生物地理、ウンヌンの問題に詳しく
ありません。やまなかさんはそうした方面で研究したようですが、どんな教科書を使った
り、方法論を使ったのでしょうか?。

 北村は『系統分類学、文一総合出版 ワイリー著』ぐらいしか生物地理を読んだことが
ないのです。

 最近、直翅類(よーするにバッタ)の学会誌のようなものを立ち読みしたら
ヒシバッタにやたら亜種がいるのでびっくりしました。いや、考えてみれば
不思議な話ではないのですが、改めて感慨深いものがありました。
[2001/03/30 01:43:53]

お名前: やまなか   
脊椎動物の起源、2巡目の真ん中あたりまできました。
カルコシーダ説が何で出てきたか、ようやくわかりました。元は、ナメクジウオの個体発生
だったのですね。非対称な発生・・・、これが非対象なカルポイドとを結びつけた。
でも、普通の魚(マダイとかマグロ)も非対称な初期発生があるのかは、知りません。
=========================================
>やまなかさんはそうした方面で研究したようですが、どんな教科書を使ったり、
>方法論を使ったのでしょうか?。
研究をしたというのは、滅相もない・・・えらそうなことは言えません。
参考までに、教科書やよく読んだ本を紹介しますと
魚類の形態と検索:松原喜代松、魚類学(上下)水産学全集:岩井保、落合明
地球の生命と海:西村三郎、これは生物地理学の入門書としてはいいかと思います。
ちょっと系統学、分類学面では古い部分もあるのですが、深海への移住など生物の
拡散については、大変参考になるものがあります。


 
[2001/04/02 08:16:14]

お名前: 北村@   
 ああっやまなかさん早い。というより私が遅いのでしょうね・・・。
 そうですか、ナメクジウオの非対称な発生が手がかり・・・、観察力のある人は違い
ますね。

 参考文献ありがとうございました。前も書きましたが北村は分類や生物地理と疎遠
ですので助かります。(考えてみればデカイ生き物の記事が多かったからかも
知れません・・・・・)

 後、恐竜のQ&A などでは分類VS系統のような書き方をしていますが、北村の
分類学は始まったばかりです。しばしお待ちを。

 なお、こうした書き方をする背景には
恐竜の世界では”あまり洗練されていない恐竜分類”と
”洗練された系統学”の対立という不毛な図式があることが要因でしょうか。

ロンギスクアマの記事に書いたように、噛み合わない議論が大きく報道されてしまうのが
現状です。まともな研究者はにがにがしく思っているでしょう・・・。

 その点、魚類の分類に北村は非常に興味が引かれます。
[2001/04/02 11:06:28]

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