68



 シリウスは強すぎもせず弱すぎもしない圧力でルーピンの身体を横たえる。
 それから何もかも了承しているという顔で衣服を取り払い始める。
 確かに彼は相手の感覚や癖をもうすっかり飲み込んでおり、迷うところも不都合なところも何一つない。ルーピンは、彼の手を妨げぬようにじっとしながら「まるで熟年の夫婦のようだ」という感想を持つ。けれど決して悪い気分ではなかった。
 しかし極まれに、シリウスは躊躇うような表情を突然見せる事があった。
 そんな時、彼の手はぴたりと止まってしまう。
 ルーピンは彼の目を見て、『この関係の正当性についての会議』がシリウスの頭の中で開かれている事を知る。
 結論なんか出るはずないじゃないか。だって出席者は全員君なんだから。
 ルーピンは思う。シリウスはいつだって紳士的で、そしてルーピンの立場を優先して考えようとする。そのくせ……そう、彼は愛する者と離れて生きていけるようには出来ていない。
 その会議の中で「異議あり!」だとか「異議なし!」だとか、大まじめに議論しているだろう美しい顔をした出席者のことを考える。
「君は好きなだけ会議を続けるといい」
「会議?」
 ルーピンは自分の上に覆い被さっていたシリウスの首に手を回し、くるりと回転すると器用に彼を組み敷いて言った。
「被告はその間、好き放題だ」




油断大敵火がボウボウ。
2004/02/20




BACK