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 いつものように彼等は多量の酒を速いペースで飲み、したたかに酔っ払っていた。酔いが過ぎたあまりいつの間にか話題は「浮気について」という剣呑なものになっていた。どちらが持ち出した話なのかは既に曖昧である。ルーピンは、わざとグラスを落としてこの危険な議論から脱出を試みるべきだろうかと逡巡していたが、好奇心に負けて「自分達の場合、何を以って浮気とするのか?」とついシリウスに尋ねてしまった。
 取り返しのつかないような大きな沈黙が落ちる。
「お前が」
 絞り出すような声でシリウスは答えた。
「俺以外の男性或いは女性と肉体関係を結んだら、それは浮気だと俺は思う、が」
 そのまま彼は象嵌をはめ込んだ彫像のように動かなくなってしまったので、おそらく自分には想像もつかないくらいショッキングな空想に囚われているに違いないと予想して、ルーピンは彼の頭の上を払う仕草をする。
「落ち着いてくれシリウス。女性はともかくとして、私がどういう状況で男性と肉体関係を結ぶと思うんだい」
「…………昔の親友が救いを求めてきたり……」
「残念ながら昔の親友は君で打ち止めだ。それから?」
「……お前は困っている人間に弱い」
「道を尋ねられたらいつでも助けになる程度にはね。しかし何度か思った事があるのだけれど、浮気というのは君に限らずどうしてそんなにも人を平静でいられなくするんだろう?不思議だ」
「それは……自分の物だと思っていたものが……ある日突然そうではないと知らされて……」
「ああ、そういう考え方か」
「……お前は平気なのか?……俺が、その……浮気をしても」
 首を傾けたルーピンは「君が誰とどんな関係を結ぼうと、私は構わないよ。君さえ幸せならね」という、優しくも残酷な返事をしようとした。しかしそれより重要な疑問が浮かんだので、そちらの質問をまず口にする。
「ちょっと待ってくれ。……ということは君は私のものなんだろうか?シリウス」
 先刻よりも更に強烈な沈黙が訪れて、ルーピンは自分が失言をした事を悟った。


さすがにシリウスさんは
「俺はお前のものだ!何か文句があるのか!」
とまでは言えなかったのですが(……)、
彼がどう思っているかは表情に出たのでしょう。
先生はひどくびっくりします。
シリウスさんにもダメージがあったのですけど、
先生も動揺したと思う。ダメージ7くらい。
(先生の総HPが15000くらいとして)
頑張れシリウス、いつか倒せる日がくる、かもしれない。

先生は以降「そうか、これは私のものなのか」
と時々シリウスの寝顔など見て不思議な気分に
なるようになります。

最近友人との間で浮気の話がブームで
ついこの間なんか双方とても疲れていて、呂律も
怪しくなっているのに、それでもシリル浮気話を
延々としていました。でも無数のバージョンがあって
全部おかしいのです!
2003/09/02



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