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 別に自分が特別繊細であったり過敏であったりする訳ではないとシリウスは思っている。全ては相手側の問題だと。ルーピンの顔が間近に迫り、虹彩の形までもが仔細に見て取れる距離まできた時に、彼はいつも動悸を押さえて冷静になろうとする。
 ルーピンは少し風変わりなやり方でシリウスを抱く。行為に男性らしい性急さや荒々しさは見られない。死者が生者に触れるように静かに、ルーピンはシリウスに触れる。
 横たわるシリウスの上で彼を見下ろすルーピンは、綺麗に並んだチョコレート菓子を見て「さてどれから食べようか」と迷っている時と丁度同じ顔をしている。その眼を見るだけでいつも、シリウスは息が詰り痺れるような感覚を覚えた。
 短気な自分は じれったいルーピンのやり方に苛々している、とシリウスは思っている。たどたどしい指の動きにも撫でるような触り方にも。いっそ交替して自分が代わりたいくらいに。ところがいつの間にかその苛々は何か違うものに変化し、気付けば喉を嗄らしぐったりと疲労して横たわっているのが常である。何とはなしに釈然としないものを感じているシリウスだった。
 時々彼は本人相手にその件でクダを巻いてみたりするのだが、ルーピンは鷹揚に頷くばかりである。その笑みを含んだ視線は、行為の最中宥めるように自分の背を抱く友人を何故かシリウスに連想させ、居たたまれなくなるばかりで少しも彼の気が晴れたりはしないのだった。


シリウスさんは自分が受に回った時は
先生に視線すら合わせられないと見た。
先生はからかいたくて(ていうかいじめたくて)
ウズウズしているが大抵我慢している、に1ガリオン。
2003/09/02



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