彼が時折思い出したように料理をするレシピというのが幾つかあって、その中に「ニョッキ」がある。
 あれを作る時、シリウスはいつも妙に誇らしげな顔をしているので、微笑ましいなぁなどと思いながら私は見学したりしなかったりする。
 ごくたまに「鼻の頭が痒いので掻いてくれ」と手を粉まみれにした彼に頼まれたりもするが、笑って無視をする。そうすると彼は意趣返しのつもりだろうか、私の背中にごしごしと鼻を擦り付けにやってくる。
 わざとなのかと思うくらいに、そういう仕草をする彼は頑是なく、間が抜けていて、そして魅力的だ。私は彼の頬を捉えて口づける。
 シリウスはふと困って両手を泳がせる。私の髪や衣服を、粉で汚してはいけないと思っているのだろう。私が身の回りのその類の事柄を一切気にしない性質だと知っているにも拘わらず。彼の気の遣い方は大抵において非常に頑なだ。
 一方的なゲームの始まりだ。私は彼の首筋に顔を埋める。はじめはゆっくりと。
 彼が我を忘れて私の背に腕を廻すのは、一体何分後だろう?と少々人の悪い事を考えながら。

 そんな風な紆余曲折を経て出来上がったニョッキはウニのクリームが和えてあって、とても美味しいのだけれど、2人共それを食べながら色々と考えてしまう事があって、どうもいけない。




ニョッキはちょっとだけだと美味しいですよね。
でもシリウスは100コくらい作りそう。先生黙って食べそう。ギニャー。
書いててモウレツに何か食べに行きたくなった。



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