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「落ちたら確実に死亡する崖から、今の私と子供の頃の私が落ちかけていたらどちらを助ける?」
 一緒に暮らす時間の中で、ルーピンは実に沢山の質問をシリウスにしてきた。そして彼はシリウスに問いかけをするとき、いつも楽しそうな笑みを浮かべている。その表情は彼等共通の友人ジェームズのそれに少し似ていた。彼もまた質問好きな男だった。しかしルーピンの場合、問題自体に実は重要な意味はなく、シリウスの表情や考えている様子を観賞する事が一番の目的であるという点が大きくジェームズとは異なっている。
「……子供の方を」
 対するシリウスは、質問をされるとそれこそ瞳孔が収縮するくらいの集中力で問題に取り組む人なのだった。彼の性なのだろう。そんな友人を、ルーピンは見守る。彼等の関係は需要と供給が釣り合って、このうえなく上手くいっていると言えた。(少なくともルーピンの側から見ると)
「判断理由はあるかな?」
「子供の頃のお前はたぶん『もうこれ以上は無理だ。そんな気がする。きっとそうだ』と思って結局自分から下へ落ちる。根性がない。すぐに助けてやらなければ」
「じゃあ今の私は少しは粘り強くなったと君は考える訳だね」
「いいや」
「……?シリウス、では何故?」
「『お前が落ちたら、俺も後からすぐに飛び降りる。脅しだと思うな!』と怒鳴れば自力で這い上がってくるだろう今のお前は?だから大丈夫なんだ」
 その返事を聞くと、ルーピンは何と言えない妙な顔をして黙ってしまった。「どうかしたのか」とシリウスが尋ねても、彼は「なんでもないよ」と言葉を濁すばかりだった。


「テニス」私のホーム編。(※私が日記で浮かれて
披露したテニプ短編と同じネタに挑戦してみたのです)
当たり前だけれど書きやすい。
蓄積(補足説明不要部分)が尋常じゃないからなあ。

先生は、くやしかったかのか
恥ずかしかったかのどちらかでしょう。
お分かりかと思いますが2人とも猛烈に酔っています。
この様子からすると先生は、同じ事をシリウスさんに
問われたらどう答えるかを考えていないようなので、
逆質問したら珍しく動揺した顔が見られたと思う。
惜しい事したね、シリウスさん。




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