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 友人がひどく照れると普段よりも整然と相手を論破しようとする癖があるとシリウスが気付いたのは、17回目だか18回目だかにルーピンに言い込められている最中だった。表情は相変わらず穏やかなままで、むきになっている調子でもないので今の今まで気付かなかった。しかしよく注意してみると、普段よりいくらか語彙が豊かで語調に淀みがない。どうやらこの元教師は恥ずかしくなると頭の回転数が上がり、言葉を巧みに操れるようになるらしかった。そうと知るとおおよそ我慢の出来そうにない愛情が身の裡にこみあがってきて、シリウスはその長い指で彼の小さな後頭部を支えキスをした。唇が離れるとルーピンは「ひとの話を聞いているかい?」と囁いたが、シリウスはずっと笑っていた。


2003/06/05



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