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「今なら言っても構わないと思うけれど、もし不愉快にさせたら済まない。私はむかし君を殺そうとしていたことがある。……そう、あの事件の後だ。随分悩んで決めたんだ。1年かそこらはその事ばかり考えていた。事件の犯人が真実君ならば、許せないという気持だった。でも、ディメンターに君の精神を壊されるのは我慢できないという理由もあった。だから、あの島に渡って君と直に話をして、君が罪を認めたら殺そうと決めていた。

これはもう空想の話になってしまうけど、もし私が牢の前に現れたら、君は一言も弁解をしなかったんではないだろうか。そして、私に何をされようと黙って受け入れたのでは?君はそういう男だから、シリウス。
死んだ君を前に、私はきっとその態度を不審に思っただろう。それからおそらく私は事実に行き当たった筈だ。……シリウス、私はその時の自分の心の中を想像したくない。それは多分死よりも恐ろしい事だ。そうは思わないか?

……けれど数々の幸運が私を救った。くじに当たって旅行をしたウィーズリー家の人々。それを写真に収めた記者。新聞を刑務所に持ち込んだファッジ。クロスワードに興味を示した君。それから私達の作ったあの地図……ジェームズが作ろうと言い出したあの地図が……。
私は今でも時折それらに感謝をするよ。間違いなく人生の中で2番目にラッキーな出来事だった。君達に出会えた事の次に。
その幸運の代償だというのなら、私はもう一度生まれ変わったとき、また人狼の病を得ても、ちっとも構わないと思う。シリウス、私はそれくらいあの幸運に感謝しているんだ」

すべてが終わったあと、リーマス・J・ルーピンは友人にそう語った。



2003/05/24



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