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 最近の私にとって性行為は、犬猫の顎をかいてやるのに近しい感覚だった。
 なんだか気持ちのよさそうな顔をするので、掻いてやる。私も楽しい。だらりとリラックスして体を伸ばすその様子が大層可愛い。もっと撫でてやる。嬉しそうに鳴く。撫でる。喜ぶ。撫でる。喜ぶ。

 などという発言をした途端にシリウスが血相を変えたので、私は又なにかまずいことを言ってしまったようだと悟った。
「5分、時間をくれないか?」
 片手をあげるとシリウスは頷く。彼と違って頭の回転に恵まれない私が、こういうとき慌てて抗弁すると状況は泥沼化する。私もずいぶん学習した。
「……君を犬猫扱いしているのではない。それは違う」
「3分考えてそれか」
「……犬猫ならどれでも撫でるという訳でもない」
「ああ、お前にしては随分頑張った答えだな」
「犬猫というか……パッドフットと言ったらいいだろうか……?」
「俺の飼っている犬猫は」
 ため息をついて、彼は伏せていた目を再び開いた。
「そういえば撫でてもあまり喜ぶ様子がないな。鳴かない」
「……犬猫にも個性があるからね」
「撫でてもあまり喜ばないが、時々俺に襲いかかってくる。人食い犬猫だったのかもしれない」
 抜群の演技力で、彼は不思議そうにつぶやく。仕方ないので私は尋ねた。
「……なぜそんな物騒な犬猫を飼っているんだ君は?」
「さあ。しかしどうもその犬猫は逆に俺を飼っているつもりらしい」
 包まっていたシーツを剥いで、彼は身を起こした。先ほどまでは腕も動かせない様子だったのに、うって変って元気な顔をしている。横たわったシリウスを眺めながら好きなことを言いたい放題にするのがおしまいになって、私は少し残念な気持ちがする。そんな私の顎を撫で、彼は笑いながら口付けた。
「躾が足りないようだ」



 そのあと「君にとって性行為とは何か」と彼に尋ねてみたが、シリウスの回答は「犬猫に譬えるなら……お気に入りの靴を噛む遊び、またはスプレイ行為、あるいは交尾だな」というものだった。べつに犬猫に拘らなくてもいいのだが、私の友人は律儀だ。一部譬えになっていない気もするが、指摘するのはよしておいた。











野球だって攻守交替しないと、試合がネ!成立しないよネ!うん。
むかし海外ものを読んでいたときは途中交替にびっくりしたものですが
今ならもう全然オッケーだ。大人だ!(笑)

2009.08.27