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 シリウス・ブラックは1年に数度ほどの頻度である種の夢を見る。それは彼の恋人であり友人でもあるリーマス・ルーピンと肉体交渉を持つという内容なのだが、行為の傾向が普段彼等の間で行われるものとは若干様子が違い、抵抗と拒絶、暴力の伴うものだった。夢は現実のシリウスの欲求の充足度合いや体調には一切関係なく、オートマティックに訪れる。夢の中の友人の悲鳴や哀願、弱弱しい腕の力、引き裂かれる衣服などを彼は朝食の席で思い出す。シリウスは夜に見た夢の内容を概ね殆ど覚えている特殊な男だった。
 現実のルーピンはといえば向かいの席でパンなどを咀嚼している。シリウスは申し訳ない気持ちで一杯になり、自然と俯き加減になる。
 そして、この友人がこれまでに一度も、(狂気に陥った時の非道な自分の振る舞いにさえ)拒絶の態度をとった事がなく、見せるのは穏やかな承諾の表情と、ゆるやかに広げられた四肢ばかりであった事なども思い出し、益々の罪悪感で彼は収縮せんばかりになる。自分の見るこの不埒な夢に決して気付かれる訳にはいかないと、シリウスは懸命に普段通りの振る舞いを続けるのだった。

 しかしリーマス・ルーピンの方は、当然ながら友人シリウス・ブラックの不審な態度とそのおおまかな理由に気付いていた。なぜならばシリウスは、近しい者に対する隠し事がとことん下手な男だったからだ。ルーピンが歴史上の人物の話をしているというのに、彼は「最近彼は羽振りが良くないらしいな」などと頓珍漢な返事をしたりする。そしてルーピン自身が男性であるので、ある程度の推察は出来た。
 「それで夢の中の私とは楽しめたのかい?」という質問が喉まで出掛かるのだが、ルーピンはぎりぎりのところで我慢する。もし尋ねれば大層面白い状態になった彼を見られるだろうという確信があるのだが、一応の礼儀と慈悲で彼は実行をしない。
 しかしながら大抵の交渉のバリエーションは、探究心旺盛なシリウスの希望によりすでに試みている自分達にとって、それでも尚恥入らなければならないような行為とはどのようなものか、ルーピンには想像がつきかねるのだった。



いつも思いますが
爽やかという言葉から300キロくらい
遠い場所の作品を書きますね。いつも。
まあこれも個性か!(笑顔)

2006.12.21



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