「ねぇ、祐君。何か変じゃない？」
「ああ、そうだな」
祐漸とさやかは、最初からそれに気付いていた。
他の誰にも気付かれることなく、これだけの人数でここまで接近できるにもかかわらず、襲撃者達の出現の仕方はあまりに真っ向勝負過ぎた。
城の四方に充満するあの異形――義仙の言葉を借りるなら“デモン”――の気配はあからさま過ぎるのだ。まるで見つけてくださいと言わんばかりに。
もちろん城の周囲には気配探知の結界を幾重にも張り巡らせており、先の襲撃のように一撃で結界を吹き飛ばされでもしない限り、敵の接近を即座に察知することは難しくない。
それでも、決して多くはない戦力でわざわざ包囲戦を仕掛けてきていることに、僅かばかりの違和感を二人は覚えた。
「陽動、かな」
「だとすれば、狙いは稟か」
いまだに敵の、冥王ハデスの明確な目的がわからない。
しかし相手が祐漸やフォーベシィの考えを読んで行動しているのだとしたら、こちら側の目論見の中心に稟がいるということは想像に難くない。
ならばその目論見を潰す最短の手段は、稟の抹殺であった。
「しかし・・・・・・」
それがわかっても、容易く対処できない状況というのもある。
今がまさにそれだった。
祐漸とさやかが相対している敵は、まったくもって正体が知れなかった。
一人なのか複数なのか、それすらわからない。
ただ空気とでも呼ぶべきなのか、そこに明確な敵意を持った存在がいる、ということしかわからないのだ。この二人をもってして、である。
こんな敵に出くわすのは、祐漸と言えどもはじめてだった。
「どうする、祐君？」
「こいつを突破するのは、容易じゃなさそうだな」
「だよね。さっきから転移を試みてるんだけど、変な風に乱されて全然できない」
「ふむ・・・・・・放っておくか」
「ほぇ？」
「期日も残り半分。ここまで一切の成果なしだ。ここは一つ、荒療治もいいかもしれん」
あえて稟の身を危険に晒し、その極限状態で聖剣の力を引き出す可能性に期待する。
「悪い考えだねぇ。カエちゃんが知ったら怒るよ〜」
「これで駄目ならむしろ諦めがついて、残りの時間で別の手段も講じられる」
「大丈夫かな、つっちー達だけで」
「イフリートが出てきたら俺が対応するさ。それ以外の奴ならどうにかなるだろう」
「それもそうだね。それなら今後のために、このよくわからない敵のことをよく調べておこっか」
得体の知れない敵を相手に、二人の戦いが始まった。
真★デモンバスターズ！ＭＩＲＡＧＥ
第３話 空を断つ金色
背後に人が降り立つ音に気付くと同時に、身の毛もよだつような殺気を感じて、稟は振り向きながら後ろへ跳び下がった。
真剣を突きつけられたような感覚だったが、殺気の主である少女は１０メートルほども離れた位置に立っており、いつかのように剣を手にしてもいなかった。
忘れもしない。
ガーデンが燃えた日に、出会い頭にいきなり殺されかけた相手である。
異性を惹きつけて止まないであろうほど綺麗なのに、どこか人形めいた作りものの微笑を浮かべた、左右で色の違う瞳を持った少女。
表情とは裏腹に、生々しい殺気を浴びせかけられて、稟は全身から汗を噴き出していた。
（やばい、どうする！？）
後ろにはいまだ岩に突き立ったまままったく反応を示さない聖剣。
真横にはこの五日間寝泊りしてきたテントがあり、そこには稽古と、いざという時の護身用として持っている普通の剣が置いてあった。
自分を殺そうとする敵が目の前にいる以上、まずは武器を確保する必要があった。
丸腰のままでは自分の身一つ守ることもできない。
たとえ相手が戦って勝てる相手ではないにしても、何らかの対抗手段がなければあえなく殺されるだけだった。
ここから逃げ出すか、或いは誰かが気付いて助けに来てくれるまでの時間稼ぎのためにも、まずは武器。
（思い切って聖剣に賭けてみるか、手堅く普通の剣にすべきか・・・？）
少女の得物は以前に見ている。
あの身の丈ほどもある大剣の前では、普通の剣など棒切れに等しい気がした。
かと言って聖剣ならば相手に対抗できるかもしれないが、いまだに抜ける兆候はない。
どうするべきか決めかねていると、少女に動きがあった。
身を硬くする稟。
けれど少女は稟のことを見据えたまま、悩むように腕を組んで考え込みだした。小首を傾げる仕草がかわいらしいが、そんなものを感じる心のゆとりはなかった。
「んー・・・どうしよっかなぁ・・・・・・。殺したい、けど、殺せない。もどかしいよ」
ぶつぶつと、殺すの殺さないのと物騒なことを口走る少女。その様子に、稟は空恐ろしいものを感じる。
シアや楓達と同じ、愛らしい少女の姿をしていながら、彼女はまったく別種の存在だった。
戦いの中で生きるようになって、止むを得ず敵となった相手を殺す。そうしたことならば、今の稟にも理解できる。 剣を手にする以上、常にそのことは覚悟しておけと純一からも教えられており、稟なりにその覚悟をしてきている。シアや楓達の身に危険を及ぼす敵と相対した時には、その相手を殺してでも彼女達を守ろうとするだろう。
けれどこの少女は違う。
殺すために殺す戦いを平気でする。
そこに一切の躊躇も、良心の呵責もない。
当然のこととして、まるで呼吸をするかのようにそれを実行することができる者。
可憐な少女の姿をしているが、目の前にいるのは理解の範疇を超えた怪物だった。そんな存在を前に、ぼんやりと選択肢を悩んでいる暇などない。一瞬の判断の遅れが命取りとなる。
そう悟った瞬間、稟は真横へ向かって全力で跳んでいた。
テント脇に立てかけてあった剣を掴み、いつでも抜ける体勢で少女と向き合う。
そんな稟の様子を、少女はキョトンとした顔で見ていた。
「・・・抵抗するんだ。ふ〜ん・・・・・・うん、その方がわたしもごちゃごちゃ考えなくていいかも」
組んでいた腕を解いて、少女は一歩踏み出しながら右手を振る。
途端、少女の右手にいつかと同じ大剣が出現する。見た目だけでとてつもない重量があるとわかるが、少女の細腕は苦もなくそれを手にしていた。
「そうだね、殺し方は後で考えよう。まずはお父様に言われたように、動けなくしてあげよう。うん、両手両足を潰したら、動けないよね。あはっ、そこまでしたらショックで死んじゃうかもね」
「得物も言うこともとことん物騒な子だな」
はじめて稟の方から少女に話しかけた。
すると少女の顔にほんの僅かだが表情の揺らぎがあった。何かに深く感じ入ったような、様々な感情の入り混じった顔。
だが次の瞬間、それは一つの感情に塗りつぶされた。
仮面のように無表情な少女の顔に浮かんだそれは、静かな憎悪と呼ぶべきものだった。
「せっかくだから土見稟。わたしの名前を教えてあげる」
そして少女はただ一言自分の名前を告げると、大剣を振りかぶった。
キキョウの前に現れた牧師姿の男は、アーネストと名乗った。ジャガージャックやガイアと同じく、ヴォルクスの男だった。
姿を見せた時には無手のようだったが、いつの間にかその手には２メートルほどの長柄武器が握られていた。先端に十字の刃がついた槍である。
「ガイアの報告にあった、キキョウという娘ですか。神王家の王女に、その存在を認められなかった影姫がいるという噂を耳にしたことがありましたが、それがあなたということですね」
「ええ、そうよ」
「なるほど。つまりあなたは、神王家と魔王家、双方の血を引くということですか。これは厄介な相手だ」
「神王家と、魔王家の・・・・・・」
言われてはじめてキキョウは、自分に流れる血のことをそんな風に考えた。
今までは、確かにソレニアとヴォルクスの間に生まれたという事実はあっても、ソレニアの血が濃かったシアは王女として認められ、ヴォルクスの血が濃かったキキョウは王家から排斥され、その存在を消されることとなったという考え方をしていた。
だからキキョウは自分のことを、ただの忘れ去られたヴォルクスの子としか思っていなかった。
けれど考えてみれば当たり前のことで、大陸を二分する二大王家の血が交わって生まれたシアとキキョウは、かつてない特別な存在とされるべき子供だった。
自分の中には、歴代の神王と、歴代の魔王、両方の血が流れている。
それを認識した時、キキョウは自分の中で覚醒しつつある力の正体に、はじめて気付いた思いがした。
「そう・・・・・・そういうことなの」
シアの身体から分かれて後最初の戦い、バジルとの戦闘で予想以上に高まっていた自分の能力に戸惑った。二度目の戦いとなったガイア相手には全力を量る気持ちで当たったが、すぐに中断されたため、自分の力の全容を知るには至らなかった。
けれど確かなことは、キキョウの力が以前とは比べ物にならないほど強大なものになりつつあるということだった。
（もしかすると、シアも？）
二人に分かれて後、姉の方には特に以前と比べて変わったところがあるようには見えなかった。
この力の覚醒はキキョウだけに起こっているものなのか、それともシアの方はまだ眠っている状態なのか。
それはわからなかったが、キキョウはこの力の存在を嬉しく思っていた。
稟が。シアとキキョウにとって誰よりも大切な人が、これから大変なことに挑もうとしている。あの男、祐漸も彼に何か大きなことをさせようとしている。
はっきりとは知らないが、それはきっととても困難を伴うことだった。
何しろまず第一に、あの神王・魔王との対決があるのだから。
その稟を少しでも助けられる力があったなら。それはキキョウだけではない、稟を思う全ての少女達が共通して抱く想いに違いなかった。
誰よりも早く、誰よりも大きなその力を手に入れようとしている自分に優越感も覚える。
他の誰でもない。
（あたしが、稟の力になる！）
力の使い道が明確になると、ますます研ぎ澄まされた力が沸き上がってくる。
眼前に立つ敵は危険な相手に違いない。
けれどそんなことは些細なことでしかないように思えた。
そう、こんな敵如き、軽く捻り潰してしまえるだろう。
「それで？ あたしを厄介だと感じて尚、あたしとやる気？」
「さて、どうしたものですかね。これは御前から直接下された命令ではありませんし、さりとて“我らの姫君”からのたっての頼みとあっては、力を尽さないわけにも参りませんし、それに――」
アーネストは左手を顔の前にかざし、軽く眼鏡を押し上げる。その際に月光を反射して淡く光った眼鏡の奥から、見る者を底冷えさせる怜悧な眼光が放たれる。
「大きな力を手にいれたばかりで少々増長している様子のお嬢さんに、現実の厳しさを教えて差し上げるというのもおもしろい」
「言ってくれるじゃない。増長してるのはどっちか、教えてあげるわっ！」
横薙ぎに腕を振る。
溜めも何も必要ない。今のキキョウならばそれだけで、多大な魔力を込めた一撃を放つことができた。
ズガーンッ！
迸る幾筋もの雷撃がアーネストを襲う。
血筋にこそ宿ると言われる、王族の超越者たる力の顕現。その前には、どれほど修練を重ねた者でさえも瞬く間に平伏すであろう。
現に敵も、辛うじて雷撃の嵐をかわすのが精一杯だった。
「そらそらっ、偉そうなのは口だけ！？」
成す術なく逃げ惑う敵を圧倒的な力でもって追いつめていく行為はとても甘美な快感を伴った。
それは人間であれば誰でも持っている類の感情である。
強い者が弱い者を蹂躙する際に覚える優越感。それが危険な感情であると頭で理解はしていても、巨大な力を手に入れたばかりのキキョウにそれを自制することはできなかった。
目の前にいるのは自分の敵、稟の敵。それをどんな手段を用いてでも排除することは、未来の脅威を摘み取ることなのだと自らを正当化して力を振るう。
今の自分には力がある。
だからその力でもって、敵を、駆逐する。
「とらえたっ！」
四方から雷撃を振り撒き、相手の退路を塞ぐ。
逃げ場はない。
追いつめた獲物を狩る愉悦に酔いながら、キキョウは全ての雷撃を一斉に解き放った。
「・・・・・・フッ」
その瞬間、アーネストの口元に冷笑が浮かんだ。
「ッ！？」
全ての雷撃が獲物を貫くかと思った瞬間、アーネストが手にした十字槍を旋回させると、キキョウが放った攻撃の全てが軌道を逸らされ、あらぬ方向へと流れていって炸裂した。
無数の爆発が起こる中、その中心にいるアーネストはまったくの無傷だった。
自分の力に酔いしれていたキキョウは、冷水をかけられたように急速に昂揚していた精神が冷めていくのを感じた。
「良い攻撃です。力の強さはもちろん、よく洗練されていて隙も少ない。ですが、柔よく剛を制す、とも言います。残念ながら、私には通用しませんよ」
「たっ・・・・・・たまたま防いだからっていい気になるんじゃないわよっ！」
カッとなったキキョウは、さらなる力を引き出し、先ほどの倍の雷撃を生み出す。
しかし、頭に血が上った状態で放出した力は前よりも荒く、結果ますます敵に付け入る隙を与えることとなっていた。
ひたすら攻めるキキョウと、最小の動きでそれを防いでみせるアーネスト。
一見すると攻め続けているキキョウが有利に見えて、精神的にはまったく逆の優劣がついた状態で戦いは続いていった。
アイリス。
少女が次げた彼女の名前を稟が認識した時には、１０メートル余りあった二人の距離は０に縮まっていた。
こうして相対したのが２ヶ月前だったなら、既に稟の命はこの世になかったかもしれない。
ずっと鍛錬を積んできたからこそ、頭も体も反応することだけはできた。
辛うじて初撃をかわし、相手から目を離さないようにしながら距離を取ろうとし、それが適わずに立て続けに攻撃を受ける。
怒涛の勢いで繰り出される斬撃の前に、稟はそもそもまず剣を抜くという行為すらさせてもらえなかった。
既に左手で鞘に納まった剣を持ち、柄に手をかけている。
剣を抜く。
たったそれだけの行動を起こすのに１秒もいらないだろう。
なのに、そのたった１秒の時間すらもアイリスも猛攻の前では容易に許されなかった。
紙一重でかわして隙をつこう、などという発想すら浮かばず、ただ全力を逃げることにのみ費やす。
それで思ったよりも余裕を持って回避行動が取れていることに気付いたのは、しばらく経ってからのことだった。
（動きは、意外と・・・）
速いことには違いない。
鋭さも申し分ない。
けれど手にしている得物があまりに巨大だからかパターンは比較的単調で、冷静になってよく動きを見ようとすれば対処できないものではなかった。
ずっと修行をつけてもらっていた純一の剣技に比べたら、アイリスの剣はひどく荒削りだった。
（これなら、何とかなる！）
稟は焦らず正面から振り下ろされた一撃を避け、むしろゆっくりとさえ言える動作で剣を抜いた。
「！！」
アイリスの目が意外そうに見開かれる。
それで隙ができた間に、稟は充分に距離を取り、鞘を放り捨てて剣を正眼に構える。
するとさっきまで果敢に攻めていたアイリスも一旦動きを止めた。稟の構えを見て、簡単に付け入る隙がないと感じたのかもしれない。
「ちょっとは戦えるんだ。お強い恋人さん達の後ろに隠れて震えてるだけの人かと思ってた」
「前はそんな感じだったかもな。けど、人間ってやつは日々成長するもんだぜ」
「格好いいこと言っちゃって。泣いて命乞いするなら見逃してあげるかもよ？」
「そりゃ魅力的な提案だな。けど、本当にそうしてくれるのか？」
「ううん、だーめ。あなたはわたしが殺すの」
一瞬、アイリスの姿が稟の視界から掻き消える。
素早く左右に目を向けた稟は、そこに動いた形跡がないのを見て剣を頭上に向けて振り上げた。
剣と剣とが交わるのを感じてから、遅れて顔を上げる。
上手く相手の攻撃を読んで合わせることはできたが、上からの攻撃、しかも超重量の大剣による振り下ろしを稟の剣を受け止めることは不可能だった。そのまま黙って受ければ、良くて腕が折れるか、悪ければ体ごと真っ二つにされるかだった。
だから稟はただ受けることを選ばず、剣が交わった一点に横から力を加えて、剣の軌道を横へ逸らした。
大剣は稟の横の地面へと振り下ろされる形となり、跳躍から着地したアイリスの目の前に稟は滑り込むことができた。
女の子を相手に手を上げるのは好ましくなかったが、この相手にそんな気を使っていてはあっという間に殺されてしまうだろう。
稟は拳を相手の鳩尾目掛けて打ち込んだ。
「う！」
しかし、拳はアイリスの左手によって止められてしまった。
交差した剣を稟が横へ流した時、アイリスもまた稟の次の動きに対処すべく、咄嗟に剣から左手を離して防御する備えをしていたのだ。
「くそっ！」
そこで動きを止めてはやられると思い、稟は思い切って全身で相手にぶつかっていった。
体当たりを受けたアイリスは仰向けに倒れ込み、勢い余って稟もその上に覆いかぶさるように倒れた。ちょうど、稟がアイリスを押し倒したような形になる。
そんな状況に思わず戦っていることを忘れて赤面しそうになるが、グッとこらえて相手の両肩を押さえて組み伏せる。
「これで！ 動けない、だろ・・・っ」
ほんの僅かな攻防だったが、これだけでも稟はかなり一杯一杯だった。
特に振り下ろされた剣を受け流した時と、鳩尾を狙った拳を止められた時には、咄嗟に次の行動に移れたものの、大量の冷や汗を掻いていた。
それでなくても、先ほどから絶え間なく殺気を浴びせかけられ続けているのだ。
見た目に反してこの少女が放つ殺気は恐ろしく鋭利で、本物の修羅場の経験に乏しい稟はそれだけでも多大な精神力を消費させられるものだった。
稟に組み伏せられた体勢で、アイリスは例によって人形めいた冷笑を浮かべていた。
「噂どおり手の早い男だね、土見稟。それで、わたしもあなたの毒牙にかかっちゃうのかな？」
「そういう話じゃないだろ！」
「うん、ほんと。あなたの女にされるなんて真っ平御免」
「そうかよ。こっちとしちゃ訳もわからず命を狙われるのも真っ平御免なんだけどな」
「・・・理由、知りたい？」
「まぁ、納得できるかどうかはともかく、自分の命が狙われる理由くらい知りたいだろ」
「そうだね。別に隠してるわけでもないし、教えてあげてもいいよ」
「本当か？」
「でも、その前に」
次の瞬間、稟の視界がぐるりと回転する。
背中に衝撃。投げ飛ばされて地面に落ちたのだと理解するまでしばらくかかった。
巴投げの要領だったのだろうが、技というよりは力任せに上に乗っていた稟を跳ね除けたような感じだった。
考えてみれば、あんな大剣を軽々と操る膂力の持ち主である。上手く相手の力を殺すような技があるのならともかく、稟程度が力ずくで押さえ込もうなどというのが土台無理な話だった。
あっさりと自由になったアイリスは、倒れている稟が隙だらけにもかかわらず、その場で悠々と取り落とした剣を拾っていた。
「汚らしい手でいつまでもわたしを触ってないで」
「随分な嫌われようだな・・・・・・」
相変わらずこの少女は、笑みを浮かべている時よりも、表情を消してどこか忌々しげに稟を見ている時の方が感情的だった。
「何か俺、君に恨まれるようなことをしたのか？」
「それはね」
立ち上がりながら問いかける稟に対して口を開きかけたアイリスは、手にした大剣を無造作に空中に放り投げた。
一体この少女の細身のどこにそれほどの力があるのか、大剣は重力から解き放たれたような勢いで空に吸い込まれていった。
そして手放された大剣に気を取られた瞬間、稟は目前までアイリスに迫られていた。
「ぐっ・・・！」
剣を向けようとして相手が丸腰であることに気付き、思わず躊躇してしまう。
その隙を逃さず懐まで踏み込んだアイリスの膝が稟の腹部に突き刺さる。
胃の中のものが逆流する感覚に続いて、背中からの衝撃で息も詰らせる。膝蹴りを放った直後に後ろへ移動したアイリスの肘打ちが、後方へ吹き飛びかけた稟の体をその場に留めていた。
続けて足払いを受け、体勢が崩れたところに踵落し、地面に跳ねると同時に蹴り上げられ、裏拳で立て続けに顔面を張られる。
どんな攻撃を受けたのか、それを認識するので精一杯だった。
避けたり反撃したりする余裕などまるでなく、稟はひたすら人間サンドバック状態にされる。
時間にしてほんの十秒余り、散々なぶられた稟は、最後に回し蹴りの一撃を喰らって２０メートル近くも吹き飛ばされた。
「がはっ！」
仰向けに地面に落ちたそこでようやく呼吸を許され、稟は肺に溜まった空気を血と共に吐き出した。
意識を朦朧とさせながら目を明けると、夜空に一際大きな星が瞬くのを見た。
否、それは星ではなかった。
真っ直ぐに落下してくるそれが、先ほどアイリスが上空目掛けて放り投げた大剣であると気付くことはできたが、反応することはできなかった。
ドスッ！
何十メートル上まで放られていたのか知れないが、地面に突き刺さった大剣はそれ自体の重みと落下の速度で半分近く地面に食い込んでいた。
落下地点は、稟の頭上数センチという位置だった。
体を動かすことも、顔を逸らすこともできなかった稟は、目を見開いたまま空を見ていた。
死の恐怖に直面したのは、前回に続いて２度目だった。
「狙ったのに、やっぱり外れたなぁ」
呑気な声で落胆を露にしながらアイリスが近寄ってきた。
地面に刺さった大剣の柄に手をかけながら、前かがみになって稟の顔を覗き込んでくる。
「ね、わかった？」
「・・・・・・いや、残念ながら君の言いたいことはさっぱりわからない・・・」
「頭悪いなぁ」
言いながらアイリスの口元にはいつもの冷笑が浮かぶ。
稟の困った顔、恐怖に怯えた顔を見るのがよほど楽しいらしい。
「何度も言ってるでしょう。わたしはあなたを殺したいの。それは偽らざる、わたしの本心。なのに、わたしの身体はわたしの意志に反してあなたを殺してくれない。この間も、今も、わたしは殺す気で狙ったのに、わたしの身体が勝手にブレーキをかけて手許を狂わせる。自分の身体が自分のものじゃないみたいで、すごく気持ち悪い。不愉快なの」
「そ、それは・・・・・・」
「あなたが死んでくれれば、そんな身体に煩わされることもないはずなんだよね。だけどわたし自身にはあなたが殺せない。すごいジレンマ。悪循環だよね」
「その理屈は、ちょっと変じゃないか？ 鶏と卵みたいなことになってるぞ。原因がいまいち・・・・・・そう、一番最初に俺を殺したいと思った動機の部分が抜けてるんだ！」
「・・・・・・なんか、結構冷静だね。ついさっき死にかけたばかりで、今だってすぐにでも殺されそうな状態なのに。それとも、わたしがあなたを殺せないって確信しての余裕？」
「そんな余裕はないさ。今言われてはじめて気付いた。たださっきも言ったように、自分が殺される理由くらいはちゃんと知りたいだけだ。ああ、ついでに理由を知った上で何とか穏便に済ませてもらえるよう交渉もしたいところだな」
「この体勢で減らず口なんて、わりと大物だね」
「どうかな・・・」
「うん、あなたは大物だよ。わたしは、それを知ってる」
声の調子が変わるのを感じて、稟はアイリスの顔を下から覗き見る。
そこには、はじめて見る表情があった。優しげで、儚げで、悲しげで、けれどどこか嬉しそうな。いつもの人形めいた冷笑とも、憎しみを孕んだ無表情とも違う、とても親しみの沸く表情だった。
何より、はじめて見る顔なのに、どこか懐かしい感じを稟は覚えていた。
けれどその表情はすぐに消え、何度か見せた憎悪を滲ませた無表情に変わる。
「お喋りが過ぎたね」
アイリスは柄にかけていた手を握り締め、大剣を地面から引き抜き、稟の頭上にかざす。
「わたしの意志を抜きにしても、あなたの存在はお父様の邪魔になる。殺せないならせめて、四肢を潰して動けなくしてあげる。ああ、腕の一本でも切り落としてそのままにしておけば血がなくなって死ぬかな？」
顔に向けていた切っ先をずらし、右腕の上で止める。
稟は逃れようともがいたが、アイリスの足が右腕の手首を踏みつけているため動けなかった。何より、さっきのダメージがまだ残っていて、体を動かすと全身が悲鳴を上げた。
「痛いのは我慢してね。本当は苦しまないよう、一瞬で殺してあげたいんだから」
「だったら、見逃してくれても、いいんじゃないのかっ！？」
「それはダーメ」
振り下ろされる剣。
来るべき衝撃を予想して、稟は両目をきつく閉じた。
だが今度もまた、その予想は外れることとなった。
「ッ！」
稟に向けていた剣を引きながら、アイリスが横へ振り向く。
ギィンッ！
剣と剣とが交わる金属音と、それに伴う衝撃波を感じて稟は閉じていた目を開く。
「でぇええええええええい！！」
気合一閃、剣を振り抜いて、防御していたアイリスを弾き飛ばしたのはシアだった。
広場の入り口から一直線に突撃してきたのか、勢い余って少し地面を滑ったところで停止すると、稟の下へ駆け寄ってくる。
「稟くんっ、大丈夫！？」
「ああ、とりあえず生きてはいる」
全身がズキズキと痛むが、動かせないほど深刻な怪我はなかった。
「神王家のお姫様は、随分と馬鹿力なんだね」
アイリスの声を聞いて、稟は即座に体を起こし、シアはその前に立って剣を構える。
「みんなに外で陽動しててくれるようにお願いしておいたんだけど、一人抜け出されちゃったのかな？」
「残念でした。私、今日は夕飯の後片付けの当番だったから、ずっとお城の中にいたんだよ」
「そう。そういうこともあるよね。まぁ、祐漸様が来たならともかく、リシアンサス王女、あなたが来たところで大して状況は変わらないよ」
「むぅ、そんなの、やってみなくちゃわからないッス」
「じゃあ、やってみる？」
右手一本で持った大剣を地面すれすれの位置で後ろに引いて構えつつ、アイリスは身を低くして踏み込む。
疾風の速度で肉薄する相手の速さに面食らったシアが一瞬硬直するが、振り上げられた相手の剣を何とかガードする。
だが、大剣による重い一撃を押さえきれず、シアの体が浮かび上がる。
アイリスはそこを狙って、剣が交わった位置からさらに一歩踏み込んでシアの胸に掌を押し当てる。
軽く触れただけに見えたが、そこにどんな力がこもっていたのか、シアの体が後ろへ吹き飛ばされる。
すぐ後ろにいた稟が咄嗟にシアの体を抱き止めるが、威力を止めきれずに二人揃って後ろへ倒れ込む。
「うぉっ」
「きゃっ！」
二人分の体重を受けることになった稟の身体がまたも悲鳴を上げる。けれどすぐ眼前に剣を突き出したアイリスが迫るのを見て、稟は咄嗟に体の位置を入れ替えてシアを庇う。
するとアイリスの動きが不自然な具合に途中で止まった。
大剣の切っ先は、稟の背中ギリギリのところで停止しており、アイリスの舌打ちの音が稟の耳に届く。
しかしそれで攻め手を緩めるアイリスではなく、剣を引きながら稟の体を蹴り飛ばし、シアから引き離す。
「稟くんっ！ この・・・・・・！」
シアが体を起こしながらアイリス目掛けて剣を振り上げる。
後ろへ一歩引きながらそれをかわしたアイリスは、頭上で大剣を旋回させながら、回転によって威力の増した一撃をシアの剣目掛けて叩き付けた。
ガキィンッ！
横からの衝撃を受けた剣は、無残にも砕け散った。
唖然とその様子を見ていたシアを、アイリスが冷笑と共に見下ろす。
「あなたじゃ、わたしの相手にはならないよ、リシアンサス王女」
「っ！」
キッとアイリスを睨み付けるシアだったが、目の前に剣を突き付けられて息を呑む。
「邪魔をしないで。わたし、あなたには興味ないの」
「あ、あってもなくても、稟くんを傷付けようとするなら、私が許さないもんっ！」
「勇ましいのは結構だけど、あなたにできることなんてないよ。せいぜいそこで、わたしが土見稟を殺すのを黙って見て・・・・・・っ！」
稟は剣を水平に構えて、アイリス目掛けて突っ込んでいった。
先ほどまでは相手が女の子という思いがどうしても消えず、剣を振るうことに僅かな躊躇があった。
だがシアに危険が迫っているのを見た時、そんなものは吹き飛んだ。
全力の一撃を前に、アイリスも軽く捌くことはせずに、大きく後ろへ跳んで回避した。
さらに追い縋って斬撃を繰り出す稟。
ドッ！
けれど歴然たる力の差があっては、無謀な突撃が二度も意表をつけるはずもなく、呆気なく剣はかわされ、腹部に蹴りを受けてまたしても稟は吹き飛ばされた。
今までよりも強烈な一撃に、今度は剣まで手放してしまっていた。
二度三度転がった後、何かに背中をぶつけて稟の体が止まる。
振り返ると、それは聖剣が突き立った岩だった。夢中で、今までその存在すら忘れていたものだ。
自分の手から剣がなくなっていることに気付いた稟は、アイリスが近付いてくる前に聖剣の柄を握り、力を込めた。
剣は、やはり抜けなかった。
「くそっ」
手を離し、アイリスの追撃を横へ跳んで回避する。
獲物を逃しても、アイリスはむしろ楽しげに笑っていた。
「もっと死に物狂いで抵抗してみてよ、土見稟！ その方が何かの拍子にうっかり殺しちゃうことがあるかもしれないから！」
「冗談じゃないねっ！」
狙って殺されるのも、うっかり殺されるのも絶対に御免であった。
いい加減訳もわからず命を狙われている事実にうんざりしてきていたが、武器も失くし、絶体絶命の危機に晒されては悪態をつく元気すら奪われそうだった。
あとはもうひたすら逃げるしか手がないのだが、先ほどからの動きを見ていればまともに逃げてもあっさり追いつかれるのは明白だった。
「稟くん！」
さらに稟を追いつめるアイリスの背後から、シアが両手に魔力を溜めて飛び込んでくる。
「邪魔だよっ」
アイリスは振り向き様に左手をかざして魔力の壁を生み出す。
弾き返されたシアは、さっきの稟と同じように聖剣が刺さった岩のところへ飛ばされた。
それでも尚諦めないシアは、岩に突き立った剣を支柱にして立ち上がるが、アイリスはもうそちらに興味を失ったようで、稟に向かって剣を振り上げる。その切っ先には、莫大な魔力が込められていた。斬撃のみでなく、魔力の一撃でもって攻撃を仕掛けることで殺傷力を上げるつもりらしい。
「今度こそ最期よっ、土見稟！」
「ぐぅっ」
「ダメーーーーッ！！」
振り下ろされるアイリスの剣。
衝撃に備えて身を硬くする稟。
そして絶叫しながら駆け出したシアは、その手に聖剣の柄を握ったままだった。
光が奔った。
アイリスの剣に込められていた魔力の渦を巻き込んで、その光は広場の壁に突き刺さった。
壁に亀裂が走り、崩れ落ちる音を聞きながら三人共に唖然とする。
稟が呆気に取られ、アイリスもキョトンとした顔をし、そしてシア自身も自分が成したことに驚きを隠せずにいた。
自分の手に握られているものを見ながらあたふたするシア。
「え？ あれっ、その、えっと、だから、えぇ！？ ぬ、抜けちゃった・・・んと、その・・・・・・ご、ごめん稟くんっ！」
何だかよくわからないがとりあえず稟に謝るシア。
シアが手にしているのは、稟がこの五日間挑み続けてついに抜くことのできなかった聖剣、エクスカリバーであった。
その事実に、剣を抜いた本人が誰よりも驚き、うろたえていた。
岩に刺さっていた間は死んだように何の力も感じられなかった聖剣は、今は淡い金色の光を纏っていた。
「ふーん、まさか四大宝剣の主になれる素質があったなんて、ちょっとあなたのことを見くびってたかな？」
逸早く驚きから立ち直ったアイリスが稟に背を見せ、シアの方へ向き直る。
それで状況を思い出したシアも表情を引き締め、手にした聖剣の感触を確かめるように何度か握り直して構える。
「ちょっとは興味持ってくれたかな？」
「うん。道端の小石が、土見稟の前にある邪魔な岩になったくらいにはね」
「じゃあ気をつけてね。その岩は、噛み付くからっ！」
「いや岩は噛み付かないだろう」
ツッコミを入れる稟の声が合図になったように、二人の少女は共に剣を振りかぶって相手目掛けて踏み込む。
速度はアイリスの方が速い。
頭上に振りかぶった大剣を、向かってくるシア目掛けて振り下ろすアイリス。
シアはその場で踏み止まると、相手の攻撃に合わせて聖剣を振り上げた。
再び金色の光が瞬き、充分な威力が乗っていたと思われたアイリスの一撃をいとも簡単に弾き返した。
だがシアの方も、受け止めた剣の余波によって吹き飛ばされ、地面に倒れ伏した。
「あぅっ！」
「シア！」
一方弾かれたアイリスの方は、空中で体勢を立て直し、滑りながら勢いを殺して着地していた。
倒れたシアの服が一部切り裂かれているのに対して、アイリスの方はまったくの無傷だった。
「何だ、こんなもの？ 四大宝剣なんて言っても大したことないね」
事も無げに言うアイリスの顔には、余裕を示すかのようにいつもの冷笑が浮かんでいた。
「それとも使い手の問題かな。いきなり凄い武器を手にしても、扱えなかったらただの宝の持ち腐れだよ」
「う・・・・・・」
シアは辛うじて立ち上がったが、聖剣の輝きは抜き放った時よりもずっと弱くなっていた。
「やっぱり、あなたは邪魔だね。そろそろ他にも誰か来るかもしれないし、土見稟より先にあなたから殺してあげる」
アイリスが大剣を頭上に掲げる。
黒い魔力が垂直に空へ向かって突きたてられた剣の切っ先に向かって集まっていく。その力は先ほど稟を狙った時のものを遥かに上回っており、シアの手にある聖剣の力を圧して余りあるものがあった。
立っているだけで押し潰されそうな威圧感があった。
魔力を扱うことに関してはてんで素人な稟でさえ、それがとてつもない力であることがわかる。
稟は、さっきまで手も足も出ずにいた少女が、実は力の半分も出していなかったという事実を知って戦慄する。足が震え、後ろへ下がりそうになる。
横へ目を向けると、シアも同じようで、強大な敵を前に完全に腰が引けてしまっていた。聖剣の輝きも、今にも消えそうなほど弱々しい。
その姿を見て、萎えかけていた稟の心が奮い立つ。
ここで引き下がるわけにはいかない。
せめてシアだけは、自分の手で守らなければならなかった。
自分の命を第一に考えろ。そう祐漸に言われていたことも忘れ、稟はシアを庇うために駆け出した。
それに気付いていないのか、或いは気付いてあえて無視しているのか、アイリスは大剣の先に魔力によって形成した巨大な黒い刃を、振り下ろした。
シアは動けない。
黒い刃がその身を引き裂く前に、稟はシアのところへ辿り着くことはできたが、彼女を連れてその場から逃げる暇はなかった。
稟はシアに覆いかぶさってその身を庇う。その際に、稟の手が僅かに聖剣に触れた。
瞬間、再び辺りが光に満ちた。
金色の光は稟とシア、二人の身を包み込んで黒い刃を防いでいた。
予想外に攻撃を止められたアイリスの表情は一瞬驚きに彩られる。だが、完全に弾かれたわけではなく、双方の力がいまだに鬩ぎ合っている状態にあると知るや、さらに力を込めて防御を突き破ろうとする。
出力を増した黒い魔力の刃が質量を膨らませる。
凄まじい力の重圧に、光の壁が軋む。
光の中で、稟の顔が苦しげに歪んでいた。
苦悶の表情を浮かべながら自分を庇っている稟の姿を見た時、シアの中に芽生えていた怯えもまた霧散し、稟を守らなくてはという思いだけが強く湧き上がった。
いまだ手の中にある聖剣を力強く握り締めると、シアは頭上から自分達の命を脅かしている黒い刃を見据える。
さっきとは比べ物にならないほどの力が漲ってくるのを感じる。
今ならば、こんな攻撃は恐れるに及ばない。
強い思いを込めて、シアは聖剣を振り抜いた。
そして、金色の光は空を両断し、天空目掛けて真っ直ぐに伸びていった。
光が弾けた時、今度こそアイリスは最大級の驚愕を感じていた。
信じられないという面持ちで、その光景を見ていた。
アイリスが放った黒い刃の一撃を防いだ稟と、金色の一閃でアイリスの魔力を全て吹き飛ばしたシア。
二人の手にはそれぞれ、黄金の輝きを放つ聖剣が握られていた。
あとがきらしきもの
前回エクスカリバーが登場し、これを手に入れて稟もパワーアップか〜、と思った人は半分ハズレ。聖剣を手にしたのは稟ではなく、シアであったとさ。しかし、最後には稟とシア、どっちもが聖剣を持っていて、一体何がどうなっているのか、その秘密は次回を待て！
ＭＩＲＡＧＥに入ってから明らかに目立っている稟、シア、キキョウ。この３人は以前に比べて確実に見せ場が増えていくことになり、当分の間は彼らが話の軸である。そしてもう一人、大暴れ中のアイリスはＭＩＲＡＧＥの影の主役と言っても過言ではないかもしれない。敵ながら色々なキャラに絡んでくる重要人物である。そんな具合に話の中心にこの４人がなっているが、次回には旧来の主役勢にも活躍の場が。 しかも意外な人物が意外な形で出てきたりも。