※本編では尺の都合でカットすることになったさやか、エリス、亜沙、アイ、イシスの五人によるほのぼのシーンを描いた番外編である。30話と31話の間の話となる。ほぼ会話オンリーで、シーン描写無しで展開されていくので、どんな映像が展開されているかは各自で想像されたし。
真★デモンバスターズ!
番外編 お風呂ぱーてぃー♪
アイ 「親睦を深めるために、みんなでお風呂に入らない?」
そのアイの一言により、五人は揃ってお風呂に入ることとなった。
かぽーんっ
エリス 「・・・って! 何でアタシがあんた達と一緒にお風呂なんか入ってなくちゃいけないのよ?」
さやか 「まーまー、いいじゃない。広いお風呂なんだし、みんなで入らないと損だよ〜。それにしても・・・(ジー)」
エリス 「何よ?」
さやか 「・・・・・・エリスちゃんってさ、確か祐君の2つ年上だったよね?」
エリス 「ちゃん付けはやめなさい。で、それがどうかしたわけ?」
さやか 「ありえなさすぎっ! ちっちゃすぎっ、ぶっちゃけかわいすぎ!!♪」
亜沙 「確かに・・・リムちゃんよりちっちゃいもんね・・・。ボク達より十歳上どころか十歳下でも通りそう・・・」
アイ 「エリスさんはいつまでも若々しくて羨ましいよね」
エリス 「(怒)・・・・・・・・・何言ってるんだか。年齢に似つかわしくないのはあなたも同じでしょう、アイ。アタシよりさらに7つも上なんだから」
イシス 「・・・・・・お二人ともに普通じゃないです・・・」
さやか 「他人事みたいに言っちゃダメだよ。イシスさんだって似たようなものなんだから」
イシス 「はい?」
さやか 「イシスさん、今いくつ?」
イシス 「に、25ですけど・・・」
さやか 「見えない! せいぜい私達と同い年くらい、むしろその妹っぽいキャラ的に一つ二つ年下気味!」
イシス 「年下気味って・・・」
さやか 「揃いも揃って若作り過ぎ! そう思うよねっ、亜沙ちゃん!?」
亜沙 「うんうん! 思う思う」
さやか 「セージさんやリアさんも若かったし・・・」
亜沙 「ヴォルクスの女は化け物か!?」
さやか 「肉体の性能差が戦力の決定的差かー!?」
エリス 「アホらしい」
アイ 「(にこにこ)」
イシス 「(ぽか〜ん)・・・・・・」
亜沙 「あ、でも・・・・・・」
さやか 「ん?」
亜沙 「ボクのお母さんもありえないくらい若いから、ボクの将来もひょっとしたらあんな感じかも・・・」
さやか 「裏切りものーっ!!」
ベシッ!
亜沙 「ぁいたっ!」
さやか 「うぅ・・・いいもんいいもん、きっとみんな若々しいまま私だけおばあちゃんになっていくんだ・・・(いじいじ)」
亜沙 「えーっと・・・ほらあの、さやかちゃんのお母さんはどうなのかな〜、なんて?」
さやか 「うちのお母さん、私が小さい時に死んじゃったから若い頃のことしかわかんない」
亜沙 「う・・・ごめん」
さやか 「まぁ大丈夫大丈夫! いざとなれば不老の秘法を開発してみせるからっ」
エリス 「まったく、騒々しいことこの上ない奴ね」
イシス 「なんか、いつにも増してテンション高いですね・・・」
アイ 「楽しい人だね。祐漸君と一緒にいる人だけのことはあるよ」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
アイ 「・・・あれ? なんかシーンとしちゃったけど・・・・・・」
エリス 「余計な名前を出すからでしょ」
さやか 「ふっふっふ・・・そうだね、誰が若いとか若くないとかはどーでもいい話だったね」
イシス 「さやかさんが始めたんじゃないですか・・・」
さやか 「(無視) せっかくこんな顔ぶれで一緒にお風呂パーティーしてるんだから、話すことはただ一つ!」
亜沙 「それは?」
さやか 「ずばり! 祐君を好きになった理由!!」
亜沙 「ちょっと待った! ボクは別に・・・」
ビシッ!
亜沙 「ぁぃたっ!」
さやか 「しゃらーっぷ! この場にいる時点でそんな言い訳は通用しません! というわけでまずは最年長者のアイさんからいってみよーっ!!」
アイ 「祐漸君を好きになった理由、か・・・・・・んー――最初の頃は、かわいい弟君、って感じで、それ以上の感情はなかったかな。私は陛下・・・当時はまだ魔太子殿下だったフォーベシィ様の許婚だったし。古い慣習に従っての婚約だったけど、良いご縁だとは思ったし、私は私なりに、あの頃は本気で殿下を好きだった。祐漸君に、殿下に選んでもらえなかったらもらってくれる、って聞いたのだって、半分はお酒に酔っての冗談。実の弟のアル君は勉強熱心で、あまりお姉さんの相手をしてくれなかったからね、同い年くらいの祐漸君を・・・・・・代わりって言うとちょっと言葉が悪いけど、そんな風に思ってたのかな。
殿下がセージさんを選んだ後も、それは変わらなかった。しばらくしてネリネさんが生まれて、祐漸君と許婚の関係になっても、お似合いだろうな〜、って思ってた。でも、ネリネさんには好きな男の子ができて、フリーになった祐漸君と時々会ってる内になんとなく・・・・・・かな?」さやか 「ふ〜ん、かわいい弟が長じて恋愛対象になった、と」
アイ 「そうそう」
さやか 「ゆっくり生まれる恋もある。うん、いいね〜。じゃ、次、エリスちゃん!」
エリス 「ちゃん付けはするんじゃないっ。そもそも、アタシはあいつに恋愛感情なんか持ってないわよ」
さやか 「なるほど、エリスちゃんはツンデレ、と・・・」
エリス 「あんた、人の話ちゃんと聞いてる?」
アイ 「だけど、昔からエリスさんと話してると、よく祐漸君の話題になるよね」
エリス 「あなたと他に共通の話題がないだけでしょ。それに、あいつを常に意識してるのは何もアタシだけじゃない。今の九王なら誰でも、あなたの弟のアルグレヌスや、フォーベシィでさえあいつを無視できない。それだけあいつの存在感は大きい。・・・・・・そうね、恋愛感情はない、けどあいつの、己を貫く信念と強さは、尊敬に値する。あいつの生き方を認めるかどうかは別として、ね」
イシス 「・・・でも昔から、あの方に一番近い場所にいたのはあなたでした、エリス様」
エリス 「ん?」
イシス 「誰よりも、あの方と並び立つに相応しいほど光り輝いていた。私は・・・無礼を承知で言います・・・私はそれが、ずっと疎ましかった」
エリス 「・・・・・・そう」
さやか 「付き合いが長いと因縁があるっぽいねぇ、ちなみにイシスさんの番だけど、イシスさんはいつから祐君のことが好きだったの?」
イシス 「物心ついた時からです――私が最も早くに知った異性は、兄様と祐様でした。その時から、この方達よりも素晴らしい男の方はいないと思っていました。事実、今でもあのお二人以上の男の方に出会ったことはありません。私にとって、敬意と愛情を持って接することのできる男性は、兄様と祐様をおいて他にはいません。兄は恋愛対象にはなりませんから、必然的に私が異性として意識するようになったのは、祐様だったのです。
それ以来ずっと、一時たりとも祐様への想いが薄らいだことはありません。そしてこれからもずっと、薄らぐことはないでしょう。私が私としてこの世に生ある限り、私は祐様を愛しています」亜沙 「・・・・・・うわぁ・・・(照)」
アイ 「変わらないねぇ、イシスさんはずっと」
さやか 「これはまた、エリスちゃんとは正反対にストレートな愛情表現だよね〜」
エリス 「比較するようなものじゃないわよ。それと、ちゃん付けは・・・」
さやか 「はいはい次〜、亜沙ちゃんいってみよー」
亜沙 「あのねさやかちゃん、何度も言うようだけど、ボクはあくまで稟ちゃん一筋なの。あの人のことは別に何とも思ってないんだから・・・」
さやか 「そういう言い逃れはここでは許しません。このらぶりーばーにんぐ♪の嗅覚からは逃れられないよ。仮にまだ恋愛感情というほどにまでなってなくても、今ここにいる人はみんな、少なからず祐君のことを意識してる。それは、亜沙ちゃんも例外じゃない!」
ビシッ!
亜沙 「む・・・・・・まー、確かにちょっと、気にはなるけど・・・・・・。それはあくまで、お母さんとあの人が何だかちょっと普通の知り合い、っていうのもとも違うというか、ただならぬ関係みたいな雰囲気があったから、それで気になる程度の話なんだから」
さやか 「なるほど・・・・・・。じゃあ例えばこんな感じかな? 祐君と亜沙ちゃんのお母さんが実は昔恋仲、或いは祐君の片思いとかで、けど亜沙ちゃんのお母さんは、亜沙ちゃんのお父さんと出会って結ばれて、時を経て再会した今は娘の亜沙ちゃんがいて、そこに在りし日のお母さんの面影を見た祐君が亜沙ちゃんを・・・・・・ん〜、結構ロマンチックかも♪」
亜沙 「まさかそんな・・・・・・あ、でも・・・・・・」
さやか 「ん? 何か心当たりでもあった?」
亜沙 「う、ううん、何にも! (祐漸さんって確か、リムちゃんを生んだ研究に関わってたって言ってたような・・・・・・だとしたら、昔本当に? まさかね・・・・・・)」
さやか 「親子二代で続く恋物語・・・あ、なんか応援したくなってきちゃうかも♪」
イシス 「・・・また暴走してますね、この人」
アイ 「やっぱり楽しい人♪」
亜沙 「そ、それより! 言いだしっぺがまだ自分の理由言ってないでしょ! さやかちゃんがあの人を好きになった理由はなんなのよ?」
さやか 「カッコイイから」
亜沙 「はい?」
アイ 「まぁ、確かに祐漸君はかっこいいよね」
イシス 「そ、そんなミーハーな理由なんですか・・・?」
さやか 「そうだよ。祐君はカッコイイ。私が目標にして、目指している姿に、一番近い。だから憧れる、だから好きになる。隣に立っていたい。目指す場所に、一緒に行きたい」
イシス 「・・・・・・」
亜沙 「・・・はぁ、楓やシアちゃんネリネちゃんも常時好き好きオーラをまとってるけど、イシスさんやさやかちゃんも負けず劣らずよね・・・・・・」
アイ 「うん。でも、自分の気持ちをまっすぐに表現してる点ではイシスさんと同じだけど、さやかさんはどっちかって言うと、エリスさんの方に近いかな。祐漸君自身にというより、祐漸君の“強さ”に惹かれている。イシスさんは、仮に祐漸君が今みたいに強くなかったとしても、好きだったでしょう?」
イシス 「もちろんです。もっとも、強くない祐様、というのは想像できませんが」
亜沙 「唯我独尊を地でいく人だもんね。“俺が世界で一番強いー”みたいな。そうでも思ってなきゃあんな風に自身満々な態度は取れないでしょ」
エリス 「実際強いわよ、あいつは。アタシが知る限り、あいつとまともに戦って勝てる奴は五人いるかどうかよ。それにあいつの強さは、ただ力だけじゃないし」
アイ 「くすっ、やっぱりエリスさんは祐漸君のこと、よく知ってるよね。そういう話になると、いつもよりちょっと口数が多くなるもの」
エリス 「・・・・・・」
さやか 「要するに、ここにいるみんな、祐君に対して好感度高し、ってことだね〜」
亜沙 「だからね、ボクはね・・・・・・」
さやか 「みんなライバル。だけど」
アイ 「誰を選ぶかは、結局のところ祐漸君次第だよね」
イシス 「私は、仮に選ばれることがなくても、この気持ちは変わりません」
さやか 「それはたぶん、みんな一緒だよ」
亜沙 「・・・お〜い、ボクの話聞いてる?」
さやか 「抜け駆け禁止、なーんて馴れ合いみたいなことは言わないよね? そもそも付き合いはそっちの三人の方がずーっと長いんだし、むしろこっちの方がハンデ背負ってるんだもんね」
イシス 「禁止したとしても、守るつもりなどないのでしょう、あなたは」
アイ 「恋は奪い合い。ちょっと燃えちゃうかな」
エリス 「勝手にやってなさい」
亜沙 「・・・・・・だめだこりゃ。恋する乙女は、みんな周りの雑音なんて聞こえないのね・・・・・・。微妙に冷静なボクって、本気の恋をしてないのかな? 稟ちゃんのことが好きなのは間違いないけど、あの人のこともちょっと気になってる? んーむ・・・・・・(・・・『まままあ♪ 亜沙ちゃんを巡って男と男の決闘が・・・』・・・)・・・・・・う、今なんか変な声が頭の中に・・・まさかねぇ・・・」
さやか 「一人でぶつぶつ言いながら悩んでる亜沙ちゃんも、立派な恋する乙女だよ〜」
亜沙 「はっ!!」
さやか 「それじゃあ、綺麗にまとまったところで、次のイベントいってみよー!」
イシス 「は? 次のイベントって・・・」
さやか 「女の子同士で一緒にお風呂に入ってすることって言ったら・・・・・・」
イシス 「言ったら?」
さやか 「触り合いっこしかないでしょ!」
イシス 「きゃあっ!?」
さやか 「む、イシスさん結構着痩せするタイプ? 思った以上に・・・・・・」
イシス 「ちょ、ちょっと・・・」
さやか 「アイさんは見たまんまおっきー!」
アイ 「わっ♪」
さやか 「エリスちゃんはちっちゃくてかわいー!!」
エリス 「寄るな珍獣」
ドカッ
さやか 「亜沙ちゃんも〜!」
亜沙 「何を、負けるかー!」
バシャバシャッ!
イシス 「ま、まったくこの人は・・・・・・こんな人のどこがいいんですか、祐様は・・・」
アイ 「ほんとに楽しい人だね〜」
エリス 「騒がしいだけよ。もう上がるわよ、アタシは」
さやか 「あー、待ってよ〜、エリスちゃ〜ん!」
エリス 「まとわりつくなっ! それからちゃん付けで呼ぶなーっ!」
その後、お風呂での騒ぎは食事時まで続き、アイを除く全員がすっかりのぼせていたという。
イシス 「アイ様、よくこんなに長く入っててのぼせませんね・・・」
アイ 「んー、今日は短い方だよ」
亜沙 「お風呂好きにも限度があるってば・・・・・・」
終
あとがきらしきもの
本編にちょこっと挟むには長く、1話まるまる使うには短いシーンなので、こうして番外編となったわけだ。アイのお風呂好きという設定を主軸にした、彼女達の告白パーティーである。本編ではあまりはっきりと語られない彼女達の気持ちを知ることができるかも?
さてここから先は、ちょっとした蛇足。
私が書くものの中に時々登場する流れとして、本来の主人公と結ばれなかったヒロインと別の男性キャラとのカップリング、というものが存在する。これは賛否両論あるものだと思われ、実際過去に話の中で描いたそうした流れに対して批判的な感想をもらったことも何度かある。ただ個人的に、物語の性質上こういった流れが生まれてくるのもありかな、と思って今回の真デモンでも亜沙に祐漸、キキョウに連也との繋がりを持たせながら話を進めている。
そもそも恋愛ゲームでは複数のヒロインと恋物語を繰り広げていながら、特定のルートに入ると他のヒロインとの関係はほとんどなかったような扱いになり、一人のヒロインと結ばれたエンディングで他のヒロインに対するフォローが入ったりすることはない。それはそれでそういった物語で、そこでハッピーエンドなのだからそれでいい、問題はない。けれど私の書いているものは恋愛ものではなく、もっと長い時間を描いた大河ドラマ的な物語、と思っている。そうなれば必然的にどこか、主人公と結ばれることのなかったヒロインに対するフォローを入れたい場面というのが生まれてくるわけだ。わかりやすい例として、今回登場してきたアイがいる。彼女は元々フォーベシィの婚約者だったわけだが、セージの登場により彼とは結ばれず、そのままフリーになっている。原作ゲームの本人ルートでは、稟と恋仲になって、そのまま稟と再会するまで一人身でいたわけだが、真デモンでは昔にアイと稟が会ったという設定はない。そうなるとその後20年、彼女が別の誰かと恋仲になる可能性は十分にあるだろう、という考えから祐漸との関係が生まれたわけである。
原作ヒロインはあくまで原作主人公と結ばれるべきである、と思ってこうした流れに納得のいかない人もいるであろうが、私の流儀ではこうした流れを物語内に挿入することははずせないので、そこは了承してもらいたい、としか言えない。
まぁ、さらに蛇足の蛇足を入れておくと、亜沙にもキキョウにもあっさり稟から乗り換えさせるつもりはない。この番外編で本人が言っているように、彼女達が現状好きなのはあくまで稟である。ただ、稟の周囲はハーレムのように見えて、実際にはシアと楓が一歩リードしているような状況なので、他の面々は遠慮して逆に一歩引いた位置にいるため、こんな流れが生まれるわけだ。先の展開を少しバラす形になるが、今後プリムラにも似たような流れの話を考えている。一応、自分の流儀を通しつつも、期待に沿えるような話にはなる、と思う。