Ogre Battle Original

 

 

Chapter 1−4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

往人とさやかは対峙したまま動かない。
動けないというよりも、むしろ動く必要がないから動かないようだった。
この相手のこの場にとどめておくだけで自分の役割は充分、と思っているのだ、二人とも。
それだけ、それぞれが先に行った者を信頼しているということか。

さやか 「ところで国崎さん。何の関係もないはずのあなたがどうして王女さまを助けようとするのかな?」

往人 「フッ、愚問だな。それは・・・俺のこの心に沸き立つ正義の心がそうさせるのだ!!」

さやか 「嘘だね」

きっぱりとさやかは断言する。
そして芝居がかった仕草で片手を頭上にかかげる。

さやか 「君の考えはこうでしょ・・・」

ビシッ、とさやかは往人を指差す。

さやか 「王女さまを助けてお城の人に渡せば報酬がたんまり貰えてがっぽがっぽのうっはうはー、でしょう!!」

往人 「っっっ!!!」

ガーン!!!という感じに全身で衝撃を受け、往人はその場に膝を付く。

往人 「・・・くっ・・・・・・おまえ・・・只者じゃないな」

さやか 「君もね」

往人 「まあいい」

あっさりと立ち直って、往人は立ち上がる。
そしてさやかではなく、横の方へ視線を向けた。

往人 「おいそこのおまえ、とっとと出て来いよ」

さやか 「立ち聞きは感心しないね」

双方の視線を受けつつ、一人の男が現れた。
黒のロングコートをまとい、黒いハット帽を目深に被った男。
帽子の下から覗く顔は微笑を浮かべているが、その目には危険な色が満ちていた。

?? 「くくく、実におもしろい方達ですね。こちらへ来て正解でした」

往人 「なるほどな、あんたか。噂には聞いてるぜ。国と国の間の裏側に生きる運び屋で、殺しが趣味っていう最低最悪の野郎、アルド・レイ・カークス」

さやか 「通称、ブラッディ・アルド、だね」

アルド 「私の名を存じ上げていただき光栄です。あなた方の名も聞いたことがありますよ、国崎往人・・・白河さやか。王女誘拐などというつまらない仕事を引き受けて良かった」

往人 「だったら何でここにいる? 向こうを追いかけた方が仕事達成に繋がるんじゃないか?」

アルド 「私はとっては、仕事の結果よりもそこへいたる過程にこそ意味があるのですよ。過程をいかに楽しめるか・・・・・・王女を連れて行った方や、それを追っていった女性にも興味はありますが・・・あなた方の方が遥かに楽しめそうだ」

ブラッディ・アルドの殺気が路地裏に渦巻き、緊張感はさらに高まる。
しかし、それをあっさり破ったのはさやかだった。

さやか 「残念だけど、私はどっちともやりあう気はないから。どうやら王女さまを連れて行くのも失敗しそうだし、今日のところは帰るね」

手をかざすと、さやかの周囲に小さなスイカが多数現れ、一つ一つが爆発しては煙を撒き散らす。
その隙に、さやかは屋根の上に行っていた。

さやか 「それじゃあね、ちゃお〜♪」

下にいる二人に背を向けて、さやかは去っていった。
残った二人は互いに視線を交わすが、何もせずにすれ違い、往人は美凪とみちるが向かった方角を目指す。

アルド 「国崎君」

往人 「何だ」

アルド 「いずれきっと、私と戦ってくださいね」

往人 「一人で言ってろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

エリスと浩平の戦いは、美凪の時とは打って変わって激しいものだった。
普通のサイズよりも少し大きいくらいだが、エリスが持つとかなり大きく感じる剣をもって攻め立てるエリス、そしてそれを防ぐ浩平。

エリス 「ハァアアア!!!」

ドゴォッ

レンガ造りの路面が砕ける。
スピードは同じく小柄なみちると同等かそれよる少し上くらいだが、パワーが違う。
だが、それを数度正面から受けている浩平のパワーも充分なものがあった。
一進一退の攻防は続く。

エリス 「何のつもりか知らないけど、フローラを傷つけるものをアタシは許さない!」

浩平 「ぞっこんだな、お姫さんに。けど、それゆえにちょっと盲目的過ぎる」

体格差を利用して浩平がエリスを弾き飛ばす。
壁に足をついたエリスは、全身をバネのようにして壁を蹴って跳ぶ。
路面に大きな亀裂を走らせるほどの強烈な斬撃を、浩平は横っ飛びして避けた。

エリス 「どういう意味よ?」

浩平 「お姫さんを護ることに固執して、周りが見えてないってことさ」

エリス 「アタシが周りを見てない? 馬鹿なこと言わないでよね」

浩平 「ちゃんと見れてたら、そもそも今回みたいなことにはならなかったぜ」

エリス 「フローラを攫おうとした張本人が何をぬけぬけと!」

浩平 「そういう意味じゃないんだが・・・つーかもう時間切れだし、あんたと遊んでても仕方ないか」

みちるに押されている部下達に、王女を置いて撤退するよう浩平が指示を出す。
部下達は即座に王女をその場に下ろし、倒れている仲間を連れてこの場を離れ始める。
浩平もそれを追った。

エリス 「逃げる気!?」

浩平 「あんたとまともにやりあってなんかいられるかよ」

本気で戦えば実力伯仲。
だが決着をつけるためには互いの命をかけなければならない。

浩平 「俺にはまだやることがある。あんたにもな」

エリス 「何を・・・」

浩平 「エリス・ヴェイン。本当の敵はどこにいるのか、しっかり見極めないとこの先、お姫さんは護れないぜ」

エリス 「待ちなさいっ、折原浩平!」

浩平 「では、アデュー!」

ビッと指を二本立ててみせて、浩平は走り去る。
その引き際の速さと言ったら、エリスでさえ到底追いつけないほどだった。

エリス 「チッ」

エリスは舌打ちをするが、今は追いかけるよりもフローラの無事を確認する方が先決だった。
壁際に下ろされたフローラのもとへとエリスは駆けていく。

エリス 「フローラ、大丈夫?」

縄は軽く打ってあるだけで、すぐに解けた。
声が出せないようにかけられていた魔法も、すぐに解除する。

フローラ 「うん・・・大丈夫」

エリス 「そう、良かった・・・。折原浩平・・・こんな真似をするなんて見損なったわ」

フローラ 「・・・でも・・・・・・」

激昂するエリスを前に、フローラは言いにくそうに口を開く。

フローラ 「悪い人には見えなかった・・・・・・とても澄んだ目をしていて・・・乱暴にされたわけでもないし」

エリス 「・・・アタシだってそう思ってたけど・・・」

この国の貴族主義に反感を抱くグループのリーダー、折原浩平。
立場上、エリスとは敵同士に当たるが、何度か今回のような形で戦ってみて、憎めない相手だと思っていた。
だからこそ余計に、今度のことが許せなかった。

フローラ 「・・・・・・あ、そうだ。私を助けてくれた方達・・・」

エリス 「そういえば・・・!」

ばっとエリスは周囲を見渡すが、二人の少女の姿はどこにもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

往人 「ちっ・・・王女を助けて一攫千金と思ったんだが・・・」

事件の現場を離れながら、往人はぶつぶつと言っている。
その隣を、いい汗をかいたとばかりに上機嫌なみちるが行く。

みちる 「何言ってんの。いいことしたんだからいいじゃないか、国崎往人」

往人 「一銭にもならんことは空しいだけだ」

あのまま現場に残っていたら、報酬どころか口封じに拘束されそうだったため、三人は即座に離れたのだ。
幸い誰も誘拐の事実には気付いておらず、パレードはフィナーレを迎えていた。

美凪 「・・・国崎さん」

往人 「どうもこの事件、裏の裏がありそうだ」

はしゃぎながらみちるがパレードの続きを見に行くと、往人と美凪は真面目な顔で話し出す。
先ほどのことに関して、もっとも腑に落ちないのはブラッディ・アルドの存在だった。
あの男は王女誘拐が目的と言ったが、実際に誘拐を行ったさやかとは友好関係には見えない。
逃げるための狂言とも考えられなくないが、それは違うと往人の勘が言っていた。
ブラッディ・アルドは、単独犯だ。

往人 「誘拐計画は二重に存在した。もちろん、別々の奴による、だ」

美凪 「・・・実際に誘拐を行った折原浩平さんのグループと、アルドさんを雇った人間・・・」

往人 「そういうことだ」

考えてみたところで、この国の情勢に疎い往人達に答えが出せるはずもない。
そして、国側の人間はアルドが動いていた事実を知らない。
おそらく真相を知っているのは、浩平達の側だけと思われる。

往人 「厄介事に首を突っ込んじまったな。トンズラするか? 下手すると遠野本家も関わって・・・・・・」

美凪 「・・・・・・」

ふるふると、美凪は首を左右に振る。
彼女自身、このまま逃げるのは好ましくなく、そして往人がそれを望まないことを知っている。

美凪 「・・・いつか、来る時があることですから」

往人 「・・・・・・ま、あえてこっちから関わることじゃないだろう。この街に残ってれば、必ず向こうから厄介事の続きが舞い込んでくる」

 

 

 

 

 

 

 

 

パレードは、表向きには何の問題もなく終了した。
小さなアクシデントはあったが、興奮した酔っ払いのしたこととして処理されている。
当然のごとく、王女誘拐未遂事件のことは、上層部の間で揉み消された。

エリス 「・・・・・・」

祐一 「まだ怒ってるのかよ。何もなかったんだからいいじゃないか」

エリス 「よくないわよ。大体、影武者なんて立てたのが間違いだったわ」

祐一 「けどまぁ、どっちにしてもあんまり変わらなかったと思うぞ、何しろ手口が手口だけにな」

フローラと一緒にいた小竜のシーズからエリスが聞き出したところ、突然王女がスイカに変わった、という報告を受けた。

エリス 「スイカマジック・・・・・・あの女またくだらない魔法を編み出して・・・!」

そもそも対象を入れ替える魔法なら、使うのはスイカでなくてまったく構わないはずだ。
あえてスイカを使用しているのは自己主張なのだろうが、下手人を知る者からすれば相手を小馬鹿にしているとしか思えないのである。

エリス 「絶対に人をおちょくってるのよ、さやかの奴は!」

祐一 「まぁ、そういう奴ではあるな」

エリスの激昂は収まらない。
放っておくとその辺りの壁を破壊しだしそうだ。
実際に拳が震えている。

祐一 「・・・・・・しかし、少し妙だな」

エリス 「何が!」

祐一 「向こうの手口がかなり巧妙だった。犯行現場も、裏の道が入り組んでいて逃走かつ追撃が困難な場所・・・しかも影武者には一切見向きもしなかった」

エリス 「・・・何が言いたいの?」

祐一 「情報が洩れていた、と考えるべきじゃないか?」

エリス 「・・・・・・」

誰も口に出さないが、既にそのことは明白だと誰もが思っていた。
パレードに関する計画はぎりぎりまで秘されていたのだ。
だとすれば・・・。

祐一 「とりあえず、捕らえた男を尋問すれば何かわかるかもな」

エリス 「もうやってるわ」

手がかりとなるのは、陽動を行った火炎瓶を投げ込んだ男。
今は地下牢で尋問が行われている。

祐一 「あとは、直接相手に探りを入れてみるのもいい」

エリス 「どうするつもり?」

祐一 「アテはある。俺に任せておけ」

 

 

 

 

 

 

杉並 「ほら、朝倉妹。これでよかろう」

音夢 「ありがとう、杉並君」

手渡されたものを、音夢はテーブルに広げる。
周りに集まっているのは、六番隊と七番隊の面々だ。

さくら 「すごいね。公共の地図には載ってないような道まで・・・」

杉並が持ってきたのは、犯行現場周辺の詳細な地図だった。
その辺りはパレードのルートでは一番下町に近く、また様々な道が入り組んでいる。
地下水路も作られている場所のため、隠れる場所、逃げる道には事欠かない。

さくら 「これじゃあ、こんな場所をルートに組み込んだ側のミスだね」

美春 「警備が追いつかなかったんですね。万全の体勢だと思ったんですけど・・・」

音夢 「起きてしまったことを悔いても仕方ないですね。今できるのは、相手がどこへ逃げたのかを考えること・・・」

とは言うものの、道が多すぎてその中から考えうる逃走ルートは無限に近そうに思えた。

美春 「美春には、もう何が何やらさっぱり・・・・・・」

音夢 「というわけで、不本意ながら杉並君、お願いしますね」

杉並 「ほほう、その心は?」

音夢 「こんな地図を用意してるのは、常々問題を起こした後の逃走ルートを確保するためでしょう」

杉並 「何のことかさっぱりわからんな」

音夢 「場合が場合ですから、そのことについては今回は不問にします。犯人側の心理から、逃走ルートの大まかな予想をしてください」

仕方がないな、と言いながら杉並が地図を向き合う。
筆を取り出し、何箇所かにマークをつけていく。

杉並 「まず、ここが犯行の起こった場所。それからエリス嬢が折原浩平と交戦したのがここで、こっちへ向かって彼らは逃げたという。つまり!」

音夢 「つまり・・・!」

杉並 「・・・・・・・わからん」

音夢 「・・・・・・」

笑顔のまま、音夢の眉が釣りあがる。
相手が杉並ゆえにあくまで裏モードは保っているが、怒り心頭のようだ。

杉並 「まあ、待て。ルートに関しては10通り以上は確実に考えられ、予測は不可能だ。しかしどのルートを通ろうと、最終的に行き着く場所は二箇所しか浮かんでこない」

さくら 「だね。僕にもわかったよ」

カザフの街は、中心に城が存在している。
北側はには街はなく、東西に伸びた城下町の南は海だ。

杉並 「海へ出るのが確実だが、カザフの港は厳戒態勢で使用は不可能だ。となれば、東地区を抜けてカザフ外に出たか、或いは・・・・・・」

音夢 「・・・東地区北部・・・・・・スラム街」

深刻な表情で呟く音夢の後ろで、純一は寝息を立てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祐一 「探したぜ」

安宿に泊まっていた往人達のもと祐一がふらりとやってきたのは、その日の夜であった。

往人 「珍客だな」

テーブルを挟んで二人は向き合い、美凪がそれぞれにお茶を出す。
みちるは既に寝ている。

祐一 「姫様を助けたのは、おまえらだな」

往人 「さて何のことだ?」

祐一 「惚けるな。いや、別に答えなくていい。ただ、一つ頼まれごとを引き受けて欲しい」

往人 「これ次第だな」

ふんぞり返っている往人は、親指と人差し指で円を作ってみせる。
すると即座に反応した祐一がテーブルの上に札束を置く。

祐一 「経費込みだが、前金だ」

往人 「話を聞こうか」

身を乗り出して往人は祐一に先を促す。

祐一 「誘拐を実行しようとした、折原浩平のグループを探し当て、潜ってもらいたい」

往人 「スパイをやれってことか。俺らは連中とやりあったんだぞ」

祐一 「だからこそだ。別におまえらは国のためにやったわけじゃなく、個人的な感情で動いたんだ。そこで連中に興味を持ったとでも言って入り込めばいい。こっちとの連絡の取り方は、追って指示する」

往人 「だが、連中の居場所なんか知らんぞ」

祐一 「スラム街へ行け。そうすれば向こうが見つけてくれるさ」

往人 「・・・・・・」

返事を渋る往人の前に、祐一はもう一束置く。

祐一 「上手く潜って落ち着いたら、その倍、いや三倍出そう」

往人 「引き受けた」

即答である。

祐一 「契約成立だな。頼むぜ、マイフレンド」

往人 「任せとけ、マイブラザー」

札束の上で、二人は拳を打ち合わせた。

美凪 「・・・良い友情」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく