デモンバスターズZERO
第6話 籠の鳥
例によって今日も京介は宿泊所の近くにいた。
何とかして夢前春香と戦う方法はないものかと頭を悩ませているが、元々剣の道以外には疎い男、考えるのは苦手であった。
「・・・何の用だ、ジョーカー?」
視線は動かさず、気配を感じた相手に対して問いかける。
あまり顔を合わせたいと思う相手でもない。
先日釘を刺しに来たファントム同様、この町で潜伏任務を行っている一人であり、また問題を起こすなと忠告でもされそうな気になるからだ。
「随分と悩んでいるようだな、あなたほどの男が」
「貴様に関係なかろう。何の用だと聞いている」
サッとジョーカーが投げて寄越したものを京介が受け取る。
それは、何かの資料を綴じてあるファイルであった。
「何だ、これは?」
「あなたにとって役立つかもしれないものだ」
「?」
訝しがりながら、ぱらぱらとページをめくる。
それが、一つのページで止まった。
多少の驚きとともに京介はその中身を見ている。
「これは・・・」
「ちなみに今日、連中は対象と接触するそうだ。それをどう利用するかは、あなたの自由」
そう言い残し、ジョーカーの気配は消える。
京介はその後も、ファイルの内容と、そこに載っている一枚の写真をじっと見ていた。
「・・・御影仁菜、か。確かに、使えるかもしれないな」
仁菜は病院が好きではなかった。
けれど同時に、そこが自分にとって唯一存在を許された場所であることも知っていた。
父親は、物心つく前に家を出て行った。
母親は、父が出て行ったのは仁菜の所為だと、いつかもらしていた。
先生は、両親とは仁菜が生まれた時からの知り合いだったらしく、その頃からずっと仁菜の主治医だった。
病院での検査は、子供の頃からずっと続いている。
それは決して仁菜のためのものではないことを、いつからか仁菜は察していた。
彼らにとって興味があるのは、仁菜の力なのだ。
だから、病院で受ける検査は嫌いだった。
何のためかも知らされないまま、色々な形で体を調べられる。
それを苦痛と感じなくなったのは、もう随分と前からだった。
検査の間、仁菜は心を閉ざす。
そうすれば、苦痛を苦痛と感じることもない。
「仁菜、最近は何も変わりないかい?」
問いかけてくるのは先生だ。
彼のことは嫌いではない。
かといって好きというわけでもない。
検査の全てを取り仕切っているのは彼なのだから。
しかし嫌いにはなれない。
幼い頃からずっと、或いは母親以上に接してきた相手を、嫌いになることはできなかった。
だから仁菜は何も考えず、ただ検査が終わるのを待つ。
「じゃあ、いつも通りにやろうか」
促されて検査に向かう。
いつもなら、このまま一時間もすれば全てが終わる。
だがこの日は、いつもとは違っていた。
「これは・・・この数値は、まさか!?」
先生達が慌しくしているのを、仁菜はぼんやりと聞いていた。
「期待値通り・・・いやそれ以上だ!」
残りの検査は中止だと言われて、仁菜は一人部屋に取り残される。
隣の部屋からは、先生と他の研究員達が何かの作業をしている音が聞こえた。
「あの小さなくじらのかけらが・・・・・・これがクリスタルと呼ばれるものか」
それから随分時間が経って、先生が戻ってくる。
「仁菜、君はすごい。ようやく私達の研究の成果を出すことができた」
また別の部屋へと連れて行かれる。
今まで入ったことのない部屋だった。
部屋の中央に置かれているベッドの上に寝かされる。
「本当は本意ではないが、確実に事を運ぶために、君の記憶は消さなくてはならない。許してくれ」
本当にすまなそうな声で先生が言う。
その言葉の意味を、仁菜は頭の中で考えてみる。
だが、考えがまとまる前に靄がかかったようになり、仁菜の意識は朦朧とした。
「次に起きた時には、私のことも忘れてしまっているだろうね。だがそうなっても、私は傍にいるよ。おやすみ、仁菜」
「仁菜先輩、遅いな・・・」
もう陽はほとんど沈みかけている。
病院での用事を済ませてから荷物を取りに来ると言っていたが、それが長引いているのだろうか。
しかし、連絡も何もないと心配になってくる。
「転んで事故った・・・とかはありえそうだけど、自由に飛べるようになった以上それはないか」
或いは飛びすぎて航空機と衝突したとか。
思わず空を見上げるが、まさかと思う。
まだそんなに遅い時間というわけではないが、気になった。
「むー・・・・・・・・・むぉっ!?」
少し風が吹いたかと思うと、何かが睦の顔面を覆った。
どこから飛んできたのか、それは紙の束だった。
「な、なんだ?」
紙束を顔から剥がし、何気なく紙面に目をやって驚いた。
そこに載っていた写真に写っていたのは、紛れも無くたった今考えていた仁菜であったからだ。
気になって書かれてある内容に目を通してみる。
読み進むほどに、睦の表情はどんどん険しくなる。
そこには、とんでもない内容のことが書かれていたのだ。
「なんだよ・・・これ?」
御影仁菜。
彼女は、病院に隠された実験施設で、人工的に“適応者”となるべく生み出された存在であると、そこには書かれていた。
正しくは、生後まもなく、くじらのかけらを埋め込まれたのだと言う。
“適応者”というのが何のことなのか、くじらのかけらのくじらとは、空に浮かぶあのくじらのことなのか、疑問点は多々あったが、それに関する細かいことは書かれていなかった。
睦が手にしている紙束には、不完全ながら仁菜に関する研究内容が記されている。
それはとても事務的な記録で、とても仁菜を人間扱いしているようには見えなかった。
「くそっ!」
考えるより先に走り出す。
書かれてある内容の半分も理解できなかったし、何故こんなものがこんな場所にあるのかもわからない。
今から行って自分に何ができるのかもさっぱりだったが、とにかく睦は走った。
目指す場所は、当然病院。
「にぃさま?」
睦が走り去って少し経ってから、春香は兄を探して宿泊所の外にやってきた。
だが当然、捜し求めている姿を見止めることはできない。
「どこに行っちゃったんだろう?」
仁菜が来るからそれを待っていると言って玄関前に出ていたはずが、何かあったのかと考えて春香は首をかしげる。
悩んでいた春香の顔が不意に強張る。
視線に先には、柳京介がいた。
「よう」
「・・・何の御用ですか?」
硬い声で春香が問う。
京介の方は、何をわかりきったことを、といった感じの薄笑いを浮かべている。
「俺がおまえに用があると言ったら、一つだろう」
「春香は嫌だって言ったはずです。帰ってください」
「そうか。なら、おまえの大事なものがどうなってもいいのか?」
「っ! にぃさまに何をしたのっ!?」
「俺は何もしてないし、するつもりもない。それに、まだ何も起こってもいない」
「それじゃあ・・・」
「だが、これから何かが起こる可能性はあるな。あの小僧が自ら火中の栗を拾いに行けば」
「どういうことですか?」
「御影仁菜は今病院内の施設に拘束されている。俺はその事実を小僧が知るように仕向けただけだ」
「じゃあ、にぃさまは・・・」
そこまで聞けば春香にも兄がどんな行動を取るかはわかる。
間違いなく、睦は仁菜を助けるために病院へ向かうだろう。
「急いだ方がいいぞ。連中が乱入してきた邪魔者をどう扱うかは想像に難くないからな」
「!!」
春香は一目散に病院目指して走り出す。
「さぁ、舞台は用意した。刀を抜け、夢前春香。そして、俺と戦え」
すれ違い様、京介がそう言ったのが聞こえたが、春香は構わず走る。
何があろうと、睦は守らなければならない。
それが、春香にとって唯一絶対の事であるから。
走って走って、しばらくして、睦は非常に重要かつ深刻な事態に遭遇した。
「病院ってどこだこんちくしょーっ!!」
一応町の地図を見た事はある。
その時に主要施設の場所は一通り確認したはずであるし、その中に確かに病院があったのも覚えている。
だがいざその時の記憶を頼りに向かおうとしても、まったく位置が特定できなかった。
しかもよく考えたら病院そのものもかなりの広さがあるため、仮に辿り着いても仁菜がどこにいるのかを探し出せるかどうか。
例の資料を見る限り、病院といってもさらにその中の隠された施設での事であるらしいから、正面から行っても見つけられる可能性は低い。
そして何よりやはり当面の問題は、病院にすら辿り着けないということだった。
「こんな時まで出るなよ僕の方向音痴・・・!」
焦るな落ち着け、と自分に言い聞かせる。
資料に書かれていたのは仁菜が何かの実験に利用されているという事実だけで、今すぐ危険があるということではないはずだ。
しかし睦は、嫌な予感がして堪らなかった。
こういう予感がする時は、あまり良いことが起こった試しはない。
とにかく、一分一秒でも早く仁菜の姿を見て安心したかった。
「何かお困りかな?」
「え?」
突然声をかけられて、睦は辺りを見渡してその出所を探す。
だが、どこを見ても人影は見当たらない。
「こっちこっち」
声の方向を辿って、睦は頭上を見る。
すると、電柱の上に腰掛けた人影を見つけることができた。
「あんたは・・・さやか先輩?」
暗くて分かりづらかったが、間違いなくそれは学園の白河さやかであった。
「こんにちは・・・じゃなくて・・・こんばんは、かな」
「何で、こんなところに?」
「それは秘密。でも代わりにいい物をあげよう」
電柱の上から、さやかが何かを放って寄越す。
両手で受け取るとそれは、懐中時計のようなものだったが、文字盤には何も書かれておらず、縦横の線が走っている。
なんとなく、いつかどこかの漫画で見たことがあるようなデザインだった。
「これは・・・?」
「名付けてっ、にーにゃんレーダー!!」
「・・・・・・・・・は?」
「ま、細かいことは気にしないで、スイッチオン♪」
訝しがりながら、睦は言われたとおりにスイッチらしきものを押す。
するとグリッド上に光点が一つ点滅する。
ますます漫画のアレのよう・・・というかまんまだった。
「にーにゃんならそれで探せるよ。というか、急いだ方がいいかもね」
「なっ!? どういう・・・・・・!」
問い返そうと頭上を見ると、そこにはもう誰もいなかった。
はじめてあった時から思っていたことだが、得体の知れない人物であった。
だが今は、それよりも重大な問題がある。
「ええい、ここは信じるしかないか!」
藁にもすがる思いで、睦はその“にーにゃんレーダー”とやらを頼りに走り出した。
(・・・忘れる・・・?)
朦朧とする意識の中で、仁菜は考えていた。
先生は、自分の記憶を消すと言った。
それは、過去の思い出を全て失くすということだろうか。
(思い出・・・そんなもの・・・・・・)
あるのは辛い思い出ばかりだった。
父のことは、顔すら覚えていない。
母のことは、泣いている顔と、怒っている顔しか知らない。
物心ついた時から他人が仁菜に向ける視線は、皆奇異な存在を見るものだった。
だから仁菜は、できるだけ明るく振舞った。
良い子を演じていれば、母も泣いたり怒ったりすることはない。
害のない存在だと思わせておけば、人から怖がられることもなかった。
そうやって、自分の周りに殻を一枚張っておけば、滞りなく生活してくることができた。
そんな風にしてきた仁菜にとって、心から気を許せる相手はいなかった。
家族も、友達も、皆上辺だけのもの。
ならば、失ったところで、痛む心などない。
所詮仁菜は、籠の鳥であった。
もとより自由などなく、ただ愛らしく鳴いて、皆に満足してもらうだけの存在。
自己などない。
最初からないものなど・・・。
(失くしても・・・)
本当に、そうだろうか。
(思い出・・・)
本当に、辛い思い出ばかりだったか。
良く思い出してみる。
この数日間の自分は、作り物ではない、本物の笑顔を浮かべていなかっただろうか。
(・・・・・・睦さん)
あの少年と出会ってから、今日まで。
共に過ごした時間は、仁菜のこれまでの一生の中で最高に輝いていなかったか。
そんな素敵な思い出を、失くしてしまっても本当に良いのか。
(睦さん)
そう、この想いは仁菜だけのもの。
他人から与えられたものではない、仁菜自身が求めたものだった。
仁菜には、失くしたくない自分がいた。
(睦さん!)
バンッ!!
勢い良くドアが開く音で、朦朧としていた意識がしっかりと覚醒する。
ベッドの上で首だけをそちらへ向けると、今一番会いたかった人がそこにいた。
「睦さん!」
声をまず聞けて、姿を確認できて、睦は安心した。
それからすぐに状況を把握しようとする。
謎の“にーにゃんレーダー”を頼りに病院の裏手から侵入することに成功した睦は、何とか目的地に辿り着くことができた。
そこにはベッドの上に寝かされた仁菜と、彼女に繋がった怪しげな機械と、それを操作する白衣の男がいる。
「な、何だ君は! 誰か・・・」
「フッ!」
ドッ!
人を呼ばれそうになったので、素早く間合いを詰めて当て身を喰らわせる。
当て落として倒れた男を捨て置いて、睦は仁菜のところへ駆け寄る。
「仁菜先輩、大丈夫?」
「はいっ、仁菜、平気です」
「よかった・・・。ところで、何がどうなってるの?」
「それがその・・・仁菜にもよくわからないです・・・」
「そっか。でも少なくとも・・・」
これ以上この場にいるべきでないのだけは確かだった。
「ぅ・・・うぅ・・・」
白衣の男がうめき声を上げながら起き上がる。
完全に意識を失わせることはできなかったようだ。
男の方を警戒しつつ、睦は仁菜を背後に庇う。
「くっ・・・君は、どういうつもりだ? 仁菜を返したまえ」
「断る。あんたらが何を目的にしてるのかは知らないが、そのためにこれ以上仁菜先輩を利用させたりはしない」
「仁菜の力は大偉業に繋がる鍵なのだ。20年近くかけて、ようやくその第一歩を踏み出せるというのに、邪魔をされてたまるものか!」
「知ったことかよ!」
相手の出方を警戒しつつ、睦は仁菜を押して出口の方へ移動する。
「逃がすものか!」
「仁菜先輩、走って!」
男が机の上のボタンを押すと、館内に警報が鳴り響いた。
その瞬間、睦は仁菜の手を取って部屋から走り出していた。
「逃がすな! 追え、追うんだ! 仁菜を連れ戻せ! ただし、傷つけるなよっ!!」
後方から怒声と複数の人間の足音を聞きながら、睦は侵入する時に使ったルートを通って外を目指す。
建物の外に出るまでは上手くいった。
時々警備員らしき人間とすれ違ったが、全て睦は倒した。
だが外に出ると、病院の裏門のところに黒服を着た男達が5人待ち構えていた。
一見しただけでただの警備員とは違う、訓練された者達だとわかる。
それが5人相手では、しかも仁菜を守りながらとなると厳しい。
「ちっ!」
「睦さん、捕まってください。飛びます!」
「え?」
問い返す間もなく、浮遊感を感じる。
仁菜が光の翼を広げ、睦を連れて飛び立ったのだ。
黒服達の頭上を乗り越え、睦達は病院の敷地内から脱出する。
「仁菜先輩、重いんじゃ?」
「大丈夫です。仁菜の飛ぶ力を少し睦さんの体に分けて飛んでるので、あまり速くは飛べないですけど、重くはないです」
「す、すごいですね・・・」
ただ飛ぶだけでなくそんなことまでできるようになっているとは、と仁菜の成長振りに睦は舌を巻く。
下に目を向けると、黒服達は車を用意していたが、飛んでいる彼らの方が圧倒的に有利であった。
しかし、この速度では追いつかれないとも言い切れない。
「でもこの速度じゃ、銃を持ち出されたらちょっときついんじゃ・・・?」
「それは・・・大丈夫だと思います。先生は、仁菜を傷つけないように指示してると思うですから・・・」
「先生って・・・さっきのあいつですか?」
「はいです・・・」
ほんの少し、仁菜が切なそうな表情を見せる。
睦にしてみれば先ほどの男は、仁菜に何かよくないことをしようとしていた敵に他ならないが、仁菜には何かもっと別の思い入れのある相手なのかもしれない。
そうしたことを考えるのは、まずは逃げ切ってからと思い、睦はそのことを頭から振り払う。
相手の飛び道具がないのなら、このまま飛んでいけば逃げ切れそうと思ったところで、二人の頭上に巨大な影が出現する。
「なっ!」
「えっ?」
まず突風が襲い、続いて鋭いものが一閃する。
風を受けて僅かにバランスを崩しつつも、仁菜は何とかそれを回避した。
二人を襲ったのは、ガルーダと呼ばれる大型の鳥形モンスターであった。
「何でこんな時にモンスターまで!」
例のモンスター騒ぎは、この数日間もずっと続いていた。
いずれも小物ばかりだったため、やはりニュースにはなっていなかったのだが、それは確実に日常の中の異常として存在していた。
とはいえ、これほど大型のモンスターが出たのははじめてである。
クワァァァァッ!!
鋭い鉤爪が再び二人を捕えようと襲い掛かる。
今度も何とか回避できたが、睦を抱えたままの仁菜ではいつか捕まりそうに思えた。
「下は・・・」
少し距離はあるが、依然車は追いかけて来ている。
今降りればすぐに捕まるのは必定である。
それならば・・・。
「仁菜先輩、僕を降ろして! 一人なら振り切れるでしょ!」
「ですけど、それじゃあ睦さんが!」
「あいつらの狙いが仁菜先輩なら、僕へのマークは薄いはずだし、なんとか・・・」
「だめです! もし睦さんが捕まっちゃって、人質にされちゃったりしたら、仁菜は絶対に見捨てることなんてできませんから・・・」
「けど、このままじゃ・・・!」
「っ!」
三度目の攻撃。
またぎりぎりでかわす。
これ以上は限界に思えた。
何とか降りて逃げられないかと下に目を向けると、睦は意外なものを見た。
黒服達の車が進む先で、突然電柱が数本倒れたのである。
当然車は急停止し、さらに後方の電柱も倒れたため、車は動けなくなっていた。
「何が・・・・・・いや、それより!」
状況は不明だが、下の脅威はとりあえず去った。
ならば・・・。
「仁菜先輩、一度降りよう。モンスターの方はそれからどうするか考える!」
「わかりました。なら、あそこに!」
見れば、くじらの見える丘公園がすぐそこにあった。
「・・・・・・」
春香は家の塀に身を隠しつつ、空の様子を窺う。
光はくじらの見える丘公園に降りて行き、モンスターもそれを追っていった。
遠めではっきりとはわからなかったが、あの光がどうやら睦と仁菜であるらしい。
それを怪しげな車が追っていたのがわかったので、とりあえず上空から死角になる場所を移動して、車の前後の電柱を切り倒すことで足止めをした。
公園へ向かった二人も気がかりだが、まずは目の前の脅威を取り除くことの方が先決だった。
「小娘、貴様・・・あの小僧の仲間か?」
「・・・・・・そうです」
今の質問で、彼らが睦達を追っているのはほぼ確実となった。
ならばやはり、このまま捨て置く事はできない。
相手は5人。
いずれもかなりの使い手であることが動きでわかる。
その内2人が春香の前に立ち、残り3人は公園の方へ向かおうとする。
タッ!
「なっ!?」
だが、それを許す春香ではない。
一瞬で反対側に回り込み、3人の行く手を遮る。
「どういう事情があるのか、よくは知りませんけど・・・」
電柱を切り倒すために抜いた刀の切っ先を黒服達の方に向ける。
「にぃさまに手出しはさせない。ここから先へは、一歩も通しません!」
つづく
あとがき
まったりした日々から事件発生。睦と仁菜、そして春香の運命や如何に・・・?