デモンバスターズFINAL

 

 

エピローグ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓です。

祐一君、エリスちゃん、さやかちゃん、お元気ですか?

結局、あの日みんなが出て行った時に感じたとおり、三人は帰ってこなかったね。
だけど、あなた達のことだから、どこへ行っても元気にしているものを信じてる。
今この時も、どこかで・・・。

楓 「祐一君とエリスちゃんは、相変わらずじゃれあってるのかな? それとも、祐一君を巡って女の子達の修羅場?」

遠くにいてこうやって想像するだけでも楽しい。
そんな日々を送っていることを願います。

 

 

 

あの戦いから半年。

地上に残ったみんな変わらず元気に、だけどちょっとだけ変化しながら過ごしています。

 

水瀬屋敷は相変わらず。
何事もなく、平穏な日常の中にある。

はじめてここへ来た時は少しだけわだかまりのあった秋子さんとも、今では仲良くしている。

名雪ちゃんは、今日もなんでも屋の受付でお昼寝中。

折原君とみさきちゃんも、時々仕事をしながら、おもしろい冗談を言っては笑ってる。

琥珀ちゃん、翡翠ちゃん、ほたるちゃんも変わらず。

石橋さん、香里ちゃん、北川君・・・道場の方も賑やかで、私も時々顔を出したりしている。

 

その一方で、屋敷から出て行った人達もいる。

往人君と美凪ちゃんは、元々風来坊なのさ、とか言って旅に出た。
水瀬屋敷に留まってたのも、路銀がなかったからみたいだから。
でも、ここは心地よいから、いつかまた戻ってくるとも言っていた。

斉藤元は、どこかに姿を消した。
彼は、もっともっと強くなって、いつか祐一君や豹雨の前に戻ってくる・・・そんな気がする。

 

楓 「あとは・・・・・・あ、そうそう」

 

おもしろいのは、セリシアちゃんと栞ちゃんかな。
それを話すには、郁未ちゃんと舞ちゃん・・・ノワール・ムーンの近況も話さないとならない。

 

 

 

 

 

 

郁未 「・・・・・・はぁ」

舞 「もぐもぐ」

 

さくらちゃんと芽衣子ちゃんが、総本山って呼んでるところへ帰って、やっと静かになったって郁未ちゃんは喜んでたみたいなんだけど・・・。

 

郁未 「・・・どうしてこうなるのかしらね・・・?」

セリシア 「何が?」

郁未 「あんたのことに決まってるでしょうが」

 

セリシアちゃんは、さやかちゃんのいない水瀬屋敷は退屈だって言って、郁未ちゃん達についていった。
郁未ちゃんは迷惑そうだったけど、昔からの知り合いなわけで、あの子は向こうにいるのがいいんじゃないかな。
そして、栞ちゃんは・・・。

 

郁未 「でも、セリシアはともかく、あなたまで運び屋になるなんてね」

栞 「広い世の中を見て回った方が、強くなれそうな気がしますからね」

 

水瀬屋敷を出た栞ちゃんは、郁未ちゃん達に習って運び屋業を始めた。
そして、そのパートナーはなんと・・・。

 

栞 「でも、“私達”はセリシアさんとは違いますよ。商売敵です」

郁未 「私達ねぇ・・・そのパートナーがよりによって、まさかあなたなんてね」

アルド 「意外ですか?」

郁未 「意外な組み合わせではあるわね」

栞 「アルドさんには、殺されかけた借りと、助けられた借りがあります。それをきっちり返さないといけません」

アルド 「私もただの殺しには飽きていましてね。こちらの方が楽しそうなので転職したんですよ」

栞 「だそうです。それに、アルドさんは祐一さんの昔の仲間ですから、その傍にいれば絶対に強くなれます」

アルド 「それに、一番の想い人は、いずこかへ行ってしまったようですしね」

栞 「大丈夫です。さやかさんと戦う前に、私がアルドさんより強くなってあげますから」

アルド 「楽しみにしていますよ」

郁未 「・・・とりあえず、死なないようにね」

セリシア 「ま、商売敵っていっても、こっちの方が何倍も優秀だけどねー」

舞 「・・・おかわり」

 

と、こんな感じ。
運び屋業界・・・っていうのがあるのかはよく知らないけど、賑やかになりそう。

 

 

 

 

 

 

そして、一ヶ月くらい前、京四郎さんがどこかへふらっと旅立った。
それから少しして、豹雨がこれまたふらっと帰ってきた。

 

豹雨 「・・・チッ、京四郎の野郎、逃げやがったか」

 

どうやら京四郎さんは、豹雨が帰ってくるのを感じ取って出て行ったみたい。

あの戦いの後、豹雨を見たのはこれが最初だった。
結局半年前の、魔神ベリアルとの戦いがどうなったのかは、本人が語らないからわからずじまい。
生きていたんだから、少なくとも負けたわけではなさそうだけど、勝ったのかもわからない。
引き分けだったのか・・・どちらにしても、豹雨にとってあの戦いはもう過去のものみたい。
今はもう、新しい戦いを求めている。

澄乃ちゃんとしぐれさんは、天界へ帰ったみたい。
なら、私は・・・・・・。

 

楓 「ねぇ、豹雨」

豹雨 「あん?」

楓 「今度は、私もついていくね」

豹雨 「勝手にしろ」

 

私も近い内に、水瀬屋敷を後にすることになりそう。

豹雨と二人で・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さやかです。

楓さん、その他地上に残ったみんな、お元気ですか?
こっちは魔界で、まぁ元気に楽しくやっています。

バベルの塔から魔界へ行った後、私達は一旦オシリスさんの拠点に厄介になった。
その後、祐一君、エリスちゃん、イシスちゃん、そして私の四人で、魔界を歩き回るようになった。
超魔獣フェンリルを倒した新しい魔竜王のエリスちゃん、かつて闘神と呼ばれた男の転生で堕天使ルシファーを倒した祐一君、オシリスさんの妹であるイシスちゃん、そしてベルゼブル君を倒した冥界の力の使い手たる私さやかという四人は、どうやら魔界ではちょっとした有名人みたい。
本当なら四魔聖にかわって魔界に君臨するくらいすごい顔ぶれなんだろうけど・・・その実態は・・・・・・。

 

イシス 「絶対に左の道です!」

エリス 「いいえ、右よ」

イシス 「何の根拠があって右なんて言うのよ?」

エリス 「動物的直感よ」

イシス 「それで何度間違いを犯したことか」

エリス 「うるさいわね。あんたこそ何をもって左って言うのよ?」

イシス 「女の直感よ」

エリス 「莫迦」

五十歩百歩、どんぐりの背比べ、目くそ鼻くそを笑う・・・。

私達、現在、遭難中。

この森に入ってからもうかれこれ十日は経ってるんだよね〜。
そして、分かれ道に来るたびに延々二人の言い争いになる、と。

さやか 「やれやれ・・・君はどっちの道だと思う、祐一君?」

私は木の幹に寄りかかって、二人の言い争いを見物してる。
その木の反対側に、幹に背を預けて坐っている祐一君がいる。

祐一 「そうだな・・・・・・いっそのこと、来た道を戻ってくるってのはどうだ?」

エリス 「何よ? 歩いてきた道に目印でも残してきたの?」

祐一 「いや、道なんてまったく覚えてないぞ」

エリス 「はぁ・・・莫迦ばっかりね」

イシス 「自分だけ違うみたいな言い方はしないでよ」

さやか 「困ったね〜」

こんなお間抜けなパーティーが魔界に君臨なんて、とてもありえないね。

と、そこへ、一人の魔族が通りかかった。
小柄でずんぐりしていて、ちょっとかわいい。

さやか 「ねぇ、あの人に道聞いてみたら?」

イシス 「そうね・・・そうしましょう」

エリス 「ちょっとそこの、アタシ達迷ってるから、道教えなさい」

エリスちゃん・・・それが人に物を尋ねる態度だろうか?
とっても偉そうに上からものを言ってるよ。

魔族 「あぁん、何で俺がてめぇらなんぞの道を教えなきゃいけねーんだよ」

エリス 「あんた、魔界の掟わかってる?」

魔族 「当然だろ。強い奴が偉い」

 

ドカッ バキッ ゴスッ

 

魔族 「・・・なんなりとお聞きくだせぇ、姉御」

実にしんぷる。
わかりやすくていいけど、通りすがりの魔族さんはちょっと気の毒。

エリス 「道を知りたいのよ。この三つの道、それぞれどこに通じてるの?」

魔族 「へぇ。まずそっちの道を真っ直ぐ行って・・・」

最初に指したのは、私達が通ってきた道。
つまり、祐一君が示した道の方だ。

魔族 「谷を一つ越えると、獣魔の森に辿り着きます」

祐一 「げ・・・」

さやか 「知ってるの?」

祐一 「獣魔の森は、ベリアルの居城がある場所だ」

魔族 「ええ、一ヶ月くらい前にベリアル公が戻ったみたいで」

祐一 「ベリアルが戻った、か・・・」

たぶん祐一君は、豹雨さんとベリアルの勝負のことを考えてるんだろうね。
ベリアルが生きてたってことは、豹雨さんが負けたのかな?
ん〜、でもわからないか、勝負がつかなかった可能性だってあるし。

魔族 「それで、こっちの道を行くと・・・」

次に指したのは左、イシスちゃんが示した道の方。

魔族 「アシュタロス公の居城に至ります」

イシス 「う・・・」

イシスちゃんが実に嫌そうな顔をする。
どうやら、ちょっと苦手みたいだね。
それにしても、相手が有名とは言え、知ってる魔神二人の名前を早くもこんなところで聞くなんて・・・偶然?

魔族 「そして、そっちの道を行くと、かつての巨人族の廃城があります」

エリス 「巨人族の廃城か・・・一番マシそうね」

祐一 「そうでもなさそうだぞ」

エリス 「え?」

祐一 「その廃城には、誰か住んでるか?」

魔族 「誰かの別荘みたいになってるって話は聞きますね」

祐一 「どうやら、決まりだな」

その誰かっていうのが、祐一君にはわかったみたい。
あまりいい相手じゃないみたいだけど。

祐一 「手の込んだ真似をしやがる」

イシス 「どういうことですか? 祐様」

祐一 「ノルンを知ってるか?」

イシス 「はい。現在、過去、未来の運命を司る三姉妹の女神ですよね」

祐一 「ああ。俺にとってベリアルは、過去に幾度も戦った相手。アシュタロスは、未来に戦うことを約した相手。そして、もう一つの道は現在・・・」

さやか 「その先にいるのは?」

祐一 「ノルンが手を貸してて、巨人族の廃城なら答えは一つだ」

エリス 「それは?」

祐一 「邪神ロキだ。どうやら俺達は道に迷っていたんじゃなく、あの野郎の誘いを受けてるらしいな」

なるほどね。
こんなにちゃんとした道があるのに、迷うなんておかしいとは思ってたけど。
一種の結界の中に取り込まれちゃってたんだね。
そして、三つの道のどれかしか選べないようにされた。

イシス 「邪神ロキ・・・確か、終末を導く呪われた三匹の子を産み落とした・・・」

祐一 「そう。魔界最強の破滅の魔獣フェンリル、冥界の力を操る魔女ヘル、そして大地を取り巻く蛇ミドガルズオルム。神々の予言で終末を導くとされた連中だ」

エリス 「・・・フェンリル・・・・・・」

祐一 「まぁ、そいつらがいるかどうかはともかく・・・ロキ、か・・・」

さやか 「どうする? 祐一君」

元来た道を戻ればベリアルと、左の道を選べばアシュタロスと、右の道を選べばロキと。
どこへ行っても、トラブルは避けられそうにないね。

祐一 「せっかくの招待だ。乗ってやるか、ロキの誘いに」

イシス 「私は、祐様が行かれる場所ならどこへでもついていきます」

エリス 「いいわ。フェンリルがいたら、今度こそ決着をつけてやる」

さやか 「それじゃぁ、いざれっつらごー、かな」

祐一 「さーて、今度はどんな戦いが待っているか」

 

転生する前、前世の祐一君は、闘神と呼ばれていたという。

今ではそう名乗っていないけど、やっぱり彼は闘いの中に生きる人だと思う。

そんな彼について行くと決めた。

私も、エリスちゃんも、イシスちゃんも。

だから、この道を行く。

どこまでも・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遥かな後、天地魔界において、二つの名が伝説として語り継がれるようになる。

 

 

 

雛瀬豹雨と相沢祐一。

 

 

 

三界の強者達を尽く打ち倒し、ついに両雄は、最強の称号をかけて戦ったという。

 

 

 

その勝敗は不明であるが、伝説に相応しい死闘であったと云われている。

 

 

 

そして、彼らと彼らの仲間達を称してこう呼ぶ。

 

 

 

天地魔界に最強と謳われるその者達の名は・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デモンバスターズ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相沢 祐一

白河 さやか

エリス・ヴェイン

イシス

天沢 郁未

川澄 舞

美坂 栞

琥珀

セリシア  折原 浩平  川名 みさき

美坂 香里  水瀬 秋子  水瀬 名雪

国崎 往人  遠野 美凪  翡翠  ほたる

石橋 剛健  北川 潤  斉藤 葉澄

芳乃 さくら  橘 芽衣子  雪月 澄乃  北里 しぐれ

倉田 佐祐理  倉田 一弥  久瀬 俊之  ジークフリード

服部 重蔵  シュテル  氷上 シュン  榊

メサルス・リー  遠野 時谷  マギリッド・T

絶鬼  剛鬼  鉄鬼  怨鬼  斬鬼  覇鬼

バイン  アヌビス  ゼルデキア・ソート

シヴァ  アシュタロス  ベリアル

ブラッド・ヴェイン  ベルゼブル

ルシファー/サタン

フェンリル

オシリス

ヴィオラ

斉藤 元

アルド・レイ・カークス

雛瀬 豹雨

神月 京四郎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

三部構成+外伝による全136話の長編、ついに・・・完・結である!
いやはや長かったですな〜。けど、終わることができてよかったですよ。長編を完結させることの難しさよな。
最後はエンドロール風に、登場人物を一通りリストアップしてみました。メイン級はたぶんほぼ全員書いたと思うけど・・・(見落としがいたりして・・・)。振り返れば思うことは多々あるものの、あえて多くは語るまい。とにかくこれにて、平安京式長編ファンタジーSSデモンバスターズは終了となります。
氷帝の名を継ごうとする栞とアルドの運び屋な日々を描く外伝とか、祐一達一行とロキ親子との出会いあれこれを描く後日談スペシャルとか、同じく祐一vsアシュタロスの決戦スペシャルとか、地上を離れ天界へ行って大暴れする豹雨と楓の外伝とか・・・考えればまだ書ける物語はあるものの、現時点では無しです。いずれ書く時がやってこないとは言えませんが。
何と言っても、ここまでおつきあいしてくださったみなさまに、感謝。また次回作も、よろしくお頼み申します。