デモンバスターズFINAL

 

 

第23話 血の継承・祐一vsブラッドヴェイン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祐一 「うぉおおおおお!!!」

ブラッド 「カァアアアアアッ!!!」

二人の闘気が部屋全体を覆い付くし、中央では互いの力が押し合っている。
こっちは一切の出し惜しみはなしだ。
あとのために力を温存とか、そんなことを言っていられる相手ではない。
一戦一戦、全開で行く。

ブラッド 「行くぞ、闘神!」

先に動いたのは奴の方だった。
こんな普通に立っているだけでも辛い闘気の渦の中ですぐに動けるようになるとはな。
こっちも辛いなどと言っている場合ではなく、気合を入れて体を動かす。
思ったよりはスムーズに後退できた。

ズンッ!!

奴の一撃が直前まで俺のいた地点に叩き落される。
紙一重の差でぺしゃんこだな。

ブラッド 「よく避けたわ。そうでなくては面白みがない!」

瞬間、真横からの衝撃。
踏み込んだ場所を支点にして回転し、尾による攻撃を仕掛けてきたのか。
考えるより先に動いてガードをしたお陰でダメージは少ない。

祐一 「でかい図体して素早い奴だ!」

ブラッド 「この程度で音を上げるでないぞ!」

休む間もなく突っ込んでくる。
上に跳んでかわすと、強烈な頭突きが壁にめり込む。
本気であんなの喰らったら骨の一二本じゃすまないな。

ブゥンッ

祐一 「くっ」

壁に頭を突っ込ませたまま、上に逃れた俺に向かって奴の尾が飛んでくる。
あえてその攻撃をガードしながら受けることで、反動を利用して大きく距離を取る。

祐一 「・・・・・・」

攻撃はどれも大振りだが、尾による第二攻撃が隙を最小限に減らしている。
それでも、大雑把な攻撃に付け入る隙は多い。
何度か反撃の機会はあったのだが・・・。

祐一 「・・・小技をいくら喰らわせても、あれにダメージは与えられないよな」

小さな隙は多い。
だがそんな隙は、奴にとって何の意味もない。
僅かな間隙に加えられる程度の攻撃など、奴の表皮に傷一つつけることができないからだ。
こいつにダメージを与えるには、正面から大技で畳み掛けるしかない。
これほどの攻撃力を持った相手と正面から力比べをすることによるリスクは計り知れないがな。

ブラッド 「どうした、一度も反撃してこぬな」

祐一 「まぁ、そう慌てるなよ」

リスクを恐れては戦えないか。
ならば・・・。

すぅっと剣を水平に構える。
大技しか手がないのなら、その通りにするまでだ。

祐一 「氷魔滅砕!!」

構えた剣を一気に突き出す。
凍気をまとった竜巻が、真っ直ぐ奴に向かっていく。

ブラッド 「かぁああああ!!!!」

ズンッ!!!

祐一 「!」

奴はそれを、片手で受け止めやがった。
そのまま力が拮抗している。

ブラッド 「ぬぅぅぅぅぅぅぅ」

祐一 「くぅぅぅぅぅ」

ブラッド 「つぁぁぁぁっっっ!!!」

バシィンッ!!

祐一 「っ!」

弾き飛ばしやがった。
俺の氷魔滅砕を片手でいなすとは、なんてパワーだ。

ブラッド 「どうした! その程度ではなかろう」

祐一 「・・・・・・」

びりびり

一言発するだけで、空気が震える。
竜の声はそれだけで魔力を持ち、咆哮するだけで目の前の全てを薙ぎ払うという。
こいつがまさにそれだ。

あらゆる魔物の上に立つ究極の生物ドラゴン・・・その中でにおいて頂点を極めた存在が奴、魔竜王だ。
こうして対峙することで、伝え聞いた話が本当であるとはっきりわかる存在感・・・圧倒的だ。

だが・・・。
何かがひっかかえる。

祐一 「・・・・・・」

ブラッド 「まだ来ぬか。ならば再びこちらから行くぞ!」

正面から突っ込んでくるブラッドヴェン。
重量とパワーを活かした突進力と、強靭な体をもって、一切の小細工のいらない、そして通じない突撃。
山がそのまま向かってくるような威圧感を受けながら、寸でのところで回避する。

祐一 「うぉおおおお!!!!」

小技が効かないなら、一撃一撃に全力を注ぎ込むまでだ。
ぎりぎりで回避した俺は、真上から振りかぶった剣を振り下ろす。

ギィンッッッ!

祐一 「――っ!」

鋼鉄を叩いたような感触。
なんて硬い鱗だ。
しかし、まったく歯が立たないわけじゃない。

ブラッド 「ぬぅ!」

祐一 「うぉりゃぁああ!!」

鱗に弾かれた反動を利用して空中で回転し、尾による攻撃をかわす。
そのまま遠心力を使って再度同じ場所を狙って剣を振りぬいた。

ザシュッ!

二度目の攻撃で鱗は砕け、奴の表皮に傷をつけることに成功する。

ブラッド 「む!」

いける。
一撃では無理でも、攻撃をかさねれば奴の防御力を上回る。

ダッ

着地と同時にもう一度相手の懐へ踏み込む。

祐一 「凍牙三連!!」

ドドドシュッ!!!

必殺の三連撃をブラッドヴェインの胸部に叩き込む。
切り裂くとともに、技のパワーは奴の巨体を数メートル後ろへ弾き飛ばした。

ブラッド 「ぐぉっ!」

距離をとったところで、油断無く構える。
すぐに反撃してくるかと思ったが、傷を受けたブラッドヴェインはじっと止まっている。

祐一 「?」

ブラッド 「ぐふっ・・・・・・ぐふふ、やりおるわ」

胸の傷口から、血が落ちている。
妙だ。
確かに直撃だったが、あれほどの血を流すほど深い手ごたえはなかった。
あの場所は、確か・・・・・・。

ブラッド 「フッ、さすがに三度同じ場所に傷を受けては堪えるわ」

やはりそうか。
あそこはフェンリルが、そしてエリスが先の戦いで奴に傷を負わせた場所。
しかし、この違和感は何だ?

俺はこの塔に、いやこの空間に入った時からどんどん力の充実を感じている。
それは即ち、ここが真魔の力で満ちているからだ。

そうだ。
あれから一体何日経っている?
これほどまでに強力な真魔の刻の中で、魔竜王ともあろう者が傷の治癒をできずにいる。
それにさっきまで引っかかっていたんだ。

確かにこいつは強い。
だが、終末の魔獣と並び称される魔竜王の力は、こんなものであるはずがないのだ。

傷を負っていて本来の力が出せない?
違う、傷なんて外的要因は、きっかけに過ぎたい。
真の理由は・・・・・・。

祐一 「魔竜王・・・あんた、寿命が尽きかけてるな」

人より遥かに長い時を生きると言っても、魔族とて永遠に生きるわけではない。
必ず、寿命は訪れる。

ブラッド 「ぐふふ、気付きおったか」

祐一 「まさか、あんたがフェンリルと停戦してまで地上にやってきたのは・・・」

魔竜王とは称号だ。
奴の前には別の竜が魔竜王の地位を持っていたはずだ。

ブラッド 「残念ながら我は悠久を生きる力は持ち合わせておらぬ。我が宿敵と違ってな」

祐一 「フェンリルは・・・ロキの三人の子は、終末を導くため、その時まで死ぬことのない呪いの中にいる。あれと比べるのは、間違いだろ」

ブラッド 「道理だな。まぁそんなことはどうでもよい。我がここにいる理由は貴様も察してのとおりよ」

祐一 「エリスだな。あいつを、次の魔竜王にするために・・・」

歴代の魔竜王は、先代の力を受け継ぐことで、その力を磨き続ける。
最強の竜王という地位を築き続けてきたのは、そのためだ。
具体的に、力を受け継ぐってのはどういうものかは知らないが・・・。

ブラッド 「ぐふふ、あれは最高の作品だ」

祐一 「作品だと?」

ブラッド 「そうだ。この世で最も美しく、最も深い闇を持ち、最も強い・・・史上最強の魔竜王となる存在よ。そのために、貴様も利用させてもらうぞ」

祐一 「俺を?」

ブラッド 「そう。魔竜王となるためには二つのものが必要だ。一つは、深い憎しみに彩られた闇の心だ」

闇の心・・・。
俺の脳裏に浮かんだのは、はじめてあいつが魔竜の力を見せた時のことだった。
そして、この魔竜王、父のことを語る時のあいつの顔・・・。

ブラッド 「あれの母親、ソフィアは我が唯一愛した、この世で最も美しい女だった。それを我は自らの手で殺した。その理由は二つ・・・一つはその美しさを永遠のものとするため。そしてもう一つは、エリスから大切なものを奪うためだ」

祐一 「大切なものを、奪うだと・・・?」

ブラッド 「彼奴は我を憎む。それこそが、魔竜王の素質となる。だが・・・まだ憎しみが足りぬ。ゆえは我はもう一度、あやつにとって最も大切なものを奪う」

祐一 「・・・・・・」

ブラッド 「ルシファーやベルゼブルの思惑など我の知ったことではない。我が目的は、最強の魔竜王をこの世に誕生させること。そのために、貴様には死んでもらうぞ、闘神!!」

祐一 「・・・・・・」

ブラッド 「貴様の死を前にした時、エリスの心の闇は完全なものとなる。そして血の継承により、新たな魔竜王は誕生する!」

祐一 「・・・それが、あんたの目的か」

寿命の尽きかけた己に代わって、エリスを新たな魔竜王にする、か・・・。
あまり気持ちのいい話じゃないな。

祐一 「あんたとここで対峙してから、ずっと考えてた」

ブラッド 「む?」

祐一 「立ち塞がる相手は倒すのが俺達の信条だが、あんたを倒すのはエリスに譲るべきかと思ってた。だが・・・」

エリスのことを思い浮かべる。
はじめて会った頃から、常に喧嘩ばかりしていた。
だが気がつけば、誰よりも俺はあいつのことを信頼していた。
ガキだった俺の面倒を一番見てくれたのは楓さんだったが、楓さんには豹雨がいて、俺との間にはほんの少しだけ距離があったように思える。
その点エリスと俺の間には、何も隔てるものがなかった。

はじめて魔竜の力を見た、はじめてエリスが俺に弱みを見せたあの時からは特に。
一番近くにいて自然な奴、それがエリスだった。

あいつは俺なんかよりもずっと強い。
だが同時に、とても脆くて弱い。
そんなあいつに、こいつの言う心の闇なんてものを持たせたりはしない。

祐一 「魔竜王ブラッドヴェイン。あんたは、俺がここで倒す」

ブラッド 「・・・おもしろい。やれるものならばやってみるが、小僧!!!」

ズンッッッ!!!

空気が三倍重くなったような気がした。
奴が隠していた全ての力を解放したのか。
でかいやつが来る。

祐一 「はぁぁぁぁぁ・・・」

あれに対抗するには、こっちも全てを出し切らないとだめだ。
俺の出せる、最高の技を叩き込む。

祐一 「そうそう、もう一つ言い忘れてたぜ、魔竜王」

ブラッド 「む?」

祐一 「闘神ってのは昔の“俺”のことだ。今の俺の肩書きは、氷帝だぜ」

ブラッド 「氷帝、か。ぐふふ、フェンリルめの向こうを張るつもりか。片腹痛いわ!」

魔狼王フェンリルは、氷の魔獣とも呼ばれる。
偶然か必然か知らないが、転生した今の俺は奴と同質の力を持っているわけだ。
ブラッドヴェインを倒したら、奴も倒さないとならないのか・・・そう思うと憂鬱だが。

祐一 「まぁいい。今は余計なことを考えずに、全開だ」

後のことを考えてたら勝てない。

ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・

空気が震える。
二つの力は限界を超えて、弾ける瞬間を今か今かと待っている。

ブラッド 「死ねぃっ、氷帝!!」

そして、解き放たれた。

 

ドシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!!

 

魔竜王の咆哮とともに放たれる特大のドラゴンブレス。
エリスが普段使ってるものとは桁違いの、全てを飲みこみ、破壊しつくす力が押し寄せてくる。
これに正面から対しようなんて、無謀以外の何ものでもないが・・・。

祐一 「やるっきゃないだろ」

やらなきゃこっちがやられるし、奴を倒せない。
だから、俺は全ての力を込めて振りかぶった剣を振りぬいた。

祐一 「氷魔撃滅斬!!!」

ザシュッッッッッッ!!!!!

極限まで研ぎ澄まされた凍気をまとった斬撃と衝撃波。
だが、俺の渾身の一撃をもってしても、奴の攻撃を押し返すには至らない。

祐一 「くっ・・・!」

さすがにエリスの親父、魔力が桁外れだ。
どれほど高め、洗練させても、俺の魔力では及ばない。

祐一 「にゃろう・・・魔力だけで勝てないなら・・・」

それなら、別の力を加えれば・・・何かこの上に重ねるものを!

祐一 「デュランダル! 俺の魔力の結晶から生み出されたものなら・・・なんとか、しろぉっ!!」

叫び声に合わせて、俺の中で何かが咆哮する。
魔力と、そしてもう一つ別の力が剣に流れ込んでいき、青白い光を発する。
袈裟懸けに斬り下ろした剣を、逆袈裟に斬り上げる。

祐一 「喰らえっ、氷神烈壊!!」

かつての“俺”、最強の魔神の一人と謳われた闘神祐漸の魔力と、四神の一角北の玄武の神力とが、デュランダルの中で融合し、大いなる力が解き放たれる。
この剣は、空間に満ちるありとあらゆる力を凍気へと変換し、俺の力とできる。
振りぬいた剣は、魔竜王の放った力すらも吸い込んで撥ね返した。

 

ゴォオオオオオオオオ!!!!!

 

ブラッド 「ぐぉおおおおおおお!!!!!」

ドラゴンブレスの衝撃波は切り裂かれ、咆哮する奴の姿が目に入る。
尚も高まりを見せる魔竜王の魔力だったが、もはや俺には通じない。

祐一 「いっけぇぇぇぇぇ!!!!!」

三発目。
振り下ろされたデュランダルから放たれた一撃が、ブラッドヴェインを直撃する。
集まった魔力は霧散し、その巨体は大きく後方へ吹き飛ばされる。
激しい衝撃はこっちまで影響し、俺もその場で自分の体を支えるのが精一杯だった。

祐一 「・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・」

奥義を三発連続だ。
さすがに堪えるぜ・・・。
ここが真魔の力に満ちていなかったら、この時点でぶっ倒れてるな。

祐一 「・・・やったか」

あれほど部屋の中を覆っていた魔竜王の重圧が消えた。
仰向けに倒れている奴からは、もう闘気は感じられない。
だが、それでもあの体の中に膨大な魔力が蓄えられているのは感じられる。

とはいえ、もう動けまい。
この戦いは、一先ず俺の勝ちだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく