デモンバスターズFINAL

 

 

第18話 決戦の地へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さやかが何を考えてるのか知らないが、戦う気のない奴を連れて行っても仕方ない。
四神朱雀の力はエリスに渡したらしいから、それで問題ないということだ。

郁未 「・・・案外、これでよかったのかもしれないわね」

祐一 「どういうことだ?」

郁未 「・・・・・・ま、いいわ。はっきりとはわからないし」

どうやら郁未は、さやかの行動の理由について何か感付いているようだ。

まぁ、貴重な戦力が失われたが、あいつ一人いないくらいは問題にはならない。
俺達だけいれば、それで充分。

祐一 「それよりも、助っ人とやらは誰が来るんだ?」

郁未 「あんた達もよく知ってる顔ぶれよ」

祐一 「・・・まさか」

遠くから馬の蹄の音が聞こえる。
それと車輪の音・・・馬車だな。

振り返ると、確かに大きな馬車が一台、こっちへ向かって走ってくる。
真っ直ぐ・・・そう、真っ直ぐ・・・・・・俺に向かって。
しかもまるで減速する気配がない。

祐一 「・・・おい?」

ドドドドドドドドッ

まったく失速しない馬車に思わず呆然とし、反応が遅れた。

ドーーーンッ

祐一 「おぉ・・・・・・」

馬車に撥ねられ、宙を舞う。
あまりに馬鹿らしい展開に、受け身を取ることも忘れて地面に落ちる。

芽衣子 「おお、よく飛んだな」

祐一 「おまえか・・・」

御者は芽衣子だった。
避けもせずに素直に吹っ飛ばされた俺に呆れているのか感心しているのか・・・いまいち判別しづらい。

芽衣子 「うっす」

祐一 「・・・うっす」

とりあえず、逆さまになっている体を起こす。
そういえばこいつはさくらと同じ組織だか団体だか、つまり俺達四人を四神の神子なんてものに据えやがった連中のところに属してるとは言ってたな。
この場にいてある意味当然か。

馬車の扉が開いて、最初に飛び出てきたのはさくらだった。

さくら 「ちわーっす、助っ人お届けにあがりやしたー」

相変わらずハイテンションなチビだった。
大体宅急便かよ・・・?

祐一 「一体どこの誰を連れてきたんだよ、おまえ?」

楓 「あれ、不満そうだね。私が助っ人じゃ役不足だった?」

祐一 「・・・楓さん?」

京四郎 「うーん、僕は本当に役不足かもしれませんね」

に、神月京四郎・・・。
なるほど、神に仕えてる連中が助っ人として引っ張ってくるには、最適ってわけだ。
だがそれだけじゃなく、尚も馬車から次々に見知った顔が出てくる。

浩平 「敵は魔族。それは実に満足」

みさき 「あはは、今日はシンプルだね」

浩平 「後がつかえてるからな」

セリシア 「止まってないでさっさと出ないさいよ」

琥珀 「はいはい、押さないで順番に出ましょうねー」

香里 「まったく、馬車は大きいったって、この人数で長距離は辛いわよ・・・」

栞 「あ、祐一さん! おひさしぶりですー」

祐一 「・・・・・・・・・」

思わず人差し指を頭に当てる。
一人減って静かになったと思ったら、また一気に賑やかになる面子が揃ったものだ。

エリス 「わんさか連れてきて。数集めればいいってものじゃないでしょうに」

さくら 「これでも選りすぐってきたつもりだよ。それに、戦力は多くても困らないよ」

エリス 「どうだか」

祐一 「まったくだ。若干一名明らかに未熟者がまざってるしな」

栞 「あー、自分の弟子に対してなんですかそれは。そんなこと言う人、嫌いです。もっと信用してください」

並みの敵なら信用してやってもいいがな。
実際、俺以上に楓さんに師事するようになって、栞の腕はかなり上がってる。
だがこれから相手をしにいくのは魔界のトップにいるような連中だ。
取り巻きの雑魚にしたって、一筋縄じゃいかない。
楓さんと神月はいいとして、折原にセリシア、琥珀レベルでも役に立つかは疑わしい。

芽衣子 「心配することはない」

祐一 「芽衣子?」

芽衣子 「彼らも祐一さん達が出て行ってから今日まで遊んでいたわけではない」

祐一 「む」

芽衣子 「さくらの言うとおり、実力を見た上で連れてきたんだ。私が保証するぞ」

そう言われると反論しようもないが・・・。

祐一 「いいのか? 今度はカノンの時ほど甘くはない。死ぬほどやばいぞ」

浩平 「望むところだな。今度こそ自分の限界に挑戦するいい機会だろう」

これから死地に赴こうってのに、この男は変わらず自然体だな。
変に気負ってないから、大丈夫か。

祐一 「そういえば、これだけの面子が揃っていながら、斉藤はどうしたんだ?」

浩平 「ああ、あいつからおまえに伝言がある」

祐一 「伝言?」

浩平 「次に会う時は、いつかの日の続きをする時だ、ってな」

祐一 「・・・・・・そうか」

三度目、決着をつけようってわけか。
暗に、必ず生きて再び対峙しようということを言っている。
お互いその時まで、死ねないな。

セリシア 「それはそうと、さやかは?」

エリス 「あいつならいないわよ」

楓 「いない?」

祐一 「ああ、最後の戦いには行かないで、待ってるってよ」

楓 「へぇ、珍しい・・・」

俺達よりもさやかとの付き合いが長い楓さんがそう言うのだから、いかに今回のさやかの行動が珍しいかわかる。
たとえ戦力にならないとしても、あいつなら戦いの行方を見届けに来たりはするだろう。
完全に残ったというのが、どうにも気になる。

セリシア 「なぁんだ、つまんないの。ま、郁未がいるからいっか〜」

前に比べて明るさ三割増しくらいの銀髪小娘が郁未に飛びつく。
が、ひらりとかわされて地面にダイブした。

セリシア 「う〜、郁未のいけず〜」

郁未 「知らないわよ」

この二人はこの二人で組めば名コンビになりそうだ。
ま、それはこの際どうでもいい。

祐一 「まぁいい。敵側にも雑魚は大量にいるだろうし。弾除けくらいにはなるだろ」

これは冗談ではない。
本気で言っているからこそ、誰も笑ったり反論したりしないし、逆に表情を引き締める。

魔神クラスに対抗できるのはこの中でも一部だけだ。
残りの連中は、いかにその面子が無傷で奴らと戦える状況を作り出すかが役割になる。

祐一 「じゃあ、揃ったなら行くぞ」

さくら 「あ、待って。まだ来てない人がいるから」

祐一 「この上まだ誰か来るのか?」

さくら 「もちろん♪」

祐一 「って、いったい誰を・・・・・・」

その気配に、思わず鳥肌を立てる。
いい加減慣れたつもりだが、この独特の空気にはやはり馴染まない。

エリス 「・・・・・・」

楓 「・・・・・・」

祐一 「・・・おまえか」

アルド 「これはこれは、また賑やかなご様子ですね」

血の匂いを漂わせながら現れたのは、黒き死神、ブラッディ・アルド。
確かに、助っ人として呼ぶならこれ以上ない奴ではあるが・・・。

祐一 「またとんでもない奴に声をかけたもんだな、おまえは」

さくら 「言ったでしょ。戦力は多くて困ることはない、って。ほら、最後の一人も来たよ」

言われなくてもわかってる。
ここまで来たら最後の一人が誰かなんて想像する必要すらない。
何故なら、それは必然だからだ。

大体、あいつは呼ばれなくたって現れる。

楓 「豹雨」

エリス 「やっぱり来たわね」

アルド 「ひさしぶりに、五人揃っての共闘ということになりそうですね」

祐一 「ああ、そうだな」

豹雨 「ふん、随分うじゃうじゃ有象無象が集まってやがるじゃねぇか」

何人集まろうと自分が最強、ってオーラをいつものごとく発している。
だが、いつもと違うのはその姿が、全身ぼろぼろだということだ。
先日の戦いによるものだけじゃない・・・それから今日までの日々を如実に物語る姿。
あの日から、また強くなって帰ってきたか・・・。

澄乃 「わたし達もいるんだよ〜」

しぐれ 「・・・・・・」

これで、全員集合、か。
改めて見回してみると、そうそうたる顔ぶれと言うべきか。
地上を探し回っても、これほどの集団は他にはお目にかかれない。

この一件の仕掛け人、神子の導き手たるリトルウィッチ、芳乃さくら。

さくら 「殴りこみだよ〜。血が騒ぐよ〜」

先見の力を持つ、変な巫女、橘芽衣子。

芽衣子 「この戦いで、全部終わらせねばな」

元ナイツ・オブ・ラウンドの一人、魔導実験体の少女セリシア。

セリシア 「久々の出番だもんね。めいっぱい暴れてやるわよ」

魔導実験の犠牲者、稀代の剣士にして策士、琥珀。

琥珀 「怪我した方は言ってくださいね。いいお薬ありますからー」

お笑いカップルだが実力は充分、折原浩平と川名みさき。

浩平 「さて、いっちょやるか」

みさき 「そうだね」

実力はいまいち不安な発展途上の姉妹、美坂香里と栞。

香里 「・・・どこまでできるかしらね、今のあたしに」

栞 「がんばりますよ」

龍神の姉妹、雪月澄乃と北里しぐれ。

澄乃 「えう〜、えう〜」

しぐれ 「・・・・・・」

神と人との間に生まれた男、神月京四郎。

京四郎 「このような形で魔族と対することになるとは・・・」

無敵の運び屋ノワール・ムーン、天沢郁未と川澄舞。

郁未 「依頼された仕事は最後までやり遂げる。それが私達のポリシーよ」

舞 「はちみつくまさん」

そして、俺達デモンバスターズ。

大地の巫女、楓。

楓 「これが実質、ほんとの現場復帰ね、私の」

血染めの死神、ブラッディ・アルド。

アルド 「かつてないほどぞくぞくしますよ。これから起こる決戦のことを思うと、ね」

魔竜姫エリス。

エリス 「・・・今度こそ、決着をつける」

最強の男、斬魔剣の豹雨。

豹雨 「相手が何であろうと、最後の勝つのはこの俺だ」

俺、氷帝相沢祐一。

祐一 「・・・行くか」

戦う理由はそれぞれだ。
だが共通する目的は、魔神どもを倒すこと。

 

・・・・・・そのはずだが、俺は少し事情が異なる。

確かに行けば戦いは必至だろう。
奴らが仕掛けてくる以上、俺もまた戦うことに迷いはない。
フェンリルやベリアルはやる気満々で待ち受けてるだろうし、ベルゼブルやアシュタロスは胡散臭い。
オシリスは・・・あいつは自分から何かをしようって奴じゃないし、今回の件も手を貸してる程度のものだろう。
問題は、ルシファーだ。

俺は、あいつの真意を聞くために行く。
場合によっては、そのまま戦うこともあるだろう。

 

何はともあれ。

いざ、決戦の地へ・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルシファー 「・・・・・・来るね、祐」

荒れ果てた大地に聳え立つ巨大な塔。
その頂上に、ルシファーは立っていた。
何もないこの世界では、地平線の先まで見通せる。

ルシファー 「さあ、早く来てくれ、祐。僕のもとへ・・・」

その姿を、壁の壁から窺う者がいた。
オシリスである。

オシリス 「・・・・・・」

ルシファーの姿は穏やかなものだった。
天界でも魔界でも恐れられる堕天使・・・そしてこれから大事をなそうとする者の姿とは思えない。
彼がいったい何を考えているのか、それはもっとも近くにいるオシリスにすらわからないことだった。

その場を立ち去ったオシリスは、塔の内部へと入っていく。
広間に出ると、荘厳なオルガンの音に出迎えられる。
そこには、他の仲間達が一通り揃っていた。

ベリアル 「・・・・・・来やがるか、奴が・・・!」

その気になれば再生もできる折れた角をそのままにしたベリアルは、静かに拳を握り締めている。
この男がこれほどおとなしく、しかし激しく闘志を燃やしているのははじめてのことだった。

フェンリル 「いよいよか」

ブラッドヴェイン 「ぐふふ、そのとおりよ」

魔界を二分する超魔獣も、その静けさが不気味だった。
そもそも、不倶戴天の宿敵とまで言われた魔竜王と魔狼王がこうして組んでいるだけでもありえざることだった。

イシス 「・・・・・・」

オシリスの妹イシスも、今は静かに時が来るのを待っていた。
皆が静かに佇む中、一人だけ音を放っているものがいた。
巨大なパイプオルガンを弾いているのは、ほかならぬアシュタロスである。

アシュタロス 「まさしく決戦前、実に美しい雰囲気だとは思わないかね、オシリス」

オシリス 「・・・・・・」

アシュタロス 「しかしベルゼブルもわからぬ奴だ。あのような者を連れ込んで何を考えているのか。もっとも・・・」

オルガンを弾く手は止めずに、広間を見渡すアシュタロス。

アシュタロス 「何を考えているかわからぬのは、皆同じか」

手を結んではいても、所詮魔神は個で存在する者達だ。
互いの考えを理解することなど永久にない。

アシュタロス 「さて、そろそろ客を迎える準備をしなくてはな。オシリス、例の者は借りてよいのだな?」

オシリス 「好きにするがいい」

アシュタロス 「うむ。さあ、真魔の宴が始まる。まずはプロローグからだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく