デモンバスターズEX

 

 

第50話 終わりと始まり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・

さやか 「?」

エリス 「な、何事?」

真っ赤になってにらみ合っていたさやかとエリスだったが、地震に気付いて顔を上げる。
この振動は・・・。

祐一 「まずいな」

さやか 「何が?」

祐一 「さっきまで俺とエリスの魔力を恐れて閉じこもってたパンデモニウムが活動を再開しようとしてる。本来の攻撃衝動が蘇るぞ」

さっきまでこの魔獣が護りを固めていたのは、つまりそういうことだ。
こんな大型クラスの魔獣、魔族どもだってそうそう操れるものじゃない。
連中はただ、俺とエリス以外の奴らを関わらせないために、パンデモニウムのこの特性を利用したに過ぎない。

祐一 「放っておいたらカノンどころか、辺り一帯滅びるな」

さやか 「それは困ったね」

ちっとも困ってないような俺達。
緊張感が足りんな。

エリス 「どうするの? 悪いけどアタシは、もう魔力からっぽよ」

俺と目を合わせないようにしながら言っている。
とりあえず、さっきの発言に関する話はあとにしよう。
たぶんだけど、俺の顔も赤い。

祐一 「パンデモニウムの再生能力は桁違いだ。たぶんだが、マギリッドがセリシアとかに持たせたあの再生能力は、こいつの能力を研究して得たものじゃないかと思う」

さやか 「つまり、あのほとんど不死身の再生能力のオリジナルってわけだね」

祐一 「生半可な攻撃じゃ、奴は倒せん。心臓部にある核を一気に破壊しない限り無理だろう」

さやか 「どうやって?」

祐一 「さてな」

もう一発大技を放つのが限界な状態だ。
今から奴の心臓部に達する余裕はない。
ならば、ここから一気にやるか。

エリス 「心臓部の場所ならだいたいわかるわ。あそこらへんよ」

上の方を指差す。
結構上の方だ。
しかもおそらくかなり深い。

祐一 「一撃で届くかどうか」

さやか 「やってみるしかないよ。ちょうどいい具合に、私の属性はこの魔獣さんに対して相性いいみたいだし」

確かに、炎は樹を燃やす。
防御状態になっているパンデモニウムの内側に入ってこられたのも、そのためだろう。
他の連中はアテにはできない。
俺とさやかだけだ。
ちなみに相手が植物なら、冷気を扱う俺にとっても相性のいい相手ではある。
だが俺とさやかの属性は相反する。
果たして同時使用で最大限の威力を発揮できるかどうか。
しかし同時でなければ威力が足らない。

祐一 「ま、やるしかないか」

さやか 「そうだね♪」

エリス 「ちゃんと決めなさいよ。最低でも心臓部までの穴だけでも明けなさい。そしたらアタシが突っ込むから」

祐一 「よっしゃ!」

いっちょやってやるか。
魔獣パンデモニウムを片付ける!

さやか 「ゴッドフェニックス!」

魔力は回復したのか。
さやかが炎の鳥を召喚する。

祐一 「氷魔剣!」

エリスとの戦いの最中に失った氷の剣を、俺も改めて生み出す。

これが最後の一撃だ。

さやか 「ゴッドフェニックス・バーニングレイ!!!」

炎の鳥の嘴が開かれ、そこから光が溢れる。
おそらく、あれがアルドを退けたという技か。

さやか 「いっけぇぇぇーーーーーーっ!!!!!」

 

ドシュゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーッ!!!!!!

 

計り知れない熱量と破壊力を秘めた熱線が放たれた。
それと同時に、俺の技も・・・。

祐一 「氷魔撃滅斬!!!」

 

ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!

 

絶対零度の冷気の渦が、熱線と絡み合う。

炎と氷に魔力を互いに反発し合いながら突き進み、ある一点で完全に交わり、一つの巨大な奔流となる。

白い閃光となった一撃は、パンデモニウムを飲み込み・・・・・・・。

 

 

全てが・・・光となった・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バイン 「・・・今のは、いったい・・・?」

ゼルデキア 「あのような力が・・・」

?? 「くっくっく、くはぁーっはっはっはっは!」

ゼルデキア 「マギリッド・・・何がおかしい?」

マギリッド 「素晴らしい! 素晴らしいですよ! あれぞまさしく反動力砲とでも呼ぶに相応しい!」

バイン 「反動力砲?」

マギリッド 「神と魔、炎と氷、女と男・・・相反する属性同士が起こす反発作用によって発生した新たなエネルギー! それはまさしく全てを光へと変える究極の消滅エネルギーなのですよ! 」

ゼルデキア 「・・・相反する力・・・か。まさかそのようなことが可能だとはな」

バイン 「もっとも、二つの力がまったく同じ波長と強さでなければ成り立たない。つまり技を放つ二人の相性がよほどよくないといけないわけですから・・・まぁ、あの二人以外には不可能な技ですね」

マギリッド 「くっくっく・・・これほど研究しがいのあるエネルギーがまだあったとは・・・くっはっはっはっはっはっは!!」

ゼルデキア 「案外、あの白河さやかという女の方が王妃として相応しいのではないか?」

バイン 「神を召喚する人間の娘が真魔王の妃ですか。それもまた、一つの在り方かもしれませんね」

ブラッド 「ぐふふ、だが、エリスにせよあの娘にせよ、まず“あやつ”が納得しないのではないか? 我は詳しい経緯など知らぬが、よほど彼奴に執心のようではないか」

バイン 「そのようですね。しかし、それでよいのですよ。競い合うことでさらなる磨きがかかります。妃の候補は多くて困ることはないでしょう」

ゼルデキア 「どちらにしても、カノンでするべきことは終わった」

バイン 「ええ、行きましょう」

アヌビス 「・・・・・・」

バイン 「アヌビスさんも、今までご苦労様でした。間もなく我らが主もこちらへ参られます」

アヌビス 「・・・うむ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祐一 「・・・・・・」

う〜む・・・・・・たぶん、みんな驚いているだろう。

何しろ、撃った本人達が一番驚いてるんだ。

祐一 「・・・威力、ありすぎないか?」

エリス 「そうね」

さやか 「いや〜、びっくりだね」

下から上に向けた放ったからいいようなものの、下に向けて撃っていたら俺達の手でカノンを滅ぼすところだった。
まさか反属性の融合がここまでの破壊力を秘めているとは思いもしない。

祐一 「この技はよほどやばい時まで封印しような」

さやか 「そうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、カノンでの長いようで短い戦いは終わった。
結局、魔族どもの本当の目的はよくわからなかったが、とりあえずカノン公国との因縁には、皆ケリがついたみたいだ。
色々あったが、とりあえず問題ない、か。

さやか 「う〜ん・・・」

祐一 「どうした?」

何故か唸ってる奴もいるが。

さやか 「大人バージョンになったエリスちゃんもかわいいけど・・・・・・やっぱりあのちっちゃいエリスちゃんをぎゅっとする楽しみがなくなっちゃったのは残念だよ〜。結局昨夜地下水路で抱き枕にしたのが 抱き修めだったし・・・」

エリス 「・・・やけに寝苦しいと思ったらあんたのせいだったのね・・・」

魔竜の力を覚醒させた時に、エリスが自身の体にかけていた成長を止める魔法は解けてしまったようだ。
しかも放出した多大な魔力の影響で、体が一気に成長してしまったらしい。
だが・・・・・・。

祐一 「おまえ・・・・・・やっぱりチビだな」

人間的には五年分、しかも成長期の五年分だったはずなのに。
身長は150に達していない。
ま、今まで130をきってたことを考えれば成長したんだが。

エリス 「やかましい、小さいのは遺伝よ!」

母親似ということだろう。
父親はドラゴンなのだから小さいはずはない。

他にも、色々とあったらしい・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

楓 「・・・・・・榊・・・」

京四郎 「楓さん」

楓 「あ、京四郎さん。あの時はごめんね、怒鳴っちゃって」

京四郎 「いいえ。それより、彼は行ってしまうみたいですけど、いいんですか?」

楓 「うん、いいの。今の私は、彼と一緒にいても足手まといだから。それに、今の生活は気に入ってるから。こういう場で、会うこともあるし」

京四郎 「そうですか」

 

 

豹雨 「行くぞ」

澄乃 「うんっ」

しぐれ 「はい」

 

 

アルド 「あなたが噂の斉藤元さんですか。機会があればいずれ戦ってみたいものです」

斉藤 「俺もだ。その時を楽しみにしていよう、ブラッディ・アルド」

 

 

浩平 「・・・あばよ氷上。悪いが、おまえに贈るギャグはないがな」

みさき  「浩平君」

浩平 「行くか、みさき。来る途中に上手くて安そうな店見つけたんだ」

みさき 「うん、行こう」

 

 

美凪 「・・・さようなら、お父さん」

琥珀 「・・・さてと。なんだかわたしだけ目的果たせてませんねー。ほたるちゃんもいなかったし」

セリシア 「・・・・・・」

 

 

思いはそれぞれだった。
そして彼女らも・・・。

佐祐理 「行くんだね、舞」

舞 「はちみつくまさん」

佐祐理 「うん、佐祐理は大丈夫だから。思いっきりやりたいことやってきて」

舞 「・・・佐祐理は?」

佐祐理 「カノンを再建するよ。こんなになっちゃったからね」

王城ミステリアは崩壊。
市街地に被害が及ばなかったのは不幸中の幸いだったが、カノンの無敵神話は潰えたと言っていい。
これからが大変であろう。
権威が失墜した上に、力も大きく衰えた。
十三人いたナイツ・オブ・ラウンドのうち、榊、遠野時谷、氷上シュン、メサルス・リーの四人が死亡。
ゼルデキア、アヌビス、マギリッドの三人が失踪、セリシアが離脱。
残っているのは、佐祐理、一弥、ジークフリード、シュテル、服部重蔵の五人だけだった。

佐祐理 「あははー、実質半分以下になっちゃいましたからね、カノンの戦力は」

舞 「・・・佐祐理」

無理に笑顔を作っているように見える佐祐理を、舞は抱きかかえた。

舞 「・・・・・・」

佐祐理 「・・・ごめん、舞。少し、このままでいいかな?」

舞 「うん」

 

郁未 「当然辛いわよね。知らないうちに父親が死んでたんだから」

さくら 「うん・・・。これからカノンはどうなるのかな?」

郁未 「ま、あの佐祐理とジークがいれば、とりあえず何とかなるでしょう。久瀬って奴に重蔵は、元々佐祐理に期待してたっぽいし」

さくら 「そうだね」

郁未 「・・・で、私達はどうするの? また魔族を追う?」

さくら 「うん、いいかな?」

郁未 「クライアントに任せるわよ、私は」

 

 

 

さやか 「・・・・・・」

エリス 「・・・・・・」

さやか 「ねぇ、どうしてそんなに自分の気持ちは否定しようとするの?」

エリス 「・・・別に」

さやか 「さっきのが本音でしょ」

エリス 「・・・・・・」

さやか 「怖いの? 人を好きになるのが」

エリス 「・・・ええ、怖いわ。自分が自分でなくなりそうで・・・」

さやか 「それが楽しいんだと思うけどな。でも、ま、これであいこだね。負けないよ」

エリス 「・・・・・・」

 

 

 

やることも済んだ。
豹雨とアルドは、ちょっと顔を合わせたらすぐに行っちまった。
相変わらずだな。
斉藤の奴も先に帰ると言っていた。
お姫様達ナイツの連中とは、顔を合わせない方がいいだろう。
間接的とは言え、カノン崩壊に原因になったのは間違いなく俺達だ。

祐一 「さて、帰るか」

芽衣子 「そうだな」

祐一 「・・・・・・」

ふむ。
色々あったといえば妙なこともいくつか。
特にこいつ、橘芽衣子と、何やら大会中に楓さん達が知り合った神月京四郎とかいう奴がついてくるらしい。
芽衣子はまったくよくわからんし、京四郎とやらとは・・・・・・なんか反りが合わん。
何か奇妙な親近感を覚える反面、異様な反発を感じる。
原因はよくわからんのだがな。

芽衣子 「これで終わりではないぞ」

祐一 「それはわかってる」

魔族との一件にはまだ決着がついていない。

今はもう、あの記憶が蘇るような感覚も、血が騒ぐようなこともなくなっている。

多少力の充実はあるが、基本的に俺の力はあまり変わっていないようで、あれは一時的なものだったのか。

いや、一度鍵を開いた扉は、次はもっと簡単に開く。

何かきっかけがあれば、またあの力を使えるだろうという確信があった。

真魔の血・・・か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TO BE CONTINUED

 

 

 

EX的あとがき

さやか(さ):どんどんどんどん〜

琥珀(琥):ぱふぱふ〜

美凪(美):・・・ぱふー

平安京(京):騒がしい・・・

さ:第二部ラストのあとがきなんだからさ、盛り上がって行こう! ってことで、琥珀ちゃんと美凪ちゃんがゲストー

琥:あはっ、どもー

美:・・・もー

京:ま、いいのだがね。とにかく、第二部とも言うべきデモンバスターズEXは、今回が最終回となりました

さ:おめでとー

琥:わーい

美:・・・いぇー

京:まぁ、振り返ってみると、要するに「カノン公国編」だな。それに魔族の話が挟まってる感じで

琥:後半では、第一部で見せ場の少なかったわたし達それぞれにスポットが当たってますね。一方でおいてかれた往人さんや石橋さんはなーんにも見せ場がなかったですけど

美:・・・ご愁傷様

さ:私は引き続き、平均して出番が多かったね。さすがはメインヒロインだよ

琥:でも人気の影響で、かなりエリスさんには押されてるところもありましたねー

さ:むー、私はフェアな精神を心掛けてるんだよ。だから、こっからは遠慮なし。ガンガン祐一君にアタックかけてくよ〜

琥:祐一さんと言えば、EXでは終始活躍してましたね。第一部終盤では散々影が薄いと言われていたのに

京:ま、一応主役だからな

さ:その祐一君の正体も明かされて、いよいよ最終章はそこに絡んでいくのかな

京:敵もさらに強力になるから、EXで活躍した一部の面々も、また出番は減るだろう。というかそうしないと書き切れない。EX終盤もかなり詰め込んでるし

琥:じゃ、そろそろそのEXを振り返ってみましょうか。魔族を除けば最大の敵だったナイツ・オブ・ラウンドを中心に、作者さんのコメントを聞いていきましょー

 

ジークフリード
 ナイツのリーダーにして、名前は早い段階から出ていたけれど実質的な出番は遅く、少なかった人。話的にはいまいち盛り上がりに欠けたかも?

倉田佐祐理・一弥
 この二人に関してはあえて今さら語ることもないでしょうが・・・。裏で色々とエピソードがありそうでいて、話にはあまりそれが出てこない。もし余裕があったら舞や郁未との外伝みたいなのが・・・・・・ないかな・・・。

服部重蔵
 もっとも早く登場したナイツの一人、だったのだが、あまり見せ場はなし。忍者が一人ほしいと思って作ったキャラでしたが、あまり活躍する機会がなかったか・・・。

シュテル
 竜殺しの異名を初期から持たせ、エリスの相手として考えていたキャラ。当初はもっとエリスを追い詰めるはずだったのですが、高まるエリス人気と終盤に消化しなければならないエピソードの増加で、わりとあっさりやられてしまい、しかもエピローグにも出てこない・・・。“水瀬秋子”を倒したカノンSS界では比較的稀有なキャラなのですが (最近はそうでもないかな)。


 当初はただ楓の相手がほしくて、楓に対抗意識を持つというだけのキャラだったのですが、なんだかやたら重いエピソードになってしまったような・・・。

遠野時谷・氷上シュン
 美凪の父親と浩平のライバル、そのまんま二人の相手として用意したキャラです。やはりエピソード数増加によってちょっと話があっさりしてしまった感じもしましたね。

セリシア
 ナイツの中で一番最初に登場し、そして一番出番の多かったキャラ。しかも今後も準レギュラーキャラとして引き続き登場予定。キャラクターとしてはとにかく、子供、その一言ですね。

メサルス・リー
 ナイツの中でもっとも悲惨な扱いを受けているキャラ。とことん小者ぶりを発揮し、斉藤に軽くあしらわれ、最後には呆気なく死んでしまう。なんと空しい・・・。斉藤の引き立て役というつもりが、それすら果たせなかったですね。

マギリッド・T
 色々と裏で暗躍していた、ある意味一番悪い“人間”。彼はこの後もまだ登場するので、さらにそのマッドぶりを発揮してくれることでしょう。

ゼルデキア・アヌビス
 魔族。ということで今後も登場。コメントはまたいずれ。

 

京:セリシア、マギリッド、ゼルデキア、アヌビス以外は、死んだ者は当然として、もうほとんど出てくることはないだろう。お疲れ様、って感じか

さ:ちょっと魔族が目立っちゃって、思ったほど強さを発揮しなかったかな?

京:仕方がないさ。デモンバスターズ級は強すぎる。人間じゃ相手にならないのがほとんどなのだよ

琥:ナイツ・オブ・ラウンドと決着がついた一方、魔族とはまだまだこれからって感じの終わり方でしたね

美:・・・次は魔族編

京:それだけではない。もっと大きく、激しい戦いが・・・・・・

さ:ほほう、それは楽しみだね〜。それではみなさん、デモンバスターズEXの応援ありがとうございました

美:・・・次は、FINAL

京:ファイナルへ向けて、がんばりまっしょい