デモンバスターズEX

 

 

第49話 超魔大決戦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブラッド 「ぐふふ、嬉しいぞ、エリスよ」

凄まじいまでの魔力の波動を受けながら、ブラッドヴェインは余裕の表情を浮かべていた。
圧倒的な力を発するとは言え、ブラッドにとってみればまだまだ子供の領域を出ない。

魔力の波動を中心にいるのは、深緑色の髪をした一人の少女。
エリスなのだが、その姿は15、6の娘のものだった。

ブラッド 「ようやくその姿を得たか。ソフィアよ、我がおまえを見初めた頃の姿に生き写しだ」

閉じていた瞳が開かれる。
エリスの目は、赤く染まっていた。

ブゥンッ!

何の前置きもなしに魔剣レヴァンテインを振る。
衝撃波が放たれるが、ブラッドは軽々とそれをかわした。

ブラッド 「ぐはははっ、暴走している力で我を捉えることはできんぞ!」

エリス 「・・・・・・」

赤と金の瞳に感情はなく、ただ目の前の存在を敵と見なして攻撃を加えている状態だった。
無闇に剣を振り回すため、そこら中に衝撃波が及ぶ。

ブラッド 「どうしたどうした、我はここだぞ!」

尚も攻撃を続けるエリスだったが、もはやその目にはブラッドヴェインの姿すら移っていなかった。
ただひたすらに周りに向かって攻撃を繰り返す。
まるっきりただの破壊者だった。

ブラッド 「ぐふふ、敵味方の判別もつかぬか。まぁよい、今の覚醒は一時的なものだ。その力を自在に操れるようになったなら、また相手をしてやろう。今日はここまでだ」

暴走を続けるエリスを残し、ブラッドは姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バイン 「お疲れさまでございます、魔竜王様」

ブラッド 「ぐふふ、なかなかに楽しめたぞ、バインよ」

バイン 「よろしゅうございました。しかしさすがはエリス様。もしやこの力、魔竜王様よりも上なのでは?」

ブラッド 「ぐわぁっはっはっはっはっはっはぁ! 馬鹿を言え、所詮は子供の力よ」

バイン 「・・・左様でございますね」

この魔竜王ブラッドヴェインの真の力を、バインは知らない。
しかし彼自身の主、オシリスが認めているのだ。
そのオシリスもまた、魔界においては最強クラスの力の持ち主である。
まさしく魔神とは恐ろしい存在と言える。

バイン 「(何しろ、覚醒したばかりであれほどの力があるのですからね)」

魔神とは即ち、真魔の血脈のことを指し示している。
魔族にとって、この真魔の血脈が持つ力は絶対であった。
中にはそれ以外の形で魔神と呼ばれる力を得た者もいるが、魔界における力の優劣はこの血の濃さで決まると言っていい。
より真魔の血が濃い者がより強い力を手に入れる。
つまりどう足掻いても、バインやゼルデキアでは、オシリスやブラッドヴェイン、シヴァなどには及ばないということだ。
そして、エリスや祐一にも。

バイン 「(しかし、それでいい。私は、真魔の血脈たるオシリス様に仕えることを誇りに思っていますからね。そして、あなた様なら、そのオシリス様すら従える器だと思っていますよ、祐一様。間違いなく・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・なーにを暴れてやがるんだか、あいつは。

眼下には敵などいないにも関わらずがむしゃらに剣を振り続けるエリスの姿。
何故か背が少し伸びているような気がするが、今は些細な問題だ。
とりあえず、あのパワーだけはやたらにあるあいつをどうやって押さえるか・・・。

祐一 「・・・やっぱ、力ずくしかないか。そろそろ振り出す頃だし」

空を見上げる。
黒い雲から雷は消え、代わりに白いものが落ち始めている。
吹雪が降りてくるな。

祐一 「氷魔無限陣。行くぞ、エリス」

氷魔剣を振り上げる。
力は充実している。
行けるな。

祐一 「来い、氷の隕石!」

雲が割れる。
頭上から、直径数十メートルはある氷の塊が落下してくる。
それはエリスを中心に置く竜の幻影を押しつぶす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズズンッ!!!

 

突然の出来事に、誰もが呆然としていた。
雲が割れたと思ったら、上から巨大な氷の塊が降ってきて竜の幻影を押しつぶしたのだ。
これで驚くなという方が無茶である。
もっとも、わりと落ち着いている面々もいる。

さやか 「豪快だね〜」

アルド 「ええ、まったくです」

豹雨 「へっ、やるじゃねェか」

 

 

 

 

 

 

 

 

祐一 「少し頭を冷やせよ」

氷の落下によって辺りは崩れ落ち、同時に凍りつく。
一瞬にしてここら一体は俺の世界に変わった。

バリンッ!

落下した氷の一部が砕ける。
まぁ、これくらいで終わるとは思ってなかったけどな。

エリス 「・・・・・・」

祐一 「・・・・・・」

睨んでる。
前に一度だけ見た、あの攻撃色をした赤と金の瞳で。
どうやらまだ寝惚けてるらしいな。

祐一 「力を持て余してるのかよ。いつも俺に、もっと冷静になれとか言ってるくせに情けないな」

エリス 「・・・・・・」

祐一 「見た目が大人になっても、おまえはやっぱりチビガキだな」

ヒュンッ

剣が振られる。
咄嗟の判断で避けて正解だった。
威力が桁違いで、直前まで俺のいた辺りが吹き飛んだ。

祐一 「どうした! いつもみたいに、ガキ言うなバカ、って返してみろ!」

エリス 「・・・・・・」

こっちの話に耳も傾けず、エリスはさらに攻撃を加えてくる。
あいつが剣を使うところははじめて見たな。
しかもどうやら、とんでもない代物らしい。
こりゃ、締めてかからんと。

祐一 「そっちがその気なら・・・」

今日はすこぶる調子がいい。
だから大盤振る舞いだ。

祐一 「喰らえっ、アブソリュート・ゼロの一撃。氷魔滅砕!!」

いきなりこいつからだ。
絶対零度の冷気の渦がエリスを飲み込む。
本来ならこの一撃をまともに受けて無事でいられるはずはないが・・・。

ドンッ!

やはり、今のエリス相手では不十分か。

エリス 「ガァアアアアアアアアア!!!!!」

まさしく獣の咆哮だな。
気の弱い奴なら、これを聞いただけでお陀仏かもしれん。
だが、俺をなめるなよ。

祐一 「おおおおらぁあああああ!!!!!」

エリスの咆哮には魔力があり、それ自体が物理的な衝撃をもたらす。
だからこっちは冷気の塊で返してやる。

ドバァンッ!!!

二つの衝撃波が空中でぶつかり合う。
その余波を受けながら、俺もエリスも相手に向かって突進していた。

祐一 「おらよぉっ!」

エリス 「!!」

ギィンッ

剣が交わる。
それだけで大気が震えているようだ。
我ながら呆気に取られるほどのパワーだな、お互いに。

ガキッ ギィンッ

もっとも、パワーだけなら向こうが上か。
それは以前からと変わらない。

祐一 「だがな、ここは俺の無限陣の中だぜ」

絶対零度のバトルフィールドにおいては、俺は無敵だ。

祐一 「舞えっ、雪の竜巻!」

凝縮された冷気が下からの上昇気流に乗って渦を生み出す。
竜巻となったそれがエリスの体を飲み込み、上へと押し上げていく。

祐一 「一つの渦に逆回転の渦をぶつけるとどうなるかな? 試してみるか。氷魔滅砕!」

エリスのいる辺りに向かって今日二発目の氷魔滅砕を放つ。
二つの渦は空中でぶつかり、反発しあいながら凄まじい破壊力を生み出して空気を切り裂いていく。
あの中心にいるエリスはひとたまりもないだろう。

祐一 「? ・・・・・・やべっ!」

 

ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!

 

今のは・・・ドラゴンブレスか?
威力が桁違いじゃねぇか。
あんなものまともに喰らったら、雪の鎧だって何の役にも立たん。
ほんとにパワーはピカ一だな。

エリス 「・・・・・・」

祐一 「・・・まったく、世話の焼ける奴だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

もはや言葉もない。
見ている者達はただただ、その戦いの凄まじさに呆然とするのみだった。
まさにそれは、人の領域を遥かに超えた、魔の戦いだった。

楓 「・・・すごい」

豹雨 「勝手に楽しみやがって」

興奮に打ち震える者達もいる。

アルド 「・・・・・・」

斉藤 「・・・・・・」

舞 「・・・・・・」

郁未 「・・・まさに、地上最大の戦い、とでも呼ぶべきかしらね」

それは決して大げさな表現ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

祐一 「うぉおおおおおお!!!!」

エリス 「ッッッッッ!!!!!」

ギィンッ!

一回交差するたびに凄まじい衝撃が巻き起こる。
それが天を震わせ、地を揺るがす。

極限の戦いの中で、俺はたぶん、笑みを浮かべている。

エリスも、表情はないが、体から喜びが窺える。

戦うことの喜び。
それを俺達は今感じている。

今のこの時間が、楽しい。

祐一 「エリスっ!!!」

エリス 「っ!!」

だが、決着はつけなくちゃな。
ここまで来た以上、勝負を決める。

ドンッ!

渾身の力を込めた一撃を上から叩き込む。
まともに喰らったエリスの体は落下していき、地面に叩きつけられてクレーターを作る。

 

 

 

 

郁未 「決まった?」

楓 「どうだろう・・・・・・・・・あれ、さやかちゃんは?」

 

 

 

 

祐一 「ふぅ・・・・・・・・・」

さすがにかなりの力を使ったな。
だがどうやら、俺の勝ちか。
無限陣も、もう維持するのは無理だ。

ボコッ

エリス 「・・・・・・」

祐一 「うわ、まだ動けたのか」

地面の下からエリスが姿を現す。
なんてタフな奴だ。

エリス 「!!」

まだかかってくるのか!
もう剣もないし、素手で飛び掛ってくる。

祐一 「このっ・・・」

二人もつれ合って転がる。
さすがにエリスもパワーダウンしてるが、それは俺も同じことだ。
馬鹿力で押さえつけやがって、この・・・。

しかし・・・なんか、この体勢って・・・。

さやか 「あーーーっ! エリスちゃんが祐一君のこと押し倒してる!!」

そう、そんな感じだ。

エリス 「なっ、だ! 誰がよっ!!」

って、正気に戻るし、今ので。

エリス 「え? へ、あれ、ちょっと、何やってんのよっ、あんたは!」

ごつんっ

祐一 「・・・いてぇ・・・」

何故俺が叩かれる?

さやか 「う〜、二人の関係がそこまで進んでたなんてぇ」

エリス 「ち、違うわよっ! どうしてアタシが・・・」

さやか 「ずるいよエリスちゃん!」

エリス 「ず、ずるいって何よ!? あんただって祐一とキスしてたでしょ!」

さやか 「あーっ、さっき覗いてたのってエリスちゃんだったんだ! いやらしい〜」

エリス 「べ、別に見たくて見てたわけじゃないわよっ! たまたまよ! だいたいそんなことどうだっていいでしょ!!」

さやか 「意地っ張りだね〜。今だって散々暴れても正気に戻らなかったくせに、祐一君とのこと指摘したらすーぐ戻って。もういい加減認めちゃったら〜?」

エリス 「な、何のことよ!?」

さやか 「惚けない! エリスちゃん、祐一君のこと・・・」

エリス 「ストップストップ!! それ以上変なこと言ったらぶっとばすわよっ!」

さやか 「もう、素直じゃない! こうなったら世界中に言いふらしてやる! エリスちゃんは祐一君のことが・・・」

エリス 「やめろーっ!」

さやか 「じゃあ認めなさいっ。私は祐一君のことが好きだよ!」

祐一 「・・・・・・は?」

なんか、妙なことを聞いたような・・・。

さやか 「そっちにその気がないなら、祐一君は私がもらっちゃっていいんだね!?」

エリス 「それは・・・!」

さやか 「どうなのよ!?」

エリス 「だ・・・・・・ダメよっ! それは許さないっ。だってアタシは・・・アタシだって・・・・・・」

さやか 「何!?」

エリス 「アタシだって祐一のことが好きだからよ!!!!!」

祐一 「・・・・・・・・・」

さやか 「・・・・・・・・・」

エリス 「・・・・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あー、とりあえずだ。

空、晴れてきたな・・・。

あと、腹減ったな。

・・・これは現実逃避か?

っていうかようやく、色々合点がいったかもしれん。

人間自分の周りのことはよくわからないものだな・・・。

祐一 「・・・・・・」

ま、いいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく