デモンバスターズEX

 

 

第27話 カノン大武会予選乃三

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大会三日目。

 「それではこれより、予選Dブロック決勝戦を開始します!!」

 

わぁああああああああああああああ!!!!!!!

 

初日、二日目を上回る熱狂。
やはり本戦出場決定戦ともなると、見るほうも気合が入るということか。
既にA、B、Cブロックの決勝は終わっており、美坂チーム、ノワール・ムーン、エルヴンブレードがそれぞれ本戦に勝ち進んだ。
続いて行われるのが、俺達のDブロック・・・・・・。

 「対戦チームは、あんまんチームとチームB・I・D♪ どちらもめっぽう強いクールな美形剣士に美少女二人という構成です!」

まぁ、間違ってはいないが・・・。

何やら久瀬ジジイが観客に向かって解説をしているが、そんなことはどうでもいい。
俺達両チームの選手は既に相手のことだけを・・・・・・。

澄乃 「腹が減っては戦はできぬ〜、ということであんまんだよ〜」

さやか 「みんな〜、応援よろしくね〜」

見てないし。
まぁ、あの二人は放っておこう。

祐一 「・・・・・・」

エリス 「・・・・・・」

 

豹雨 「・・・・・・」

 

黙ってこっちを見てるな、豹雨。
顔を見ればわかる。
俺達が挑んでくるのを、楽しみにしている。
いいさ、望みどおり楽しませてやるよ。
存分にな。

 

 「それでは、両チーム先鋒、前へ!」

うちの先鋒は昨日決めたとおり、さやか。
相手は、澄乃だ。

さやか 「やっほー、よろしくね〜、澄乃っち〜」

澄乃 「よろしくお願いしますだよ〜、さやかっち〜」

祐一 「だからやめいと言うに」

さやか 「硬いこと言いっこなしだよ、ゆういっち〜」

誰だ、その得体の知れない名前の奴は。

さやか 「ね〜、エリ・・・」

エリス 「エリスっちとか言いやがったらまずあんたからシメるわよ」

さやか 「ぶっぶ〜、正解はエリっち〜」

エリス 「・・・・・・」

祐一 「まぁ、とりあえず落ち着け」

エリス 「アタシは冷静よ」

まったく試合前だっていうのに。
下らんことで時間を使うなよ。

澄乃 「もっと略して、ゆうっち〜、エリっち〜、さやっち〜、とか?」

さやか 「いいね〜。そっちはすみっちだね」

いい加減にせい、おまえら。

 

 「え〜、こほん・・・・・・それでは、はじめ!」

ナイスだ審判。
無視して試合を始めちまえ。

 

さやか 「もうちょっと遊びたいけど、仕方ないね。じゃあ、いっくよ〜!」

まず先に仕掛けたのはさやか。
おなじみのフレアビットを周囲に発生させる。
そのうち数発が澄乃目掛けて飛ぶ。

澄乃 「えうっ!?」

さっと横に跳んで澄乃がかわす。
・・・・・・いや、颯爽とかわしたとは言いがたい、無様に頭を抱えて逃げたと表現するのが正しいんだが。

 

祐一 「あいつ、本当に強いと思うか?」

エリス 「潜在的な能力は、神族だから当然高いだろうけど・・・・・・戦闘に関してはほとんど素人と見たわ」

 

澄乃 「あ、危ないよ?」

さやか 「そりゃまぁ、そういうものだからね」

澄乃 「ぷんぷんだよ〜」

さやか 「そうかわいいと、怒っても怖くないね」

澄乃 「え、かわいいだなんて〜」

ぽわんとしている。
そこへ再びさやかによる火炎球攻撃が・・・・・・。

澄乃 「えう〜〜〜」

おー、逃げる逃げる。
あ、こけた。

澄乃 「えうっ!」

その頭上を火炎球が通過していく。
今のは、偶然、なのか?

 

エリス 「なるほどね」

祐一 「何が?」

エリス 「運も実力の内ってことよ。神族ともなると、事象の因果律に直接干渉して偶然を誘発させる。つまり平たく言えば幸運がつきまとうってことね」

祐一 「なるほど」

 

わかったようなわからんようなだが。
とにかく、あいつは凄まじいラッキーガールということだ。
実際、さっきからさやかが連続してフレアビットで攻撃していながら、まだ一発も当たっていない。
あんなに無様に逃げ回っているだけに見えるのに。

さやか 「埒が明かないね。なら、これで・・・」

一旦さやかが攻撃の手を止める。
続いて特大の火炎球を作り出す。
その大きさたるや、どんどん膨らんで、リングの半分を超えた。

澄乃 「え、えう〜・・・・・・お、大きいよ?」

さやか 「うん、大きいよ♪」

あれは、紙一重で避けるなんてことのできる代物じゃない。
何とかしないと、今度は当たる。

さやか 「ジャイアントフレア!」

巨大火炎球が放たれる。
迫り来る炎の壁を前に、澄乃はおろおろしている。

澄乃 「えう! えう! えう〜〜〜!!」

このまま成す術なく吹っ飛ぶか?

澄乃 「う〜〜〜、え〜〜〜〜〜〜〜いっ!!!」

観念したか、それとも無意識の成せる技か、澄乃は火炎球に向かって両手を突き出す。
そこに力が集中して・・・・・・。

 

ドンッ!!!!!

 

何かが爆発的な勢いで弾けた。
あれは、風か?

さやか 「わぁっ!」

風が荒れ狂う。
中には雷撃も混じっているようだ。
さすがは龍神・・・。

さやか 「わっ、うわっと、わわ〜〜〜」

今度はさやかが逃げ回る番だった。
既にリング上には、いくつもの小さな竜巻が生じている。
リング際に追い詰められたさやかは、何とか対処しようとするが、その前に竜巻に追い立てられる。

さやか 「も、もうだめ〜〜〜」

そして、逃げた。
場外に。
負けか・・・・・・。
と、思ったが・・・・・・・・・。

澄乃 「え〜〜〜う〜〜〜〜〜、と〜ま〜ら〜な〜い〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

よく見れば、術者本人が竜巻の勢いに巻き込まれて回っていた。
そして場外へまっ逆さま・・・・・・。

・・・・・・はぁ・・・。

 

 「り、両者場外! よって、この試合は引き分けとなります!」

 

愚かな・・・・・・。

 

 

 

 

 

 「続けて、第二試合!」

こちからリング上へ上がるのはエリス。
場外に逃げたさやかは俺のところまで戻ってきた。

さやか 「いや〜、なかなかおいしい子だね」

祐一 「本物の天然だな」

ボケっぷりでさやかや折原を凌駕しているような気がした。
その意味では、恐るべし澄乃。
まぁ実際、あのパワーは凄まじかったけどな。

 

エリス 「やれやれ、とんだ茶番だったわ」

しぐれ 「妹がはしたないところをお見せしました」

エリス 「そうね。その分あなたが楽しませてくれるかしら?」

二戦目はエリスとしぐれ。
彼女のことはまだ全然知らんが、妹の澄乃とは正反対の性格って気がする。

 「はじめ!」

試合開始だ。
まず最初に仕掛けて行ったのはエリス。
正面から突っ込んでいった。

ズガンッ

魔力を込めた高速の一撃がリングの石版を抉る。
相変わらず、あの小さな体のどこにそれだけのパワーがあるのかわからないほどの威力だ。
しかし今、エリスの狙い、外れたか?

しぐれ 「・・・・・・」

相手はびっくりした表情をしているが、体がエリスのいる方と反対側に少しかしいでいる。
避けたようには見えなかったが・・・・・・いや。

エリス 「・・・ふぅん」

すかさずエリスが第二撃に移る。
今度は至近距離から軽い一撃。

パァンッ!

何かが弾けるような音。
エリスの繰り出した突きと、しぐれが差し出した掌との間で起こったものか。
あれでエリスの攻撃を弾いたのか?

しぐれ 「・・・・・・」

エリス 「なら、これでっ!」

続けてエリスの攻撃。
右から左から猛烈なラッシュを放つ。
激しい攻撃に、しぐれは防戦一方だが、あの嵐のような攻撃をまだ一発も喰らっていない。

 

さやか 「やるね」

祐一 「少なくとも澄乃よりはな。しかもわかりにくいが、エリスの攻撃を防いでるあの掌にはさっき澄乃が大暴れした時に匹敵するほどの魔力が込められている。エリスの攻撃を防いでるのはそのためだ」

 

力を一気に放出していた澄乃とは違い、効率的な力の使い方と言える。
ただ、前に出ることはできずにいるな。
エリスの猛攻がそれを許さない。

エリス 「防御だけじゃ、勝てないわよ!」

一旦距離を置いたエリスのドラゴンブレスが炸裂する。
あれは回避も防御も難しい技だ。
もし俺があれと相対するとしたら、吹雪きでも出して相殺するしか・・・。

 

ビョォォォォォォ!!!

 

エリス 「!!」

祐一 「あれは!?」

今まさに俺が考えたエリスのドラゴンブレス対策。
それとまったく同じことをしぐれはやった。
吹雪・・・・・・。

そしてそれがわかると、しぐれが先ほどまでエリスの攻撃を防いでいたからくりも見えた。
掌に冷気の層を作って防御していたのだ。

 

さやか 「祐一君と同じだね」

祐一 「そうみたいだな」

 

俺と同質の能力。
水、雪、氷、冷気、そういったものを操る力か。

エリス 「なるほどね」

しぐれ 「今後は、こちからから参ります」

氷の塊が無数にしぐれの周りに出現する。
それらがエリス目掛けて飛ばされる。

エリス 「!!」

最初の一発はかわした。
リングに着弾した氷は、一瞬にしてリングの一部を凍りつかせる。
相当な冷気が凝縮されているな。

エリス 「やるわね。けど、その手の能力は対策済みなのよ」

それはつまり、俺対策ということか。

 

さやか 「対策済みだって」

祐一 「それを言うなら、俺だって対策はできてる」

 

俺達は、いつ互いに戦ってもおかしくない間柄だった。
だからいつそうなってもいいよう、常に身近で戦っていた他の連中の戦い方を研究している。
エリスもアルドも、楓さんも、そして豹雨もな。

エリス 「一気に行かせてもらうわよっ、はぁあああ!!!」

大量の魔力が放出される。
あいつのあの魔力の総量は、俺達の中でも随一だ。

しぐれ 「・・・・・・っ!」

だが、しぐれも負けていない。
神族というだけあって、人間よりも明らかに魔力の量が上だ。
双方の力が中央でぶつかって、弾ける。
その余波で突風が発生した。

エリス 「もらった!」

それでできた隙をついて、エリスが追い討ちをかける。
正面からの突撃を、しぐれは前面に冷気の壁を集中させることで防御した。
あいつの攻撃を正面から完全にガードするとは、さすが神族だな。
もっとも、エリスの攻撃はそれで終わらない。

エリス 「でやぁぁぁぁっ!!」

防御されてもお構いなしの連撃。
一見するとしゃにむに攻めているだけだが、その実何発かは意図的に外している。
左右へ逃げ場を無くすように攻撃して、しぐれを徐々に後退させているのだ。
背後にあるのは、場外だ。

しぐれ 「・・・・・・」

エリス 「・・・・・・」

攻防が続く。
あっという間にしぐれはリング際に追い詰められた。
ここが勝負の分かれ目か。

 

祐一 「次で決まる」

さやか 「だね」

 

最後の一撃をエリスが放つ構えを見せる。
しぐれはそれを防いでリング際を抜ける隙を窺っている。
タイミングが勝負か。

エリス 「ハッ!」

しぐれ 「え?」

だが、こういう時の化かし合いはエリスの得意技だ。
あいつの狙いは、しぐれ本人ではなく、その足元。

ズンッ

リングを割る一撃が増したに入る。
石版が砕け、その余波が周囲に突風を起こした。

しぐれ 「きゃっ」

当然それにしぐれも巻き込まれ、後退させられる。
そこはリング際なのだから当然、足を踏み外して落ちる。

どさっ

しぐれ 「・・・・・・」

場外にしりもちをついた状態できょとんとしているしぐれ。
してやったりという表情でリング際に立つエリス。
勝負ありか。

 「場外! エリス選手の勝利!!」

エリス 「実戦だったら、違った結果だったかもしれないけどね」

下にいるしぐれに向かって手を差し伸べるエリス。
その手を掴んで、しぐれは立ち上がった。

しぐれ 「いえ、実戦であったなら、勝負にもならなかったでしょう」

エリス 「ふっ」

エリスは決して手を抜いていたわけではないが、やはり試合ということで、実戦に比べれば攻撃が甘かった。
実戦だったなら最後みたいなトリッキーな勝ち方はなかったが、でも結局はエリスが押し切っただろう。
その辺りは、経験の差だな。

 

さて、いよいよあちらさんの大将、豹雨のお出ましだ。

エリス 「祐一」

祐一 「ん?」

エリス 「このまま続行したいところだけどね、さすがに結構疲れたから、タッチ交代」

確かに、思った以上にしぐれは強かった。
一方的に勝利したようでいて、ずっと攻撃していたエリスはわりと消耗している。
俺達の戦いはまだこれからが本番なのだから、ここでエリスまで豹雨と戦う必要はない。

祐一 「んじゃ、行ってくる」

エリス 「ええ」

さやか 「いってらっしゃ〜い」

 

 

 

澄乃 「豹雨ちゃん、がんばってだよ〜」

しぐれ 「ご武運を、豹雨様」

豹雨 「ふっ」

送り出す二人に軽く笑みを見せ、豹雨がリングに上がる。
あの三人がどういう経緯で知り合ったどういう関係かは知らないが、なかなか二人のことを気に入ってるみたいだな、あいつは。
何となく観客席の方からまたまた不穏な気配を感じるが、俺は知らんぞ。
そもそも昔から豹雨の女癖は結構悪い。
楓さんの目の届かないところで色町なんかによく繰り出して・・・・・・アルドはその手のことに興味なかったから、俺がよく付き合わされた。
ガキを色町に連れ込むなよな・・・。
豹雨自身は別に楓さんにばれたってどうということはなかったのだろうが、俺は隠すのにひどく苦労した。
思えばどうして俺が苦労をしなくてはならなかったのやら。

ま、それはさておき。

リング中央で、俺と豹雨が対峙する。

豹雨 「少しは腕を上げてきたか?」

祐一 「当然だろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく