デモンバスターズEX

 

 

第25話 カノン大武会予選之一

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

首都ミステリアまでやってきて早九日。
今日はカノン大武会の初日だ。

ボンッ ボンッ ドドンッ

あれは花火の音だな。
建物に遮られててここからは見えないが、まるでお祭り騒ぎだ。
いや、見物人にとっては実際お祭りなのだろう。

エリス 「光と影、ね。まさに」

祐一 「?」

エリス 「表向きはお祭りそのもの。けどこの大会の参加者には、他国の騎士団や諜報機関の人間、見物人には各国の首脳がやってきている。水面下では国と国との駆け引きが行われているのよ」

祐一 「なるほどな。けど、この盛り上がりは凄まじいな。これだけでカノンの国力が知れるってものだ」

エリス 「内外にカノンの国力を示すデモンストレーションでもあるのね」

こんな巨大な国を、僅かな人数で潰そうとしている俺らは、滑稽だな。
もっとも、だからこそおもしろい。

エリス 「それで、大会の方はどうする? 中にさえ入れれば、後は勝っても負けてもどっちでもいいんだけど」

祐一 「状況次第で適当にやるさ。試合の方は、張り切ってるあいつに任せておけばいい」

さやか 「おいっちにー、さーんしー」

目的をわかっているのかいないのか、やる気満々のさやかが準備運動をしている。
まぁ、予選の相手程度はあいつ一人で充分だろう。

祐一 「おい、さやか」

さやか 「なに〜?」

祐一 「試合は任せるが、あんまり手の内を見せるなよ。どこで敵が見てるかわからんからな」

さやか 「わかってるって〜」

一抹の不安はあるが、大丈夫だとは思う。
こいつも馬鹿じゃないからな。

他の連中はどうしてるかな。
予選で同じブロックに当たらなければいいが。
当たったらその時はその時だが。

エリス 「そろそろ時間ね。行くわよ」

祐一 「ああ」

 

 

 

登録は数日前に済ませてある。
その後厳正な抽選とやらで予選のブロックが分けられるらしい。

 「こちらが予選のトーナメント表になります。皆様のDブロック控え室へは、そちらの通路からどうぞ」

受付の人に教えられた通路を通って、Dブロック選手控え室と書かれた部屋に入る。
かなりの広さがある控え室で、ざっと見渡しただけで百人ほど。
トーナメント表を見る限り、このブロックには30チームいるらしいから、こんなものだろう。。

さやか 「他のみんなはどこかな?」

祐一 「見たところいないが・・・チーム名で登録してあるんじゃわからないからな」

エリス 「そうでもなさそうよ」

表に目をやる。
Aブロックの初戦のところ・・・・・・美坂チーム・・・・・・。
・・・楓さん・・・チーム名にしたって安直過ぎだろう。
楓さん関係ないし。

エリス 「あの馬鹿・・・・・・っていうか、うちらのチーム名って何?」

祐一 「さやかが決めたから知らんぞ」

さやか 「これだよ、これ」

まさか、ラブリーバーニングとかなんとかそういうんじゃないだろうな?
えー、さやかが指してるのは・・・・・・チーム“B・I・D♪”・・・。

祐一 「“B・I・D♪”?」

さやか 「バーニング(Burning)、アイス(Ice)、ドラゴン(Dragon)。三人それぞれを示す言葉の頭文字を取ってみました」

ま、いいけどな。
♪がついてるくらいは許容範囲だ。
ラブリーとかついてなければ。

さやか 「ラブリーソルジャーズとどっちにするか迷ったんだけどね」

迷ったのかよ。

エリス 「ま、チーム名なんてどうでもいいけど、もう一方も結構わかりやすいわよ」

Fブロック・・・・・・お笑いトリオチーム・・・。
今回はお笑いはなしじゃなかったのかよ、折原。
まず間違いないだろうな。
あいつらがまともなチーム名をつけるとは思えないし。

とりあえず、俺達3チームは別々のブロックに分かれたな・・・・・・ん?
これは、チーム“ノワール・ムーン”・・・ってあいつらそのまんまかよ。
Bブロック。
分かれたな。

祐一 「予選で知り合いと当たる心配はなさそうだな」

エリス 「今日は全ブロック一回戦のみね。とりあえず様子見ってことで、目立つ行動は控えるわよ」

祐一 「だな。わかったか、さやか」

さやか 「はーい」

 

?? 「あ〜〜〜」

 

祐一 「ん?」

どっかで聞いた声。
誰かが走ってくる。

あ、こけた。

ずしゃぁーーー

澄乃 「えう〜〜〜」

祐一 「何やってんだ、おまえ?」

澄乃 「えっと・・・祐一さんが見えたから走ってきたんだけど・・・・・・」

それで転んだ、と。
ドジな奴。

祐一 「ほれ」

澄乃 「えう〜、ありがとうだよ〜」

手を貸して立たせてやる。
今日もあんまん持参だ。
転んでも手放さないとは見上げた根性だな。

さやか 「どちらさん?」

祐一 「カノンに来てから知り合ったあんまん命少女だ」

澄乃 「そう、あんまん命少女だよ〜」

いや否定しろよ。
事実なのはわかるが、紹介される際の名前としてはどうかと思うぞ?

祐一 「澄乃だそうだ」

澄乃 「澄乃だよ〜。澄乃っち」

さやか 「よろしくね〜、澄乃っち。私はさやかっち」

澄乃 「よろしくね〜、さやかっち〜」

祐一 「やめい」

みんなで――っちになられては敵わん。

祐一 「ていうか澄乃、向こうで姉貴が呼んでるぞ」

澄乃 「あ、そうだったよ〜」

澄乃の姉、確かしぐれと言ったか。
それが少し控えめな視線をこっちに送っている。
気付いた澄乃がそちらに向かって走る。

澄乃 「バイバイだよ〜、祐一さん」

祐一 「ああ」

しかし、ここにいるってことは、あいつらも選手なのか?
言っちゃ悪いが、強そうには見えん。

エリス 「・・・・・・」

祐一 「どうした?」

エリス 「・・・あの二人、上手く化けてるけど、人間じゃないわね」

祐一 「何?」

エリス 「魔の気配はしない・・・・・・精霊よりも高位・・・ひょっとしたら神族かも」

神族だと?
天界に住むという魔族の対極。
あいつらが?

エリス 「あくまで、かも、だけど」

祐一 「・・・もしかすると強敵かもしれないな」

もし本当に神族なら、見た目に騙されることはできないか。
このDブロックの難敵、ってところか。
1チーム三人だから、もう一人いるってことだし。

 

 

わぁあああああああ!!!!!!

 

 

お、開会式が始まったか。
会場の方が騒がしくなってきた。

お、魔法で映像を投影する機械か。
さすがにカノン公国、しゃれたものがありやがる。
控え室にいながら会場の様子がわかる。

 『お待たせいたしました! これより、カノン大武会を開催いたします! 解説はご存知、大武会を見続けて四十年の大老、久瀬孝明さんにお願いします』

久瀬老 『よろしく』

へぇ、あれが大老の久瀬か。
息子は親衛隊隊長っていうカノン公国の重鎮だ。
本人の実力は決して高くないが、どんな相手の強さも瞬時に見抜く眼力は凄まじいとの噂だ。
なるほど、大会の解説にはもってこいだな。

 『ではここで、久瀬老に今大会の注目チームをいくつか挙げていただきましょう!』

久瀬老 『そうですな。まずAブロックでは・・・美坂チーム、ビッグファイターズ、月光チーム、チーム飛び影、レッドブレイカーズなど、なかなか強豪揃いですね。激戦区と思われます』

 『この中で、美坂チームは無名のチームですが、強いですか?』

久瀬老 『未知数と言ったところですな。女性のみのチームと思って侮ると、痛い目を見るでしょう』

ふ〜ん。
なかなか見る目がある。
あの爺さんは登録の際に見かけた奴だろうが、その時見ただけで的確な分析だ。

久瀬老 『Bブロックでは・・・・・・・・・』

ノワール・ムーンの名前も挙がった。
続けてCブロックではエルヴンブレードとかいうチームが最有力らしい。

久瀬老 『Dブロックですが・・・・・・ここで注目は2チームです』

 『ほほう、見れば前の大会で活躍したチームもいますが、たった2チームですか?』

久瀬老 『おそらくレベルが違うでしょう。その2チームとは、あんまんチームとチームB・I・D♪です』

 『大本命ということですね?』

久瀬老 『はい。チーム名に騙されてはいけません。この2チームは、強いですよ』

・・・・・・なんだか、早くもマークされてるよ。
やるねぇ、あのジジイ。
続いてEブロックの本命は無双チーム。
そしてFブロックではいくつかのチーム名とともに、お笑いトリオの名も挙がっていた。

 『以上を持ちまして、久瀬老による有力チーム紹介を終わります。ではさっそく、各ブロックの一回戦第一試合、いってみましょう!!』

 

わぁあああああああああ!!!!!!!!

 

盛り上がってきたな。
どうやら控え室から会場にも出られるらしい。
試合用ゲートと、観戦用ゲートに分かれている。

エリス 「アタシ達の試合は後の方だし、見に行っとく、他の連中の試合」

祐一 「そうだな」

うちらのブロックの注目チーム、あんまんチーム(たぶんあいつのチームなんだろうな、いや間違いなく)は一回戦はシードになっているから試合はない。
他はこうやって見渡しも、俺達の敵はいない。
見ておく必要はないだろう。

祐一 「まずはAブロック見に行くぞ」

初戦が栞達。
気になる。

 

 

 

 

やってきましたAブロックの試合会場。
初戦から美坂チームとビッグファイターズという、久瀬老が挙げた注目チーム同士の戦いということで、観客が熱い。
どうやら久瀬老の眼力は皆信用しているみたいだな。

ビッグファイターズはその名が示すとおり、大柄な男達によって構成されたチームだ。
持っている武器もバトルアックスだったり、ハンマーだったり大剣だったりと、まさにパワーファイターズ。

対する美坂チームの先鋒は栞。
こうして見るとまさに大人と子供だな。

 

大男1 「俺の相手はお嬢ちゃんかい」

栞 「はい、よろしくお願いします」

緊張はしてないみたいだな。
まぁ、俺と常に実戦形式で戦ってきたし、曲がりなりにもあのアルドと対峙したことのある栞だ。
あんな雑魚相手に怯んだりはしないだろう。

 「はじめ!」

審判の合図で試合が開始される。
栞の武器はいつもの刀で、相手はバトルアックス。
パワー勝負ではどちらに分があるか明白だ。
なら、どうする、栞?

栞 「・・・・・・」

大男1 「これも試合だ、怪我しても恨むなよぉぉぉ!!!」

巨大な斧を振りかぶって突進してくる相手。
その動きを栞は落ち着いて見ている。

栞 「(パワーは要注意ですけど、動きなんて祐一さんに比べれば止まって見えます!)」

ズンッ!

アックスの一撃がリングの石版を割る。
それを栞は完璧に回避していた。
懐に入り込めば栞有利だが、その辺りは相手もさすが注目チーム。
簡単にはやらせてくれない。

大男1 「おらぁっ!!」

ブゥンッ

叩きつけたアックスを横薙ぎにする。
バックステップでそれをかわした栞が、改めて懐に入る機会を窺う。
なかなか白熱した試合運びだな。
観客も大喜びだ。

その後も大振りに見せかけてなかなかのテクニックを見せる大男の攻撃と、それをかわしながら隙を窺う栞との駆け引きが続く。
相手の腕も悪くないが、栞はほぼその動きを見切ったな。
その上でどう決める?

栞 「・・・・・・(次で決めます)」

大男1 「とりゃぁぁぁ!!!」

大降りの一撃が来る。
好機だな。

栞 「やぁぁぁ!!!」

斧が振り下ろされるよりも速く、栞が突っ込む。
上から降ってくる斧に向かって、刀を振り上げる。

ギィンッ!

斧の柄が半ばから断ち切られる。
飛んでいった斧の先が場外に落ちる。

大男1 「!!」

栞 「ハッ!!」

バキッ

武器を失った相手の顔面に、栞の峰打ちが入る。
決まったな。

 

 「勝者! 美坂栞ーーー!!!」

 

わぁああああああああああ!!!!!!!!!

 

おお、おお、盛り上がってるな。
とりあえず、及第点はやるぜ、栞。

 

 

ハンマーを使う二人目も栞が倒し、三人目で香里に交代した。
哀れ大男2、台詞一つも無し。

大男3 「俺を前の二人と一緒だと思うなよ」

香里 「そう。あなたも、あたしを妹と同じだと思わないことね」

栞は体力温存で交代したか。
香里の力、あの姉妹対決以後どう変わったか。

 「はじめ!」

大男3 「おぉおおおぉぉぉぉ!!!!」

速い。
確かに前の二人とは違うようだが。

香里 「はぁあああ!!!」

速さで言えば、香里の方が格段に上だ。
パワーでは上回っているだろうが、どんなパワーも当たらなければ意味がない。

ズンッ

大剣がリングを砕くが、香里はその時既に相手の背後に回っている。

ヒュッ ザシュッ

大男3 「ぐぉ・・・!」

香里の剣が二閃三閃して大男の体に傷をつける。
どれも致命傷にはほど遠いが、狙いは正確だ。
あいつにその気があれば、今の攻撃で相手は戦闘不能になっている。

大男3 「やるな・・・だが!」

もう、勝負はあったな。
あの男に、今の香里は倒せん。

大男 「かぁああああ!!!!」

攻撃を繰り返すが、それは全て香里に見切られる。
そして香里の反撃。
剣が閃く。

大男3 「ぬぉ・・・・・・一瞬で剣を三回も振るとは」

五回だよ。
まだ香里の奴本気の速さじゃないな。
今のが見切れないようじゃ、あの男は香里の足元にも及ばない。

香里 「これで終わりよ」

ザシュッ

大男3 「ぐわぁぁぁぁ・・・・・・・・・!!」

最後の一撃。
さっきよりも速い・・・六回斬った。
男は倒れ、起き上がることはなかった。

 「勝者! 美坂香里ーーー!!! 美坂チームの勝利です!!!!!!」

 

わぁああああああああああ!!!!!!

 

強い。
楓さんとどんな特訓をしたのか知らないが、栞も香里も以前とは比べ物にならない。
特に香里の力は、既に石橋と同等くらいにまでなっている。
この短期間でよく・・・・・・さすが楓さん。

それに、たぶんまだ力を隠している。
まぁ、予選で全部の力を見せることはまずしないがな、俺達誰も。
そんなことしたら怪しまれる。
もっとも、そのうちそんなことも言ってられなくなるだろう。
それなりに強い連中は、何チームかいる。

 

 

 

 

 

 

 

その後は俺達の試合。

ま、勝ったとだけ言っておこう。
さやか一人で。

ノワール・ムーン、お笑いトリオも初戦突破だ。

こうして大会初日は終わりを告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく