デモンバスターズEX

 

 

第24話 カノン大武会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祐一 「カノン大武会?」

エリス 「そ。カノン公国の軍事、経済、政治全てにおける最大のイベント。それが十日後に開催されるわ」

十日後に、カノン最大のイベントが、か。
ということは、人が集まりそうだな。

栞 「で、それがどうしたんですか?」

エリス 「ま、聞きなさい。この大会はね、ミステリア王城内にある大闘技場で行われる。つまり・・・」

香里 「その時は、誰でも王城内に楽に入れる、ってことね」

エリス 「その通り」

ミステリア王城は堅固なことで知られている。
まだカノンが小国だった頃・・・って百年近くも前の話だが、八十万の敵軍による攻撃に耐え、逆に勝利したと言う伝説が残っている。
難攻不落の城塞というわけだ。
正面から中に入ろうとすれば、当然とんでもない労力を必要とするだろう。
だが中に入ってしまえば、その心配はなくなる。
ただし・・・・・・。

香里 「そんなイベントやってる時なら、尚更警備が厳しいんじゃないの?」

エリス 「そうね。というかむしろ、それもカノンの狙いなのよ。敵対勢力はこのイベントをチャンスと見て密偵を忍ばせようとする。それを叩く、というね」

浩平 「罠を張って待ち伏せしてるってわけか」

あえて敵を城内に招き入れる、か。

祐一 「微妙な選択だな」

罠と知りつつも城内に入れる機会を利用するか。
罠を避けて、外から突破する道を選ぶか。
どっちにしても楽じゃない。

エリス 「アタシは潜入する方を選ぶわね。中に入ればいくらでも策の立てようはある」

祐一 「まぁ、俺達の人数で正面突破はきつすぎるだろう。中に入れば罠があろうとなかろうとどうにかなる」

楓 「じゃあ、大会開催に紛れて?」

エリス 「もっと確実な手があるわよ。大会に出場すればいいのよ」

祐一 「面倒じゃねぇか、それ?」

エリス 「いいえ。大会出場者はね、誰でもオーケー。指名手配犯だろうが、犯罪者だろうがね。予選突破して本戦に進むと、それまでの前科を全て帳消しにしてもらえるという特典があるのよ」

祐一 「なるほどね」

そうやって指名手配犯や犯罪者をおびき寄せて捕まえるって狙いもあるわけだ。
まさに軍事、経済、政治全てにおいて最大のイベントってわけだな。
人が集まれば金も動く。

エリス 「大会参加条件はただ一つ、三人一組であること。それだけよ」

三人一組か。

エリス 「予選は6ブロックに分かれて行い、各ブロックの優勝チームに、シード2チームを加えた8チームによる決勝トーナメント」

祐一 「シード?」

エリス 「ナイツ・オブ・ラウンドよ」

なるほどね。
ナイツで構成された2チームがシードとして出場するわけか。
そうなると優勝候補も当然そいつらで、カノンが持つ力を示す場にもなる。
大会に出てくるナイツは六人・・・・・・残り七人はどこにいるかわからないか。

エリス 「ま、城内に入ってからの作戦はまた後で考えるとして、大会に参加するって方向でいいわね?」

祐一 「俺は構わんぞ」

楓 「そうなると、チームを決めなくちゃね」

琥珀 「そうですね。祐一さん、さやかさん、エリスさんでまず1チームとして・・・」

祐一 「おいこら待て、なんでそこ決定なんだよ?」

琥珀 「え? 違うんですか?」

楓 「決定だよね?」

美凪 「・・・決定」

浩平 「満場一致だろ」

栞 「・・・私はちょっと異議ありですけど・・・・・・」

エリス 「・・・・・・私はどうでも」

さやか 「何でもいいよ?」

何でそうなる。
ま、いいけどよ。

祐一 「いいのか? 戦力が偏っているように見えなくもない」

楓 「確かに、事実上の最強チームだろうね。でもむしろ、その方がいいと思うし」

エリス 「で、他のチームはどうするの?」

楓 「うん、バランスを考えると、私のチームに香里ちゃんと栞ちゃんを入れようか。二人のことは私がサポートするから」

香里 「お願いします」

栞 「楓さんがいれば、それなりに戦えそうですね、私達でも」

祐一 「何言ってやがる。たぶん楓さんはほとんど戦う気はねぇぞ」

栞 「へ?」

楓 「これも修行」

大会で戦うのは主に香里と栞だろう。
まぁ、この二人には実戦経験を積むいい機会だろうからな。

祐一 「さて残りは、折原、琥珀、美凪のチームだな」

浩平 「いいんじゃないか」

琥珀 「はい」

美凪 「・・・おっけー」

これで九人を3チームに分ける作業は終わった。
予選でぶつかったりしないといいんだがな。
俺達3チームと、そしてたぶん、もう1チーム・・・あいつらと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さくら 「大武会? それに出場するの?」

郁未 「私と舞はカノンじゃお尋ね者だからね。安全に国内に進入するには、これに参加するのが一番なのよ」

さくら 「三人一組・・・・・・ってまさか、ボクも?」

郁未 「頭数合わせよ。試合は3対3の勝ち抜き方式。リングアウト、ギブアップ、戦闘不能で負け。選手は好きに交代できるけど、一度交代したらもう一度その試合に出ることはできない。試合できる選手がいなくなった時点でそのチームの負け。ま、私と舞で勝ち星重ねていくから」

さくら 「ほっ、よかった」

舞 「・・・おかわり」

郁未 「話を聞け。大会を本戦まで勝ち抜けばナイツ・オブ・ラウンドも出てくる」

舞 「・・・・・・」

郁未 「どっちにしても、これがミステリアへ入る最良の手段ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祐一 「つーわけで、俺達が仲間だと思われない方が都合がいい。別々に首都に入って、大会参加も個々に行う。大会当日までは各自自由行動だ」

楓 「わかった」

浩平 「りょーかい」

そういうことで、俺達は首都ミステリアの三つ手前の町で別れた。
楓さん率いる、香里、栞組。
折原率いる、琥珀、美凪組。
そして俺とさやか、エリス組。
それぞれに首都を目指す。

大会は、十日後だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれの十日間。

 

楓 「わかってると思うけど、まだまだ香里ちゃんも栞ちゃんも他のみんなと比べると実力で劣るわ。まだ十日あるから、特訓あるのみよ!」

香里・栞 「「はい!!」」

 

 

浩平 「ほほう、カノン名物料理目白押し店か・・・・・・帰りにみさきと一緒に寄るかな」

琥珀 「あはー、このお店いい薬置いてますね。いくつか買っていこうっと」

美凪 「・・・どなたか、占いしませんか?」

 

 

舞 「・・・ここで食べる」

さくら 「おいしい牛丼屋さん?」

郁未 「・・・・・・私と舞が出会ってしまった店よ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、俺達。

エリス 「ちょっと情報集めてくるわ」

さやか 「私は散歩してくるね〜」

祐一 「気をつけろ・・・っていうかさやかは道に迷うなよ」

少し不安だが、二人を送り出す。
エリスは問題ないだろうが、さやかはなぁ・・・。

たぶん他の連中より一足先にミステリアに着いたであろう俺達は、残り九日間適当に過ごすことにした。
俺もさやか同様、街中をぶらつくことにした。

祐一 「さて、どこに・・・・・・」

 

?? 「あんまーん!」

 

祐一 「・・・・・・なんだ?」

何か聞こえたような。
というか、足元に何か転がってきた。
あんまん?
拾ってみたそれは、あんまんだった。

?? 「えぅ!」

続けて、さらに大きな質量を持ったものが転がってくる。
これはとても俺の足元で止まりそうもないな。
避けよう。

俺は転がってくるもののために道を空けた。

?? 「えう〜〜〜〜〜〜〜!!!」

ドカーーーン

見事に木に激突した。
逆さまになっているのは、長い黒髪の女の子だった。
頭には白い帽子が乗っている。
落ちている紙袋には、俺の手にあるものと同じあんまんが入っている。

?? 「えう〜〜〜、痛いよ〜〜〜」

そら痛いだろう。
もろに激突してたからな。
放っておいてもいいんだが、そうもいかないだろう。

祐一 「大丈夫か?」

?? 「えう〜、世界が逆さまだよ〜」

祐一 「そりゃあ、ひっくり返ってるからな」

?? 「お〜こ〜し〜て〜」

じたばたしている。
おもしろいからもう少し見ていたい気もするが、本当に困っているようなので少し気の毒でもあった。
だから手を貸してやった。

祐一 「ほれ」

?? 「へう?」

きょとんとする少女。
やがて俺の意図を察したか、差し出された手を取って立ち上がる。

?? 「えう〜、ありがとうだよ〜」

祐一 「気にするな」

見てて楽しかったからな。

?? 「あ、そうだ!」

何かを思い出したように辺りを見回す。
慌てているらしいその様子がまた見ていておもしろい。

祐一 「これか?」

俺はさっき拾ったあんまんを渡す。

?? 「わ、拾ってくれたの?」

祐一 「目の前に転がってきたからな」

?? 「えう〜、ありがとうだよ〜」

慌てたり笑ったり、見てて飽きない奴だ。

?? 「えう〜、汚れてる」

まぁ、そうだろうな。

?? 「んしょ、んしょ」

汚れているあんまんの皮を剥き出す少女。
丸裸になったあんまんにかじりついた。

?? 「おいしいよ〜」

祐一 「そらよかったな。あんまん好きなのか?」

まだ落ちている紙袋を拾う。
中には十個はくだらないあんまんが入っている。

?? 「少し違うよ」

祐一 「?」

?? 「あんまんが好き、じゃなくて、あんまんを愛してるの」

祐一 「・・・・・・」

?? 「あんまんは命の源だよ〜」

祐一 「・・・そうか。なら、大事にしろよ」

紙袋を渡してやる。

?? 「わたし、雪月澄乃」

祐一 「ほう」

澄乃 「澄乃だよ。澄乃っち。澄乃って呼んでいいんだよ〜」

祐一 「そうか」

聞いてないんだが。
だが名乗られたからには名乗り返すのが礼儀というものだろう。

祐一 「俺は相沢祐一だ」

澄乃 「祐一ちゃん?」

祐一 「できればちゃん付けはやめてくれ」

澄乃 「祐一さん?」

祐一 「それでいい」

澄乃 「ちょっと残念」

 

?? 「澄乃」

 

呼ぶ声。
見れば道の向こうで澄乃を呼んでいる女性がいた。
帽子を被ったショートカットの女性。
少し、澄乃と似ているような気がした。

澄乃 「あ、しぐれお姉様〜」

姉か、道理で。
しぐれという名か。

澄乃 「じゃあ、バイバイだよ、祐一さん」

祐一 「ああ」

澄乃 「そうだ、これ一個あげるよ〜」

そう言って俺の手にあんまんを持たせる。
別にいらんのだが、くれるものは貰っておく主義だ。

澄乃 「またね〜」

祐一 「じゃあな」

また、はないと思うんだが。
見ていて飽きない少女だったから、また会っても悪い気はしないだろう。
しぐれという女性がこっちに向かって丁寧に頭を下げている。
それから澄乃と二人、向こうへ歩いていった。

祐一 「さて・・・・・・ところで、誰だ?」

さっきから感じる視線の主。
敵意はないが、ただ見られているのは気に食わん。

?? 「ふっふっふっふ」

怪しげな・・・。
と思ったら、唐突に目の前に現れた。
なかなかやるな。

?? 「たーらったたー、わし参上」

祐一 「だから誰だって?」

?? 「相沢祐一」

祐一 「それは俺の名前だ」

?? 「違う。私が本物の相沢祐一だ。おまえはニセモノだー!!」

ビシッと指差される。
いや、ニセモノだー、って言われてもねぇ。

祐一 「だから誰なんだよ、おまえは」

?? 「・・・チッ、ノリの悪い奴ー」

変な奴。
ショートカットの金髪に、黒いリボンの少女。
何者だ?

祐一 「で、誰だよ?」

?? 「橘芽衣子」

祐一 「で、その芽衣子が何の用だ?」

芽衣子 「てい!」

ビシッ

祐一 「・・・痛いぞ」

芽衣子 「芽衣子様と呼べ」

祐一 「何ゆえ?」

芽衣子 「先輩だからだ」

祐一 「何の?」

芽衣子 「・・・・・・」

祐一 「・・・・・・」

わからん奴だ。

芽衣子 「祐一さんは、こう金髪を両側で結んでいてアンテナのようなリボンをつけた、思わず抱きしめたくなるようなキュートで小動物のような少女のことを知っているだろう」

祐一 「抱きしめたくなるかどうかは個人差だと思うが、それは芳乃さくらのことか?」

芽衣子 「そのとおりだ」

祐一 「まぁ、知ってるな」

芽衣子 「ま、私はその知り合いだ。そしてこう見えても私は巫女だ」

祐一 「ほう」

芽衣子 「だから君の先輩だ」

祐一 「何故?」

芽衣子 「君は四神の神子だろう」

ああ、そういえばそうだったな。
すっかり忘れていた。

芽衣子 「まぁ、よかろう。今日のところは挨拶代わりだ」

祐一 「挨拶だったのか?」

芽衣子 「はっはっはっは。まぁ、積もる話はまたの機会にするとしよう。では、サラバ」

行ってしまった。
何だったんだ、あいつは。
さくらの知り合いとか言ってたな。
よくわからん。
俺の周りの女はよくわからん奴ばっかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

ひさびさあとがき〜

平安京:む、今日は一人だ。

というか、ついにSNOWキャラ登場。あんまーん

SNOWはいいぞ〜、まだの人はやってみたまえ。

 

・・・・・・最近感想に返事を書く作業を怠っております。
申し訳ない。
この場を借りて、感想いただいた方々に御礼申し上げる。
これからもよろしゅうたのんまんがなー

言葉使いがめちゃくちゃやー・・・・・・