デモンバスターズEX

 

 

第22話 渦巻く因縁

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祐一 「こいつは・・・」

ひどい有様だな。
門を入ってすぐに見える道場はほぼ全壊だった。
他にもここから見えるだけでもかなりあちこちの建物が崩れている。
噂は本当だったのか。

水瀬屋敷が全滅。

数日前のこと。
何者かの襲撃を受けて、この有様だということだ。
たった一夜の出来事。
みんなは、無事なのか?

エリス 「手酷くやられたみたいね」

さやか 「みんな大丈夫かなぁ?」

二人も心配そうに辺りを見回す。
全滅たって、まさか生存者0なんて絶望的なものじゃないはずだ。
楓さんがいたんだ、そんなことあるはずがない。

祐一 「ん?」

誰か来る。
あれは・・・。

栞 「あ!」

祐一 「よう」

栞だ。
見たところこいつは元気そうだ。

栞 「・・・えぅ・・・・・・祐一さぁーんっ!!」

祐一 「おっと・・・」

いきなり涙目になったかと思えば、走ってきて俺の胸に飛び込んだ。
抱きついた状態で泣いている。

栞 「えっ、えぅ〜〜〜、祐一さ〜ん・・・・・・大変だったんですよ〜〜〜!」

祐一 「わかったから、何があったのか話せ」

泣いてちゃわかんねぇって。
って、あれ?

栞 「え、えぅ?」

俺の体から栞が離れる。
正確には、両側からさやかとエリスによって引き離される。

エリス 「泣いてたらわかんないでしょ」

さやか 「落ち着いて説明してね〜」

栞 「は、はい・・・?」

何故か心無し、二人の表情が不機嫌に見えたんだが、気のせいか?

 

 

 

その場で俺達は、栞から簡単な事情を聞きだした。
まさか俺らの留守中にナイツ・オブ・ラウンドの半分が襲撃に来ていたとはな。

栞 「もう、ほんとに大変で・・・・・・無傷だったのは楓さんと斉藤さんくらいで・・・・・・秋子さんと石橋さんと浩平さんと往人さんは重傷で・・・・・・みさきさんとほたるちゃんは捕まっちゃうし・・・・・・私役立たずですし〜・・・えぅ〜〜〜」

祐一 「何言ってやがる」

半泣きになる栞の頭を撫でてやる。

祐一 「おまえは充分やるべきことをやったろうが」

栞 「えぅ?」

祐一 「ナイツみたいな化け物どもが攻めてきたんだ、おまえ如きが何もできなくて当然だ。だがおまえは、そんな中で生き延びた。充分だろうが。こういう時はな、生き残ったもんの勝ちなんだよ。どんなにかっこ悪くても、生きてさえいればやり直しは利くんだ。今回は誰も死ななかった。なら負けじゃねぇ」

栞 「祐一さん・・・」

祐一 「わかったか?」

栞 「・・・はい!」

やっと笑ったな。
あまり笑っていられる状況でもないだろうが、沈んだままよりはいい。

栞 「あのぅ〜・・・・・・ところで祐一さん」

祐一 「なんだ?」

栞 「さっきからその・・・・・・背中が痛いと申しますか・・・・・・刺すような視線が・・・」

祐一 「ん?」

栞の背後に視線を向ける。
俺がそっちを向くと、同時にさやかとエリスが左右別々の方向を向く。

栞 「あ、消えました」

祐一 「・・・・・・」

なんなんだ、こいつらは。
祠の一件以来、どうもぴりぴりしてるような・・・。
ま、いいか。

祐一 「ところで栞、楓さんは?」

栞 「今、部屋で休んでもらってます。ずっと怪我した人達の回復をやってて、疲れてましたから」

祐一 「そうか」

回復魔法ってのは、実はかなり高度な魔法だ。
こんなもん誰でも使えたら、医者はいらねぇよな。
そんな高等魔法だからこそ、使う際には術者の消費も大きい。
下手をすれば術者の命を削るほどにな。

栞 「そういえば、祐一さん達も怪我してるみたいですけど、何かあったんですか?」

祐一 「まぁ、こっちも色々とな。とりあえず楓さんのとこ行くか。話はそれからだ」

 

 

 

 

 

楓さんの部屋まで来ると、彼女は庭に出ていた。
そうじゃないかと思ったけど、やっぱり少し落ち込んでるな。

祐一 「楓さん」

楓 「祐一君、エリスちゃん、さやかちゃん・・・おかえり」

祐一 「ああ」

さやか 「ただいま〜」

エリス 「あんた何落ち込んでるのよ」

楓 「別に、落ち込んでるわけじゃないよ・・・・・・」

嘘だな。
結構責任感強い人だからな。
今回の件では自分が一番頑張らねばならないと思っていたに違いない。

祐一 「気にするなよ、楓さん。相手が七人もいたんじゃ、楓さん一人でどうにかできなくても仕方ないだろ」

楓 「うん、そうなんだけどね・・・・・・」

祐一 「楓さんのせいじゃないって。ついこの間連中が来た直後だったのに、俺らが揃って留守にしたのがまずかった」

 

さやか 「・・・ねぇ、祐一君って楓さんには優しいと思わない?」

エリス 「あの二人は昔からあんなもんよ。修行の時は容赦なくやりあってるけど、それ以外の時はお互い甘いのよ」

 

楓 「・・・そっちも、何かあったみたいだね?」

祐一 「まぁ、話せば長くなるかも」

楓 「お茶淹れようか」

 

 

 

部屋に入る。
すぐに楓さんの淹れたお茶が全員に行き渡り、それぞれの状況を話した。
ただこっちのことに関しては、エリスの提案で魔界第四階層のことは伏せておいた。
今は余計な混乱を招くだけとのことで、俺も同意権だ。
こっちはちょっと強い魔族とやりあったってことにしてある。

祐一 「で、今みんなどうしてる?」

楓 「秋子さんと石橋さん、往人君は寝てる。浩平君はその三人に比べたら怪我は軽かったんだけど、美凪ちゃんともども落ち込んでてね・・・・・・琥珀ちゃんの様子も少し変だし」

栞 「それにしても、あの人達はいったい何をしに来たんでしょう? 私達、別にカノン公国とは何の関わりも・・・・・・」

エリス 「ええ、ここにいる面々は、ね」

栞 「?」

祐一 「どういうことだ?」

ここにいる面々は関係がないってことか。
つまりそれは、他の連中は関係があると。
確かに、琥珀と翡翠のことはあるが・・・。

エリス 「楓、話すわよ?」

楓 「・・・・・・うん」

エリスの口から語られたこと。
なかなか驚かされる内容だった。
それは、ナイツ・オブ・ラウンドと水瀬屋敷にいる面々との因縁・・・・・・。

秋子さんは元ナイツの一員で、五年前の除隊している。
キラーナイト、アヌビスは傭兵時代に石橋と何度か剣を交えたことがある。
ウルフキラー、メサルス・リーは元斉藤と同じ部隊所属で、奴に対抗意識を持っていた。
マギリッドとセリシア、それに琥珀・翡翠・ほたるらの関係は前に聞いたとおりだ。
ネクロマンサー遠野時谷は美凪の父親。
銀翼の貴公子と呼ばれる剣士氷上シュンは折原と同国出身で、友でありライバルであった。
他にも、何故か楓さんに対抗意識を燃やす黒巫女、榊。

エリス 「一つ間違いないのは、この水瀬屋敷の住人は、水瀬秋子によって意図的に集められたものってこと。理由はわからないけど、目的はおそらく、対ナイツ用の戦力として」

楓 「直接の因縁はないけど、さやかちゃんや祐一君も強力な戦力になる」

祐一 「・・・・・・」

さやか 「・・・・・・」

つまり秋子さんは、俺達をカノン公国を潰すための道具にしようとしていた、ということか。

祐一 「けど、いったい何のために?」

エリス 「そこまではわからないわ。どっちにしても、こうなっては思惑は崩れたも同然ね」

楓 「ナイツ・オブ・ラウンドの戦力は予想以上。私達クラスの力がなければ、まず対抗できないでしょうね」

祐一 「そこまではいかないだろう」

楓 「?」

祐一 「少なくとも俺達クラスよりは下だ。メサルスとかいう奴だって斉藤には敵わなかったわけだし、倉田一弥も俺の相手じゃなかった。セリシアもあの程度なら大したことはない」

楓 「けど、秋子さんを倒したシュテルという男は相当な実力者よ。それに浩平君を圧倒したという氷上シュン」

祐一 「豹雨と引き分けたリーダーのジークフリード、あとは一弥の姉の佐祐理、そしてマギリッド。せいぜいその辺りまでだろ」

残りは、メサルス・リーにアヌビス、セリシアと一弥、榊、遠野時谷、服部重蔵、それに・・・。

楓 「もう一人・・・・・・ゼルデキア・ソート・・・」

ゼルデキア?
聞いたことのない名前だが。

楓 「まったく正体が知れない。不気味だわ」

祐一 「まぁ、つまり強いとは言っても、真に警戒すべきは十三人中六人ってことだ」

エリス 「ほとんど半分。結局手ごわいことに変わりはないわね。アタシ達の敵じゃないのは確かだけど」

栞 「・・・・・・なんか、話が大きすぎてついていけませんけど・・・・・・さっきの、秋子さんが私達を利用してるって話・・・・・・」

まぁ、水瀬流を学んでる連中からすれば、秋子さんは神様みたいなもんだからな。
いきなりそう言われてもピンと来ないだろう。

祐一 「あまり気にしない方がいいだろ」

栞 「でも・・・私にはやっぱり信じられません」

祐一 「だから気にするなって」

それにしても、楓さんがあんまり秋子さんと親しくしてないのは気付いていたけど。
今の話から楓さんの心理を量る限り、相当に好意的じゃないな。
真っ直ぐな人だから、腹黒いのは気に食わないか。

何だか空気が重くなってきたな。
散歩でもしてくるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祐一 「・・・お」

散歩途中で誰かに会うかと思ったが。
琥珀だ。
縁側に座って刀の手入れをするとともに、周りには怪しげな色をした液体の入ったビーカーやら何やらが・・・。

祐一 「おまえ、めちゃくちゃ怪しいぞ」

琥珀 「あはっ、祐一さん、帰ってらしたんですか」

どうやらいつもの笑顔モードらしいが、少し違う。
笑顔には違いないが、使用人モードじゃない。

祐一 「張り詰めてるな」

琥珀 「そう見えます?」

祐一 「ああ」

隣に座ろうかと思ったが、怪しげな色の液体に近付くのが嫌だったので、仕方なく立っていることにした。

祐一 「・・・・・・行く気か?」

琥珀 「なんのことです?」

祐一 「とぼけるな」

そんな神経張り詰めた顔で刀の手入れなんかして。
これで誤魔化せると思うほど頭の悪い奴じゃないだろうに。

琥珀 「・・・行きます」

祐一 「決着をつけにか?」

琥珀 「そんなかっこいいものじゃありませんよ。これは、復讐ですから」

祐一 「復讐?」

琥珀 「わたし達姉妹を実験材料としておもちゃのように扱っていた、あの男に・・・・・・」

マギリッド、か。
きっと、琥珀達と同じような目にあわされた人間はたくさんいるだろう。
そのうちいったい何人が、こうして生きているのか。
たぶん、ほとんどは・・・・・・。

祐一 「おまえ、それでいいのか?」

琥珀 「?」

祐一 「秋子さんは、おまえのあの男に対する復讐心を利用するつもりらしいぞ」

琥珀 「知ってますよ」

知って?

琥珀 「同じですからね・・・」

祐一 「同じだと?」

琥珀 「・・・秋子さんのだんな様は、カノン公国に殺されたんです」

祐一 「何?」

秋子さんの夫。
つまり名雪の父親で、俺には叔父にあたるな。
それが、カノン公国に殺された?

琥珀 「詳しい経緯は知りません。それともう一つ、七年前の事件を裏で糸を引いていたのも、カノンだったみたいです」

祐一 「!!」

あの事件。
ミルブス王国の連中に相沢一族が根絶やしにされた事件の黒幕も、カノンだと?

琥珀 「夫と一族の復讐、それが秋子さんがカノン公国を滅ぼそうとしている理由です」

祐一 「・・・・・・」

こいつは、それを知った上で・・・。

琥珀 「わたしは別に、秋子さんの企みとか、そんなのはどうでもいいんです。わたしはただ・・・あの男に復讐する、それだけですから」

祐一 「・・・・・・」

琥珀 「むしろ一緒にカノンと戦う人を集めてくれている秋子さんを、逆に利用しているのかもしれません」

祐一 「・・・・・・」

琥珀 「でも、もうそれも終わりです。わたしは一人でも、復讐を成し遂げます」

祐一 「・・・翡翠はどうする?」

恨みを抱いているというのなら、翡翠も同じだろうに。

琥珀 「翡翠ちゃんは、わたしに比べれば恨みは薄いはずですから。わたしが、翡翠ちゃんの分まで・・・・・・」

祐一 「・・・・・・」

琥珀 「翡翠ちゃんには幸せになってほしいんです。わたしはきっと、復讐を成し遂げたら死ぬことになるでしょうから」

そうだろうな。
仮にマギリッドを倒せたとしても、その犯人をカノンが放っておくはずはない。

琥珀 「あはっ、今の話、内緒ですよ♪」

祐一 「・・・気に入らないな」

琥珀 「?」

祐一 「おまえは復讐して、死んで、それで妹には幸せになれだと? ふざけんなよ」

琥珀 「・・・・・・」

祐一 「そういう考え方してるんだったら、俺はここでおまえを叩きのめしてでもカノンへは行かせん。おまえが死んだその先に妹の、翡翠の幸せがあるとでも思ってるのか?」

琥珀 「!!」

祐一 「俺はそういうのは認めん。姉妹揃って幸せにならなけりゃ、意味ねぇだろうが。おまえだけ勝手に満足して死ぬなんて結末俺は許さねぇ」

琥珀 「・・・・・・」

祐一 「やることやったら生きて戻って来い」

死んだら何もかも終わりだ。
それに何より、生きようとする意志は力だ。
その意志のない奴は、何にもできやしねぇ。

琥珀 「祐一さん・・・」

祐一 「それに、一人で行くのはやめろ」

琥珀 「え?」

祐一 「俺もいい加減カノンとは因縁ができてきたからな。目的もあることだし、俺もカノン公国へ行く。それに、他にも行く連中はいるだろう」

琥珀 「・・・・・・」

祐一 「わかったら一人で勝手に行ったりするんじゃねぇぞ」

琥珀 「・・・・・・・・・祐一さん、優しいですね」

祐一 「阿呆、そんなわけあるか」

優しいってんならもう少し気の利いた言い方するさ。
俺はただ自分の考え方を述べただけだ。

琥珀 「あはっ、わかりました。一人では行きません」

祐一 「それでよし」

琥珀 「ふふ、それじゃあ、わたしはもう行きますね」

祐一 「行くって・・・」

散乱している大量の薬品類はどうする・・・って。
いつの間にかないし。
俺に気付かれずに・・・・・・。

琥珀 「あんまり長いこと二人っきりで話してると、心中穏やかでない人達がいるみたいですから」

祐一 「? 何のことだ?」

琥珀 「さあ♪」

完全にいつもの笑顔モードに戻って、琥珀が立ち去る。
そういえば手入れしてた刀もいつの間にかしまってある。
鞘でもある竹箒・・・どこに隠してんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

琥珀 「心配しなくても、今のわたしは目的達成しか頭にありませんから。祐一さんに手を出したりしませんよー」

 

さやか 「・・・・・・」

エリス 「・・・・・・」

 

琥珀 「(もっとも、復讐を終えた後、まだ祐一さんがフリーだったら、わかりませんけどね〜♪)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく