デモンバスターズEX

 

 

第17話 絶対零度のバトルフィールド

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まったく、ひどい目にあったぜ。
いきなり真っ暗な場所に落とされたと思ったら、どこへ行っても何もないんだもんな。
少し経って異空間に閉じ込められたとわかったわけだ。
空間を斬るなんて芸当、豹雨か楓さんでもないとできないと思ってたが、舞の奴も使えたし、あの魔神野郎はあっさり空間を越えるなんて真似しやがった。
なら俺にも、と思って何度か試した結果、できてしまった。

というわけで。

祐一 「覚悟しろよ、てめぇ」

戻ってきたからには、まずはこの野郎をぶっ倒す。

シヴァ 「・・・・・・なるほど、さすがは・・・・・・・・・」

驚いた顔をしていた奴も、すぐに落ち着いた表情に戻った。
しきり納得して何か言っているが、そんなことはどうでもいい。

今俺は、楽しんでいる。

これが俺の望んでいたものだ。
とんでもなく強い、俺一人じゃ歯が立たないような相手。
そういう奴と戦いと思っていたんだ。

祐一 「能書きはいいからよ、さっさと続きをやろうぜ。見たところエリス達との戦いで少しばかりダメージを負ったみたいだけど、まだまだやれるんだろ?」

シヴァ 「当然だ。少し力を消耗した程度で私が貴様らに負ける道理はない」

祐一 「余裕かましてられるのも今のうちだぜ」

 

郁未 「・・・どう思う?」

エリス 「シヴァの言うとおり、まだ祐一の方が不利ね。けどもう、あいつ以外に戦える奴はいないし」

さやか 「任せるしかないね。女の子を護って一人戦う、よっ、かっこいいぞ男の子!」

 

祐一 「茶化すな、さやか」

さあ、行くぜ。
俺が何故氷帝と呼ばれているのか、その真の意味を教えてやるぜ。

 

エリス 「ひさしぶりに見られそうね。氷帝の真の姿」

舞 「?」

さやか 「真の姿? 巨大な氷のお化けになるとか?」

エリス 「そんなんじゃないわよ」

郁未 「じゃあ、いったい・・・」

 

祐一 「行くぜっ、氷魔無限陣!!」

氷刀を地面に突き立てる。
そこから地面が徐々に凍りついていき、それは壁を伝って天井にまでいたる。
あたり一面、洞窟内のこの広場全体が氷に包まれ、部屋の温度が急激に下がる。

シヴァ 「これは・・・」

祐一 「絶対零度のバトルフィールドへようこそ、ってところか。今から俺の真の力を見せてやる」

地面に刺した刀を抜いて奴に向かって斬りかかる。

シヴァ 「ふっ、今までと何が違う?」

奴が俺の斬撃を止めるべく手を差し出す。
だが・・・・・・。

ザシュッ

シヴァ 「何っ!?」

そんなものを無視して、俺の剣は奴の体に届いた。

シヴァ 「貴様っ、今何を!?」

祐一 「普通に斬りつけただけだよ」

手を休めるつもりはない。
一気に攻め立てる。

祐一 「おらぁっ!」

ヒュッ ヒュッ ザシュッ

シヴァ 「ぬ・・・ぐっ!」

俺の攻撃に奴は防戦一方。
このまま決めてやる。

祐一 「前ばかりに気を取られてるなよ!」

奴の背後の氷が盛り上がる。
下から伸びる氷柱が奴の背中を狙う。

シヴァ 「くっ!」

祐一 「うらぁ!」

ドシュッ

俺の突きが奴の左肩を捉える。
氷柱に気を配ったところで隙ができた。

シヴァ 「おのれがっ!」

反撃で俺が吹き飛ばされる。
だが、着地した俺のダメージは少ない。

シヴァ 「貴様・・・・・・なんだそれは!」

祐一 「見たとおりだよ」

 

郁未 「あれは?」

エリス 「あれがあいつが氷帝と呼ばれ、子供でありながらアタシ達デモンバスターズの一員となれた理由。雪の鎧」

 

氷魔無限陣。
狭い空間であれば、こうして辺り一面を氷付けにし、外だったならば吹雪を呼ぶ。
どちらの状態でも、そこが俺にとって最大の力を発揮できる戦場になることに変わりはない。
場の属性が、俺に有利に働く。
どこからでも攻撃できるし、氷の乱反射で敵の目をくらませることもできるし、何より常に雪の鎧が俺の身を護る。

 

エリス 「あれを発動した祐一にダメージを与えることは、アタシ達でさえ困難だったはずよ」

さくら 「そんなに凄い技、どうして今まで・・・」

エリス 「場の属性を水で統一するため、天候すらも操るこの技・・・・・・当然力の消費は大きいし、何よりいくら祐一が水属性で寒さに強いからって、長時間体の周囲が吹雪いてるような状態でいれば、体力の消耗も激しいわ」

さやか 「せいぜいもって、10分ってところだね」

 

祐一 「速攻で決めさせてもらう!」

シヴァ 「なめるなぁっ!!」

全力で攻撃する。
それだけだ。

奴にももう余裕はない。
捨て身の攻撃が来る。

シヴァ 「はぁっ!」

あいつ、剣を・・・。
ついに本気を出してきたな。

祐一 「おもしれぇ! 行くぜっ!」

シヴァ 「人間が、この私を倒せると思うなよっ!!」

俺と奴の剣が撃ち合わされる。
もはやお互い防御など考えてはいない。
ただひたすらに斬撃を繰り出すのみ。

祐一 「おぉおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

シヴァ 「ぬぉおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

十回・・・二十回。
ひたすらに剣を振るい、相手を斬ることだけを考える。
これだけの力で、これだけの回数撃ち合えば並みの武器ならぼろぼろになるだろうが、俺達の武器はどっちも普通じゃない。
奴の剣はかなりの強度があるみたいだし、俺の刀は戦いながらでも刃こぼれした部分を直せる。

体のことも、武器のことも気にせず攻撃を繰り出す。
ほとんどの攻撃が相殺されているが、何度かは互いの体まで届いている。

シヴァ 「ちっ!」

剣の勝負では埒が明かないと見たか、奴が後ろへ下がる。
離れた場所から魔法を放ってきた。

シヴァ 「カァァァッ!!!」

ドドドドドッ

一発一発が人間の使う大魔法並みの威力があるだろう魔力球が連続で放たれてくる。
まともに喰らえば雪の鎧と言えども吹き飛ばされかねない。
かわすしかないな。

シヴァ 「いつまでも逃げ切れるものか!」

祐一 「逃げる気はねぇよ!」

回避しながらも、俺は徐々に前へ出る。
こっちの間合いに入れれば・・・。

祐一 「そっちだけが遠距離攻撃をできるわけじゃねぇ!!」

周囲の氷から氷柱をいくつも生み出して、奴に向けて飛ばす。

シヴァ 「こんなものが!」

確かにおまえにダメージは与えられないだろう。
だが、隙を作るには充分なんだよっ!

氷柱を迎撃している間に懐に入り込む。

ドシュッ!

シヴァ 「ぐっ!」

肩から胸にかけて斬られた奴は、自分ごと魔法の爆発に俺を巻き込んで後退する。
さすがに今のは、俺も効いた・・・。

祐一 「ふぅ・・・ふぅ・・・・・・」

シヴァ 「ぜぇ・・・はぁ・・・・・・この・・・私が、これほど・・・」

追い詰められてる感じだな、あいつは。
かく言う俺も、そろそろ無限陣を保つのも限界か。
次で決める。

刀を消す。
代わりに俺の手には、太い氷柱が握られている。
こいつで奴を、串刺しにしてやる。

シヴァ 「これが・・・――の力だと言うのかっ・・・・・・・・・認めん、私は認めんぞ! 人間相手にこの私が負けることなどありえん!!」

祐一 「じゃあ試してみようじゃねぇか。どっちが勝つか」

シヴァ 「私が負けるはずはない!」

祐一 「かもな。だが俺は・・・俺達デモンバスターズはな、何度も何度もそういう敵と対峙して、その度に勝ってきたんだ。それが俺達が最強と呼ばれる所以・・・・・・そして相手が魔神だろうが神だろうが、それは変わらん」

シヴァ 「戯けたことを! 私が人間風情に!」

祐一 「だから試してみろって言ってんだよっ!」

奴に向かって一直線に突っ込む。
もうこれが、俺の最後の力だ。

シヴァ 「私は、魔神シヴァなり!!」

魔力が膨らむ。
特大の一撃が、向こうからも来る。

シヴァ 「消えろっ、小僧ぉぉぉ!!!!!」

 

ゴォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!

 

目の前から凄まじい威力の魔力が迫ってくる。
これは・・・・・・・・・。

 

ドゴォーーーーーーンッ!!!!!

 

シヴァ 「ふっはっはっはっはっはっは!! 思い知ったか、魔神の力を! 人間如きが・・・・・・・・・人間・・・ごとき・・・」

 

祐一 「どうやら、おまえの言うとおりじゃなかったみたいだな」

耐え抜いたぜ。
奴の最後の一撃に。
もう、逃げられん。

 

ドスッッッッッ!!!!!

 

シヴァ 「ぐ・・・はっ・・・・・・!」

氷柱が、奴の体を貫く。
そのまま壁まで突っ込んでいく。

ドンッ

奴の体を壁に縫いとめるように、壁に貫通した氷柱を突き刺す。
俺は氷柱を放し、奴からも離れる。
そこで力尽き、膝をついた。

エリス 「祐一!」

さやか 「祐一君!」

エリスとさやかの声が聞こえる。
残念ながら、振り返るほどの余力は残ってないが。

祐一 「・・・・・・俺の・・・俺達の勝ちだ・・・シヴァ」

シヴァ 「こん・・・なっ・・・・・・がはっ! ・・・・・・馬鹿なっ・・・・・・・・・わ・・・たし・・・が・・・」

エリス 「往生際が悪いわよ。あんたの負けよ。人間を甘く見すぎたわね」

さやか 「私達の勝利だよ」

シヴァ 「ま・・・け・・・・・・わた・・しが・・・・・・負けた・・・・・・・・・・・・この・・・ま・・・じん・・・・・・しヴぁ・・・が・・・・・・死ぬ?」

奴の目から光が失われていく。
魔族と言えども、基本的な体の構造は人間に近いと聞く。
死んでいくところだ、奴が。

シヴァ 「お・・・ぉ・・・おおぉぉぉ・・・・・・!!」

だが、その奴の目が大きく見開かれる。
もう焦点も合っていないだろうに、何故かその目は、俺を見ているようだった。

シヴァ 「きさま・・・か・・・・・・――・・・きさまが・・・私を・・・・・・」


誰だって?
誰かの名前を言ったようだが、聞き取れない。

シヴァ 「・・・われら・・・の・・・・・・おお・・・・・・・・・われらの・・・・・のぞ・・・・・・・・・・・・・・・」

あいつの体から、力が抜けた。
完全に、死んだ。

ふぅ・・・・・・・おわ・・・った・・・・・・・・・。

エリス 「! 祐一っ!」

さやか 「祐一君っ!」

声が、遠ざかっていく。
意識が・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

度重なる大きな衝撃で、洞窟が崩れかけていた。
さやか達は、気絶した祐一を連れて広場を後にしていった。
そこへ、別の人影が現れる。

バイン 「・・・・・・」

ターバンを巻いた黒人風の男。
以前郁未達の前に現れた魔族、バインである。

バイン 「これはこれはシヴァ様、死んでしまわれましたか」

魔族の男は串刺しになっているシヴァのもとへと歩み寄り、その死を確認する。
特に悲しんでいる様子も喜んでいる様子もなく、ただ死体となった魔神を哀れでいるようだった。

バイン 「空しいことですね。あなたこそ先の戦いで負った傷が癒えていなかったでしょうに」

それは即ち、ブラッドヴェイン同様、シヴァも本来の力を出し切れていなかったということ。
祐一達が全員がかりでようやく倒した相手が本気でなかったということか。

バイン 「まぁ、力がダウンしている状態だからこそ今の状態のゲートを通って地上に出てこられたのでしょうが、死んでしまっては元も子もありませんね」

哀れみの表情を浮かべながら、バインはシヴァの死体に手を触れる。

バイン 「人間を甘く見すぎましたか。ほどほどにして、魔竜王様のように引き上げればよろしかったものを。まぁ、あなた様は少々ご自身の力を過信しすぎていたようですね。自業自得でしょうか。しかしご安心ください。あなたほどの魔神の消滅は、私達の目的である時空の揺らぎを生じさせるために充分すぎるほど役に立ちますよ。無駄死にではありませんから、安らかにお逝きください」

手を触れた部分から、シヴァの亡骸が闇に食われていく。

バイン 「それにしても・・・・・・彼らの力、特に相沢祐一君。やはり・・・・・・“彼”の・・・・・・・・・」

消滅していくシヴァにはもう興味を失ったようで、バインは祐一の姿を思い浮かべる。
その力と、そして、同じ力を持ってかつて存在していた者のことを。

バイン 「ええ、間違いありませんよ。祐一君・・・彼は充分に相応しい存在でしょう」

一人納得し、笑みを浮かべる。

バイン 「シヴァ様との戦いでさらに覚醒しているようですね。もっともっと力をつけてもらわなければ困りますが・・・・・・まぁ、いいでしょう。それはまた、いずれ・・・。今度は直接会ってみたいものですが、それはすぐに叶うでしょう」

崩れ落ちる洞窟から、バインも姿を消す。
最後に一言だけ残して。

バイン 「カノン公国でお会いしましょう、相沢祐一君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

あとがきかーーー

平安京(京):ひさびさのあとがきじゃー

さやか(さ):いぇー♪

京:最強の敵、魔神がついに登場したのだよ

さ:でも倒しちゃったよ?

京:あくまで顔見せだからな。シヴァは倒したが、彼の仲間はまだたくさんいる。そしてその中にはこの話のラスボスも存在するのだ

さ:ほほう、先の展開のネタバレだね

京:ほぼラストをどうするかは決まった。やはり主軸となるのは魔神との戦いと祐一君を取り巻く人間関係

さ:人間関係と来たね

京:このシヴァ編辺りから誰がヒロインなのかもほぼ確定したからな。将来的にはこの二人とさらに新キャラ一人を加えた泥沼な女の戦いが長々と繰り広げられ・・・・・・

さ:修羅場かぁ〜

京:君も人事じゃないぞ

さ:おほほほほ

京:ま、それはまだ先の話。次からはしばらく水瀬屋敷とカノン公国編だ

さ:サブキャラ大活躍?

京:いや、やっぱりメインは主役

さ:なら、おっけ〜

京:何がオッケーだ。というわけで、今後ともご贔屓に

さ:よろしくね〜