デモンバスターズEX

 

 

第16話 激闘!魔神シヴァ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

力の差は歴然としていた。
魔神シヴァの持つ魔力は圧倒的である。
それに加え、エリスはブラッドヴェインとの戦いで消耗しており、さやかは新たな力に覚醒したとは言えまだそれを制御できない。
頼みの綱である祐一はシヴァの手でどこかへ飛ばされたまま戻ってこない。

エリス 「最悪・・・か」

さやか 「だね」

状況は圧倒的に不利だった。

シヴァ 「覚悟はできたか?」

さやか 「もうちょっと待ってくれると嬉しいな〜、なんて・・・」

シヴァ 「では、早々に終わらせるとしよう」

待ってくれと言って待ってくれそうな相手ではない。
今すぐに覚悟を決めるしかないということだ。

さやか 「困ったかも」

エリス 「さやか、あんたまださっきのやつ使える?」

さやか 「ゴッドフェニックス? 魔力の消費が激しいから、あと一回が限界だね。しかも、まだ上手くコントロールできないし」

エリス 「制御できない力、か。けど、あいつに勝つには、それくらいしないとね。アタシも覚悟決めるか」

さやか 「エリスちゃん?」

エリス 「少し離れて」

言われたとおり、さやかがエリスのもとから少し離れる。

エリス 「ぬ・・・く・・・・・・うぁああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

さやか 「!?」

シヴァ 「これは!」

何か強力な波動がエリスから発せられる。
魔力が一気に膨れ上がっていく。
同時に、エリス自身の体にも変化が起こり始める。

シヴァ 「ほう・・・あれほど忌み嫌っていた魔竜の血を自ら呼び起こすか」

エリス 「あんたを倒すには、四の五の言ってられないわっ!」

髪の毛を結んでいる紐が解け、盛り上がった髪の下から角が生える。
牙と爪も鋭さを増し、背中からも翼のように角が広がっていく。
白目の部分が、赤い攻撃色を帯びる。

エリス 「グルルルルルルルッ!!」

キッと殺気をはらんだ目がシヴァを睨む。
だがそこには、まだしっかり正気が宿っていた。

エリス 「行くわよっ、さやか!」

さやか 「おっけー!」

エリスの変化も気に留めず、さやかが返事をする。
炎の鳥、ゴッドフェニックスを再び召喚し、攻撃態勢に入る。

シュッ!

魔竜の力を解放したエリスが跳躍する。
今までとは比べ物にならないほど速い。

ドンッ!

シヴァ 「ぬ・・・!」

エリス 「はぁぁぁぁぁ!!!」

ザシュッ

鋭い爪による攻撃が、シヴァの手甲を掠める。
祐一の斬撃をいともたやすく受け止めていた手甲に亀裂が入った。
そこへさらに炎の鳥が襲い掛かる。

シヴァ 「ちっ!」

目前に迫ったゴッドフェニックスを空間移動で回避する。

エリス 「行ける! パワーだけならこっちの方が上だわ!」

相手が通常空間に戻る瞬間を狙ってエリスが追い討ちをかける。
先読みのできるシヴァに対して単調な攻撃は通じないが、常にさやかのゴッドフェニックスが狙っているため、シヴァも体勢を崩すわけに行かず、エリスに対して反撃には移れない。

シヴァ 「一つ教えてやる。パワーだけでは私には勝てんぞ」

エリス 「そんなことは百も承知よっ!」

シヴァ 「どうかな?」

ヴンッ

一瞬、シヴァの姿がエリスの視界から消える。

エリス 「また空間移動を!」

シヴァ 「この能力はな、避けるためだけではなく、攻撃するためにも使えるのだぞ」

エリス 「!!」

一度消えたシヴァは、再び同じ場所に現れた。
どこかへ移動したと思っていたエリスは、その動きに虚をつかれる。

ドッ

エリス 「がっ・・・!」

さやか 「エリスちゃん!」

吹っ飛ばされるエリスを見て声を上げるさやか。
次の瞬間には、シヴァの姿はそのさやかの背後にあった。

さやか 「!!」

シヴァ 「遅い」

ドンッ!

さやか 「くぁ・・・!」

至近距離からの一撃に、炎の鳥がガードに入る間もなかった。
直撃を受けたさやかは、炎の鳥に抱きとめられたお陰で壁に叩きつけられることはなかったが、それでもダメージは大きい。

シヴァ 「言ったろう。パワーだけでは勝てんと」

さやか 「いたた・・・・・・」

エリス 「ちっ」

魔導師という性質上、打たれ強くないさやかは立ち上がることができず、エリスの方はもとの姿に戻ってしまっている。

エリス 「はぁ・・・はぁ・・・・・・」

シヴァ 「慣れない力を使うと消耗も激しかろう。所詮は付け焼刃ということだ」

エリス 「・・・ふんっ、そんなに偉そうな口も叩けないでしょ」

シヴァ 「ん?」

エリス 「結構何度も空間移動使ってるじゃない。そっちこそ消耗し始めてるんじゃないの?」

シヴァ 「貴様らほどではない。それに、普通に空間移動を使う分には大した消費もない」

戦況は少しもよくなっていない。
エリスもさやかもそろそろ限界に近い。
対するシヴァにはまだまだ余裕があった。

シヴァ 「そろそろ終わりだな」

シヴァの右手に魔力が溜まる。
その一撃を食らえば、ひとたまりもないだろう。

エリス 「これはいよいよ・・・死ぬ気で行かないとやばいかも」

さやか 「エリスちゃん、死んじゃ嫌だよ。さっきの話の続き、しないとならないんだから」

エリス 「当然でしょ。話はきっちりつけてやるわ」

攻撃に備えて身構える二人。
まずは相手の一撃をかわし、自分達の最後の攻撃を仕掛ける。
至難の業ではあった。

シヴァ 「死ね」

まさにシヴァの魔力が解き放たれるかと思われた時・・・・・・。

ザシュッ!

シヴァ 「な・・・にっ!?」

その背中を何者かが切り裂く。
これには斬られた本人たるシヴァだけでなく、見ていたさやか、エリス、さくら達も驚いた。

シヴァ 「貴様・・・!」

さくら 「舞ちゃん!」

斬りつけたのは、倒れていたはずの舞だった。
祐一が消える際に落としていった氷刀を拾い、眼前の敵のみに集中していたシヴァの背後を取ったのだ。
攻撃する瞬間だけは、誰でも防御が疎かになるものである。
魔力を解き放とうとしていた時に受けた攻撃のダメージは大きい。

シヴァ 「ちぃっ!」

反転して溜めた魔力を舞に向かって放つシヴァ。
しかし直撃を受けたはずの舞は、幻だった。

シヴァ 「これは!?」

舞 「総天夢幻流・斬魔剣・・・いづな。それは、空間の揺らぎが見せた幻」

舞の放つ技、いづなは攻防一体だった。
剣圧が生み出す夏場の陽炎のごとき揺らぎが、敵の目を惑わす。

エリス 「(勝機!) さやか!」

声をかけると同時にエリスは飛び出す。
狙うは当然、シヴァ。

シヴァ 「くっ・・・エリス!」

エリス 「逃がしはしないわっ!」

背中を斬られ、舞に対して仕掛けた攻撃もかわされ、硬直状態にあるシヴァ。
その隙をついてのエリスの攻撃。
かわす間はなかった。

バキッ!

シヴァ 「がはっ」

エリスの拳が、シヴァの顔面を直撃する。
身形は小さくとも、竜族ゆえのパワーによる一撃はかなりの威力を持つ。
そしてさらに、仰け反ったシヴァにさやかのゴッドフェニックスが迫る。

さやか 「もらったよ!」

シヴァ 「させるかぁっ!」

空間移動はもう間に合わなかった。
シヴァは両手にありったけの魔力を集め、炎の鳥を相殺すべく前に突き出す。

 

ドゴォーンッ!!!

 

二つの魔力がぶつかり合い、激しい爆風が吹き荒れる。

さやか 「・・・・・・」

エリス 「・・・・・・」

さくら 「・・・・・・」

舞 「・・・・・・」

全員が見守る中、爆発による煙が晴れていく。
そこには・・・・・・。

シヴァ 「ふぅ・・・ふぅ・・・・・・人間がここまで私を追い詰めるとはな」

まだ健在なシヴァが、そこにいた。

さくら 「嘘・・・あの威力を・・・・・・」

さやか 「うわぁ、特大の一撃だったのに〜」

エリス 「あれを跳ね返すわけ?」

ゴッドフェニックスの威力を相殺するため、かなりの魔力が消費したようだが、それでもダメージはほとんどないと言っていい。
絶妙のタイミングと思われたものも、防御されては威力が半減するというものだ。

シヴァ 「まともに喰らえば危なかったか。だが、これでそちらの切り札は打ち止めだろう」

既に二度のゴッドフェニックスで、さやかの魔力は底をついている。
エリスと舞の攻撃では決定打になるかわからない。

エリス 「ほんとにこれで最後・・・?」

舞 「・・・・・・まだ」

さやか 「うん、まだやれることはあるよ」

しかし、三人の目はまだ死んでいなかった。
最後の魔力を振り絞って、さやかは一つの魔法を使う。

さやか 「これが正真正銘最後の魔力だよ。ブーストマジック」

二つの炎が、それぞれエリスと舞を包み込む。

エリス 「これは?」

さやか 「一時的に身体能力を高める魔法。効果は3分くらいだから、その間に決めてね」

舞 「はちみつくまさん」

エリス 「いいわ」

魔法で強化されたスピードで、二人が左右へ散る。
さすがに消耗しているシヴァも反応するが、先ほどに比べれば鈍い。

シヴァ 「小ざかしい小娘どもが!」

右からエリスの拳、左から舞の刀が迫る。
それぞれにシヴァは片手で対応する。
動きは互角だが、どちらも相手の体まで攻撃することができない。
拮抗しているが、それはエリスと舞にとっては不利だった。
身体能力を高めるさやかの魔法効果は三分しかもたないのだ。

舞 「くっ・・・なら、これで!」

ヴンッ

シヴァ 「なにっ!?」

攻撃の手を緩めた舞が、雷をまとった力を相手に向かって送る。
それは空間を操る力、シヴァと同じ力と言えた。

シヴァ 「空間に干渉しているのかっ、この力を人間が!」

エリス 「動きが鈍った・・・・・・これで!」

シヴァ 「どけぇ!」

ガッ

エリス 「くっ・・・!」

動きが制限されても、シヴァはエリスの攻撃を跳ね返した。
だがその顔に先ほどまでの余裕はなく、怒りが浮かんでいた。

シヴァ 「人間どもが、この私を・・・・・・・・・!?」

自分の動きを封じている舞に対して攻撃を仕掛けようとしたシヴァが、別の何かを感じて動きを止める。
それを感じるのは、真正面。
圧倒的魔力を持つシヴァをもってしてぞっとさせるほどの力が集まっていた。

シヴァ 「それは・・・!」

郁未 「くたばりなさいっ! 特大の龍気砲!!」

力を集めていた存在、郁未の両手から凄まじい気が放たれる。
威力で言えば、さやかのゴッドフェニックスすら上回る強大な力がシヴァの身を飲み込んだ。

シヴァ 「ぐ、ぐわぁああああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ドォーンッ!!!

 

巨大な気砲はシヴァを吹き飛ばしただけで留まらず、その後ろの壁にまで大穴を空けた。

さやか 「すっご〜い・・・・・・地脈から気を集めて一気に解き放ったんだ」

さくら 「無茶するよ〜。大地の気の流れに自分の体を組み込むなんて。下手したら郁未ちゃんの体が・・・」

郁未 「ええ・・・・・・許容量限界だったわ・・・・・・」

舞が起きたのとほぼ同じくらいの頃には郁未も意識を取り戻していたが、それからシヴァに気付かれないように気を練っていたのだ。
今の特大の一撃を叩き込むために。

エリス 「ふんっ、やるじゃない、あんた達」

最後を決めた舞と郁未に対し、エリスも称賛を送る。

舞 「・・・・・・」

さやか 「さすがに、倒したよね?」

エリス 「・・・・・・」

 

シヴァ 「誰を倒しただと?」

 

壁に空けられた穴の中から、シヴァが出てきた。
今の一撃ばかりは直撃を受けたか、かなりダメージを受けているようだったが、まだ健在である。

さくら 「そんな・・・・・・こんなことって・・・」

郁未 「化け物・・・」

舞 「・・・・・・」

エリス 「シヴァ・・・」

さやか 「今度こそ・・・万事休す?」

敵のダメージも大きいが、味方側の消耗はそれ以上だった。
もうまともに戦える者は残っていない。

シヴァ 「この私に一瞬とは言え恐怖を与えるとはな。おとなしくしていれば命だけは助けてやったものを。もう許さん、皆殺しにしてくれる」

まだシヴァには、この場にいる全員を充分に殺せる力が残っていた。

シヴァ 「終わりだ」

 

?? 「ちょっと待て。人をほったらかしにして勝手に終わるなよ」

 

その場にいる誰の者でもない声。
いるはずのないその者の声に、誰よりもシヴァが動揺する。

シヴァ 「何!?」

郁未 「この声!」

 

ザシュッ

 

何もない空間が切り裂かれる。
その裂けた空間の中から、誰かが姿を現す。

エリス 「祐一!?」

さやか 「祐一君!」

その名を呼ぶ声には驚きと喜びの感情が雑じっていた。

祐一 「まったく・・・空間を斬るなんて真似ができるのは豹雨と楓さんくらいだと思ってたのによ。やればできるもんだな」

シヴァ 「相沢祐一! 貴様・・・・・・!」

祐一 「妙なところに閉じ込めやがって・・・・・・覚悟しろよ、てめぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく