デモンバスターズEX

 

 

第11話 四神獣の祠

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祐一 「ここか?」

特に何の変哲もないような天然の洞窟。
ぱっと見た印象はそんな感じだ。

郁未 「・・・たぶん、間違いないわ」

祐一 「わかるのか?」

郁未 「ええ。気の流れが集まってる・・・・・・中心は、もっと深い場所にあるけど」

さくら 「さっすが郁未ちゃん。ご名答だよ」

気の流れ、か。
魔力とはまた違う、誰でも持っていながらほとんどの人間が扱い方を知らない力。
郁未はその力を操ることができるらしい。
当然使えるってことは、感じることも可能だ。

舞 「・・・・・・」

祐一 「どうした、舞?」

舞 「・・・なんでもない」

この間の一弥との一件以来、舞は少し元気がない。
相棒の郁未に言わせると、食も普段に比べて細いらしい。
みさきやエリスと比べると劣るが、充分食べているように俺には見えたんだがな。

さやか 「とにかく、入ってみようよ」

祐一 「だな」

さくら 「あ、気をつけて・・・・・・」

 

ズンッ!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

祐一 「・・・おい、何だこれは?」

入ろうとした途端、上から岩が落ちてきて入り口を塞いじまった。
これは明らかに自然に起こったものじゃない。
人工物・・・とは思えないが、作為的なものを感じる。

さくら 「一応神域だからね。防犯用の仕掛けがたくさん仕掛けられてるんだよ」

祐一 「そういうことは先に言えよ」

この程度の罠や仕掛けでどうにかなる俺達じゃないが。

さくら 「それに、四神と契約を結ぶための最初の試練、ってやつでもあるんだよ」

郁未 「私達を試すって言うの? 試されるのは嫌いだって言ったはずよ」

さくら 「神様のもとに行くのは、楽じゃないってことだよ。それとも、帰っちゃう?」

郁未 「・・・・・・」

ふっ、なかなかの策士だな、さくら。
俺達にしてみれば、別に面倒を侵して先へ進む必要はないわけだ。
だが、試練とやらみたいなものを前に帰ったとあっては、逃げたみたいで格好がつかない。
性格上、そういうのは俺も郁未も好みじゃない。

祐一 「いいだろう、行ってやるよ。そんなもの無意味だったってすぐに証明してやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入り口を塞いでいた岩を吹き飛ばして中に進む。
途中、トラップの類が大量にあったが、その度に回避するなり吹っ飛ばすなりして先へ向かった。
なかなか手の込んだ造りだが、俺らの行く手を阻むには役不足だな。

しかし、本格的な仕掛けは、まだこれからだった。
洞窟に入ってから1キロくらい歩いたろうか・・・・・・深さについてはよくわからん。

さくら 「聞かれる前に説明しておくとね、彼らはここの番人で、トラップを突破した人は・・・」

祐一 「それ以上は言わんでもわかる」

さやか 「お約束だね」

目の前の通路を塞ぐように立っているのは四匹の鬼。
鬼ってのは冥府の使いと思われているが、もとは神の眷属だ。
神の祠とやらを護っていたって不思議じゃない。

郁未 「ノルマは一人一匹ね。いい?」

祐一 「上等だ」

さやか 「うん♪」

舞 「はちみつくまさん」

 

 

 

 

 

 

俺の相手はごつい体の一番大きな鬼。
見たところパワータイプだ。
何気に一番面倒そうな奴を押し付けられた感じはするが、まぁ、どいつが相手でも同じことか。

祐一 「とっとと終わらせるぜ!」

氷刀を生み出して斬りかかる。
この図体なら避けられまいと思ったが・・・・・・。

ヒュンッ

祐一 「何?」

俺の剣は外れ、奴は俺の背後に・・・。

祐一 「ちっ!」

咄嗟に氷の壁を生み出して攻撃を防御する。
見かけによらずスピードがありやがるな、こいつ。

祐一 「だがそのてい・・・どぉ!?」

ガッ!

真正面から一撃を辛うじて防ぐ。
避ける暇がなかっただと?

おいおい、こいつ強ぇ・・・。

祐一 「鬼の分際で・・・」

いや、鬼ってのは強いものなんだがな。
かと言ってこの強さは予想外だ。
大丈夫かな・・・・・・他の奴ら。

ブゥンッ

祐一 「・・・・・・」

ズンッ

祐一 「・・・ま、俺は問題ないけどな」

一回り大きくした氷刀を上に掲げ、鬼の拳を受け止める。
そのままパワーで押し込んでこようとするのを、刀を回転させて力を横へ逃がす。
バランスを崩した鬼の体に向けて氷刀が走る。

ザシュッ!!

祐一 「凍魔天嵐」

斬った部分から鬼が凍りつく。
いっちょうあがりだ。

 

 

 

 

 

 

さて、他の連中の戦いぶりでも見物するか。
まずは舞。

この間の一弥との一戦で愛用の刀を折られちまったんで、今使ってるのは途中の街で購入したそこそこのものだ。
並みの相手なら腕でカバーできるが、強敵を相手に武器が弱いってのは苦しい。
武器が強ければ使い手が強いわけじゃないが、俺達のレベルになると武器もそれなりのものを使わないと、技に武器がついてこない。
俺が普通の武器ではなく、自ら生み出した氷刀を使っているのも、俺が扱えるレベルの武器が見付からなかったからだ。
超ハイレベルな俺達の力についてこれるのは、例えば豹雨の大太刀“斬魔刀”や、楓さんの神剣“草薙”みたいなやつだ。

舞 「・・・・・・」

ズンッ

鬼の一撃が壁にめり込む。
今の舞の刀ではあれを浮け切ることは到底無理だから、避けるしかない。
舞のスピードなら問題ないだろうが、この鬼どものスピードも侮れない。

それに、俺の氷刀ではあっさり斬れたが、鬼の体はかなり硬い。
なまくら刀で斬れるか?

祐一 「?」

妙だな。
鬼の動きが鈍い。
俺が相手した奴よりスピードに劣るのか?
いや、最初に見た一撃はそんなことなさそうだった。
ということは・・・・・・舞が何か仕掛けたのか。

バチッ

祐一 「あれは・・・」

雷撃?
舞の力か。
だがあれは、ただの雷じゃないな。
たぶん、雷はただの副産物。
この力は・・・・・・。

舞 「ハッ!」

ザシュッ

斬れた。
鬼の固い表皮を、いとも簡単に。
空間ごと斬ったのか・・・・・・そんな真似が、豹雨と楓さんの他にできる奴がいるとはな。
次元刀・・・とでも呼ぶべきか。
雷撃は次元が擦れる際に生じているだけだ。
あれは、よほど強力な力をもって対抗しないと防げない。

しかも、鬼の動きが鈍いのは、舞が特定の空間に干渉している証拠だ。
実際どういう原理かまではわからないが、あれは相当な力だな。
俺と同じ、先天的な特殊能力。

舞 「総天夢幻流・斬魔剣・・・・・・いづな!」

ザシュッ!!

あれが、あいつの斬魔剣・・・。
一弥との時は不発だったが、まさに一撃必殺だな。
切れ味だけなら豹雨のしぐれ以上か?

どうやら、いらん心配だったな。

 

 

 

 

 

さて、こっちはさやかか。
火炎・爆裂系魔法が得意なあいつにとって、この狭い洞窟は不利な地形かもしれない。
或いは苦戦を・・・・・・。

さやか 「ほいっと!」

ドンッ!

顔面で小規模な爆発が起こって、鬼が仰け反る。
あまり苦戦はしてなさそうだな。

さやか 「あーあ、こう狭いと大技が撃てなくて戦いにくいなぁ」

やっぱり、少し抑え気味みたいだな。
いつもみたいな大技ぶっぱなしてたら、あっという間に洞窟中に火が回って、焼け死ぬ前にたぶん酸欠で死ぬ。

しかし・・・・・・やっぱり強いな、あいつも。
舞の戦いを見ながらあいつの方もちらちら見ていたが、さやかは戦闘開始からあの場所を一歩も動いていない。
さやかの周囲には無数の炎が浮かび、それが向かってくる鬼を迎撃している。

あいつの間合いは今、炎の結界。

祐一 「一撃であいつに攻撃を当てなければ、仕掛けた方が火達磨になる」

破るのは容易じゃないぞ。

さやか 「さてと、そろそろ決めようか」

はじめてさやかの方から動く。
顔面に受けた火炎のダメージが残る鬼に向かって走り、天井近くまで飛ぶ。
つられて上を見た鬼の口に、小さな炎が入っていく。
そのままさやかは鬼の背後に着地。
鬼は振り返って無防備な背中を狙うが、様子がおかしい。

シュゥゥゥ・・・・・・

口だけでなく、鬼の全身から煙が出ている。
さやかが投げ込んだあの小さな炎が、何かしているのか。

さやか 「外から燃やすと周りが大変だから、中からね」

ボゥッ

ゴォオオオオオオオオオ!!!!!!

一気に鬼の体が燃え上がる。
体の膏に火がついたか。
鬼と言っても、根本的な肉体構造は俺達人間と大差ないはずだ。
肉の塊である以上、そこには燃える要素がある。
それを中から熱を加えて燃やすとは・・・・・・。

祐一 「怖い奴だ」

あれじゃひとたまりもないな。
炎が燃え尽きた時、鬼は骨すら残らないだろう。

 

 

 

 

 

最後は郁未だ。
こいつが戦っているところは、まだ見たことがない。
強いのはわかるが、どれほどのものか。

郁未 「はぁ・・・試されるのは嫌いだって何度も言ってるのに、こんなものを」

水瀬屋敷で最初会った時にも感じた雰囲気。
気の流れがあいつを中心に集まっていく。
爆発的なエネルギーが・・・。

郁未 「さっさと終わらせてやるわ」

ダッ

地面を蹴る音がすると、郁未は矢のような勢いで鬼の懐に飛び込んでいく。
だが、あの鬼のスピードもなかなかのものだ。
あのくらいじゃ、捉えられないぞ。

ブゥンッ

鬼の拳が郁未の正面から迫る。
カウンター気味だから、かわしきれないぞ。

郁未 「フッ!」

すり抜けた!?

いや、まるで流れに乗るように、拳を器用にまとわりつく感じで後ろへ・・・・・・。
そのまま腕を掴んで、体を一回転。
鬼も一緒に回っている。

ズンッ

投げ飛ばして地面に叩き付ける。
即座に起き上がった鬼の反撃を、郁未はことごとくかわしていく。
完全に動きを見切っているな。

郁未 「吹き飛びなさいっ、龍気掌!!」

ドッ!!

気のエネルギーをまとった郁未の掌底が鬼の体の中心を射抜く。
凄まじい破壊力が、鬼の体に大穴を穿った。

 

 

 

 

 

 

 

さくら 「やっぱり、四人ともボクの見込んだとおり、強いね〜」

傍観者が一人、楽しげに笑っているが、試されている感じのするこっちはあまり気分は良くない。

さやか 「強いでしょ〜」

一名ばかり除いてな。

舞 「・・・お腹空いた」

間違い。
二名ばかり・・・って俺と郁未だけじゃねぇか、不快な気分になってるのは。
これじゃ、多数決なら負けだぞ。

ま、能天気組は放っておこう。

祐一 「どう思う、郁未?」

郁未 「さあ? そこそこだったけど、神様に会うために試練っていうには物足りない感じね」

祐一 「だな。この分だと敵ってのもどれほどのものやら」

郁未 「けど魔族だって言うなら、厄介なことに変わりはないわよ。この前会った魔族は、一筋縄じゃいかなそうだったし」

祐一 「そうなのか。魔王クラスの魔族が相手ならおもしろいんだがな」

俺が全力を出し切って尚釣りが来るような超大物。
今回はその匂いがプンプンしている。
何しろ神と呼ばれる存在が絡んでるんだからな。
魔族にはいくらでも会ったことがあるが、神ってのははじめてだ。
いったいどんな奴らなのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼どもを倒してからは、ただひたすら長いだけだった。
トラップや敵の類も一切ない。
ただ、どんどん普通じゃない場所に近付いている・・・・・・それだけは確かだ。

祐一 「柄にもなく緊張してきたよ、俺は」

郁未 「私も。こんなに純度の高い気を生で感じるのははじめてだわ」

舞 「・・・・・・」

さやか 「・・・ドキドキだね」

さっきまで能天気だった舞やさやかも、普段と比べれば神妙な顔つきだ。

さくら 「着いたよ」

先頭を歩いていたさくらが立ち止まって振り返る。
ここまではずっとトラップがある以外は天然の洞窟だったが、そこには明らかに人工物と思われる扉があった。
それを開けると、さらに下に続く階段。

祐一 「まだ降りるのか?」

さくら 「すぐだよ」

言ったとおり、大体三階分くらいを降りると、広い場所に出た。
天井まで5メートルくらい、半径20メートルくらいの円形の部屋だ。
そして中央には四体のオブジェ。

祐一 「あれは・・・・・・」

さくら 「玄武、青龍、白虎、朱雀・・・・・・四神獣の姿を象った神像だよ」

ただの像とは思えないな。
凄まじい魔力を感じる。
今まで感じたことがないほど純粋で強力な。
なるほど、神ってのは眉唾物じゃなさそうだ。

郁未 「それで、私達はどうしたらいいの?」

さくら 「うん、まずは・・・・・・って?」

説明を受けるより先に、さやかが像のところに行っている。
四方を向いている神像の周りをぐるりと歩いてから、一つの像の前で足を止める。
翼を広げた鳥・・・・・・朱雀だ。

さくら 「うん、そう、あんな感じ」

祐一 「って、おまえ何したんだ、さやか?」

さやか 「う〜ん、何となく歩いてみただけなんだけど。そうしたら、ここが一番しっくり来たから」

さくら 「自分に相応しい神獣の像の前に立ってもらいたいんだ。ボクは誰がどの像のところに行けばいいか知ってるけど、できればみんなさやかちゃんみたいに自分で見つけてほしい」

舞 「・・・・・・」

まず前へ進んだのは、舞だった。
同じように残り三体の像の間を歩いてから、虎の像の前で立ち止まる。
白虎。

郁未 「じゃ、私も」

続いては郁未。
残りは二体・・・・・・郁未は龍の像の前に立った。
青龍。

祐一 「って、俺に選択の余地なしってか」

空き席は一つ。
亀の像・・・・・・玄武。

祐一 「っ!」

これは・・・?
何なんだ?
妙な感覚だが、不快感はない。
むしろ・・・。

さくら 「そうしたら、心を無にして・・・・・・それぞれの神像に触れて」

無心に、俺は像へ向かって手を伸ばした・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく