デモンバスターズEX

 

 

第7話 四人の神子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

琥珀 「あ、ほたるちゃん、そこの塩取ってもらえますか?」

ほたる 「はい」

翡翠 「すみません、ほたるさん、この洗濯物をあちらの部屋まで運んでいただけますか?」

ほたる 「はい」

ナイツ・オブ・ラウンドの二人の襲撃があった日から一週間経った。
あれ以来、特に何事も起こらず、再び日常に戻っている。
琥珀の笑顔は再び途絶えることがなくなっていた。
そしてほたるは、水瀬屋敷に居ついた。
まぁ、秋子さんの了承が下りたからな。

ほたるは、見た目こそ十七、八才だが、知識に関しては子供同然だった。
話によれば、まだ生まれて二年も経っていないそうだから、当然と言えば当然だ。
けれど知能が低いわけではなく、教えたことがどんどん吸収する。
今では琥珀と翡翠に扱き使われ・・・もとい、頼りにされていた。
楓さんが、仕事を取られたと嘆いていたが。

楓 「当分借金返せないかも」

エリス 「さやかのことだから、あんなの冗談でしょ。どうせ上手いことやってどこからともなくお金手に入れてたんだから」

祐一 「そういう感じはするよな、あいつは」

さやか 「なんか妙な噂されてるな〜」

俺達三人で話してるところに、地獄耳のさやかが乱入してくる。
今日はなんだかんだで、屋敷に俺達しかいない。
いや、秋子さんはいるけど、どこにいるのやら。

祐一 「・・・・・・」

楓 「どうしたの、祐一君?」

祐一 「いや、なんでもない」

というのは嘘だ。
実は気になることがある。

あの女・・・・・・天沢郁未のことだ。

近いうちにまた来ると言って一週間。
その間、あの女ではないが、誰かの視線を時々感じていた。
敵意のある視線じゃないから放っておいたが、誰かが俺に関心があるのは間違いなさそうだ。
そろそろ何かあるんじゃないかと思って、今日は出かけずにいる。

エリス 「やれやれ、なんだからつまんないわね。せっかくまたナイツ・オブ・ラウンドの連中が来るかと思って、家でごろごろしながら待ってるのに。全然来ないじゃない」

さやか 「私もあの日はずっとお昼寝してたんだよね。円卓の騎士には是非とも会ってみたいと思うけど」

楓 「この辺りはカノンの勢力圏の外だから、あんまり戦力を割けないと思うよ」

エリス 「いっそこっちから出向いてやろうかしら?」

祐一 「・・・・・・」

ナイツ・オブ・ラウンド・・・か。
カノン公国が誇る無敵騎士団の頂点に立つ十三人の精鋭。
確かに、先日のマギリッドを見る限り、あなどれない連中だな。

しかしあいつ、妙なことも言ってやがったな。
俺がどうとか、奴らがどうとか・・・。

気にしても仕方ないとは思うんだが、何かが引っかかる。

さやか 「あ〜あ、退屈だな〜。ねーねーエリスちゃん、ぎゅってしていい?」

エリス 「イヤ」

さやか 「はぁ〜・・・・・・・・・」

楓 「・・・・・・」

祐一 「・・・・・・」

だらけてるかな、俺達?
けど、やることがないのは事実だ。

さやか 「きゅぴーんっ!!!」

祐一 「な、なんだ!?」

さやか 「かわいいものせんさーに反応あり!!」

祐一 「は?」

さやか 「こっちだね!!」

今にも畳と一体化するのではないかと思えるほどごろごろしていたさやかが唐突に起き上がり、玄関方面へ向かって突進していった。
何だかちょっと普通じゃない・・・・・・いや、あいつの行動パターンからすれば決しておかしくはないんだが、突拍子もない行動だ。

祐一 「なんなんだ、いったい?」

放っておいてもいいんだが、気になると言えば気になる。
どうせ退屈してるんだし、いいか。
俺も立ち上がる。

 

?? 「うにゃにゃ〜〜〜」

 

祐一 「なんだ?」

また妙な声。
玄関からだな。

その玄関までやってくると、小柄な少女がさやかに抱きかかえられていた。

そしてその他にそこにいたのは・・・・・・。

さやか 「かわいいよ〜、かわいいよ〜」

さくら 「う、うにゃあ・・・」

郁未 「さくら、この人が四人目なわけ?」

さくら 「うん、まぁね。正確には、彼女が一人目ってことになるのかな」

さやか 「あ、この二人が前に言ってた他の人? 四人目ってことは、もう一人いるんだよね」

さくら 「いるよ。そっちに・・・・・・」

 

ヒュッ!

ピッ

 

さやか 「・・・・・・」

さくら 「・・・・・・」

郁未 「・・・・・・」

押し黙る三人。
それもそのはず。
話している三人の合間を縫って、二本の刀が突き合わされているのだから。
完全に点と点・・・・・・双方の刀の切っ先が合わされている。
触れるか触れないか、髪の毛一本分くらいの隙間しかあいていない。

片方は俺の氷刀。
もう片方は黒髪の女の刀。

祐一 「・・・・・・どうやら大分腕を上げたみたいだな、川澄舞」

舞 「・・・・・・そっちも、強くなった。相沢祐一」

双方が刀を引く。
それで場を支配していた静寂が収まった。

さくら 「supprising・・・・・・びっくりしたよ〜。何がどうしたの?」

さやか 「ま、剣客さん同士の挨拶みたいなものじゃないかな」

郁未 「そうね。それにしても、まさか四人目があなただったとはね」

さやか 「ん? どっかで会ったことあったっけ?」

郁未 「ま、覚えてないのも無理ないわね。私だってうろ覚えだし」

さやか 「〜〜〜・・・・・・・・・あー、思い出した! 確か名前は・・・・・・アマラライクミン!!」

郁未 「そんなわけのわからない奴じゃないっ! 天沢郁未よ、中途半端に間違えないで!!」

さやか 「冗談冗談♪」

郁未 「・・・・・・なかなかヤルわね、あなた。変わってないみたいね、灼熱の魔女」

さやか 「のんのん、ラブリーバーニングの白河さやかだよ♪」

祐一 「なぁ、とりあえず玄関先で話してるのもなんだし、俺の家じゃないけど上がらないか? 秋子さんに確認取ればたぶん・・・」

秋子 「了承」

祐一 「ということだから、話は中でしよう」

さくら 「ま、またびっくり・・・・・・このおねーさん、いつの間に?」

郁未 「(この人が水瀬秋子か・・・。さすがね、私でさえ、微かにしか気配を感じ取れなかった)」

舞 「・・・・・・」

なにやら色々と複雑そうだが、一先ず話は中に入ってということになった。

 

 

秋子さんはお茶を入れますね、と言って奥へ引っ込み、部屋には俺達だけになる。
テーブルを挟んで片側に俺、さやか、エリス、楓さん、反対側に郁未、舞、さくらが座る。
一部初対面なんで、簡単な紹介をした。

郁未 「驚いたわ。まさかほんの数ヶ月の間に、あの最強伝説のデモンバスターズ全員と会うなんてね」

楓 「こっちも驚いた。元ナイツ・オブ・ラウンドの川澄舞ちゃんと祐一君が戦ったことがあるなんて」

とまぁ、一部において新事実が判明したりとあったが。
お茶が来て一落ち着きしてから、話が始まる。

さくら 「うーんと・・・できれば、楓さんとエリスちゃんには席を外してもらいたいな」

エリス 「何? アタシ達がいちゃできない話なの?」

楓 「私は別に構わないけど・・・」

疑問はもっともだ。
連中と知り合いらしいさやかはともかく、何で俺が残ってこの二人は駄目なんだ?

さくら 「駄目ってことじゃないんだけど・・・・・・まずはこの四人と話がしたいんだ」

楓 「・・・・・・わかったわ。行こう、エリスちゃん」

エリス 「ま、いいでしょ」

 

 

 

二人が去って、部屋に残っているのは五人。
芳乃さくらという小柄な少女を中心に、両側にそれぞれ俺とさやか、郁未と舞という形で座っている。
どうやら事情がわかっていないのは俺だけではないらしく、他の三人も詳しい話はまだ聞いていないらしい。
ただ、何かの目的でさくらが俺達四人を探していた、ということだ。

郁未 「さぁ、あんたが言ってた四人とやらが集まったところで、そろそろ話してもらいましょうか?」

さくら 「うん、そうだね」

神妙な面持ちでうなずくさくら。
見た目が見た目だけに、あまり威厳とかとは程遠いが、雰囲気が充分に出ている。
こいつも、ここにいる他の四人ほどじゃないけど、只者ではない。

さくら 「まずは単刀直入に言うよ。ボクは、四神の“ミコ”になってくれる人を探してたんだ」

祐一 「四神の“ミコ”・・・だと?」

さやか 「ミコっていうと、あの巫女のこと?」

さくら 「まぁ、そうだね」

郁未 「どういうことなの?」

さくら 「四神・・・或いは四神獣とも言うけど、彼らはこの地上にいる神の中では最高神格を持つ、森羅万象を司り、この地上を安定させるために存在している。けど今、その安定を乱そうとしている者達がいるんだ」

郁未 「それで?」

さくら 「四神の力は強大だけど、彼らはあくまで向こう側の世界の住人であって、こちら側の世界では100%の力を振るうことができない」

ちょっと説明しておこうか。
さくらが言った向こう側とこちら側ってのは・・・まぁ、他に表現のしようがないからこういう言葉を使ってるわけだが。
こちら側ってのはつまり、人間やその他の生物が存在している通常空間のこと。
向こう側ってのは実際よくわかっていないが、空間的に少しずれた場所にあるものらしい。
二つの世界は決して交わることはないが、双方が微妙に影響しあっているという。
魔法というのも向こうとの干渉によって引き起こされる力らしいが、これも細かいことはわかってない。

さくら 「その四神の力をこちら側に流し込む、いわゆるコネクターとしての存在が、つまり四神のミコ」

祐一 「すまんが、ちょっといいか?」

さくら 「何かな?」

祐一 「巫女が必要だっていうなら、どうして俺がここにいるんだ?」

言っておくが、俺は男だ。
実は女だったとかそういうオチはないぞ。

さくら 「ああ、それはね。ミコっていうのは確かに巫女のことだけど、本来は神子なんだ。神の依代として女性の方が適している場合が多いから巫女っていうのが定着しちゃってるけど、別に男の子でも全然構わないんだよ」

祐一 「なるほど・・・・・・で、つまり俺達四人にその神子とやらになってほしいと?」

さくら 「YES」

郁未 「この四人である理由は?」

さくら 「四神はそれぞれ異なる特性を持っているから、それぞれと相性のいい力の持ち主がよかったのが一つ。あとは神子としての適正だね」

郁未 「それで適任者・・・か」

祐一 「唐突な話だな」

つまりあれだろ。
世界の危機だから神様に力を貸してくれって類の、英雄とか勇者とかが出てくる類の神話や伝説でよくありそうな話だ。
俺のガラじゃないんだがな、そういうのは。

祐一 「そもそも、いったいどこのどいつがこの地上を乱そうとしてるってんだ?」

さくら 「それはまだはっきりしないけど、魔族なのは確かだよ」

祐一 「魔族・・・ね」

今まで多くの魔族と戦ってきたが、どれも絶対的な脅威と感じたことはない。
魔王と呼ばれる存在は確かに強かったが、世界の存在を危ぶませるほどとは思えないんだがな。

さくら 「敵に関して、はっきりしたことはまだわからないんだ。ただボクの知り合いに先見の力を持ってる人がいて、その人が近い将来、必ず四神の力が必要になるからって・・・」

郁未 「先見の力って、つまり予知能力でしょ? そんなものがアテになるの?」

さくら 「彼女の先見は確かだよ。もちろん未来はいくつにも枝分かれしてるから、絶対の未来を予測することはないけど、彼女が起こると言った出来事は、どんな形でも絶対に起こる。その結果どうなるかまでは、わからないけど」

祐一 「要するに、とんでもない魔族が現れるってことか」

そいつはおもしろそうだ。
神の力が必要とされるレベルってことは、間違いなく魔王クラスの敵だろう。
燃える展開になってきたじゃないか。

祐一 「いいだろう、俺は乗ったぜ。四神の神子云々の話はどうでもいいが、魔族とやりあうのはおもしろい」

さやか 「私もオッケーだよ」

郁未 「ま、ここまで来たら最後まで付き合いましょう」

舞 「お腹空いた」

スパーンッ

郁未 「おのれは話を聞いてたのかっ!」

秋子 「お話はお済みですか?」

さくら 「わ! びっくりしたー・・・」

また絶妙なタイミングで現れたな、秋子さん。
まさか聞いてたんじゃないだろうな。

秋子 「三人とも、今日はお夕飯を食べていきませんか?」

舞 「・・・食べる」

郁未 「勝手に決めるなっ」

秋子 「了承」

どうやらそういうことになったらしい。
どこかに行くにしても、出発は明日の朝以降だな。

 

 

 

 

 

 

夕飯時――。

浩平 「それは時計ということか・・・」

さやか 「ぶーっ」

祐一 「・・・・・・」

何故かバカップルもいる今日の食卓。
物凄い人数になってるな。
飯を作ってる琥珀とほたると楓さんが大変そうだ。

郁未 「舞、人の家なんだから少しは遠慮しなさいよ」

舞 「むま?」

祐一 「まぁ、あんまり気にするな」

郁未 「?」

祐一 「ほれ」

俺は隣にいる連中を指差す。
まず国崎、既に三杯目を要求している。
さらに・・・・・・。

みさき 「あむあむ」

エリス 「がつがつ」

郁未 「・・・・・・」

祐一 「ここで遠慮なんてしてたら、食うものなくなるぞ」

舞もなかなか食べるようだが、せいぜい国崎と同等程度だ。
あっちの怪物二人は桁が違う。

郁未 「・・・世の中、上には上がいるということね」

祐一 「ああ、俺もそう思う」

と、そこで俺はあることに気付いた。

祐一 「あれ? 琥珀、ほたるはどうした?」

琥珀 「あはっ、ほたるちゃんだったら、道場の方だと思いますよ」

祐一 「道場? なんでまた・・・」

琥珀 「まだ帰ってないみたいですし」

祐一 「?」

栞 「そういえば、時々道場に来てるの見かけますね?」

香里 「時間がある時はずっとよ。三日経った頃には誰が目当てかわかったけど」

さやか 「あー、てことはやっぱりこの間のあれはそういうことかー」

祐一 「おいおまえら、何勝手に納得してるんだ?」

さやか 「人生の春ってやつだよ♪」

祐一 「ほたるがか? 誰に?」

香里 「石橋さんよ」

祐一 「は?」

琥珀 「なかなか渋い趣味ですよねー♪」

渋いというかなんというか・・・。
歳の差が凄まじいな。
ほたるはまだ二歳にもならんのだぞ。
それで相手は三十路・・・。

ほたる 「・・・・・・あ、あの・・・」

祐一 「お、ほたる」

戻ってきたらしいほたるが顔を赤らめてもじもじしている。
どうやら今の話、ほんとらしいな。

ほたる 「そ、そういうんじゃない・・・です・・・・・・。石橋さんって・・・その・・・・・・おっきくって・・・ほっとするっていうか・・・・・・・・・」

消え入りそうな声で話すほたる。
確かに、これはどうやら間違いないな。
まぁ、誰が誰を好きになってもいいけどさ。

さやか 「ほたるちゃん」

ほたる 「は、はいっ?」

さやか 「初恋は一直線が一番だよ」

ほたる 「へぅ!?」

みさき 「押しが肝心だよ」

美凪 「・・・がっつ」

名雪 「ふぁいとっ、だよ」

栞 「がんばってください」

琥珀 「惚れ薬もありますよー」

ほたる 「えと、その、あの・・・・・・・・・ぷしゅー」

あ、ショートした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく