デモンバスターズANOTHER 〜ノワール・ムーン〜

 

 

第9話 新たな旅へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

郁未 「確か、バインとか言ったかしら?」

バイン 「覚えていていただいて光栄ですよ」

クジャクナタラが封印されていたという遺跡に、私はやってきている。
そこには、さっき酒場で会ったターバンの男がいた。

郁未 「ここで何をしているの?」

バイン 「さて・・・何でしょうね?」

郁未 「なら質問を変えるわ。クジャクナタラを解き放ったのは、あなた?」

バイン 「ご名答。良くわかりましたね」

郁未 「勘よ。そういう目をしている・・・あなたは」

右手に気を込める。
いつでもやる構えだ。
相手も警戒して距離を一定に保とうとしている。

郁未 「何が目的?」

バイン 「目的・・・・・・ははは。目的がなければ魔獣を解き放ってはいけませんか?」

郁未 「何ですって?」

バイン 「ちょっとした気紛れ、ではいけませんか?」

郁未 「その結果多くの人が犠牲になっても、構わないと言うの?」

バイン 「私の知ったことではありませんな。あなたは、無関係の人が死んで特に感傷に浸ったりしますかな?」

確かに、浸らないでしょうね。
私は、無関係な人の死を悼むほど人間できてはいない。
けど・・・。

郁未 「少なくとも私は、自分でそれをやろうとは思わないわ」

バイン 「そうですか。・・・目的とおっしゃられましたな。確かに目的はありますよ。ただ、あなたにお話しする必要がありますか?」

郁未 「さあ。それはあなた次第でしょう」

向こうにもはっきりわかるように殺気を放つ。
返答次第では・・・。

バイン 「・・・お答えしましょう。私は魔族です」

郁未 「!!」

魔族・・・。
魔物の中でも特に高い知能を持った種族のことね。
しかもこいつは、人間以上の知能を持った、上級魔族・・・。

郁未 「その魔族が、何のために魔獣を?」

バイン 「いくつかありますよ。例えば、たまたまこの辺りにあの斬魔剣の豹雨がいたので、この目でその実力を確かめてみたかった。彼は魔界でも有名ですからね」

郁未 「それだけ?」

バイン 「もう一つの目的は・・・秘密です」

郁未 「なら、もういいわ」

こいつは・・・生かしておくと危険だわ。
この場で、やる!

郁未 「龍気掌!!」

ガッ

私の右手が地面を抉る。
けれど奴の姿はない。

郁未 「ちっ!」

バイン 「あなたと正面から戦うのは、私と言えどもリスクが大きすぎる。・・・・・・そうだ。いいことを教えて差し上げますから、この場は見逃してください」

郁未 「何を寝惚けたことを・・・」

バイン 「私の仲間が、カノン公国の内部・・・しかもかなり偉い位置にいますよ」

郁未 「!?」

なんですって?
カノンの偉いのと言えば・・・国を動かす大臣クラスか・・・・・・ナイツ・オブ・ラウンド。
そこに魔族ですって?

バイン 「あなたにとっては、わりと有力な情報でしょう。まぁ、それでどうするかは、あなたの自由ですがね。おっと、ではそろそろお暇させていただきましょう」

郁未 「待ちなさいっ!」

バイン 「おさらば」

気配が消えた。
どうやら、逃げたみたいね。
逃げた・・・と言っても、戦ってみてどっちが勝ったかは、正直五分五分だったわね。
魔族に妙な動きがある・・・ってことかしらね、これは。
カノンに魔族・・・・・・。
関係ない、けど。

郁未 「・・・帰ろうか」

ここにこれ以上いてもしょうがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。
町を少し離れた丘の上で、舞と豹雨が向き合っている。
問答無用のようで、互いに到着するなり刀を抜いている。
そして何故か私が開始の合図役・・・。

郁未 「じゃあ、このコインが落ちたらね」

投げやり気味に言って手にしたコインを弾く。
それが地面につく・・・。

舞 「!!」

豹雨 「へっ」

ギィンッ

先に仕掛けたのは舞。
というか豹雨はその場から動いていない。
舞の鋭い斬撃をたやすく受け止めた。

舞 「はぁっ!」

隙を探るように数発。
さらに合間に強烈な一撃を混ぜながら攻撃を繰り出す舞。
豹雨はあれだけ長い大太刀を武器を片手で操りながら、あの舞の速い攻撃を全て受けている。

豹雨 「どうした、そんなもんかよ。小僧とやりあってた時の方がマシなんじゃねェか?」

舞 「・・・・・・」

キィンッ

打ち込んだ刀を弾かれて、舞の体が泳ぐ。
そこへ豹雨の太刀が振り下ろされる。

ザシュッ

けど、振り下ろされた豹雨の剣は地面に斬る。
舞の姿は・・・・・・上。

舞 「総天夢幻流・・・・・・いづな!」

早くも舞の必殺剣が放たれる。
高速で真上から振り下ろされる舞の剣を、回避するのは容易ではない。
しかも豹雨はその場から動かない。

ガギィンッ!!!

両手で持って水平に構えた豹雨の太刀が舞の刀を受け止める。

舞のいづなを正面から止めたの奴は、はじめて見たわ。

舞 「くっ!」

豹雨 「ふっ」

得意とする一撃までも防がれ、舞の体が弾き飛ばされる。
体勢を立て直して足から着地するも、これ以上やってどうにかなるかどうか・・・。

舞 「・・・・・・」

豹雨 「俺に両手を使わせるとはな。今度はこっちの番だな」

柄を右手だけで持ち、左手は刃の部分に軽く添える構え。
剣気が、風もないのに周囲の草をなびかせる。

豹雨 「総天夢幻流・・・・・・しぐれ」

 

ザシュッ

 

舞 「っ・・・・・・!」

突風のような一撃に、舞の体が宙を舞う。
無数の傷が舞の全身に刻まれる。

どさっ

舞の体が地面に沈む。
自力で起き上がる気配はない。
気絶してるわね。

私は舞のところまで歩いていって、その体を抱え起こす。

郁未 「・・・大丈夫ね」

傷は見た目ほど深くない。

豹雨 「手加減したからな。その程度でくたばるタマじゃねェだろ」

郁未 「ええ、そうね」

豹雨 「少しは楽しめたぜ」

そう言い残して、豹雨は踵を返した。
本当に強いわね。
舞をまったく寄せ付けない。

郁未 「あ・・・」

と思ったけど、よく見れば豹雨の右肩・・・。
着物が僅かに裂けている。
届いてたんだ、舞の剣・・・・・・。

舞 「・・・・・・」

郁未 「・・・ちょっとは目標に近付いたんじゃないの、舞」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞 「・・・あむ・・・あむ・・・・・・おかわり」

郁未 「はいはい・・・」

負けたあとにはヤケ食い・・・。
実に舞らしいけど。
まぁ、今回だけは大目に見てやりましょう。

さくら 「うにゃ〜、なんだか深刻?」

郁未 「すぐに立ち直るわよ」

話を聞く限り、あの男と実際に戦ったのは、舞もたぶんはじめてなんでしょう。
前の時は一緒にいた同い年くらいの奴と戦ったみたいだし。
つまり、相手にもされなかった、と。
それが今回は一太刀でも浴びせたんだから、進歩したんでしょ。

舞 「おかわり」

ま、本人は納得いかないみたいだけどね。
現実は厳しいわ。

郁未 「さてと・・・食べてるこの子はおいといて・・・」

舞 「おかわり」

郁未 「ええい! 勝手にしなさい! こっちは大事な話があるのよっ」

財布を舞の方に突き出して、私はさくらと向き合う。

郁未 「そろそろ、あなたの真意を聞かせてもらいたいわね。何が目的で私達を試してるの?」

さくら 「わかってたんだ。さすがだね」

最初に会った街では、私とあのブラッディ・アルドとの戦いを観察。
ナイツ・オブ・ラウンドと遭遇した町では、わざと私と舞がはぐれるように仕向け、舞の戦うところを観察。
そしてここでは、私達にクジャクナタラを倒させた。

郁未 「それで、私達に何をさせたいの?」

さくら 「・・・はっきりとしたことは言えない。まだ揃わないから」

郁未 「揃わない?」

さくら 「ボクが、これ、と見込める人を四人集めなくちゃいけないんだ。全員揃ってから、話すよ」

郁未 「四人・・・そのうちの二人が、私と舞?」

さくら 「そう。二人ともまぁ・・・合格かな?」

郁未 「一つ言っておくと、私は試されるのは嫌いよ」

さくら 「うん、わかるよ」

この子・・・形は子供のくせに、真剣な表情をしている時は底知れないものを感じるわね。
いったい、何者かしら?

郁未 「どうして私と舞なの? そりゃあ、私達は結構強いけど・・・強さだけならあの豹雨やアルドと言った奴らだっている。何故私達なの?」

さくら 「理由はいくつかあるよ。強さだけが適任者の条件じゃないから」

郁未 「何の適任者?」

さくら 「それは、まだ言えないよ」

堂々巡りね。
このまま突付いても、答えは導き出せないでしょう。

さくら 「ごめんね・・・」

郁未 「じゃあ、まだ私達と一緒に行動するつもり?」

さくら 「そうしたいけど・・・ずうずうしいよね、それは。依頼はここまでだし、残りの二人はまた探すよ」

郁未 「待ちなさいよ」

さくら 「?」

郁未 「追加依頼、するつもりない?」

さくら 「にゃ?」

郁未 「芳乃さくらを、探している残り二人の適任者とやらのいる場所まで運ぶ・・・っていう依頼」

さくら 「・・・・・・」

ぽか〜んとした表情でさくらが私のことを見ている。
実は私自身、どうしてこんなことを言ったのかよくわからない。
けどなんていうか・・・・・・運命めいたものを感じたとでも言うのかしら。
私は現実主義者で、運命論者じゃないんだけどなぁ・・・。

さくら 「あ・・・ありがてぇや、姐さん!」

郁未 「誰が姐さんよっ!」

舞 「郁未、おかわり」

郁未 「だから勝手に・・・ってなんじゃこりゃーーーっ!?」

舞 「郁未、うるさい。おかわり」

振り返るとそこには、どどんと積み上げられた皿の山。
そして財布を逆さまにして振っている舞の姿。
あー、ちなみに今いる店は前払い制らしい。
だから食べたらすぐにお金がなくなる。
っていうか、結構入ってたはずなんだけど・・・これだけ食べれば空にもなるわよね。

郁未 「いつまで食べてるのよっ、あんたは!」

舞 「おかわり」

郁未 「もうなし! ていうか出発するわよ!」

舞 「おかわり」

さくら 「え〜と・・・うにゃあ〜・・・」

郁未 「ほら、さくらも。行くわよ」

さくら 「うん♪ じゃあ、改めてよろしくだよっ、二人とも!」

郁未 「気にしないで。当然、いただくものはいただくから」

さくら 「にゃあ・・・損得勘定してるんだ・・・。人選間違ったかな・・・?」

舞 「郁未、食べたりない」

郁未 「やかましいっ、ほらほら行くわよ!」

うたまる 「にゃあ〜」

返事は一匹のみ。
何やらぶつぶつ言ってるさくらと、尚も食べ物を要求する舞を引きずって店を後にする。

 

二人を車に放り込んで、エンジンをかける。

郁未 「さーてと。目的地不詳の旅ってのも、悪くないわね」

何が出るのか、ちょっとワクワク。
なんだかんだ言って、さくらの目的に興味が沸いてるみたいね、私は。
付き合ってやってもいいじゃない。

さくら 「な、なんだか危険なムードだなぁ・・・」

舞 「・・・降りる!」

郁未 「さあ、発進!!」

ギュォォォォォン!!!!!

アクセル全開。
スピードに乗って一気に町を離れる。
目指すは・・・・・・どこだろう?
どこでもいいわ。

郁未 「どこまでだって言ってやるわ! とりあえず、飛ばすわよっ!!」

舞 「ぽんぽこたぬきさん! 止まる! 降りる!!」

さくら 「うにゃあ〜・・・・・・やっぱこの二人はやめた方がいいのかにゃ〜? どうしよっかどうしよっか、考え中」

新しい旅に向けて出発よ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

あとがき

平安京(以下“京”):さてさて、外伝はここでおわりでござる

さやか(以下“さ”):そのうちこの三人も本編に登場するんだよね?

京:三人だけではない。他にも外伝に出てきて本編にいずれ出てくるキャラはたくさんいるぞ。何しろ全然謎が謎のままだからな

さ:でも、当分は本編でも触れられないんだよね〜

京:ま、気長に再登場を待ってもらいましょう。

さ:待ってる人がいればね♪

京:・・・・・・

さ:ではみなさん、また本編で会おうね。ばいび〜♪