デモンバスターズANOTHER 〜ノワール・ムーン〜

 

 

第6話 ナイツ・オブ・ラウンド

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

郁未とはぐれた舞とさくらは、黒装束の男達に追われていた。
敵はなかなかの実力者達のようだが、相手が悪い。

舞 「はっ!」

ザシュッ

不用意に近付いてきた一人を見向きもせずに斬り捨て、舞はさくらを連れて走る。
背の高い舞は、小さなさくらを抱えて走ってもそれほど問題はなかった。

さくら 「うにゃ〜、楽チンなんだけど、ちょっと酔うかも・・・」

うたまる 「にゃあ〜」

そのさくらに、さらにうたまるがしがみ付いている。
というかしがみつけるのかこの猫は、と郁未ならつっこみそうだが、舞は一切気にしていない。

やがて攻撃が止んだ。
単調な攻めでは舞をしとめられないとわかったのか。

舞 「!!」

新手の出現に、舞が足を止める。

?? 「・・・・・・」

舞 「・・・重蔵」

黒装束に黒い覆面、背中に刀を背負った大柄な男が、眼前に立っていた。
俗に言う、忍者姿だ。

重蔵 「久しいな、川澄」

舞 「・・・・・・」

最大限に警戒しつつ、舞は重蔵と対峙する。
今までの相手とはレベルが違う。
さくらを守りながらでは勝算が低い相手だ。

さくら 「舞ちゃん舞ちゃん」

舞 「?」

さくら 「ボクなら、自分の身くらいは守れるから、大丈夫だよ」

舞 「そう?」

さくら 「うんっ、ノープロブレム」

舞 「・・・わかった」

その言葉を受けて、舞はさくらから離れる。
いずれにしても相手の狙いは舞だ。
さくらに危害を加えることはないだろうし、目の前の男は人質を取ったりするタイプではない。

重蔵 「こちらの言い分はわかっているな?」

舞 「・・・こっちの答えもわかってるはず」

重蔵 「いかにも。ならば是非もなし」

背中の刀に手をかけ、重蔵が腰を落とす。
同じように、舞も刀の柄をぎゅっと握り締める。

重蔵 「カノン公国ナイツ・オブ・ラウンドが一人、ニンジャマスター服部重蔵・・・・・・参る」

舞 「総天夢幻流、川澄舞」

シュッ

ギィンッ!

両者の刀が打ち合わされる。

 

 

さくら 「にゃ〜」

薄暗い路地裏で、二つの黒い影が飛び回っている。
常人にはその姿は捉えられないだろう。

さくら 「ボクはどうしようか、うたまる?」

うたまる 「にゃあ?」

さくら 「そうだね。いざという時、すぐ逃げられるようにしておいた方がいいよね」

周囲には先ほど追い回してきた無数の気配。
それらの位置を探る。

さくら 「これは舞ちゃん達の戦いみたいだけど、義理で助太刀しなくちゃね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラガラ・・・・・・

天井から崩れた屋根の破片が落ちてくる。

郁未 「・・・・・・ふんっ」

目の前には崩れた分が積み重なった瓦礫の山。
下にはセリシアが埋まっている。

ガラッ!

セリシア 「ぷはぁっ! あーびっくりした」

その下から顔を出したセリシアは、服こそ破けていたが、傷はほとんど負っていない。
いえ、違うわね。
この短時間で、もう再生したんだわ。

郁未 「相変わらずのタフさね」

セリシア 「もう、郁未ったら。あたしじゃなかったら頭蓋骨粉々で死んでたよ?」

当たり前でしょ。
殺す気でやったんだから。
あれで生きてるのはあんたくらいのものよ。

郁未 「・・・・・・」

セリシア 「てへへっ、今度はこっちの番だね!」

銀の光が走る。
咄嗟にかわすと、足元の地面が斬れる。

セリシア 「まだまだぁ!」

ヒュッ ヒュンッ

銀の糸が幾筋も閃いて、周りの物を破壊していく。
崩れ落ちる瓦礫の合間を縫って、何本かは私に直接攻撃を仕掛けてくる。
それらを全て、私は紙一重で回避する。

セリシア 「あっはははっ、もっともっと!」

調子に乗ったセリシアがどんどん攻めてくる。

そろそろね・・・。

倉庫を抜ける。
そこで一旦私の姿を見失ったであろうセリシアが、壁をぶち破って飛び出してくる。
出てきたセリシアの頭を鷲掴みにしてやる。

セリシア 「わっ!」

郁未 「ハッ!」

バシャァンッ!

そのまま一緒に、すぐそこにある水路に飛び込む。
水面をかち割る勢いで突っ込んだため、水路の底にセリシアを叩き付けるところまで行く。

私は一足先に水からあがった。
少し遅れてセリシアも上がってくる。

セリシア 「ぷはぁ! いったーい・・・」

びしょ濡れにはなってるけど、やっぱり傷はない。
こんな程度じゃ、再生にかかる時間は数秒ってところね。

セリシア 「痛いし、苦しいよ? 郁未」

郁未 「当たり前よ」

セリシア 「む〜〜〜、えいっ!」

ビシッ

セリシア 「あれ?」

銀の糸で攻撃をしかけるが、違和感に気付いたようね。

セリシア 「あれれ?」

さっきと比べて、格段に糸の動きが鈍くなっている。
糸が重く感じるはずだ。

セリシア 「あれれ? なんで?」

郁未 「あんたの銀糸は、その銀髪そのもの。髪の毛が水をたっぷり吸えば重くなるのは道理でしょ」

セリシア 「う・・・・・・けど! あたしの武器は銀糸だけじゃないもん!」

魔力を腕に込めて、セリシアが接近戦を挑んでくる。
けれど・・・。

ガッ!

セリシア 「たっ・・・!」

郁未 「素手の勝負で私に勝てるつもり?」

突き出されたセリシアの腕を私の手刀が砕く。
すぐに再生すると言っても、これだけやれば痛みは感じる。
次の攻撃にセリシアが移る前に、私の手がセリシアの首にかかる。

郁未 「おいたが過ぎるわよ、小娘」

セリシア 「ひっ!」

私の眼光に射抜かれて、さすがのセリシアの息の呑む。
聖魔女の異名を持つ銀鋼糸使いで、カノン公国が誇る無敵騎士団ナイツ・オブ・ラウンドの一人に加えられるほどの力があっても、まだ未成熟な子供。
本気でやれば私とどちらが上かは明白。

郁未 「力任せのがむしゃらな戦法で私に勝てると思ったの?」

セリシア 「う・・・うぅ・・・」

郁未 「・・・・・・」

掴んでいた首を離してやる。
素早くセリシアは距離を取る。

郁未 「行きなさい」

セリシア 「ぅ・・・ひぐっ・・・うわぁぁぁぁぁん!! 郁未のばかぁぁぁーーーーーーっ!!!」

喚きながら駆けていく。
そのまま立ち去るかと思いきや、途中立ち止まって振り返る。

セリシア 「ふんだ! 郁未なんか、こうだもんっ!!」

魔法でやたら大きな火の玉を生み出して、こっちへ投げつけてくる。
やれやれ・・・。

私は両手に力を集中し、それ以上に巨大な気の塊を生み出す。
こっちに向かってくる火の玉と、向こうで舌を出しているセリシアに向かって、私はその力を解放してやった。

郁未 「龍気砲!!」

 

ドゴォーーーン!!!!!

 

セリシア 「きゅ〜〜〜〜〜」

吹っ飛んでいった。

まったく子供ね。
でも、子供なお陰で助かるんだけどね。
セリシアの魔力と、あのタフさは厄介なことこの上ない。
完全に倒すとなると、かなりの労力を使わなきゃならないでしょうね。
わりに合わないわ。

郁未 「さて・・・この分だと舞の方にも誰か来てそうね」

私達を追うのに、雑魚ばかりじゃ務まらない。
セリシアの他に、もう一人はナイツ・オブ・ラウンドが来ているはず。
そっちはセリシアほど、簡単じゃないんだろうなぁ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィーンッ

何度目になるかわからない金属音。
高速で動き回る二つの影がすれ違いざまに互いの刀を振るう。

舞 「・・・・・・」

重蔵 「・・・・・・」

技量は互角に見えた。
むしろ、剣の腕だけならば舞が上回っているが、闇に紛れての戦いは忍者の得意とするところだ。
重蔵は巧みに動き回り、舞の力を封じている。

舞 「ちっ!」

徐々に焦りを見せ始める舞。
対する重蔵は、この一進一退の攻防を静かに続ける。
持久戦もまた、忍者の得意分野であった。

今までの単調な動きから、変化が起こる。
舞は壁を蹴って、高く跳び上がる。

舞 「総天夢幻流・・・・・・いづな!」

ザシュッ

空中からの一撃が、重蔵の体を捉えたかに見えた。
だが・・・。

舞 「!!」

舞が斬ったのは、布切れを纏ったただの丸太だった。

重蔵 「忍法変わり身・・・取ったぞ、川澄」

背後に回った重蔵の刀が、逆に舞の体を斬った。
・・・と思われたが・・・。

重蔵 「む!」

斬ったはずの舞が姿が揺らぎ、掻き消えた。
残像である。

舞 「“いづな”とは・・・風の魔物。その斬撃が生み出す空気の歪みは陽炎の如し」

本物の舞の姿は、再び頭上にあった。

舞 「師匠が数十年の時をかけて磨き上げた地上最強の剣術、総天夢幻流の技に死角はない!」

振り下ろされる舞の剣。
重蔵は刀を盾に受け止めようとするが・・・。

パキィンッ!

舞の剣はその刀ごと重蔵の身を斬った。
刀を破壊したため僅かに斬撃の勢いが落ちた隙に、重蔵は身を引いていた。
そのため、肩口を僅かに掠めただけで済んだ。

シュッ シュッ

後退しながら、重蔵の手から小さな刃が放たれる。
手裏剣と呼ばれる飛び道具だ。
舞は刀でそれを弾き返したが、追い討ちをかける機会を逸した。

重蔵 「・・・見事」

舞 「・・・・・・」

一対一の勝負では分が悪いと判断したか、重蔵は配下の者を呼び集めようとした。
だが・・・。

重蔵 「こ、これは・・・」

冷静だった重蔵にはじめて動揺の色が浮かぶ。

 「く・・・と、頭領・・・」

 「ふ、不覚・・・」

彼の配下はいずれも、蔦などの植物に手足を絡め取られ、身動きを封じられていた。

舞 「?」

さくら 「にゃにゃ〜ん♪ ボクの手にかかれば、こんなものだよ」

舞 「さくら?」

何をしたのか。
疑問に思う舞に、さくらが得意げに答える。

さくら 「魔法で植物を操るんだ。ボクの得意技。さしずめ、忍法木とんの術ってとこだよ、忍者さん♪」

重蔵 「・・・・・・・・・退け」

声がかかると、忍者達は何とかして蔦を斬り、後退していく。
敵の気配が完全になくなると、舞は刀を納めた。

舞 「さくら、やる」

さくら 「えっへへ〜」

 

 

路地裏にかけつけると、舞とさくらがいた。
敵はもういないらしい。

郁未 「終わってるみたいね」

舞 「郁未、遅い。役立たず」

郁未 「誰がよっ、こっちだって大変だったんだから!」

ったく、自分だけが活躍したみたいな得意そうな顔してるんじゃないわよ。

郁未 「誰?」

舞 「重蔵」

郁未 「そう」

確か、ニンジャマスター服部重蔵。
セリシアと同じ、ナイツ・オブ・ラウンドの一人だったわね。
思ったとおり、円卓の騎士を送り込んできたけど・・・撃退成功ってとこね。

郁未 「けど服部が来たなら、部下とかたくさん連れてきてたんじゃ・・・?」

なのに、大勢と戦った様子がない。

舞 「さくらのお陰」

さくら 「他の人達はボクがなんとかしたよ」

郁未 「へ〜、さくらも結構やるじゃない」

高い魔力を持っているとは思ってたけど、なかなか。
是非見てみたかったわね。

さくら 「でも、なんだったの?」

郁未 「カノンの刺客よ。しばらく来なかったから、油断してたわ」

公国を脱出して以来、追っ手がしょっちゅうやってくる。
鬱陶しいことこの上ないけど・・・・・・まぁ、多くても今回みたいにナイツ・オブ・ラウンドが二人。
凌げない相手じゃないわ。
三人以上来ると厄介さ100倍アップだけど。
一対一で戦えるうちは、問題ない。
そして、公国にしたって、軍事力の象徴たる円卓の騎士をそうそう国外に向かわせるわけにもいかない。
ましてや、たかが私達二人を追うためだけにね。
あちらさんも、内情穏やかってわけじゃないから。

郁未 「それより、さっさと街を出るわよ。態勢立て直して再襲撃なんてされたら面倒だわ」

さくら 「そうだね」

舞 「はちみつくまさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく