デモンバスターズANOTHER 〜ノワール・ムーン〜

 

 

第5話 南を目指して

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さくら 「うにゃ〜、これって魔動自走車だよね?」

郁未 「知ってるの?」

はっきり言って、これは超がつくほど珍しい代物。
世界中探しても、同じものがいくつあるか。

さくら 「ボクも考えてみたんだよね。お金がなくって作れなかったんだけど」

郁未 「そんなに金塊持ってるくせに?」

さくら 「全然足りないよ。ゼロから作るとしたら何千万か、何億か・・・・・・そういえば、郁未ちゃん達をカノン公国に突き出せば2億もらえるよね♪」

郁未 「やってみる?」

さくら 「遠慮しとく。ボクだって命は惜しいからね」

懸命な判断だわ。
腕利きの賞金稼ぎだって、私達ノワール・ムーンを捕まえるのは一苦労でしょうね。
というか、捕まってやる気はこれっぽっちもないし。

さくら 「う〜ん、ここがこうなって・・・ちょっといじれば随分変わりそうだね」

郁未 「ほんと?」

さくら 「うん。基本部分はちゃんとしてるんだけど・・・・・・もっともっと性能は向上できるね。パーツもそんなにいらないよ」

舞 「・・・乗りやすくなる?」

さくら 「なるなる」

郁未 「・・・速くなる?」

さくら 「オフコース♪」

郁未・舞 「「お願い」」

というわけで、出発を少し延ばして、さくらに自走車の改造を頼んだ。
資金はそこそこ貯まってたんで、パーツはすぐに揃った。

やらせてみて色々わかったのは、さくらのこと。
かなり豊富な知識と、それを最大限に利用する知能・・・それに高い魔力を持っている。
ちょっと聞いてみたら答えてくれたけど、昔はとある魔導実験機関で雇われていた天才少女だったらしい。
テキパキと作業する姿からは、それが嘘でないことがわかった。

 

 

さくら 「かんせ〜い!」

郁未 「おぉ・・・」

舞 「・・・・・・」

三日かけて、出来上がった改造自走車は、外見からして変わっていた。
前のボロが嘘みたいに、フォルムも綺麗になっている。

さくら 「ついでだから、外装もいじってみたよ。気に入ってくれた?」

郁未 「気に入ったわよ!」

いや、本当に。
と言ってる傍から舞は乗り込んで、座席の座り心地を確かめている。

舞 「・・・・・・快適」

ボロマットを敷いていただけの以前と比べて、ずっと座りやすくなっているらしい。
無表情なんだけど、どこか恍惚とした表情で舞が座席に座っている。

さくら 「燃費も良くなってるから、今までと同じ量の燃料で、三倍は走れるよ。スピードも三倍♪」

郁未 「いいじゃない、すごく」

ちょっと、馬力に不満があったのよね。
もう少し速く走れないかな〜とか思ってたところだったわ。

郁未 「じゃあ、さっそく試運転も兼ねて、出発しましょうか!」

さくら 「お〜!」

舞 「はちみつくまさん」

私は運転席に。
さくらは後部座席にそれぞれ乗り込む。
なるほど、確かに乗り心地が良くなっている。
基本構造は変わってないから、運転方法が変化するということはない。
今までどおりね。

郁未 「エメドキアまでの道のりっていうと・・・」

頭の中で大陸の地図を思い浮かべる。

さくら 「最短ルートは谷越えが入っちゃうから、一気に東に抜けて海まで出てから南下した方が楽じゃないかな?」

郁未 「それ、賛成だわ」

そのルートなら途中立ち寄れる町も多いし、面倒な山や谷を越える必要がない。

郁未 「あ、でもこいつ、浜辺平気?」

さくら 「ノープロブレム♪ 砂道でも雪道でも浅瀬でもオッケー!」

郁未 「上等だわ」

本当に性能が向上してるみたいね。
前に砂漠を走った時は砂に車輪を取られて苦労したことがあった。

郁未 「じゃ、行きましょうか」

ブルルルル・・・・・・ブロロロロロ

魔動エンジン始動。
音からして、前よりもパワーがありそうな感じだわ。

いいわね・・・。

どこまで速く走れるのかしら?

ヴゥン・・・ヴゥゥゥン・・・グォォォン!!

エンジンが獰猛な獣のような唸り声を上げる。
いつでも駆け出す準備はオーケー。

いいわよ・・・。

じゃあ、さっそく生まれ変わったあなたの走りを見せてもらうわよ、相棒。

さくら 「な、なんか・・・不穏な空気が・・・」

舞 「・・・降りる!」

さくら 「え?」

郁未 「GO!!」

ギュォォォォォン!!!!!

クラッチを入れて急加速。
車輪が地面を噛んで、猛烈な勢いで前に突き進む。
前から押し寄せてくる圧力がたまらないわ!

ブォォォォォォォォォン!!!!!!

郁未 「それぇっ!」

町を飛び出て、広らけた場所を一気に走りぬける。
速い!
加速時のパワーも前とは比べ物にならないわ。

さくら 「わっ、わっ、にゃあぁぁっ」

舞 「ぽんぽこたぬきさん!!」

郁未 「いやっほ〜〜〜!!!」

並木道に人がいないのをいいことに、必要もないのに木々の合間を走ってみる。
右へ左へ車体を振りつつ、フルスピードで走る。
旋回能力も向上しているのね。

なら、こんなことも!

わざとブレーキを踏んでハンドルを一気に切る。
車体が激しくスピンする。

さくら 「うにゃぁ〜〜〜」

舞 「・・・・・・っっっ」

流れる車体を制御して、まっすぐになった時点で再び加速。
Gが正面からかかって、前へ突き進む。
再加速も速い。

郁未 「気〜もち〜♪」

 

 

 

さくら 「う、うにゃぁ・・・・・・」

舞 「・・・・・・・・・」

うたまる 「にゃあ」

さくら 「うたまる〜、大丈夫〜?」

うたまる 「にゃ」

後部座席では、うたまるが横になって倒れていた。
なにやら知らないが自力では起き上がれないらしい。
さくらは寝転がっているうたまるを頭の上に乗せると、舞の方に顔を寄せる。

さくら 「ね、ねぇ・・・郁未ちゃんって、車乗るといつもこうなの?」

舞 「・・・時々」

さくら 「にゃあ・・・改造しなきゃ良かったかな?」

舞 「郁未は・・・嫌いじゃないけど・・・・・・車乗ってる郁未は嫌い・・・」

さくら 「うにゃあ・・・」

うたまる 「にゃあ」

郁未 「そ〜れスピン〜!」

またしても車が回転する。
激しい横Gに煽られて、さくらと舞の体が傾く。

さくら 「う、うにゃ・・・」

舞 「・・・これ、いやだ・・・」

郁未 「バックダーッシュ!」

今度はバックのまま最大加速をする。
さくらは前の座席の背もたれに体を押し付けられる程度で済んだが、舞などはフロント部分に突っ込んでいた。
うたまるなど、フロントガラスに衝突していた。

さくら 「なんていうか・・・てやんでぃ、って感じだね」

舞 「はちみつくまさん・・・・・・よくわからないけど」

その後も、郁未による爆走は続く・・・・・・。

 

 

 

郁未 「あーーー、楽しかった! ね、二人とも♪」

舞 「ぽんぽこたぬきさん・・・」

さくら 「いや〜、殴りこみの直後なみに疲れたぜぃ・・・」

郁未 「?」

何故だか二人は憔悴しきった様子だった。
ま、いっか。
一気に駆け抜けたら半日で海辺の街にまで着いた。
この調子で飛ばしていけば一週間くらいで目的地まで行けるかも。

さくら 「とりあえず・・・車で暴走した郁未ちゃんは危険・・・っと」

うたまる 「うにゃあ」

 

 

 

補給と休憩のために街に立ち寄ったわけだけど、移動にかかる時間が大幅に減ったお陰で、物資はまだまだ余裕がある。
買出しをする必要はまったくないわね。

郁未 「お昼食べたらすぐ出ようか」

舞 「やだ」

さくら 「もう少し休憩してこうよ。急ぐ旅ってわけじゃないから」

郁未 「そう? そうね、先は長いし、ゆっくり休みましょう」

さくら 「・・・食べた直後にアレ乗ったら、吐くよね、絶対・・・」

舞 「はちみつくまさん」

手ごろな店を見つけて食事を取る。
いつもながら食べようとする舞につっこみを入れ、猫と魚の取り合いをするさくらを不思議そうに眺めながら、昼のひと時は過ぎていく。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

舞 「おかわ・・・」

郁未 「いい加減にせんかぁ!」

すぱんっ

舞 「・・・痛い。郁未こそ、車、いい加減にする」

郁未 「何がよ?」

さくら 「どっちもどっちだね・・・・・・ってこらぁ、うたまる! それはボクのだって!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

食べ終わった後は静かにティータイム。
のんびりできていいわね〜。

舞 「・・・おいしい」

舞は相変わらず、午後に入っても食べている。
ほんとに・・・これで太らないのが不思議でしょうがないわ。
でも、ま、確かにこのお団子はおいしい。

さくら 「・・・あっしにゃぁ、かかわりのねぇこって」

串を加えたさくらは何やらかっこつけている。
口調はなかなか様になっているのだが、いかんせん外見がかわいすぎて決まってない。

郁未 「さて・・・」

どうしようかしらね?
このまままったりしてると、出発する時間が定まらない。
次の町まで、今の車でどれくらいだろう。
さすがに飛ばしてばっかりっていうのもあれだし・・・ゆっくり行くとなると、そろそろ出発しないと次の町に日が暮れるまでに着かないわよね。
せっかく速い足があるのに、野宿なんてつまらないし・・・。

郁未 「っ!?」

・・・今・・・視線を感じたような・・・。
それも、あまり友好的とは言えない。

舞 「・・・郁未」

舞も気付いたわね。
もう消えてるけど、確実に誰かが私達を見てた。
しかもこの気配の消し方は、普通の相手じゃない。
まさか・・・とは思いたいけど・・・。

郁未 「さくら」

さくら 「うにゃ?」

郁未 「出るわよ」

さくら 「?」

疑問顔のさくらを引っ張って、私達は喫茶店を後にする。
嫌な予感がするってのに、こういう時に限って荷物がある。
どうするか・・・・・・。

 「暴れ牛だぁ!」

郁未 「?」

やけに騒がしい。
振り向くと暴走した牛の大群が押し寄せてくるところだった。
道をいっぱいに埋め尽くして、物凄いスピードでつっこんでくる。

郁未 「ちっ!」

さくら 「うにゃぁ! うたまる!」

うたまる 「にゃあ」

道の端に寄って回避しようとする。
けれどさくらが落っこちたうたまるを回収するのに時間がかかった。
そのさくらは舞が回収したけど、道の両側に分かれてしまった。
さらに質の悪いことに、上から向けられてくる殺気に気付く。
反対側の屋根の上に、敵がいた。

ビュッ!

風を切る音がする。
直前まで私がいた場所の背後の壁に矢が突き刺さる。
ボウガンなんて、街中で物騒な代物を!

ここじゃ人を巻き込む可能性がある。
私は路地に逃げ込んだ。

舞は舞でなんとかするでしょ。
まずは周りに人のいない所へ移動する。
ここは港町だし、港の方へ行けば人のいない倉庫地帯があるはずね。

路地を駆け抜けて、そこまで辿り着く。
が、そんな私の思考は読まれていたらしく、先客がいた。

?? 「郁未、みーつけた♪」

郁未 「!!」

倉庫の上から私を見下ろしているのは、十二、三歳の銀髪の少女。

郁未 「セリシア!!」

ヒュンッ

常人の感覚ではまず捉えられないほど微弱な風切り音。
けれどそれは、恐るべき凶器の音。

郁未 「ちっ!」

体を横に投げ出して転がる。
直後、路地の壁が細切れになって砕ける。
さらにその凶器が私を追ってくる。

パシッ

それの動きを見切って、襲ってくる凶器を全て掴み取る。
何本もの糸が私の手に握られ、それがあいつにまで繋がっている。

セリシア 「さっすがぁ!」

屋根の上の少女は楽しげに無邪気な笑みを浮かべる。
虫も殺さなさそうなかわいらしい顔をして、この銀色の凶器に今までどれだけの血を吸わせてきたのか・・・。

郁未 「随分な挨拶じゃないの、セリシア」

セリシア 「えへへ、それほどでもないよぉ」

本当に子供のような笑み。
いや、実際彼女は子供だ。

子供というのは恐ろしい生き物だと実際思う。
倫理観とか、道徳観といったものが不足しているから、何のためらいもなく、ただ普通に遊ぶ感覚で、残忍な行為ができる。
もちろんそれは、子供のほんの一面に過ぎないのだけれど・・・。
セリシアには、そういう面しかない。
他の一切の感情が欠落している。
そう・・・作られたから。

郁未 「こんなところに何の用?」

セリシア 「そんなの、郁未に会いに来たに決まってるじゃない」

郁未 「私は会いたくもなかったけどね」

セリシア 「つれないなぁ」

つれなくて結構。
あんたと話すことなんか何もないわよ。

郁未 「用がそれだけなら、さっさと帰りなさい。あんたに付き合ってるほど暇じゃないのよ」

セリシア 「そんなこと言わずにぃ、遊ぼうよ! 郁未♪」

郁未 「・・・・・・」

シュッ

セリシア 「え?」

おそらくその瞬間、私の姿はセリシアの視界から消えた。
私の姿は、セリシアの背後にあったのだから。

ガッッッ!!!

ズガァーン!!!

僅かに遅れて気が付いたセリシアに対し、龍気掌を叩き込む。
一切手加減しない、容赦ない一撃でセリシアの頭を掴み、下に叩き付ける。
屋根が割れ、二人一緒に倉庫の中に落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく