デモンバスターズ

 

 

第24話 仲間の絆 デモンバスターズ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祐一 「・・・ん?」

なんだ・・・。
雰囲気が変わった。
バラバラだった魔族どもの動きに統制が取れてきやがった。
嫌な感じだな。
これだけの数のレッサーデーモンを確実に従えることができるのは、より上位の魔族って線が濃厚だ。

祐一 「中級以上の魔族が出てきやがったか」

レッサーデーモン、下級魔族とは言えこれだけの大群を召喚できる奴だ。
中級以上の魔族を召喚できてもおかしくない。
水瀬屋敷の面々なら、下級魔族如き敵じゃないだろうが・・・中級以上ともなると話は別だ。

祐一 「!!」

ドンッ

真上から来た攻撃を横に跳んで回避する。
この威力はレッサーデーモンのものじゃない。

 「ひゃーっはっはっ! 良く今のをかわしたな。ひさびさの地上、ちったぁ骨のある人間がいるってことか!」

翼を生やした人型の魔族。
今のはこいつがやったのか。
中級の魔族・・・だな。
下級の奴に比べれば知能は高い。
人間並みの知能がある・・・のだが、当然人間の中にも頭のいい奴と悪い奴がいるように、中級魔族と言っても頭のいい奴と悪い奴がいる。

祐一 「おい」

 「あぁん?」

祐一 「一応聞いておいてやる。おまえ、俺が誰だかわかって挑んできやがったのか?」

 「何言ってやがる? 人間なんぞが魔族に挑まれるだぁ? てめぇらが俺様に挑む立場だろうが。なぁ、俺様を楽しませろよ」

祐一 「わかった」

こいつは馬鹿の類だ。
人間で言うなれば、ちょっと力があるからって威張ってるチンピラってところ。
雑魚だ。

祐一 「十秒だけ待ってやるから消えな。俺は忙しいんだ」

 「はぁ? おまえ頭おかしいのか?」

祐一 「特別サービスだ。俺の名前は、《氷帝》の相沢祐一」

 「それがどうかしたのかよ?」

祐一 「教えてやったぞ。じゃあ、十秒だ」

 「馬鹿じゃねぇのか、おまえ。けけけっ、身の程を教えてやるぜ!」

十・・・。

 「おらおらぁ!」

奴が攻撃を仕掛けてくる。
ただ闇雲に魔力を振るうだけの、レッサーデーモンと大して変わらない稚拙な戦法だ。
俺には掠りもしない。

七・・・六・・・。

 「なんだなんだぁ! 逃げるのが精一杯かぁ?」

四・・・三・・・二・・・。

祐一 「一・・・・・・ゼロ」

パキィーン

 「へ?」

自分の体が凍りついたことにも、奴は気付かない。
何故突然自分の動きが止まってしまったのか。
今わからなければ、永久にわかることはない。

祐一 「凍魔天嵐・・・・・・身の程を知るのは、おまえの方だ」

氷が砕け散り、名も知らぬ魔族は断末魔の悲鳴すら上げることなく死に絶えた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・ああ、そうか。
個人名はあんまり有名にならないかもしれないな。
豹雨とアルドは個々人でも名が知れてるが、他の三人はデモンバスターズの名じゃないとほとんどの奴は知らないか。
悪いことをしたな、今の馬鹿には。

それにしても、俺にとっては雑魚でも、町の人間にとってはこの程度の魔族でも出てくれば脅威か。
仕方ない。
何匹かは片付けていくか。

 

 

 

 

 

 

 

祐一の危惧したとおり、中級魔族の出現は戦局を変えつつあった。
圧倒的な強さを誇った実力者達も、二、三匹の中級魔族にかかられると、さすがに苦戦を強いられた。

秋子 「なるほど・・・なかなか歯応えのある方々ですね」

 「ふっ、人間にしてはやるな、女」

 「だが我々魔族を前にしては、どうかな」

秋子 「うふふ・・・それは、やってみればわかることでしょう」

右手に剣、左手に槍、さらにはいつでも発動可能な魔法。
独特の攻撃手段で二匹の魔族と対峙する秋子。
どちらも一筋縄ではいかないと見て、硬直状態が続く。

石橋 「ぬぅんっ!!」

 「かぁあああッ!!」

ガキィンッ

こちらはパワーとパワーのぶつかり合いと言った様相だった。
総じて人間並みのサイズな中級魔族の中で、レッサーデーモンにも負けないくらいの体格を持った大型魔族と、石橋との戦いである。

 「やるな、人間」

石橋 「お主もな。久しくこれほど力を出したことはなかった」

 

往人 「ぬぉっ・・・ちっ! この大教祖国崎往人様の野望を妨害する不届き者が!」

美凪 「・・・ちょっと苦戦」

こちらは二対二。
往人と美凪は互いに背中合わせになって素早く動き回る魔族の攻撃を凌いでいる。

往人 「ふっふっふ・・・だがな、今の俺は無敵だぜ。何故なら! 輝ける未来がこの頭上に・・・」

ガスッ

往人 「ぐはっ!」

琥珀 「あはーっ、失礼しましたー、往人さーん」

往人 「てめぇ・・・翡翠!」

琥珀 「琥珀です。それと、危ないですよ」

往人 「あぁ・・・? ぐはっ!」

連続。
箒に乗って逃げ回る琥珀と、それを追う魔族の両方に踏み台にされ、往人が倒れ伏す。
頭からドクドクと血が流れている。
なんとなく危険そうだった。

つんつん

美凪 「・・・・・・ちーん」

往人 「殺すなっ! おのれ魔族どもが!」

一見余裕がありそうだが、かなり苦戦中の往人と美凪、それに琥珀であった。

 

 

 

ザシュッッ

 「ぐ・・・ぁ・・・馬鹿な・・・たかが人間に・・・・・・」

どさっ

逆袈裟に切り裂かれ、魔族が地面に倒れる。
ピッと刀を振って血を振るい落とす斉藤。

斉藤 「ふん・・・良く喋るから少しはできるかと思えば・・・ただの雑魚か」

やたらと偉そうな口上とともにレッサーデーモンを掻き分けて出てきた中級魔族を、斉藤は一刀の下に切り伏せた。
まだまだこの程度では、斉藤元という男を満足させるにはいたらないらしい。

斉藤 「雑魚ばかりがうじゃうじゃと・・・。掃除が大変そうだ」

?? 「元さん」

斉藤 「葉澄か。避難したんじゃなかったのか?」

葉澄 「道場の方々を手伝って、逃げ遅れた人達を探していました」

斉藤 「ならこっちはいいだろう。人の気配はしない」

葉澄 「はい。あ、怪我を・・・」

斉藤 「大したことはない」

葉澄 「いくらあなたでも、多少は消耗してらっしゃるでしょう」

斉藤 「・・・・・・」

周囲を警戒しつつ、斉藤は妻の手による治癒魔法を受ける。

葉澄 「では、ご武運を」

斉藤 「ああ、行ってくる」

体力気力ともに充実させ、斉藤元は再び戦場へ向かう。

 

 

 

同じ頃、もう一つのラヴラヴコンビは・・・。

みさき 「ふー・・・ふー・・・」

浩平 「みさきー、落ち着いたかー?」

みさき 「ちょっと・・・すっきりしたよ。お腹空いたけどね・・・」

暴れる勢いそのままに中級魔族までも斬り捨てたみさきが大きく息をついているのを、浩平が端で見守っていた。
疾風のごとく駆け、鬼神のごとく戦うみさきの姿に、魔族達も恐れおののき、もう近寄ってこなかった。

つくづく、食べ物の恨みは恐ろしいと、浩平は噛み締めるのだった。

浩平 「全部片付いたら、何か美味いもの食べに行くか」

みさき 「うん、そうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

実力者組がそれなりに戦っているのに反して、美坂姉妹の方は一気にピンチ状態だった。
下級魔族相手でも苦戦しているのに、中級魔族までも出てきたのだから当然といえる。
二人一緒で、たった一人の魔族に苦戦している。

 「はっはっはぁ! どうしたぁ、小娘ども!」

香里 「この・・・ちょろちょろと・・・!」

栞 「え、えぅ〜」

実際には大した敵ではない。
レッサーデーモンに毛が生えた程度の相手なのだが、空を飛びまわっては香里と栞を翻弄する。
慣れない敵との戦いに、二人は戸惑うばかりだ。

香里 「・・・冗談じゃないわよ・・・いつまでも、なめられてたまるもんですかっ!」

頭上から魔族が降下してくる瞬間、香里は剣の柄頭で家の壁を砕く。
無数の破片が飛び散り、魔族の体にも当たって体勢が崩れた。

 「な、なぁにぃっ!?」

香里 「ハッ!」

ザシュッ

 「ぎゃはっ!」

怯んだ隙に一撃が決まった。

香里 「よしっ」

だが、これは道場の試合ではなく、実戦であった。
一撃入れたからと言って、それで勝負が決まるわけではない。
そこにまだ、香里の油断があった。

 「ちぃっ!」

香里 「あ!」

体に食い込んだ剣を強引に払いのけられる。
弾き飛ばされた香里は壁に背中からぶつかるが、構えは解かなかったので、相手にも追い討ちする機会を逃した。
だが代わりに、魔族は道の反対側にいた栞に狙いを定める。

香里 「しまった! 逃げなさいっ、栞!」

栞 「っ・・・!」

背中を向けたらやられる。
そう思った栞は逃げ出す機会を逸する。
かと言って、正面から攻撃をかわせるかもわからない。

 

ドシュッ

 

栞 「え?」

しかし、魔族は栞を襲う前に、細切れになって血を吹いた。

?? 「これはこれは美しいお嬢さん。またお会いしましたね」

栞 「あ、あなたは・・・!」

道の真ん中で薄笑いを浮かべる黒衣の男。
血の剣を持つその男は、デモンバスターズの一人、アルド・レイ・カークス。
通称、ブラッディ・アルドだった。

 

 

 

 

 

 

 

屋根伝いに移動していたさやかは、途中大量の魔族に取り囲まれていた。

さやか 「急いでる時に限って団体さんだよね〜」

それらを撃退するべく魔力を溜めようとするさやか。
だが・・・。

 

ゴォオオオオオオオオオ

 

横合いから放射された魔力の波が全ての魔族をまとめて吹き飛ばした。

さやか 「ドラゴンブレス・・・これは」

エリス 「余計なお世話だったかしら?」

さやか 「ないない、そんなこと♪」

隣の屋根の上に立っていたのは、小さな少女。
だがデモンバスターズの一人、魔竜姫エリスだった。

エリス 「面倒なことになってるわね」

さやか 「そうなんだよ〜。もう敵さんが次から次へと〜」

エリス 「原因は、あの雲ね」

二人は上空を仰ぎ見る。
最初に敵が出現した時からある暗雲が今も渦巻いている。

エリス 「あれが魔界と地上を繋ぐ簡単な門になってる。あれがある限り、ほとんど無限に近く雑魚魔族が沸いて出てくるわ」

さやか 「じゃあ、あれを消せばいいんだね」

エリス 「簡単に言うけど、言うほど楽じゃないわよ、この作業は」

 

 

 

 

 

 

 

祐一 「・・・・・・」

倒しても倒しても切りがない。
やっぱり元凶は、あの雲か。

空を覆うあの黒雲をどうにかしないと、いつまで経っても魔族が現れる。
魔界は地上と比べてかなりの広さがあるというから、当然そこに住んでいる魔物の数も半端じゃないらしい。
人間の常識で考えてると、それこそ無限に敵が沸いて出てくることになるだろう。

祐一 「なんとかしたいんだが・・・」

あんなに高いところにあったんじゃ、攻撃を届かせるのだって一苦労だし、異空間と道を繋いでるようなものを壊すのは言うほど簡単じゃない。
そんな真似を簡単にやってのける奴は、デモンバスターズにも二人しかいない。
一人は楓さんで、もう一人は・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

ドシュゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

祐一 「!!!!」

い、今のは・・・。

凄まじく巨大なエネルギーの塊が一閃して、上空の雲を真っ二つに切り裂いた。
下に向けて撃ったらこの町の半分が吹き飛びそうな凄まじい斬撃。
さらに空間までもものの見事に両断しちまいやがった。
あんなものを撃てるのは、世界広しと言えども、あいつくらいなものだ。

俺は今の斬撃が放たれた場所へと向かう。

 

 

 

 

エリス 「あら」

さやか 「やっほ〜、祐一君」

祐一 「エリス。それにさやかもか」

途中、二人と合流した。
何も言わなくても、エリスはこの先にいる奴のことはわかっているだろう。

ほどなくそこにたどり着く。
まだ巨大な斬撃の余波が辺りに漂っており、その中心に、五尺余りの大太刀を持った着流しの男が一人立っていた。

アルド 「おやおや、みなさんお揃いですねぇ」

祐一 「!!」

時を同じくして、アルドの奴もこの場に現れた。

個別には会っていたが、揃って会うのは本当、二年ぶりだな。

アルドに。

エリスに。

そしてあの男・・・・・・豹雨。

豹雨 「・・・・・・何ぼーっとしてやがる」

振りぬいた状態だった大太刀を肩に担ぎ、背中越しに俺達に声をかける。
いちいちこっちを向かず、あの背中で俺達を引っ張る。
それがあの男の流儀だった。
あの頃の感覚が、久々に蘇る。

豹雨 「行くぞ」

アルド 「ええ」

エリス 「当然」

祐一 「おうよ」

デモンバスターズ、出陣だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく