デモンバスターズ

 

 

第18話 死霊の街 禁断の儀式

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浩平 「ふんっ!」

ザシュッ

音は一回だが、実際には五回以上斬ってから刀は鞘に納まる。
神速の浩平の抜刀は、それだけで三体のアンデットモンスターを行動不能にする。

みさき 「たぁっ!」

舞うような華麗さで、みさきの長刀が振られる。
横、縦、斜め、と続けさまに斬りつけ、敵を完全に破壊する。

浩平 「ふぅ・・・さすがに切りがないな」

斬っても斬っても、敵は次々と沸いて出てくる。
この大きな街のほとんど住人がこうしてアンデットになっているとしたら、相当な数になるだろう。
いくら浩平とみさきが桁外れに強くても、体力に限度というものがある。

浩平 「みさき、どれくらい倒した?」

みさき 「50くらいまでなら数えてたけど・・・」

浩平 「俺もだ」

もう大分前の話だ。
二人は既にその数倍の敵を葬っていた。
都合四、五百といったところだが、この街には千人以上は確実に住んでいただろう。
最悪、万に上るかもしれない。
先ほどの祐一とさやかの合体技でかなりの敵を倒したとは言え、まだまだいる。

浩平 「こういう時は、広範囲攻撃のできる魔導師が羨ましいよな」

みさき 「ほんとだよ。何か手を打たないと・・・」

さすがにこれ以上続けては、押し切られるのも時間の問題だった。
数の暴力は恐ろしい。
しかも、人間の軍隊や生物系の敵なら、圧倒的力を持った者を相手にすれば、恐れて士気が下がることもある。
だが相手は知能のないアンデットモンスター。
死への恐怖を持たないため、味方がやられても構わず向かってくる。

浩平 「昔どっかの国がネクロマンサーを抱えて、無敵の不死の軍団を作ろうなんてしたらしいが、確かに理論上は最強だよな」

その構想は、実験の過程で死人が出すぎ、国は滅んだという。
だが、完成していれば事実上最強の軍団が完成するだろう。
不死者が魔族に匹敵する力を持つにいたったのには、実はこれが一つの原因だった。
魔族と言っても、うじゃうじゃ沸いてくる死を恐れぬ軍団には恐れを抱くものだ。
もっともそれを実現していた不死者の一団は、たった五人の人間の手によって滅ぼされたのだが、浩平達がそれを知る由もない。

浩平 「あーくそっ、気の利いたギャグが出てこねぇ!」

みさき 「くすっ、困ったね〜」

体力もかなり減り、二人の刀の切れ味も落ちてきた。
本来武器は、そうそう長時間使用できるものではない。
二人が数百もの敵を斬りつづけられたのは、凄まじいスピードで剣を振っていたため、従来以上の切れ味を発揮し、刃こぼれや膏が巻いたりしにくかったからである。
だがそれにも限度がある。

浩平 「ふぅ・・・ふぅ・・・」

みさき 「はぁ・・・はぁ・・・」

二人は互いの背中を合わせて、立っている。
周囲はアンデットモンスターに囲まれていた。

浩平 「・・・ここまでかな」

みさき 「うん・・・」

地獄への道連れに、あと百体くらいなら倒せるかもしれないが、それでは目的の完遂にはならない。
どんな戦場でも絶対に二人一緒に生き延びてこその勝利だと、浩平とみさきは思っていた。

浩平 「はぁ〜・・・死ぬ時は夕日に照らされてが良かったんだけどなぁ」

みさき 「わたしは、浩平君と一緒ならどこでもいいよ」

浩平 「すまん。一緒にいつまでも楽しく生きようって言ったのにな」

みさき 「続きは、あの世でしようか」

二人は死を覚悟していた。
その時・・・。

 

?? 「・・・降魔調伏、天浄烈閃」

 

ドシュゥッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!

 

浩平・みさき 「「!!?」」

二人の目が驚愕に見開かれる。
突如として巨大な光が一閃し、アンデットの群れを切り裂いた。
その際、半分以上のモンスターは吹き飛び、同時に浄化される。

みさき 「こ、これは・・・」

さらに、足元から不思議な光が満ちる。

浩平 「力が・・・回復している?」

優しい光に包まれ、二人の体力が戻っていく。

みさき 「誰かいる」

浩平 「ああ」

光をまとった一撃で敵の群れを切り裂き、二人に回復魔法をかけた誰かが、屋根の上から門の前に降り立つのが見えた。
その人影は、二人の方を一瞥すると、中へ入っていった。

みさき 「・・・助けてもらった、ね」

浩平 「そうみたいだな」

みさき 「体力を一瞬で回復するなんて、すごい魔法だよ」

浩平 「しかも残った敵を半分以上消し飛ばすなんてな」

世の中まだまだ強い人間はいるものだと、改めて二人は認識する。

浩平 「中に用があったみたいだな。ここは俺達に任せるってか」

みさき 「助けてもらったお礼に、期待に答えなくっちゃね」

浩平 「ではいっちょう、奇態を晒すとするか」

みさき 「くすっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祐一 「ちっ! しつこいんだよっ」

倒すのが面倒なので、上手く撒いて栞の救出を優先しようかと思ったが、それもダメだった。
奴に使役されているせいか、普通のレッサーデーモンよりも知能が高い。
こっちの思惑を呼んで先回りしやがる。

祐一 「香里は・・・」

しかもこっちは、香里のことも気にかけなきゃならんのに。
栞を助けても香里がやられてたら意味がない。

仕方ない。
やっぱりまずはこいつらを片付けるか。

俺は《氷帝》って呼ばれてるけどな、元々俺の能力は、“水”を操るものなんだ。
ただ単に、氷という形が一番使いやすく威力も高いから使っているだけであって、水と氷はイコールじゃない。
こんな使い方もあるんだよ、俺の能力には。

周囲に雰囲気が変わる。
俺が水分を操り、それらを霧へと変えているのだ。
どんどん視界が悪くなり、奴らが俺の姿を見失いだす。
氷の攻撃は効かなくても、氷そのものが跳ね返されるわけじゃない。
これのために予め、奴らの鼻を凍りつかせてある。
鼻と目を封じられては、俺の居場所は見つけられんだろう。

ドシュッ

キシャァアアアアアアア!!!

背後に回りこんで、背中から心臓を一突きにする。
魔族と言っても、体の構造は地上の生物と大差ない。
これで、まずは一匹。

バロンゾ 「ほっほっ、甘いですな、《氷帝》ともあろう方が」

祐一 「!?」

やばいっ!

危険な臭いを感じて、俺は刀を抜かずにレッサーデーモンから離れる。
と同時に、そのデーモンが爆発した。
一瞬でも遅かったらまともに喰らっているところだ。

祐一 「ヤロウ・・・」

今の爆発で霧も吹き飛んじまった。
同じ手は、たぶん通用しない。
くそっ。
残り二匹・・・いや香里が相手してる分も含めて三匹か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボゥッ

十数体目のキメラが炎にくるまれて崩れ落ちる。
全てを焼き尽くす炎の前では、アンデットモンスターは無力だった。
そもそもアンデット系モンスターの弱点は、聖、光、火などの属性である。
さやかを相手にするには、相性が悪いというものだ。

さやか 「さて、あと何体かな?」

周囲に浮かぶビットの数は減っている。
さすがにさやかも消耗しているということだが、残ったキメラを圧倒するには、まだまだ充分だった。

さやか 「もう来ないの?」

グルルルルルルル

威嚇はしてくるが、キメラはなかなか襲ってこない。
残っているのは六匹。

さやか 「来ないなら、こっちから行くよ」

フレアビットを飛ばして攻撃を仕掛ける。
同時にキメラも一斉に動き出した。

さやか 「?」

今まで単調な攻撃しかしてこなかったキメラ達が、統一された動きをしたことにさやかは疑問を覚える。
一体、また一体と炎に包まれていく。
だが、五体が燃えた時、一体の姿が見えなかった。

さやか 「ふ〜ん、少しは頭使ってるんだ。でも・・・」

五体を盾に、最後の一体が攻撃を仕掛けるつもりだったのだろう。
しかし、所詮は知能の低いモンスターの考え。
さやかに通用するはずもなかった。

背後に回った最後のキメラは、床から伸びた炎の槍に貫かれてピクピクしている。
やがて炎が全身を包み、灰となって崩れ落ちた。

さやか 「ふぅ、やっと終わった」

かなりの魔力を消費したが、もほや敵の気配はない。

さやか 「祐一君達、大丈夫かな〜?」

外にいる二人のことも気になる。
どちらの応援に行くべきか。

さやか 「!」

新たな気配を感じて身構える。
先ほど自分達が来た方向からであった。
足音とともに、その気配の主が姿を現す。

さやか 「あなたは・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香里はかなり必死だった。
今まで、人間相手ならどんな敵とでもそれなりに渡り合えると思っていたが、今相手をしている敵はまったく異質な存在だった。
かつてドラゴンに感じたような圧倒的絶望感こそ抱かないものの、その脅威を肌でピリピリと感じる。

香里 「はぁ・・・はぁ・・・」

実際には、レベル的に香里にとってレッサーデーモンは倒せない相手ではない。
だが香里には、こうした敵との戦闘経験が少ない。
大型モンスターと戦うつもりで行けばいいのだが、そうした経験がほとんどないのだ。

ヒュッ

香里 「くっ!」

数倍のリーチから繰り出される爪による攻撃をなんとか回避する。

思えば、浩平やみさきが常に道場よりも外での戦いを重視していたのは、こうした理由からかもしれないと思った。
道場での試合と、外での戦いはまるで違う。
以前はそう言われてもピンと来なかった香里だったが、今ならそれが良くわかる。

香里 「(こういう戦いをしてきたのが、折原君や斉藤さん・・・相沢君の強さの理由なの?)」

実戦経験の重要性。
それを認識してきたからこそ今回の一件についてきたのだが、いきなりレベルの高い戦いになってしまった。

香里 「くっ! (弱気になってる場合じゃないわ。栞・・・栞を助けなくちゃ。姉のあたしが、こんなところで無様な姿を晒すわけにはいかないわっ!)」

大分相手の動きにも慣れてきた。
確かに相手は大きいが、その大きさほどには脅威を感じない。
これなら、石橋の方がよほど大きく感じられる。

香里 「そう・・・石橋さんを相手にしてるつもりで・・・」

すぅっと剣を構える。
心を落ち着かせる。

香里 「(大丈夫・・・いける)」

ようやく、相手の動きが見えた。
繰り出される爪をかわして懐に飛び込む。

ザシュッ

渾身の力を込めてレッサーデーモンの胸板を切り裂く。

キシャァアアアアアアアアア!!!!!

祐一 「すぐ離れろっ!」

香里 「!!」

考えるより先に体を動かした。
転がるように斬り倒したレッサーデーモンの体から離れる。
間一髪、接近状態での爆発は避けられた。

香里 「っ・・・!」

しかし爆風に煽られ、香里の体は壁に叩きつけられた。

 

 

 

 

祐一 「香里!」

壁に叩きつけられた香里が剣を杖にしてよろよりと立ち上がる。
一応無事みたいだが、あの痛み方からすると、肋骨辺りが少し折れてるかもしれないな。
もうまともな戦闘は無理だろう。
残りは二体。

祐一 「おい!」

バロンゾ 「はい?」

祐一 「いったいおまえは、何をしようとしている!? 街一つ潰し、100人もの生贄を使って・・・下級魔族まで使役して!」

バロンゾ 「ほっほっ、わかりませんか?」

祐一 「わかるかっ」

バロンゾ 「よろしい。準備もほぼ整いました。せっかくですから、お教えしましょう」

祭壇を離れ、階段の淵までやってきてバロンゾが俺達を見下ろす。

バロンゾ 「我々ネクロマンサーの究極の目的がわかりますか?」

祐一 「知るか、そんなもん」

バロンゾ 「簡単なことです。私達の至高の魔道は、反魂の法」

祐一 「反魂だと・・・?」

あれは確かに死者を蘇らせる究極の魔法だが、不完全なものだったはずだ。
よほどの好条件でなければ成功しない。
そうでなければ、ただの魂の抜け殻を作るか、とにかく色んな問題がある。
危険すぎるため、禁呪の一つとされている。

バロンゾ 「ご存知のように、今の反魂の法は不完全です。不確定要素が多すぎて、失敗が九割以上を占めます」

祐一 「だからどうした?」

バロンゾ 「マスタークラスの能力を持ったネクロマンサーならば、完全な反魂の法を行うこともできますが、残念ながら、私のような者にはできません」

祐一 「それで、その反魂の法とこの儀式とか言うのと、何の関係がある?」

バロンゾ 「物事には順序があります。まぁ、聞いてください」

いちいち癇に障るな。
こののんびりとした喋り方が。
のんびり・・・?
しまった!

祐一 「話はもういい! どっちにしても邪魔させてもらう!」

俺は再び行動を開始する。
だがその俺を、レッサーデーモンどもが邪魔する。

祐一 「退けッ!」

バロンゾ 「反魂の法においてもっとも重要かつ難しいのは、死者の国、冥府と地上との間をつなぐことです。これに失敗すると、本来の魂を肉体に呼び戻すことができず、ただその雑多に辺りを漂う下等な霊魂によって動く、ただの死体人形になってしまうんですよ。これでは骸骨やゾンビと変わりません」

祐一 「てめぇの講釈はもういいッ!」

こいつ、さっき儀式の準備はほぼ終わったとかぬかしやがったな。
たぶん俺との会話で時間を稼いで、必要な魔力を溜めてやがるんだ。
放っておいたら、栞が・・・!

バロンゾ 「ですが! この儀式により全てのネクロマンサーが自由に反魂の法を扱えるようになるのです! そう! 私はこの儀式により、地上と冥府を永久に繋ぐ門を生み出す!!」

なんだとっ!?
そんなとんでもないこと考えてやがったのか、こいつは!

祐一 「馬鹿かっ、おまえは! そんなことをしたら、冥府に住む亡者や鬼どもが地上に溢れて、地獄になるぞ!」

バロンゾ 「もちろんそこは考えてありますとも。通れるのはあくまで、人間の霊魂だけですから」

そんな都合よく行くものかよっ、おまえ如きの力で!
最強の不死者、あの真祖ヴァンパイアでさえもやらなかったような・・・いやできなかったようなことを、人間の手で成し遂げられるものか!
ましてや、そんな失敗確定のくだらない儀式のために俺の大事な弟子を生贄になんかされてたまるか!!

バロンゾ 「では、いよいよ儀式のはじまりです!」

祐一 「やめろッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく