デモンバスターズ

 

 

第13話 第二の再会 魔竜姫エリス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『女は預かった。返して欲しくば、山頂まで来られたし』

バキッ

俺はすぐ横に会った木を殴り倒す。

どこのどいつだ!
ふざけた真似しやがって、この俺に対して。
俺が狙いなら直接来やがれってんだ!

これは明らかに俺に対するものだ。
栞個人を攫うのが目的ならこんな書置きは必要ないし、こんな場所へ来るのは俺だけ。
あらかじめそれがわかった上で、こんな真似をしやがったんだ。
俺を誘い出すために栞を餌にしやがったな。

祐一 「どこのどいつか知らないが、俺を相手にしたことを後悔させてやる!」

目指すは山頂だ。

 

 

 

山を登りだして数分もしないうちに、それは現れた。
敵は・・・五匹か。

キシャァアアアア!!!

蛇のモンスターが大口を開けて向かってくる。

祐一 「ハァッ!!」

俺は避けるのも億劫で、真正面から氷刀を垂直に立てて蛇を両断する。
だが、左右に割れた蛇はそれぞれが新たな蛇となって俺を拘束するように巻きついてきた。

祐一 「チッ・・・!」

斬ったらその分増えるのか?
だとしたら厄介だが。

さらに四匹、同じモンスターが襲ってくる。
試しに首を落としてみるが、首から先が襲ってくるのに加えて、胴体の側もしっかり動いてやがる。
それなら・・・。

祐一 「凍魔天嵐!」

キィーン

氷刀の一振りにあわせて、辺り一帯が一気に凍結する。
氷の世界が生まれた。

祐一 「雑魚が邪魔をするなっ」

俺の必殺剣の一つだ。
全てのものを凍らせ、砕く。

蛇どもを葬った俺は、さらに先を目指す。

 

 

その後も同じような雑魚に何度か出くわしたが、ことごとく凍りつかせ、消していった。
もっとも雑魚とは言っても、そこいらに生息してるようなモンスターとはわけが違う。
レベルで言えば上位クラスの敵ばかり。
もはや誰かの差し金であることは間違いない。
誰であろうと、俺を怒らせた償いはさせてやる。

 

数度の戦闘を経て、ようやく山頂に到着する。
山頂とは言うが、かなり広い、開けた場所だ。
中央辺りに大きな木があり、栞はその根元にいた。

祐一 「栞!」

気絶しているのか、反応がない。
最悪の事態を思い浮かべ、俺は血が沸騰する思いに駆られる。
冗談じゃないぞ!

祐一 「栞ッ!」

名前を叫びながら、木の方へ向かって走る。
木の向こう側に、何か巨大な気配を感じる。
近付くと、それが姿を現した。

祐一 「ヒドラだと!?」

ドラゴンの一種だ。
頭が五つ。
黄褐色の鱗を持ち、大きさはそれほどでもないが、厄介な敵だ。

グワァァァアアアアアアア!!!!

そのヒドラが、敵意を剥き出しに、俺に襲い掛かってくる。

祐一 「にゃろうっ!」

厄介ではあるが、だからってこんなモンスターに俺が負けるかよっ。
攻撃をかわしながら、ヒドラの首の一つを斬り落とす。
だが、斬った場所から新たな首が二本生えてきた。
これで六本かよ。

祐一 「だから厄介だってんだ!」

さっきの蛇モンスターと一緒か。
斬っても新しい首が生まれるだけ。
それでも襲ってくるからには、確実に回避するために首を落とさなきゃならん。

ザシュッ

また一つ首を落とすが、また二本になって再生する。
首の数が増えれば、それだけ攻撃速度が速くなるし、攻撃力も増す。

ゴォオオオオオオッ

いくつかの頭が炎のブレスを吐いてくる。
山火事にする気かよ、このデカブツ。
頭がいくつもあるくせに脳みそは小せぇな。

祐一 「おらぁっ!!!」

ザシュッッッ!!!

大きく横殴りに振った俺の刀が、ヒドラの首を全てまとめて斬り落とす。
しかしまたしても倍になって再生する。
いくらなんでも、回復が早すぎる。
こんなレベルのヒドラははじめてだぞ。

今、首は十四本。
そろそろ重くなって鈍くなる頃じゃないのか。
と思った俺は甘かった。
このヒドラは、首が増える度に下半身が発達していってる。
全体的にでかくもなり始めてやがる。

祐一 「どこのどいつだってばよっ、こんな化け物持ち込んだのは!」

栞のことも気がかりだってのに・・・まったく!

ガァアアアアアアア!!!!

祐一 「くそっ」

ほとんど絶え間なく襲ってくるヒドラの首。
炎のブレスに、噛み付き攻撃。
山火事が起きないよう、炎の方には特に気を使って、火がついたらすぐに消すようにしている。
それが戦いをやりにくくしてるが、火事になったら余計に面倒だ。

ザシュッ ザシュッ ザシュッ

さらに三本、落とす。
増えて・・・十七本。
とうとう、目に見えてでかくなりだした。
無尽蔵かよっ、こいつの生命力は。

祐一 「どっからそんなパワーが・・・・・・・・・」

待てよ?
いくらなんでも、魔獣じゃあるまいし、地上最強のドラゴンとは言え、ヒドラ程度にここまでの生命力があるはずはない。
俺は攻撃を回避しながら、このヒドラをよくよく観察した。
気付いたのは、目だ。
攻撃色には違いないんだが、どうにも血走り過ぎてる。
まるで、暴走状態だ。
暴走してるからパワーが出てるのか?
違うな。

祐一 「何か別のものから、エネルギーが無理やり供給されてるのか」

ドラゴンのパワーをアップさせる。
そんな芸当ができる奴は・・・・・・・・・!

祐一 「・・・・・・そういうことかよ」

ヒドラの眼前で地面に降り立つ。
俺の放つ威圧感に、ヒドラが攻撃を躊躇う。

祐一 「悪いが、おまえにこれ以上付き合ってる暇はない」

冷気が、俺を中心集まっていく。
周囲に生える草が、凍り付いては砕けていく。
全ての運動が停止する絶対零度の極致・・・。
それが俺の刀に宿る。

祐一 「アブソリュート・ゼロの果てに消え去れ・・・・・・氷魔滅砕!!」

 

ドシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

 

絶対零度の冷気を纏った刀による神速の突き。
激しい冷気の渦が、あらゆるものの分子運動を停止させながらヒドラを貫く。
ドラゴンの硬い鱗も表皮、この前ではまったく無力。
冷気は瞬く間にヒドラの全身を包み込み、凍りつかせ、そして砕け散った。
跡形もなく・・・。

祐一 「ふぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・・・・・・」

さすがに、この技は大きく体力を消耗するな。
使ったの自体、二年振りだしな。
さてと・・・。

祐一 「いい加減茶番は終わりにして出て来いよ。魔竜姫エリス!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

エリス 「くすっ・・・相変わらず、あんたって本当にバカねぇ」

祐一 「っ!!」

声は・・・背後。
これだけ接近されて、まったく気付かなかった。

エリス 「《氷帝》の名が示すとおり、いつも冷静かと思いきや、熱くなるとすぐ周りが見えなくなる。子供ね」

祐一 「おい」

振り返って刀を突きつける。
鼻先に切っ先を向けられても、瞬き一つしない。
左右でまとめられた深緑色の髪に、金色の目。
あどけないように見えて、厚顔不遜。
間違いない。
エリスだ。

祐一 「栞に何しやがった?」

エリス 「ふぅ・・・だから周りが見えてないって言うのよ、バーカ」

祐一 「質問に・・・!」

栞 「あの〜・・・祐一さん?」

祐一 「へ?」

後ろを見ると、きょとんとした表情の栞が立っていた。
って、あれ・・・木のところにいたはずじゃ・・・?

祐一 「!?」

そっちを見ると、かろうじて人型とわかる不思議物体が描かれた絵が吹き曝しになっているだけだった。

エリス 「で、アタシが何をしたって?」

祐一 「え・・・これは・・・?」

エリス 「まだわかんないの? 幻影よ、げ・ん・え・い・・・彼女は最初から最後までアタシと一緒に、あんたの戦いの一部始終を見てたわよ」

祐一 「馬鹿言うなよっ、俺が幻影なんかに!」

エリス 「あんたが最初に斬った子・・・あれの体内に、特殊な呪法を仕込ませ、幻影にかかりやすくしたのよ」

祐一 「あの時・・・」

エリス 「稀代の戦術家、この魔竜姫エリスを甘く見るんじゃないわよ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・完全にしてやられた。
このチビガキに・・・。

エリス 「完璧にアタシの勝ちね」

栞 「で、でも! 祐一さんもすごかったですよっ、あの最後の技なんか、しびれちゃいました!」

エリス 「あれこそ救いようのないバカの極みよ。あの時点で犯人がアタシだって気付いていながら、あんな体力食う大技使って・・・もしその後でアタシと戦うことになってたら、五秒で終わってたわよ」

栞 「・・・・・・」

祐一 「・・・・・・ちっ」

弁解のしようがない。
今度ばかりは本当に俺のミスだ。
冷静さを欠いて、こいつにいいように遊ばれた。

祐一 「・・・このチビガキが・・・!」

バキッ

エリス 「ガキ言うな。年上は敬いなさい」

栞 「と、年上!?」

祐一 「ああ。こいつは六十年以上も生きてる、ババアだ」

バキッ ドカッ ボカンッ

エリス 「竜の血脈からすれば、まだまだ若いわよ」

祐一 「だからガキ・・・」

バキッ ドゴッ ドガッ ズゴッ ボカーンッ!

栞 「ゆ、祐一さんがいとも簡単に・・・」

祐一 「・・・うるさい・・・こいつとだけは相性が悪いんだ・・・」

久しぶりだってのに、思い切り殴りやがって、この馬鹿力が!

祐一 「大体おまえ、こんなところで何してんだよ?」

エリス 「アルドの奴が仕事しくじったって話を小耳に挟んでね。あいつに勝てる人間なんて限られてるじゃない。だから来たのよ」

祐一 「・・・ってことは、おまえもまだあの人を見つけられてないんだな」

エリス 「まぁ・・・ね」

ずっと余裕の笑みを浮かべていたエリスの顔に、はじめて影が差す。
こいつとは気がまったく合わないが、唯一、あの人を思う気持ちだけは共有している。
まぁ、俺の思いとこいつの思いとでは、違うと言えば違うんだけどな。

エリス 「楽しくやってるみたいじゃない」

祐一 「ん? ああ、まぁな」

エリス 「もう・・・・・・楓のことは探してないの?」

祐一 「・・・・・・いや、探してるさ」

エリス 「そう」

祐一 「まぁ、ここの生活を気に入ってるのも事実だがな。おまえもどうだ?」

自然とそんなことを言ってしまった。
こいつと一緒にいるなんて、歯止めをかけられるあの人、楓さんがいなければ果てしなく喧嘩することになるだろうに。
ただ、こいつは時々すごく寂しそうな顔をしてて、そういう時は憎めないから。

エリス 「ん〜・・・いいわ」

祐一 「そうか?」

エリス 「あんたはそうやって、新しい居場所を見つけられたかもしれないけど、アタシは・・・・・・アタシの居場所は、楓の傍しかないんだ」

祐一 「そんなこと・・・」

エリス 「慰めはいい。あんたはもちろん、他の奴もどうでもいい。アタシは、楓さえいれば・・・」

祐一 「・・・・・・」

くるりと回って俺に背を向ける。
次に振り返った時には、いつもの顔に戻っていた。

エリス 「ところで、あの男が今どうしてるか知ってる?」

祐一 「あの男の居場所・・・知ってるのか?」

エリス 「まぁね。クジャクナタラ、知ってるでしょ」

祐一 「確か、南の方の大陸の伝説の魔獣・・・・・・まさか」

エリス 「今、あいつはその魔獣と戦ってるわ。聞いたところによると、もう何度か実際に交戦したみたいね。倒すのも時間の問題だそうよ」

祐一 「また伝説の新ページ誕生かよ」

あの男は・・・どこまでも高いところへ行く。

エリス 「さてと・・・じゃあね」

祐一 「もう行くのか?」

エリス 「ええ。しんみりしてるうちに帰らないと、またあんたとは喧嘩になるわ」

祐一 「だろうな」

わかってるならするなと言いたいだろうが、こればかりは自分の意思でもどうにもならん。
それだけ相性が悪いんだ、こいつとは。

ひらひらと背中越しに手を振りながら、エリスは歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さやか 「終わった?」

エリス 「ええ」

さやか 「そっかそっか〜。山が吹っ飛ぶ大喧嘩になるんじゃないかとヒヤヒヤしてたんだよ〜、これでも」

エリス 「さやか」

さやか 「ん〜?」

エリス 「楓はどこ?」

さやか 「・・・・・・」

エリス 「知ってるんでしょう」

さやか 「知らないよ。本当に」

エリス 「・・・・・・」

さやか 「嘘つく理由はないでしょ」

エリス 「・・・そうね」

さやか 「ねぇねぇエリスちゃん・・・ぎゅってしていい?」

エリス 「イヤ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一騒動終えて、俺と栞は山頂で休んでいる。
さすがにあのヒドラとの戦いは、それなりに疲れたからな。

栞 「あの・・・」

祐一 「ん?」

栞 「聞いていいですか?」

祐一 「俺に答えられることならな」

栞 「じゃあ・・・・・・祐一さんって何者ですか?」

祐一 「・・・・・・」

そう来たか。
むしろ、今まで聞かれなかったのが不思議なくらいの質問だな。

栞 「この間のアルドって人・・・今日のエリスさん・・・祐一さん自身も含めてみなさんとんでもなく強いですし・・・・・・それに・・・楓さんって・・・?」

祐一 「・・・・・・・・・そうだな。少しだけ、話してやるか」

俺達のこと。
俺、アルド、エリス、楓さん、そしてあの男の五人。
地上最強と謳われた俺達、デモンバスターズの話を・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく