デモンバスターズ

 

 

第10話 血染めの死神

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブラッディ・アルド。
本名を、アルド・レイ・カークスというが、それが本名なのかも実は怪しい。
俺の昔の仲間。
俺達に出会う前から、暗殺者として多くの血を流してきた男らしい。
五人の中で、ある意味こいつは異色だった。
けど一つ絶対なのは・・・桁外れに強い・・・ということだ。
それは、俺が良く知っている。

 

アルド 「くっくっく、ではさっそく、殺し合いましょうか」

奴の右手に、禍々しい姿をした剣が出現する。
毒々しいほどの赤い剣。
血の色をしているのは、斬った人間の血ではない。
あの剣そのものが、血からできているんだ。
俺の氷刀と似ているようで、まったく違う。
何よりも、あの剣の禍々しさは、その形状にある。

祐一 「相変わらず、悪趣味な剣だな」

冷や汗をかきながらも悪態をついてみる。
そうしながら俺も、氷刀を作り出す。

アルド 「そうですか? 素晴らしい剣でしょう」

奴の剣には、大小無数の刃がついている。
一振りするだけで、何十という傷を相手につけることができる代物だ。
血を好むあいつらしい武器さ。

アルド 「ですが、あなたのその白き氷の刀も美しいですよ」

祐一 「おまえに褒められてもな」

屋根の上、十数メートルの距離で対峙する。

かつての仲間と殺し合うことになるとはな。
けれど、わかっていたことだ。
いつかこいつと戦うことになることは。

アルド 「行きますよ」

来る!

 

ヒュッ

 

一瞬にして奴が間を詰めてくる。
横薙ぎにされた奴の剣を、俺は大きく横に跳んでかわす。
あの剣は受けちゃいけない。
受けても、無数の刃に全身を切り刻まれるだけだ。
俺が直前までいた屋根が、細切れにされている。

祐一 「ハッ!」

すぐさま反撃に転じる。
こっちから攻撃できるチャンスは、奴が剣を振りぬいた直後しかない。

アルド 「おっと」

だがそんなことは向こうも承知の上。
この程度の攻撃はあっさり回避される。

こちらから攻めたいところだが、それも命取りになる危険がある。
あいつの剣は、防御した際にも攻撃してきた相手にダメージを与えることができる。
まさに攻防一体の厄介な武器だってことだ。

アルド 「いや、危ない危ない。なかなかのスピードですね」

よく言うぜ。
全然余裕で避けやがったくせに。

祐一 「俺をなめるなよ・・・アルド!」

ただ刀振り回すだけが俺の力じゃない。
こんなことだってできるんだよ。

周囲に水が集まり、氷柱が生まれる。
そいつらをアルド目掛けて飛ばす。

アルド 「ほう」

もちろん、直線的な攻撃など奴には通じない。
しかし、回避する先を予測して第二派、第三派を放つ。

アルド 「なかなかおもしろい。ですが」

奴の姿が残像を残して右へ左へ移動する。
しかも、徐々に近付いてくる。

祐一 「くっ・・・!」

アルド 「こっちですか」

しまった!
読まれてる。

ガキィッ!

祐一 「ぐぁ・・・」

何とか奴の剣を弾くが、少し喰らってしまった。
やっぱり防御してたら、どんどん体力を削られる。
続けて振り下ろされる奴の剣を、体を旋回させて回避する。
さらに遠心力をつけて奴の背中を狙った一撃を放つ。
この間、道場で折原が見せた動きを俺なりに真似てみた技だ。

ヒュッ

捉えたかと思ったが、斬ったのは奴の残像だった。

アルド 「どうしたました? 私はここですよ」

祐一 「な・・・!?」

消えたアルドは、俺の背後にいた。

 

ザシュッ

 

祐一 「ぐはぁっ・・・!!」

全身に激痛が走る。
背中だけでなく、腕や足まで同時に斬られた。
痛みを堪えて、なんとか振り向きざまに斬りつけるが、奴は跳び下がってかわした。

祐一 「ぐ・・・っ」

致命傷じゃない。
それほど深い傷でもないが、痛みと出血がひどいな。
意識が飛びそうだぜ。

祐一 「へっ・・・おまえの剣は鋭いわりに浅いんだよ・・・」

アルド 「そうですね。一思いに殺せず、申し訳ありません」

嫌な笑い方だ。
こいつは明らかに、殺すことよりも、標的が血を流して苦しんでいる姿を見るのを楽しんでいる。

俺達五人の中で、こいつは異色だった。
他人の血を見ること、誰かを殺すこと、それを快楽とするのは、こいつだけだ。
ある種、俺達に共通するものを持っていたから一緒にいたが、こいつだけは俺達の中で純粋な仲間意識というものを持っていなかった。
いつか俺を含めた他の四人を殺す。
それがこいつの目的だったんだ。

アルド 「その傷で、次をかわせますか?」

祐一 「さあな。それより、おまえこそ俺がこの程度だなんて思ってないだろうな」

半分は強がりだ。
奴の言うとおり、次はもっと決定的な一撃を喰らうかもしれない。

アルド 「くっくっく、知っていましたか、祐一君。私はあの四人の中で、あの男の次に君と戦ってみたかったんですよ」

祐一 「・・・・・・」

アルド 「一番年下で、一番最後に加わったあなたは、五人の中では最弱でした。しかし私は、君がいつか大きく化けるのではないかと思っていたんですよ」

祐一 「それは・・・光栄だな」

アルド 「一つ望みがかなった、満足ですよ。さて、次で終わりにしましょうか」

祐一 「くっ・・・!」

万事休すか!

 

ヒュッ

 

また奴の姿が消える。
速い!

祐一 「こっちか!」

アルド 「当たりです。が、遅かったですね」

かわせないかっ。

ザシュッ

祐一 「がっ・・・!」

また一撃を喰らう。
体をひねって直撃は避けたが、俺はバランスを崩して屋根の上に倒れる。

祐一 「ぐはっ」

アルド 「いいですね。最後まで私を楽しませてくれる」

奴は眼前に悠々と立っている。
もう俺に反撃はないと思ってるのか。

ここまでかと思った時・・・。

 

栞 「祐一さん!」

祐一 「なっ!?」

アルド 「?」

声がして、俺とアルドの間に小さな影が割ってはいる。
俺に背を向け、アルドに木刀を向けて立っているのは、栞だった。

祐一 「栞!? 何してるっ、どけ・・・・・・ぐっ!」

強引に前に立つ栞を押しのけようとするが、動いた途端痛みが走る。

アルド 「これはこれは美しいお嬢さん。祐一君のお知り合いですか?」

栞 「・・・・・・っ!」

ただじっと木刀を構えて立っている栞。
見れば首筋に大量の汗をかいている。
走ってきたからではあるまい。
こいつなりに、奴の強さを肌で感じているんだ。
膝もガクガク震えている。
当然だな。
奴は、この間のドラゴンなんか話にならないほど強い。
並みの人間なら、奴を殺気をまともに受ければそれだけで死ぬかもしれないほどだ。

アルド 「勇敢なお嬢さんですね。好きですよ、あなたのような女性は」

ヒュッ

栞 「あぅっ!」

奴の剣が軽く振られ、栞の体が傾く。
服が切り裂かれ、白い肌に赤い線が走る。

栞 「っ・・・!」

アルド 「特に、その美しい体が血に染まり、勇ましい顔が苦痛に歪むところを見るのがね」

ヒュッ

栞 「くぁっ・・・!」

もう一度、今度は逆から斬られ、栞は尻餅をつく。
だが、倒されながらも木刀の切っ先はあくまでアルドに向けられている。

アルド 「くっくっく、いいですねぇ。いい目ですよ、お嬢さん」

栞 「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・祐一さんは、やらせません!」

アルド 「ええ、その調子で私を楽しませてください。・・・・・・しかし祐一君、勇ましいお嬢さんがお知り合いにいますね。そうそう、美しく勇ましい女性と言えば、やはり彼女を思い出しますね」

祐一 「!!」

アルド 「その様子では、まだ見付かってはいないみたいですね。二年前私達の前から姿を消した彼女は」

祐一 「・・・おまえもか」

アルド 「残念ながら。ええ、本当に残念ですよ。彼女の体を血で染め上げるのは、一番の楽しみと思っていたというのに。あと、そうした時の、君を含めた他の三人の顔も見物だったでしょうねぇ」

祐一 「貴様・・・!」

アルド 「ですが君の場合は、このお嬢さんでも代用が利きそうだ」

またアルドの剣が振られる。
俺は痛む体を無理やり動かして栞の体を引っ張る。

ヒュッ

栞 「きゃっ!」

少し遅れて、栞の足が僅かに斬られる。

祐一 「バカヤロウッ、引っ込んでろ」

栞 「で、でも・・・!」

祐一 「でももへったくれもあるかっ。おまえなんかがいても足手まといなんだよっ!」

アルド 「おやおや、いけませんよ祐一君。レディにはもっと優しく接しなければ」

祐一 「てめぇにだけは言われたかねえ!」

アルド 「まぁいいでしょう。どうやらご一緒に死ぬのがお望みのようだ」

くそっ。
今からじゃ栞一人を逃がすのも困難だ。
栞の今の状態じゃ、走るのも無理だし、俺も栞を抱えて逃げることはできない。

アルド 「楽しかったですよ、祐一君。では・・・ブラッディ・デス」

ここまでかっ!

 

ボゥッ

 

アルド 「!?」

だが寸前で何かがアルドの攻撃を遮った。
剣を途中で止め、アルドが数歩飛び下がる。

アルド 「どちらさまで?」

俺達の間に割って入ったもの。
それは炎だった。

隣の家の屋根の上に、白い帽子を被ったさやかが立っていた。

さやか 「《ラブリーバーニング♪》・・・とでも覚えておいてよ」

なんとなく台詞の言い回しはかっこいいんだが、名前のインパクトがそれを完全に無効にしている。

アルド 「ほう・・・祐一君のお知り合いですか?」

さやか 「まあね♪」

アルド 「なるほど、祐一君には美人のお知り合いが多いらしい」

さやか 「美人だなんて、お上手ね」

良く見れば、なんとなく似ている二人だった。
着ている物はどっちも黒。
色こそ黒と白の違いがあれ、つばの広い帽子。
笑顔の下に底知れないものを隠し持っている雰囲気。
扱う力は赤い。
ただ、血の赤と、炎の赤という違いだけで、こうまで違いが出るものか、と思わせるものはあったが。

アルド 「失礼ですが、お名前は?」

さやか 「白河さやか」

アルド 「ではそのさやかさん。今度はあなたがお相手をしてくれるのですか?」

さやか 「う〜ん、どうしよっかな〜♪」

炎の気配が一瞬大きく広がる。
それに対するため、アルドの注意が一瞬こっちから反れる。
今だ!

アルド 「!!」

ザシュッ

俺は栞を押しのけ、氷刀を逆袈裟に振るう。
奴は飛びのいてかわし、斬撃は浅かった。
俺は倒れそうになる体を、刀を突き立てて支える。

アルド 「まだ動けましたか、さすがですね。ですが、残念でしたね、この程度では私に勝てませんよ?」

確かに、傷は浅い。
コートを切り裂いて、肌にほんの少し傷つけただけだ。
だが・・・。

祐一 「・・・フッ」

アルド 「?」

祐一 「チェックメイトだ、アルド!」

 

ドシュッ ドシュッ ドシュッ

 

アルド 「か・・・はっ・・・!」

奴の周囲に何本もの氷柱が出現し、奴の全身を貫いた。

祐一 「氷槍方陣」

まともに撃ってもかわされるだけだろう。
だから罠を張っておいた。
さっき奴に向かって撃った氷柱は全て、一箇所に集めて隠しておいたんだ。
俺の合図一つで、一瞬にして具現化するようにな。

パキィーンッ

自らの体を空間に縫いとめている氷を砕いて、アルドが数メートル後方にある煙突の上まで退避する。

アルド 「ぐほっ・・・・・・くっくっく・・・これは不覚を取りましたね」

全身を血に塗れさせながら、アルドは笑っていた。

アルド 「本当に強くなりましたね、祐一君」

祐一 「油断したてめぇが悪いのさ」

アルド 「確かに。この状態では、いいところ相打ちですね」

刺さっていた残りの氷柱を抜いて捨てる。
あれだけの傷を負わされて・・・なんて精神力だ。

アルド 「今日のところは、私の負けですね。楽しかったですよ。またお会いしましょう、《氷帝》」

奴の姿が消える。

行った・・・・・・な。

祐一 「はぁ〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・・・・・」

一気に息を吐き出す。
ヒヤヒヤしたぁ・・・。
最初からあれを狙ってたとは言え、正直上手くいくかはバクチだった。
それだけ奴は強いからな。

さやか 「おつかれ〜♪」

さやかがこっちの屋根に飛び移ってくる。
随分とタイミングのいい助っ人に来てくれたものだ。

祐一 「一応サンキュ、助かった」

さやか 「いえいえ、大したことしてないよ。あんなに強い人に勝っちゃうなんて、すごいね」

祐一 「勝ってねぇよ。いいとこ痛み分けだろ」

奴の言ったとおり、あのまま続けてたら相打ちがいいところだ。

祐一 「栞、だいじょう・・・・・・」

栞 「・・・・・・」

気絶してやがる。
無理もないか、無茶しやがって。

俺は自分の傷と栞の傷を全部薄い氷で覆う。
こうしておけば、傷が悪化することがないし、治りも早い。

祐一 「・・・ところでさやか、随分とタイミングがよかったな。いつからいた?」

さやか 「さあ〜?」

祐一 「ったく」

まぁいい。
曲がりなりにも、あのアルドを退けられた。
大金星だな。

・・・・・・栞に怪我させたの、香里にばれなきゃいいんだが・・・。
秋子さんなら回復魔法使えるよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

あとがきみたいな?

さやか(以下“さ”):なんで疑問系?

平安京(以下“京”):なんとなく

さ:6話以来のあとがきだね〜

京:そうだな

さ:とりあえず、予告通り9話目でデモンバスターズの一人目が登場。私もかっこいいし、よしとしましょ♪

京:うむ、よしよし。8話まで無敵最強だった祐一君、いきなり圧倒されてるな

さ:強いね〜

京:ま、勝ったけどな

さ:ところでアルドさんってさ、どっかの誰かさんとそっくりなんだけど

京:だろうな

さ:いいの?

京:細かいことさ。微妙に違うし

さ:けど、わかる人には一発で元ネタばれるね

京:いいじゃないか。どうせ君らだって全員版権キャラだ

さ:ま、そうだけどね〜

京:では

さ:まだまだよろしくね〜