デモンバスターズ

 

 

第5話 不思議なカップル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が水瀬屋敷に居候するようになって、三日が経った。
とりあえず、まったりとやっている。
栞は都合十五回ばかり挑んできたが、ことごとく玉砕している。
ま、三日じゃそんなもんだろ。
俺自身はよろず屋の手伝いをしている。
実に色んな依頼が来るが、俺が主に引き受けるのはモンスター退治とかの厄介ごとだな。
他はあまり役に立たないだろうし。
喧嘩の仲裁なんてもってのほかだ。
これを名雪はいともたやすくやってしまうんだから、一つの才能だな。
まぁ、人には向き不向きがあるってことだ。

 

祐一 「ふぅ、終わった終わった」

今日もモンスターと一戦してきた。
この辺りは意外とモンスターが多く生息しているらしく、こんなことはしょっちゅうあるらしい。
だが、水瀬家があるお陰で多くの人が助かっていると言う。

祐一 「けど、わりと高レベルのモンスターが多いよな。あの道場の連中くらいで大丈夫なのかね?」

こんなこと、道場で言ったらまた反感を買いそうだな。
なんだかんだであれ以来まだ道場には顔を出していない。

とにかく、俺にとっては雑魚レベルのモンスターでも、実際にはそこそこ強い奴らだ。
あの北川とかいう奴くらいの実力があればなんとかなるかもしれないが、あいつはたぶんあの中でもトップレベルの使い手だ。
つまり、他はあまり頼りにならないってことだな。

祐一 「俺が来る前は誰がやってたんだ、この手の仕事・・・・・・ん?」

門をくぐってしばらく歩いていくと、視界にさやかの姿が飛び込んできた。
あいつ昼間はどこにいるのかまったくわからない、神出鬼没な奴だ。
下手に関わると面倒そうなんだが、今はちょっと気になった。
何故なら、あいつは一人ではなく、はじめて見る二人組と一緒にいたからだ。

祐一 「おい、さやか・・・」

さやか 「しっ、黙って」

声をかけるとそう制される。

祐一 「?」

見ればさやかと、もう一人黒髪の女が、男の方をじっと見ている。

さやか 「・・・・・・」

黒髪の女 「・・・・・・」

あの、いつも鼻歌歌っているようなおてんこ娘が、やけに神妙な顔をしている。
もう一人の女、どこか冷たい印象を受ける瞳をした女も同じだ。
そして俺と同い年くらいの男の方は・・・。

若い男 「・・・・・・」

祐一 「・・・・・・」

さやか 「・・・・・・」

黒髪の女 「・・・・・・」

不思議な静寂だった。
妙な緊張感がある。
そして・・・。

若い男 「・・・・・・そして瀕死の鵜は最後に一言こう言った・・・・・・『うっ!!』・・・・・・ご臨終です」

祐一 「寒いわっ!!」

ぱしんっ!

俺は思わず男の頭を叩いていた。

変な男 「ナイスなツッコミだ!」

叩かれたというのに非常に爽やかな笑顔を浮かべた男が振り向いて親指をグッと立ててみせる。
なんだこいつは?

で、真剣な表情をしていた二人の女達の方を見ると・・・・・・口元を押さえたり下を向いたりして震えている。
笑ってる?
おもしろかったのか? 今のが?

祐一 「どこだ? いったいどこがどうおかしかったと言うんだ、今のが?」

黒髪の女 「だって、浩平君、さっきまですごい真面目な前振りしてたんだよ。それで・・・ふふっ」

さやか 「シリアスな展開から来る止めの寒さがたまらないんだよ」

そうなのか?
俺はそのシリアスな前振りとやらを聞いてないからわからないのだと?

浩平君? 「フッ、俺の高尚過ぎるギャグは常人には理解できまい。この二人だけだ、笑ってくれるのは」

祐一 「いや・・・それは・・・」

そりゃ、あのギャグとも言えないギャグもどきで笑うのはこいつらくらいだろうとも。

浩平君? 「だが、さっきのおまえのツッコミはナイスだった! やっぱボケばっかりでいても永久にオチないんだ。俺もみさきもさやかも基本的にボケだからな。おまえ、一緒に吉本の舞台を目指さないか?」

祐一 「・・・遠慮しておく」

なんなんだ、いったい?

さやか 「うふふ、とりあえず、初対面だと思うから紹介しておこうか」

両方の間に入ってさやかが仕切りだす。
まずは俺に対して二人のことを紹介する。

さやか 「この二人、折原浩平君と川名みさきちゃん。水瀬一門でもっともラヴラヴなカップルだよ」

浩平 「照れるぜ」

みさき 「うん、照れるね」

と、まったく照れてなさそうな笑顔で言う。

さやか 「で、こっちがさっき話した、相沢祐一君」

もう話してたのか。
こいつ、どんなこと言いやがったかな?

浩平 「ほう! おまえが氷の惑星からやってきた居候4号ことツッコミマシーン1号か!」

祐一 「・・・おい、どんな説明しやがったてめぇ!?」

さやか 「だってほら、氷出してたじゃん。居候4号も事実だし」

祐一 「最後のツッコミマシーンってのは何だ!?」

浩平 「ああ、それは今俺が考えた」

祐一 「・・・・・・」

さやか 「ところでどう? この祐一君は。私は85点くらいじゃないかと思うんだけど?」

みさき 「うーん、会ったばかりだから何とも言えないけど、とりあえず80点くらいかな」

浩平 「95点だ」

みさき 「あれ、辛口な浩平君にしては珍しいね」

浩平 「ツッコミ要員は重要だ!」

みさき 「あ、じゃあわたしも90点くらいあげようかな?」

浩平 「おいおい、浮気するなよ」

みさき 「大丈夫だよ。浩平君は350点だから」

浩平 「何おぅ、みさきなんか1850点だぞ」

みさき 「本当は350万点だけどね」

浩平 「いやいや、七千五百三十二万六百六十五点だ」

みさき 「まだまだ辛口だなぁ。わたしなんて八兆六千七百五十四億九千八百八十五万五千三百五十点だよ」

祐一 「・・・・・・」

なんだこいつら?

祐一 「おいさやか・・・?」

さやか 「甘甘だね〜♪」

祐一 「いや、そういうことじゃなくてだな・・・」

大体なんなんだ、その点数は。
人物評価なのか?
しかしツッコミ要員として95点をもらってもまったく嬉しくないぞ。

祐一 「だからなんなんだよ、こいつらは?」

さやか 「何と言われても、さっき言ったとおり、浩平君とみさきちゃん」

祐一 「いや、名前だけ聞いてもな」

さやか 「見たとおり」

祐一 「・・・・・・わかった」

とりあえず俺の頭の中では、浩平とみさきは変なカップルとして登録された。
ここは変な奴ばっかりか・・・。

 「てぇ〜〜〜いっ!」

祐一 「・・・だから掛け声はいらんと言うのに」

言いながら俺は体を少しだけ横にずらす。
おもしろいように突っ込んできた栞の体が流れていく。
延長線上には他の三人がいるんだが・・・。

さやか 「はらま」

浩平 「よいさ」

みさき 「ほいっと」

全員、薄情にも避ける。
そして栞は木の幹に向かってまっしぐら・・・。

ガツンッ

栞 「えぅ〜〜〜・・・・・・」

沈没した。

浩平 「何をしてるんだ、栞は?」

祐一 「稽古だ」

浩平 「ほう?」

祐一 「俺から一本取れたら稽古をつけてやる約束なんだよ」

浩平 「なるほどな。北川がやられて、斉藤とも互角だったってな。それで栞が弟子入り志願か」

祐一 「そういうことだ」

しかし、単調だったとはいえ、栞の打ち込みは結構速い。
それをこの三人、いとも簡単にかわしやがったな。
三人全員、それなりにできる。

祐一 「改めて聞きたいんだが、おまえは?」

浩平 「無駄の高みを極めんとする男だ」

祐一 「・・・・・・」

真面目に答える気はないんかい。
うーん、こうして見てるとただのバカにしか見えないんだが。
それにみさきの方は、どうやら盲目っぽいな。
・・・目が見えないのに、ああもあっさり栞をかわしたのか・・・。

浩平 「おっといかん、水瀬と究極の寝坊について語り合う予定だったんだ」

みさき 「一週間前から約束してるのに、毎日会えないでいるよね。朝会う約束なんかするからだよ」

浩平 「しかし午後は大概仕事をしなきゃならんからな。不本意だが道場に顔を出さないとならない時もある」

みさき 「最初から今日みたいに午後会う予定にしておけばいいのに」

浩平 「そうだな。どうやらここしばらくこの相沢が俺の仕事をやってくれてたらしい。さやかから二、三日サボってもいいと言われたお陰で見極められた。じゃあ、さっそく水瀬の所に行くか」

みさき 「今日はそのままお夕飯ご馳走になろうよ」

浩平 「いい考えだ、みさき」

などと良くわからない会話を交わしながら妙なカップルはよろず屋の方へと歩いていく。
端から見ていても、いかにもラヴラヴだ。
水瀬屋敷一のラヴラヴカップルというのは本当らしい。
しかし・・・どうも不穏な話を聞いた気がするんだが・・・。

祐一 「おい、どこに行く?」

さやか 「いや〜、みさきちゃんがお夕飯来るってこと、琥珀ちゃんに伝えておかないとまずいし〜」

祐一 「その前に、てめぇ俺に仕事を押し付ける画策してやがったのか?」

さやか 「だって、仕事したいって言ってたじゃない。君がこの三日間やってた仕事って、みんな元々はあの二人がやってることだし」

祐一 「それだ。あの二人・・・何者だ? 只者じゃないだろ」

さやか 「そうだね。浩平君は水瀬道場四天王の一人、みさきちゃんも剣の腕は斉藤さん並」

やっぱりそうか。
最初はあまりに意味不明なキャラクターゆえわからなかったが、さっきの動きは普通の人間にはできないだろう。
あんなのが四天王とやらなのか・・・。
大体、究極の寝坊ってのはなんなんだ?
まぁ、名雪の朝の様子を見ればなんとなくわからなくもないんだが・・・あの折原ってのも同じなのか?

さやか 「究極の寝坊についてはね、名雪ちゃんのは天然だけど、浩平君は自家製の寝坊なんだって」

祐一 「わけわかんねーよ!」

さやか 「研究したいんだって、名雪ちゃんの寝坊を」

祐一 「だから・・・わからん」

と、俺達がくだらん会話をしていると、向こうから琥珀が歩いてくるのが見えた。

さやか 「あ、琥珀ちゃん、ちょうどいいところに」

琥珀 「はい? どうしたんですか?」

さやか 「今夜、みさきちゃんが夕飯に来るっぽいよ」

琥珀 「うわっ、ほんとですか? 大変、お米足りるかな〜?」

祐一 「どうしたんだ?」

元々大人数のこの家で、二人くらい加わったって大して問題にもならないだろうに。

琥珀 「あ、そうだ! 祐一さん、ちょっと行ってお米買ってきてもらえません?」

祐一 「いいけど?」

琥珀 「じゃあ、20kgの袋五つお願いします」

祐一 「りょうか・・・・・・なにぃっ!?」

20が五つ、占めて100kg?
いや、重さに関しては別にいいんだが、そんなに必要か?

祐一 「買い置きないのかよ?」

琥珀 「ちょうど明日にでも買いに行くつもりだったんですけど、みさきさんが来るとなると今日中になくなっちゃいそうなんで」

祐一 「そんなにないのか?」

宿屋もやってるくせに。

琥珀 「まだ五袋ありますけど」

祐一 「十分だろ?」

琥珀 「いえ、みさきさんが加わるだけで一袋は確実になくなりますから」

祐一 「は?」

琥珀 「後でわかりますって。それより、ちゃっちゃと行ってきてください」

祐一 「よくわからんが・・・まぁいいか」

居候の身だ。
言われたことは素直にやるのがいいだろう。
どうせ米なんだから、どれだけ買い置いても困らないだろ。

祐一 「あ、そうだ、さやか。そこでのびてる奴介抱しておいてくれ。香里に見付かると厄介だ」

さやか 「おっけ〜」

俺は町まで米を買いに行った。
20kgを五つは・・・袋が持ちにくいということもあって、まぁまぁしんどかった。
ま、これくらい、岩を背負って断崖絶壁を登らされたあの人の修行に比べれば・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんじゃこりゃ!?

ってのが率直な感想だった。
食卓全体の皿の密度が三倍以上に膨れ上がっている。
さらに、みさきさんの前に置かれてあるのは、俺達の五倍以上の容量はありそうな特大どんぶり。
そしてそこにでかでかとご飯が特盛りにされている。
皆はさも当然といった顔をしている。

祐一 「・・・これが普通なのか?」

さやか 「今日は少ない方かな?」

恐ろしいことをさらっと言うなよ。
三つ隣に座っている国崎の盛りもなかなかだが、桁が違う。

祐一 「おかず・・・多過ぎないか?」

琥珀 「足りないんじゃないかと思ってるんですよ。もう二、三品何か作ろうかな?」

・・・・・・・・・・・・

まさか・・・と最初は思った。
だが、僅か数分で、さやかや琥珀の言葉が真実であることを悟った。
凄まじい・・・。
凄まじすぎる・・・。

みさき 「うんっ、これおいしいよ〜」

一見彼女は普通に食べているようにしか見えない。
ちゃんと他の連中と会話もしている。
だがそれでいながら、会話にも参加せずひたすら食っている国崎の倍以上のスピードでおかずに手を付け、超どんぶりのご飯を平らげていく。

・・・そうだ、そういえばあのチビガキも凄まじい大食いだったんだ。
いつか勝負させてみてー・・・。

浩平 「そこで俺は言ってやったんだ。ドカーンってな!」

さやか 「ぶーっ」

祐一 「・・・・・・・・・てめぇ・・・」

またさっぱりわけのわからない折原のギャグで吹き出しやがって。
しかも俺の方に向かって。

さやか 「あ〜、ごめんごめん♪」

祐一 「おまえだけはいつか泣かす」

俺にこう思わせたのはあのチビガキ以来、こいつが二人目だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく