ナンパ少年と魔法嫌い























 世界は無限に存在している。
 多次元空間、平行世界・・・呼び方は様々だが所詮は人間がつけた呼称、好きに呼べば良い。いずれにせよ、そこに住む一般的な人々には触れることのできないどこかに、世界はいくつも存在している。それこそ、数え切れないほど、無限に。それはまったく同一の世界かもしれない、似ているが違う世界かもしれない、或いは完全に別物の世界かもしれない。それを知る術はない。また知る必要もない。所詮知的生命体にとっての世界とは、己が認知できる以上でも以下でもありえないのだから。
 そんな無数の世界に、同じ名前、同じ性質を持った一人の少年が同時に存在していた。
 彼の名は、相沢祐一。
 どこかで聞いたことのある名前かもしれない。彼はまさにその人そのものかもしれない。或いは、まったく別の彼かもしれない。彼は世界の数だけいるのだ。
 どこにでもいそうな平凡な少年と言えばその通り。特別な存在と言えばそうとも取れる。だがあくまで、神でも何でもないただの一人の人間の少年である。世界によっては特殊な能力を持っていることもあるかもしれない。けれど、隣の世界にいる別の自分と意志の疎通が取れるわけでもない。ただの、一つの世界にある、一つの因子でしかない、普通の少年である。
 ただ一つ、彼が他の存在と違うのは、彼と関わりを持つ異性の存在であった。
 人間に限らず多くの生物には、雌雄が存在する。男と女が出会えば、そこには多かれ少なかれ何かしらのドラマが生まれる。彼の場合は、それが他人のそれより少しばかり特別なのだ。彼が異性と触れ合う時、そこには必ず何がしかのドラマが存在する。それがこの少年の、宿命なのである。
 さて、今回はどんな世界で、どんな相手とのドラマが待っているのか――。















 国立バーベナ学園。
 神界、魔界、人間界を繋ぐ空間を越える門が開かれた「開門」より十年、三種族のより良い交流関係のために創立されたこの学園において、今日もいつもと同じ光景が繰り広げられていた。

「土見りぃぃぃぃぃぃんっ!!!」
「今日こそはその首級貰い受ける!」
「神妙に縛につけぇぇぇぇいっ!!」

 放課後の校内に怒声が響き渡る。
 次いで集団が駆け抜けていくことで校舎全体が小規模な地震に見舞われているような震動がする。
 さらには時折爆発音まで聞こえてきていた。最近になって校内の魔力制御結界が大幅に強化されたとかいう話を小耳に挟んだが、爆発音の元凶はそんなちょっとやそっとの結界などものともしないほどの魔力の持ち主であるからあまり意味はなさそうだった。それでも被害が最小限に留まっているのは、本人が手加減というものを学んでいる結果である。
 それでも日々少なからず保健室送りになっている生徒が出ているというのに、懲りない連中だった。
 騒音の原因となっているのは、通称KKK、SSS、RRR、PPP、と呼ばれる四大親衛隊である。彼らはそれぞれに校内屈指の美少女達、芙蓉楓、リシアンサス、ネリネ、プリムラの熱烈なファンクラブであり、その主な活動内容は、彼女達が揃って想いを寄せる少年、土見稟の抹殺であった。
 放っておくと本当に犯罪に走りそうな危険な連中ではあるが、そんな事態になることは絶対にありえない。
 何故ならば、リシアンサスことシアと、ネリネはそれぞれに、神界と魔界のプリンセスであった。稟は至って平凡な少年なのだが、神王と魔王の次期候補という超VIPなのだ。本気で殺った りしたら犯人には未来永劫安息は訪れないであろうことは容易に想像できた。
 また現実においては、神王・魔王が出張ってくるまでもない。ネリネは父親である魔王と同等かそれ以上の魔力の持ち主であり、魔界屈指の凄腕の魔術師である。如何にエリート学校たるバーベナの生徒といえど、たかが学生が何百人束になったところで敵う相手ではない。シアにしても、攻撃系魔法に関してはネリネに道を譲るが、神王の娘は伊達ではない。またシアにはキキョウという名の妹がおり、これがまたネリネに勝るとも劣らない魔法の使い手だった。さらに、プリムラは神界と魔界が共同で行っていた研究の過程で生まれた人工生命体であり、その魔力は神王・魔王をも凌駕し、世界最強である。この面子を本気で相手にするならば、軍隊でも持ち出さなくては話にならない。
 であるからして、毎日のこれはただじゃれているだけのようなものだった。
 当事者達にとっては至って大問題には違いないが、端から見ている分には既に単なる日常茶飯事であり、学園の誰もが生暖かい目で見守っていた。
 とはいうものの――。

「稟ちゃんも毎日大変だこと」

 教室の窓から校庭を凄まじい速度で駆け抜けていく稟と、それを追いかける集団の姿を見ながら、時雨亜沙は苦笑してみせた。

「亜沙ちゃんもご一緒に参加なさってきてはいかがですか?」
「見てる分には楽しいけどね。さすがに毎日付き合ってたらこっちの身がもたないって」

 親友であるカレハの言葉に、亜沙は片手を振って応える。自分が主導となって騒ぎを起こす時はとことん騒いで盛り上げるタイプの亜沙だが、日々激化していく稟とその恋人達、通称土見ラバーズと親衛隊の争いに付き合い続けるのは骨が折れる。
 亜沙にとって稟は中学の頃からの後輩であり、憎からず思っている相手ではあるが、あくまで一歩引いた位置から見守るのが亜沙のスタンスだった。

「それでは亜沙ちゃん、また明日」
「うん、また明日ね、カレハ」

 用事があるため先に帰るカレハを見送り、しばらく教室に留まっていた亜沙は、やがて席を立ち、家庭科室へ向かった。今日は料理部の活動はないが、二三整理しておきたいものがあるのだ。
 先ほどまでの騒音は遠ざかっていた。稟は学外まで逃走したようである。
 まだまだ校内に残っている生徒はたくさんいるのだろうが、放課後の恒例行事とも言えるあの騒ぎがなくなると、随分と静かになる。
 特に今は、教室にも廊下にも人っ子一人いなかった。
 外からは運動系の部活動による喧騒が聞こえてくるが、すぐ傍ではほとんど音がしない。
 自分の息遣いや足音、果ては心臓の鼓動まで聞こえそうな気がする。今自分のいる場所と、人の発する喧騒のある場所とが、まったく別世界の出来事のように思えた。
 こうした状態に留まっていると、昔を思い出す。
 幼い頃の亜沙は病弱で、毎日を家のベッドの上で過ごしていた。外から聞こえてくる同年代の子供達の声が、自分がいるのとはまったく違う世界の出来事のように思えて、そこへ行きたいのに行くことができない自分の体と、その原因となっているものを呪った。
 もう昔のことで、今の亜沙は普通に学校に通えるし、同年代の友達と遊ぶこともできる。騒ぎの中心にいることも多かった。
 それでも、あの頃感じたものは、今も彼女の心に留まり続けている。
 嫌なことを思い出したと、亜沙は頭を掻いた。
 こんなことで暗く沈んでいるのはらしくない。そんなのは時雨亜沙ではなかった。
 気合を入れて歩調を速める。家庭科室での用事を済ませたら買い物をして、夕飯の支度をする。今夜の献立を考え出すと、沈んだ気持ちはすぐに晴れた。
 だが、階段に差しかかった時だった。
 静けさの中で、一際高く鼓動の音が響くのがわかった。
 ――ヤバイ、と思った時にはもう遅く、鈍い痛みと目眩に襲われ、足下がふらついた。
 何とか体を支えようと壁に手を伸ばすが、掴めるものがなく、踏ん張ろうと踏み出した足が階段の淵で滑る。
 朦朧とした頭で浮遊感を感じながら、冷めた部分はこのまま転んだら痛いだろうなぁ、などと呑気なことを考えていた。
 しかし、予測していた衝撃は来なかった。
 代わりに、誰かに抱きとめられたような気がした。けれどわかったのはそこまでで、亜沙の意識はそこで途切れた。



 目を覚ますと、保健室のベッドの上だった。

「えっと・・・」

 ぼーっとしていて状況把握ができない。
 何故自分は保健室で寝ているのか。
 記憶を辿ると思い出せるのは、まず授業が終わった後しばらく教室に残っていて、稟とその取り巻きの騒ぎを窓から眺めていたこと。それからカレハと別れて家庭科室へ向かったはずだった。そこで――。
 思い出した。
 そこで痛みと目眩を感じて倒れたのだ。しかも階段から足を滑らせた覚えもある。だがそのわりには、全身に気だるさはあるものの深刻な痛みは感じられない。もし階段から落ちたのだとしたらこの程度の痛みでは済まないはずだった。
 もう一つ何かあったような気がする。そう、確か倒れる直前、誰かに抱きとめられたような感覚があった。

「お。起きたか?」

 そこまで思い出したところで、傍らから声がした。
 今まで気付かなかったのだが、どうやら目が覚める前からずっとそこにいたらしい男子の姿があった。

「さっきは危なかったな、時雨。あんなところで転んだら大変だ」
「・・・君が、助けてくれたの?」
「たまたま通りかかったんでな。運が良かった」
「ありがとう」
「礼を言われるほどのことじゃない」

 片手を振りながら微笑してみせられると、なかなか整った顔立ちをしているだけに少しドキッとさせられる。
 稟と同様、それほど特徴的というわけではないのだが、稟に比べると少し中性的な印象を受ける美形だった。それでいて気取った雰囲気がないので、親しみ易いタイプに見えた。
 ついでに言うと、何となく見覚えがなくもない。

「えーっと・・・」

 亜沙は体を起こしながら、相手の顔と名前を一致させようとするのだが、どうしても出てこずにしかめっ面をしてしまう。
 その顔がおかしかったのか、彼は少し笑いながら名前を告げた。

「相沢祐一。同じ三年で隣のクラスだよ。というかそっちほどじゃないが、わりと有名な自覚があったんだけどな・・・」

 なるほど、同学年ならばどこかで見たことがあったとしてもおかしくはない。だが、名前の方はやはり特に覚えはなかった。

「そういえば、そっちはボクの名前知ってたみたいだったけど?」
「そりゃそっちは本物の有名人だ。料理部双璧の一人、驚愕の時雨と言えばプリンセス達に次ぐ人気者だろ」
「・・・その異名、ボクとしてはものすごーく不本意なんだけど・・・」
「だろうな」

 また笑う。
 誰が呼んだか驚愕の時雨というのは、亜沙に家庭的な雰囲気がないにも関わらず、料理部部長として学園きっての料理の腕前を持つというギャップからつけられた異名だと言う。当人からすればこの上なく失礼な話である。もう一人の双璧、癒しのカレハとはえらい違いだった。
 不本意な異名のことで笑われて、亜沙は軽く頬を膨らませる。だが不思議と、あまり怒る気にはなれなかった。
 それは、この少年の持つ不思議な雰囲気のせいだろうか。

「そっちも有名とか言ってたけど、何で有名なの?」

 変な話だったら逆にからかってやろうというつもりで問い返す。

「んー、まぁ色々言われてるが一番わかりやすいのはあれだな・・・錬金オタク」

 聞いた瞬間、亜沙の顔から表情が消えた。
 つまらない話を聞いた、という思いがあからさまに出るのを隠そうともせずに顔を背けると、祐一は目敏くそれを察してまた別種の笑みを浮かべた。

「どうやら、噂通りみたいだな、魔法嫌い」
「別に、そんなのボクの勝手でしょ」

 どの程度有名なのかは知らないが、亜沙がほとんど話を聞いたことがないのは当然だった。魔法関連の話題は、仮に聞いていたとしても全てシャットアウトしている。魔法と錬金術は厳密には違うが、同種のものとして共に亜沙は嫌っていた。

「まぁ、どんな理由があるのか知らないが、結構おもしろいもんだぞ、錬金術は」
「おもしろかろうがおもしろくなかろうが、ボクは嫌いなの」
「そうか・・・なら仕方ないけど、残念だな」

 本当に残念そうに、祐一は腕組みをして考え込む。そんな仕草が何となくかわいく見えて、亜沙は少し表情を緩ませる。
 錬金術云々の話を抜きにすれば、決して嫌いなタイプの相手ではないようだった。
 それからしばらく休んだ後、家まで送るという祐一の申し出を「もう大丈夫だから」と言って丁重に断り、改めて礼を述べてから亜沙は帰路についた。
 その後は特に接点もないだろうと思っていたのだが――。



 何故かはじめて会話をした日以来、祐一は頻繁に料理部に顔を出すようになった。
 部長である亜沙は訝しがったのだが、他の部員達はわりとあっさり受け入れていた。話を聞くと、彼が校内の各所に出没したり、見学と称して様々な部活に顔を出すのは結構有名なことらしい。目的については噂程度の話しか聞けなかったが、どうやら錬金術の実験のようだ。それを聞いた亜沙は「ふーん、そう」とだけ言ってそれ以上追求することはなかった。
 活動の邪魔にならないならば、見学者の一人や二人いても困ることはなかった。
 料理部の性質上、部員は女生徒が大半だが、それが目当てというような下世話な雰囲気も、彼からは一切しなかった。
 それでも気になって、他の部員がいなくなってから話しかけてみた。

「部長のボクに一言くらいあってもいいんじゃないの?」
「最初に言ったろ、見学するぞ、って」
「そうじゃなくて。・・・・・・おかしな実験とやらのためってこと」
「おかしなってことはないんだがな。そこだよ、はっきり言ったら時雨が気を悪くするだろ?」

 その通りだった。
 気遣いができるのは良いことだとは思うが、それでもその実験自体をやめるつもりはないらしい。
 結局、亜沙もため息を一つ吐いてから、祐一の見学を黙認することにした。
 見学中の祐一は特に何をするわけでもなく、ぼんやり部活動を見ていたり、まるで関係ない窓の外を眺めていたり、たまに腕にしたやたら大きめの時計に目を落としたり、或いは持ち込んだ本を読んでいたりしながら過ごしていた。最初の内は部員達も珍しがって話しかけたりしており、祐一もそれに応えたりしていたのだが、やがてそれもなくなり、祐一は家庭科室の備品か、空気のような存在になっていた。
 基本的な部の活動が終わった後、大抵亜沙は最後まで部屋に残っている。同じく時間ぎりぎりまで残っている祐一とは、必然的に部活動の後二人きりになる機会も多かった。
 何度か当たり障りのない話をしたりしていたのだが、何日かしたある日、あまり愉快でない話を持ちかけられた。

「なぁ、時雨は何で、そんなに魔法が嫌いなんだ?」

 単なる野次馬的な好奇心、とは違ったわりと真剣な表情だったので亜沙も思わず口を開きかけたが、他人に話すような話ではないと突っぱねた。
 誰に対しても人当たりの良い亜沙だが、魔法の話題を振ってくる相手に対しては別人のように冷たくなる。
 だがそんな態度にもまったくめげず、祐一は一人で話し続ける。

「実は時計に見えるこれ、自作の魔力計測器でな。俺があちこちの部活に顔を出してるのは、運動とか何かの活動をしてる時の魔力の状態を調べたりしてるわけだ」
「ふーん」

 適当に相槌を打ちながら、亜沙は片付けをしている。魔法関連の話なので半分以上は聞き流していた。

「わりとちょっとの活動でも魔力って使ってるんだぜ。まぁ、魔法を使うのに比べたら微々たるものだけどな。で、そういうのを調べてるとその人の大体の総魔力量ってのがわかってくるんだが・・・時雨のは並の人間からするとかけ離れてるな」

 片付けをしていた亜沙の手が一瞬止まる。しかしすぐにまた動き出し、それに気付いているのかいないのか、祐一は構わず先を続ける。

「人間だけじゃなく、一般的な神族魔族と比べても破格といっていい。まぁ、うちの学園にはそれ以上の規格外がいるから、それに比べたら特筆すべきほどのものじゃないが・・・それでも普通じゃない。先天的なものだとしたら何か生い立ちに秘密が・・・」

 ダンッ、と亜沙が両手を調理台の上に思い切り叩き付ける音が響いた。

「何なのよ、君は! 会ってまだ何日も経ってないくせに、人の事情の中にずかずか入ってこないで!」

 ここまで激昂して声を荒げたのは何年振りだろう、と本人が思うほどに亜沙が大きな声を出していた。この場に他に誰もいなくて幸いだった。

「む、すまん。確かにいきなり少し深入りしすぎだな」

 振り向いた亜沙の剣幕を見て、祐一は素直に頭を下げる。
 あまりに潔い様に二の句を継げなくなるが、眉間に寄せた皺は解かない。これ以上この話題に触れるな、という気持ちを言外に込めたつもりだったのだが、祐一は謝りながらもまだこの話を終わらせる気はないようだった。

「けどな、わりと大事な話でもある」
「何がよ?」
「大きすぎる魔力ってのは身体に負担をかけるものなんだ。そのことで前に二年のネリネ王女に話を聞いてみたことがあるんだが、俺の仮説通り、彼女も小さい頃は病気がちだったらしい。それで、時雨がこの前倒れたのも、そういうのが原因なんじゃないかと思ってな」

 亜沙は驚いて目を見張った。祐一の推測が的を射ていたからだ。
 特殊な生い立ちゆえに、亜沙が並外れた魔力を持っているのは事実だった。またそれが原因で幼い頃から病気がちであったのも。今ではすっかり元気になっているが、時折ああして倒れたりすることがあった。けれど、その原因を知っているのは家族だけだった。医者にも何度かかかってきたが、誰も原因を特定することはできなかった。
 さすがに錬金オタクと称されるだけあって、魔法絡みの物事に対する洞察力は鋭いようで、そこは素直に感心した。

「時雨のことも少し調べさせてもらったんだが、小学校低学年頃まではほとんど学校に行ってなかったみたいだな」
「・・・人の過去を勝手に調べるなんて、趣味悪い」

 だが、感心はしても気に食わないことに変わりはなかった。
 本来亜沙は、このようにつんけんした話し方をする性質ではないのだが、この話題を続ける限り、祐一に対する態度はあまり良くはならなそうだった。

「悪いとは思ったけど、気になったもんでな。そういう過去が長じて、魔力、魔法ってのが嫌いになった、ってところか。単なる推測だが、当たらずとも遠からず、だろ」

 答えることはしなかったが、大体がその通りだった。あと付け加えるとしたら、母親の素性について触れることになるが、それを話す気はなかった。

「で、ボクの魔法嫌いの原因がわかって満足? 錬金オタクさん」
「機嫌を損ねたことは謝るよ。けどそのままってのは、おまえの身体に良くないぞ。少しでもいいから魔力を消費しないと、また倒れるかもしれない。そして、今度はタイミング良く助けられるとは限らない」
「余計なお世話です。ボクの身体のことなんだから、赤の他人の君に心配される謂れはないわよ」
「ちょっとくらいいいだろう? 人目のないところでちょちょっと使って魔力消費するくらい。俺の計算じゃ、たぶん、月に一回大きめの魔法を使うだけで問題なくなるはずだし。月のものが一つ増えたくらいの感覚で・・・」
「増えるかそんなものっ!!」

 顔を真っ赤に染めた亜沙は、脱いだエプロンを丸めて祐一の顔に叩き付けた。
 そんなやり取りがあった次の日以降も、祐一は変わらず料理部に顔を出してきた。皆の手前、いきなり険悪な雰囲気になるわけにもいかず、亜沙もこれまで通りその存在を黙認していた。
 結局のところ第一印象の通り、憎めないタイプの相手なのである。
 それから数日は特に接点のない日々が続いていたのだが、ある日二人きりになったところでまた祐一の方から話しかけてきた。

「なぁ、時雨」
「んー?」

 祐一の方はその時持ち込んだ本を読んでおり、亜沙は鍋の前で出汁を小皿に取って味見をしているところだった。

「房中術って知ってるか?」
「ぶーーーーーーーーっ!!」

 とんでもない単語を聞かされて、亜沙は口に含んだ出汁を思い切り噴き出した。

「その反応だと知ってはいるようだな」
「なっ、ななななななな、何てこと言い出すのよっ、君は!?」
「うむ、ちょっと唐突過ぎたな。房中術ってのはつまり男女の性交、つまりセックスによって互いの精気を高めたり分け合ったりするもので、起源は中国の・・・」
「説明しなくていいわよっ!」

 耳まで真っ赤になって叫んでいる亜沙に対して、祐一は本に視線を落としたまま至って冷静にしていた。
 余裕っぽいその態度が無性に腹立たしく見える。

「まったく! デリカシーってものがないわけ? 君は!」
「ああ、よく言われる。どうもどこかに置いてきちまったらしくてな・・・どこにあるか知らないか?」
「知るわけないでしょ・・・」

 冗談なのか天然なのか、まったくもってよくわからない少年だった。普段はどちらかというと周りを振り回していくタイプの亜沙が、彼の前では始終振り回されっぱなしである。こんな相手はカレハ以外でははじめてに近かった。
 頭が痛くなるのを感じながら、亜沙は鍋の前に戻る。

「つまりだな、この精気の部分は魔力と置き換えることができるわけでだな。魔法を使わなくても、これを上手く利用すれば魔力を消費できるかもしれない、と思うわけだ」

 亜沙の態度にまったく構うことなく続ける祐一の話を、亜沙は全て右から左へと聞き流していった。
 もういちいちつっこむのも疲れた。

「ちなみにこれは、やり方次第では同姓同士でもできるらしいぞ」
「はいはい、そうですか・・・」
「男とやるのに抵抗があるなら、女同士ってのも手だな。カレハさん相手にとかどうだ?」
「あのね・・・」

 やはりつっこむべきだと振り返りかけた時、何か良からぬ気配を感じてピタリと動きを止める。
 何か、ごごごごごごごご、などと不穏な効果音まで響いてくる。
 まさか、と思う。
 ちらっと足下から視線を走らせると、開きっぱなしになったドアの向こうに誰かがいるのが見えた。さらに視線を上げ、足の雰囲気から女生徒らしきことがわかった瞬間、亜沙は電光石火の勢いで駆け出していた。
 ドアに近付くと凄まじいプレッシャーを感じる。
 気配がまるで物理的圧力を持っているかのように亜沙の行く手を阻む。だが、負けるわけにはいかない。
 その瞬間だけを見れば運動部から勧誘が殺到しそうな速度でドアに肉薄した亜沙の視界一杯に、その姿が一瞬収まる。
 例えるならばそれは、破裂寸前の風船だとか、決壊目前の堤防だとか、そういう類のもの。

 ガラガラ ピシャッ!!

 弾ける直前で、亜沙は力一杯ドアを閉めた。
 向こう側で「ま゙ま゙ま゙あ!!」などという声が聞こえるが、全て空耳ということにした。閉める直前に妄想が暴走する親友の姿を見たように思えたのも気のせいである。ドアを隔てたあちらとこちらは別世界である。

「亜沙ちゃんとわたくしが〜、とか聞こえるな」
「聞こえない聞こえない! ボクは何っにも聞こえませんっ!!」
「そうか」

 爆弾発言を投下しておきながら、我関せずの体で本を読み進めている祐一を、亜沙は恨めしげに睨み付けた。
 やはりこの男は即刻料理部立ち入り禁止にするべきだと思ったが、次の日から祐一は姿を見せなくなった。亜沙はホッとしたような、拍子抜けしたような複雑な気分になった。



 それから一週間ほどした後。
 下校途中の亜沙の前に唐突に祐一が自転車を二台引っ張りながら現れた。

「よっ」
「・・・・・・・・・」

 家庭科室でのやり取りですっかり苦手意識が芽生えている相手の登場に眉をひそめながら、一週間振りに顔を見たことで何故か心中に昂揚する部分があって、亜沙は何とも言えない表情をした。

「時雨、自転車は漕げるか?」

 そんな亜沙の表情は気にかけず、祐一は率直に質問をしてくる。

「自転車くらい、人並みに漕げるけど?」
「そりゃよかった。用意した後でもしかしたら漕げない可能性もあるってことに気付いてな、不安だったんだが」
「何の話よ?」
「これからサイクリングデートといかないか? 時雨」
「は、はぁ!?」

 現れるのも唐突なら、いつもながら発言も唐突である。
 顔が紅潮するのを感じながら、周囲に誰もいないことを確かめて安堵する。こんな現場を誰かに見られたら一大事だった。
 それからキッと微笑を浮かべる少年を睨み付ける。

「いきなり冗談やめてよねっ」
「半分は本気だ。こいつは俺お手製の健康器具でな、誰かにモニターを頼みたいんだ」
「最初からそう言いなさいよ・・・」

 しばらく渋っていた亜沙だったが、祐一に「ダイエットにもいいぞ」と言われて、最近少し運動不足だったことを思い出し、少しくらいならば、ということで了解した。
 二台ある自転車の片方に跨ると、祐一ももう一台の方に乗った。
 とりあえず、河川敷辺りまでゆっくり行こうということで漕ぎ出したのだが――。

「む・・・」

 思った以上にペダルが重い。健康器具というからギアが重く設定してあるのだろうか。

「ねぇこれ、ギアの調節はどうやるの?」
「ああ、その手元のやつでできるんだが、とりあえずそのままでいってみろ」
「でも、すごく重いんだけど・・・」
「変に力入れず、リラックスして漕いでみろ」
「?」

 重いのに力を入れるなとはどういうことなのか。訝しがりながらも言われた通り大きく深呼吸をして力を抜いてから再び漕ぎ出すと、不思議なことに先ほどよりもずっと軽く感じられた。
 亜沙の漕ぐ自転車が走り出すと、後ろから祐一もついてきた。
 二人並ぶことはなく、つかず離れずの距離を保ちながら、あまりスピードは出さず、のんびりと河川敷の方を目指す。
 最近は特に鬱憤がたまるようなこともなく、平穏な日々を送っていたのだが、自転車など久々に乗っただけに、思ったよりも気分が晴れやかになった。人間、日々を生きている限り多かれ少なかれストレスを感じるものであるが、そうしたものがスッと抜け落ちていくようで気持ちが良い。
 いつもより早く流れていく景色も、普段とは違ったものに見えて新鮮だった。
 気分が乗ってきた亜沙は少しずつスピードを上げていき、目的地であった河川敷の堤防の上を走っている頃には、後ろの祐一とは結構距離が開いていた。
 橋の近くで止まってしばらく待っていると、やがて追いついてきた。

「遅い。男の子のくせにちょっと体力足りないんじゃない?」

 悪くない気分でいる亜沙の声は明るい。

「かもな。運動はあまり得意じゃないんだよ」
「ボクも別に得意ってわけじゃないけど」

 軽く汗の浮かんだ顔で、二人とも笑い合う。
 はじめて会った時から思っていたことだが、やはり微笑が良く似合う少年だった。顔だけを見ていると女子にモテそうな雰囲気があるだけに、錬金オタク云々はさておき今までほとんど噂すら聞いたことがないのが不思議だった。
 けれど改めてよく見ると、わかるような気がした。
 存在感がわりと希薄なので、目立たないのだ。これは、部員でもないのに料理部に入り浸りながら、ほとんどその存在が気にならなかったことからもわかった。
 空気のような存在、と言い換えても良いかもしれない。
 もちろん悪い意味ではない。
 そのくせ二人きりの時は妙にお節介なところがあった。不思議と煩わしいとは感じなかったが、それでも会ってまだ間もないにしては、本当に随分と深入りしてくる。

「で、結局これは何なの?」

 だからこれも、そのお節介の一環なのだと、亜沙はとっくに見抜いていた。

「うむ、よくぞ聞いてくれた。このままスルーされたらどうしようかと少しだけ不安だったぞ」
「何の意味もないものを押し付けるタイプじゃないでしょ、君は」
「そんなことはないぞ。俺は無駄の追及に余念がない男だ。まぁ、これは確かに意味のあるものだけどな。こいつには・・・」

 と言って祐一は自分と亜沙が乗っている自転車を指し示す。

「漕ぐために魔力を必要とする装置が取り付けてある。つまり、ただ漕いでるだけで魔力が消費できる、ってわけだ」
「なるほどね・・・」

 この一週間顔を出さなかったのは、これを作っていたからのようだ。本当に、お節介なことだった。

「しかしさすがだな。そっちのやつは魔力消費量を最大に設定してあるんだが、その状態だと俺は五分も漕いでられなかったってのに、三十分近く平気な顔して漕いでるとは」
「褒められても別に嬉しくないわよ。大体君、何でこんなことするわけ?」
「そりゃおまえ、格好の実験体だからだろ。プリンセス達に近付くと親衛隊連中がうるさいからな」
「・・・君、さらっと人の神経逆撫でしてる自覚ある?」
「あとは、似てるから、かな」
「似てる?」

 亜沙が首を傾げると、祐一は河の方へ視線を向けながら、いつもより少しだけ真面目な表情をしていた。
 夕日に照らされた横顔には哀愁が漂っているように見えて、少し見惚れさせられる。

「似てるって、誰と誰が?」
「俺とおまえ。魔法でトラウマがある辺りが、な。もっとも、俺とおまえの場合だと逆だけどな」
「逆って、どういうこと?」

 自然な流れでつい聞いてしまってから、亜沙はしまったと思った。自分とて容易く魔法嫌いの理由を他人に話そうという気にはならないというのに、相手のそれを聞くなど。
 けれど、祐一は少しも気にせずに語り出す。

「昔・・・まだガキの頃な。俺のせいで大怪我させちまった子がいるんだよ。幸い大事には至らなかったけど、処置が遅くなっちまって、その子は結構長い間入院することになった。その時思ったんだよ。魔法が使えたら、もっと何とかできたんじゃないかな、ってな。ま、俺がバーベナに来て錬金術を勉強するようになった最初の理由ってやつさ」
「そんなことが・・・」
「時雨の過去を調べた時、ちょっとだけ羨む気持ちと、ちょっとだけ苛立つ気持ちがあった。俺はあの頃魔法が使えなくて悔しい思いをしたのに、魔法の素質がありながらそれを嫌って使おうとしないおまえに腹を立てもした。けどおまえのことを良く知る内に、素質があることで辛い場合があるんだってことを知った。どっちも善し悪しってことだ」

 大きすぎる魔力ゆえに辛い思いをしてきた亜沙に対して、魔法が使えなかったことで辛い思いをした祐一。同じ魔法絡みのトラウマで、けれど二人の立場は逆のものだった。

「魔法嫌いを直せ、ってのは色々あるんだろうから難しいかもって思ってな。それでこんなもの作ってみたりしたんだが」
「どうして会ったばかりのボクなんかのためにそこまでしてくれるの?」
「厳密にはおまえのためじゃなくて、俺自身のため、かもな。あの時あの子に何もできなかったから、今度こそ目の前で困ってる子を助けてやりたい・・・そんなところさ。親切の押し売りだな。余計なお世話だったか?」
「そうね。けど・・・」

 自転車のハンドルを撫でながら、亜沙は笑顔を浮かべていた。

「ねぇ、これ、借りててもいい?」
「自由に使ってくれ。気に入らなくなったら突っ返してくれればいい」
「じゃあ、遠慮なく」

 家路の方へ車体を向けた亜沙は、漕ぎ出す前に肩越しに振り返った。

「それじゃあ、またね、相沢君」



 翌日。
 いつもの通学路上で目標を確認した亜沙は、目一杯助走をつけながら片手を振りかぶる。

「は〜ろ〜♪ 稟ちゃんっ!」

 そして思い切り稟の背中に向かって平手を叩き付けた。
 すがすがしい音が響き渡り、打ち据えられた稟は軽く猫背気味になっていた身体を仰け反らせた。
 いつもならこの後涙目で抗議してくるところなのだが、今朝は取り巻きの四人、楓、シア、ネリネ、プリムラも含めた全員が微妙な表情をしていた。

「あれ? どしたの、みんな?」
「えっと、あの・・・亜沙、先輩?」

 楓が何をどう言おうか迷うように口ごもる。シアとネリネも少し赤くなりながら、視線を逸らせたりしている。稟もどこか様子がおかしい。
 要領がつかめず首を傾げる亜沙に向かって、プリムラが呟くようにとんでもないことを告げた。

「亜沙、昨日河川敷で、男と楽しそうに話してた」
「なっ!?」

 一瞬にして亜沙の方が真っ赤になる。
 まさか昨日のあれを誰か、よりにもよってプリムラに見られていたとは。当然そうなれば稟と楓にも伝わり、そのままシアとネリネにも知られるだろう。皆の微妙な表情はそれが原因だった。

「いや、あれは違うんだってば! 別に楽しかったとかそういうのは全然なくて・・・」
「では、どういうことなのか、じっくり聞かせてもらいたいのですよ、亜沙先輩!」

 いつの間に現れたのか、麻弓が横から握った拳にマイクを持っているような仕草で尋ねてくる。その麻弓を含め、見守っている全員の顔に、大きく「興味津々」と書いてあった。

「だ、だからね・・・」
「まままあ♪ 亜沙ちゃんにもとうとう春が・・・」
「そこーっ! 現れた途端スイッチ入れるの禁止!」

 妄想状態のカレハまでやってきて、亜沙は道端で追い詰められる。

「ちょ、ちょっとみんな・・・遅刻しちゃうから・・・」
「だから、ちゃっちゃと吐いちゃってほしいのですよ。麻弓情報によりますと、お相手は錬金オタクで有名なあの相沢先輩とのことですが、これまた魔法嫌いで有名な亜沙先輩とのツーショットは珍しいを通り越して奇跡とも呼べる組み合わせ。是非ともご関係を明かしてもらいたいのですよ!」

 麻弓の言葉を受けて、皆がうんうんと頷きながら迫ってくる。カレハはさらに妄想をエスカレートさせているようで、一人悶えていた。
 亜沙は落ち着いて、祐一とは大した関係などではないことを説こうとする。

「そうよ。ボクは魔法なんか大嫌いなんだから、あんな錬金オタクのことなんて何とも思ってないに決まって・・・」
「よっ、おはよ、亜沙」

 言いかけたところで通りかかった祐一が軽く挨拶をしながら校門の方へ歩いていくのを見て、亜沙は固まった。
 皆の視線も、亜沙から祐一へと移され、その背を目で追っていった。

「まままあ♪ 亜沙、なんて呼び捨てだなんて、まままあ♪」

 カレハの言葉でハッとなった亜沙は稟達を掻き分けて祐一のあとを追っていく。

「こらっ、待ちなさい相沢君! いつから名前で呼び捨てにされるような関係になったのよっ、ボク達は!?」

 後ろから何やら様々な感情の入り混じった視線を感じるが、構っている暇はない。
 校門のところで追いつくと、振り返った祐一はいつもの微笑を浮かべており、それに気勢を削がれる。決して超美形というわけではないのだが、何となく許せてしまう、そんな顔である。
 そして祐一自身の方は、亜沙のしかめっ面を見ても特に気に留めていないのも相変わらずだった。

「そうそう、自転車ばかりじゃ飽きるだろうから、その内また別のアイテム作ってくるぞ」
「あのね・・・だからボクは魔法とか錬金術とかそういうのは嫌いだって言ってるでしょ。ってそれより、何勝手に名前で呼んでるのよっ?」
「俺は基本的に親しくなった相手は名前で呼ぶんだ。嫌だったか?」
「嫌というか・・・・・・ああ、もういい!」

 おそらく、この男に何を説いても無駄であろう。
 徹底的にマイペースで、デリカシーがなくて、空気みたいで、時々ドキッとさせるような表情をして、過去にちょっと辛い思い出があって、とにかく自分のペースを乱される、けれどそれが決して嫌なわけではない。
 一言で言うなら、変な奴、だった。

「なぁ、亜沙」
「・・・何よ?」
「今度料理部で作ったもの味見させてくれよ。自転車のレンタル料だと思って」
「押し付けたくせに厚かましいわね・・・」
「駄目か?」
「いいわよ。錬金術なんてもの忘れるくらい、飛びっきりおいしいの食べさせてあげる!」
「そりゃ楽しみだ」

 そんな変な奴に少しばかり付き合うのも、楽しいかもしれない。そう思う亜沙だった。
 ただ、後ろからついてきている面子の追及をかわすのが大変そうだったが。あと、カレハの妄想を何とかするのが。



















あとがき
 リクエストから生まれた祐一もの短編連作の第一弾。まずは「SHUFFLE!」から、時雨亜沙である。コンプティーク誌上では人気投票トップ、アニメでもヒロインの座を勝ち取りながら、ネット上では微妙に評判が悪いような感じがする不思議な人気者である。まぁ、アニメに関しては亜沙の問題云々よりも、話の運び方そのものに問題があったのかもしれないが。それはさておき、基本的に周囲を振り回すタイプの亜沙に、今回は逆に振り回される役をしてもらいましたとさ。稟相手だと全然そんな雰囲気ないのに、こうしてみるとちょっとツンデレっぽい? 話のテーマとしては、亜沙の魔法嫌いに対する別のアプローチ、魔法嫌いそのものを克服させるのではなく、違う打開策を見出すという感じのもの。
 祐一の設定は相手によって微妙に変わっていくけど、基本的にはこんな感じで。ちなみにあえてKanon的設定に関して追求するなら、彼が語った過去話のことは原作の過去話とほぼ同一である。時間的には八年前になるので、まだ開門直後で魔法は存在こそ知られていたものの浸透はしておらず、あゆの怪我も簡単には治らず長く入院することになった、ということになっている。ちなみにその後魔法医療の発達で無事回復、元気に食い逃げしている・・・かどうかは定かではないが・・・とにかく普通の生活に戻っている。そして祐一自身は北へは行かず、バーベナ学園に入った、というわけである。
 今回の話はわりと良い感じに仕上がったと思うが、この先もこのシリーズが続くかどうかは、今回の評判次第、かの。とりあえず実験的に一つ書いてみた。