楽しい日々というのはあっという間に過ぎていくものだ。

毎日お祭り同然の調子で騒ぎとおした俺達の旅行も、いよいよ今日で最終日。

馬鹿騒ぎを続けてきたわけで、楽しい事ばかりだった。

最初に感じた不安なんて、どこかへ飛んでいってしまったくらいに。

けれど・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫苑―SHION―
〜Kanon the next story〜

 

第三十七章 思い出の残る場所

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーしっ!いよいよ楽しい海での日々も今日で最後!当然ぱーっといこうかーっ!」

最後の最後までハイテンションの先輩によって、今日も朝から浜に繰り出しての馬鹿騒ぎだ。
また俺達の周りには俺も含めて騒ぎが好きなやつが揃っているのか、しっかり満喫している。

「それでは本日の特別企画よ」

ひとしきり遊んで皆で休憩しているところで先輩がまた何かを始める。

「題して!夏の海は女を大胆にする、祐一ちゃんと二人きりになってあわよくば告白しちゃおうあーんどそれをじっくりと見物しよう企画ー!!」

『おおーっ!!』

「ちょっと待てーっ!」

「じゃ、さっそく参加希望者を募ろうか」

「俺の話聞け!」

「無視。右には祐一ちゃんと二人きりになりたい人、左に見物希望者ね」

本人の意向は完全に無視されて企画は進んでいく。
力ずつで止めようとする俺は先輩に言われた舞によって取り押さえられる。
その間にもすっかり乗り気の皆が右へ左へ移動していく。

「告白組は、紫苑、綾香、栞ちゃん、名雪ちゃん、あゆちゃん、それと私もね」

「「「「えぇ〜!?」」」」

「いいでしょ♪で、見物組はその他全員・・・」

「けっ、やってられるか。俺は付き合わんぞ」

鮫島が去っていく。
ああ、俺もああやって去る事が出来たなら・・・。

「じゃ、祐一ちゃんはあちらの特設ステージへ」

先輩が指差す先には、何故ビーチのど真ん中に誰のいない空間とその中心のパラソル付きテーブル。
周りに人はたくさんいるのに、その場所だけ誰も近寄らない。
いや、それに関しては突っ込むのはやめよう。

「飲み物とか食べ物とかは佐祐理に注文してね」

「あははー、ウェイトレスの佐祐理と舞がお運びしますよー」

もはや逃げ道は存在しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

朱鷺よん♪

“厳正なる”籤引きにより、一番手はこのわ・た・し。
遠慮なく不正をしたのは秘密よ♪

私はカキ氷のブルーハワイを片手に憂鬱そうにしている祐一ちゃんの下へ向かう。
もちろん告白するために・・・・・というのは嘘。
そりゃ私は祐一ちゃんは好きだけど、あくまで弟みたいなもの。
あの子達から横取りしようなんて気はさらさらない。

私の目的は・・・。

「あなたの真意が聞きたい」

「いきなり何わけのわからん切り出し方してるんだよ」

ちょっと狙ったつもりなのにあっさりかわされてしまった。

「まぁ、後がつかえてる事だし、単刀直入に聞きましょ。祐一ちゃん、あなたは誰が好きなの?」

少し単刀直入過ぎたか、祐一ちゃんが硬直する。
ちなみに、この企画では隠しカメラと盗聴器を用意しているのだけど、私の時だけはオフにしてある。

「誰も聞いてないから、答えてほしいな〜」

「・・・この場でそれを答えろと?」

「私に答えなくても、いずれ誰かに答えなきゃならないでしょ。栞ちゃんは公然と祐一ちゃんの恋人(仮)を名乗っているし、あゆちゃんや紫苑にはしっかり告白されてるし、名雪ちゃんにもでしょ。綾香に関しても今更気付いてないわけでもないだろうし」

「そりゃ・・・・・ってちょっと待て、なんであんたがあゆとの事を知ってる!?」

「私は何でも知ってるのよん♪」

「この・・・!」

「あはははっ」

怒らせたっぽいので私は席を立つ。
あまり長く保留にしてると、機会を失っちゃうかもよ。
本人にはちゃ〜んと答えてあげなきゃね、祐一ちゃん。

「がんばっ♪」

「何をだっ!」

「時には言葉も必要って事よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名雪だよ。

こう、改まって祐一と二人っきりになると緊張しちゃうよ。
いつも百花屋でこんな風に一緒にいるはずなのに。

「イチゴサンデー海バージョンおいしいよ〜」

「そうか」

う〜、違うよ。
こんな事が話したいんじゃないのに。
普段あまり気にしないけど、自分の緊張感のない声が恨めしいよ。

「・・・ねぇ、祐一」

「なんだ?」

「こんな風にさ、当たり前の様に祐一がわたしの隣りにいるのって、いつまで続くんだろうね?」

「そりゃあ、いつか俺が水瀬家を出る頃までだろ」

「やっぱり、出てっちゃうの?」

「いつかはな。そういうものだろ」

「うん・・・そうだよね・・・」

わかってる事だよね。
祐一には祐一の、わたしにはわたしの人生があって、いつまでも一緒にはいられない。
だけどわたしじゃ・・・わたしじゃ、祐一と同じ人生は、歩めないのかな?

「海・・・また来たいね」

「受験済んだらな」

「そうだね」

子供の時みたいにはいかないね。
あの頃の半分でも勇気があればな〜。
結局告白は出来ないよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あゆだよっ。

祐一君と二人きりなんてひさしぶりで嬉しいよ。

「ねっ、祐一君」

「何がだ?」

「なんでもないよっ」

「そうか、確かにそうかもしれないな」

「うん、そうだよっ」

「おまえは食い逃げのプロを目指すんだったな」

「そうそう・・・・・って違うよっ!」

まったく、相変わらず祐一君はいじわるだよ。
でも、そんな祐一君に今日はぎゃくしゅうしてやるよっ。

「祐一君、聞きたい事があるんだよ」

「なんだよ、改まって」

「祐一君は好きな人いるの?」

「・・・また唐突に・・・」

「唐突じゃないよ。やっぱり一応告白した身としては君の心が知りたいよ」

「・・・・・あゆあゆには十年早い台詞だな」

「うぐぅ!あゆあゆじゃないもん!それに十年も早くないよっ!」

うぐぅ・・・結局はぐらかされた・・・。
祐一君って、結構秘密主義だもんね・・・。
だけど、時間はたっぷりある・・・って思いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

綾香です・・・。

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・ぷしゅー・・・」

「わっ、こら綾香、しっかりしろ!」

「はっ・・・!すいません・・・」

はぅ・・・情けないです。
いきなりショートしてしまうなんて・・・。
だけど先輩と二人きりなんて・・・。
昔は平気だったのに。
でも・・・。

「・・・先輩は、どう思いますか?」

「わからん」

「話、最後まで聞いてください・・・」

「すまん、わかった」

「私の気持ちって、何なんでしょう?」

「・・・そんなの、俺にわかるわけないだろ・・・」

「そ、そうですよね・・・あはは・・・」

当たり前です。
私の事を先輩がわかるはずはないですよね・・・。
自分の事もわからない私はほんと情けないです。

祐一先輩に対する私の気持ち・・・。
それは恋?それともただの憧れ?
紫苑姉さんや栞さんの場合は?

「・・・私って子供ですね・・・」

「確かに、その発育じゃぁな」

「体の事じゃありませんっ」

私はまだ、恋をするには早すぎるのかもしれない。
告白なんてもってのほか。
もし、いつか恋って何なのかわかる日が来て、その時まだ先輩が誰とも一緒にいなかったら、その時は告白しよう。
うんっ、それに決めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

栞です。

「・・・・・」

「・・・何難しい顔してるんだ?」

「気にしちゃいけません」

それにしてもカメラで見てたみなさんの顔。
恋する乙女でしたね。
やっぱりみなさん、祐一さんの事好きなんですね。

「しかしな・・・しかめっ面してアイスの箱を積み上げていくのはどうかと思うんだが・・・」

「目の錯覚です」

「そういう問題じゃないだろ・・・」

「幻聴です」

「関係ないし・・・」

「祐一さん」

「なんだ?」

ここはやはり、先手必勝。
一気に言いたい事を言っていくところまでいってしまいましょう。

「私は結構独占欲は強い方だと思ってます」

「そんな感じはする」

「そんな事言う人、嫌いです」

「自分で言ったんだろうが・・・」

「とにかく!私は祐一さんが好きで、恋人になりたいし、将来的には・・・・・と思っています」

さすがに先の事ははっきりと口に出すのは躊躇われました。
みなさんも見てらっしゃる事ですし。

「正直、他の誰にも渡したくないです」

「栞・・・」

「祐一さんがいたから・・・祐一さんのために、私は今ここにいるんです」

本当ならこの場に存在しなかったかもしれない私。
あのまま消えるのもいいと思っていた私に、ここにいたいと思わせてくれた人。
この先どれほど生きていたとしても、この人よりも好きになる人はきっと現れない。
だから、逃がしたくない。

「私はそんな女です。一方的な押し付けだとしても、私はこの身の全てを賭けてあなたを愛しています」

「・・・・・」

「返事は、いつまででも待っています。もう私には、いくらでも時間はありますから」

一生の内で、この私がこんなにシリアスする事があるでしょうか?
私はちょっとコケティッシュな辺りが魅力的な女の子のつもりですからね。
だからこの告白の最後も、極上の笑顔で締めくくります。
いつもらしく、顎の辺りに人差し指を当てて・・・。

「ね♪祐一さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼーっとしている。
何故そうしているのかは自分でもよくわからない。
本音を言ってしまえば照れている。普段当たり前の様に一緒にいるが、よく考えたらみんな標準を軽く上回る女の子達だ。改まって二人きりにさせられると恥ずかしい気持ちになって、ほとんどまともに会話してなかった気がする。
特に栞の告白には驚かされた。
いや、あいつが俺に並々ならぬ好意を寄せているのはいくら鈍い俺でもわかっていた。
けど、言葉にするって、こんなに力のあるものだったんだな。

「言葉か・・・」

「・・・言葉には言霊が宿り、それはもっとも簡単な呪となる」

「・・・・・」

気が付けば隣りには紫苑が座って、俺と同じ様に海を見ている。
周囲の喧騒の中で、ここだけが止まった時の中の様だ。
今の紫苑の言葉は俺に向けたものなのか、それとも独り言なのか・・・。

「恋心も一種の呪なのよ」

「そうなのか?」

「“好き”という気持ちで相手を縛る。たとえ自身が感じていなくても、それは少なからず束縛となる」

「確かにな」

言われてみるとそうかもしれない。
さっき栞の言っていた、独占欲というものとも通じる話だ。

「・・・思い出もまた、一つの束縛」

「そうかもしれない」

「でも、綺麗な思い出に縛られるのは、悪くない」

「ああ、俺もそう思う」

「楽しかったわね、海」

「・・・・・」

また違和感が生じた。
普段の紫苑ならこんな事はわざわざ口に出さない。
それほど楽しかったとも思えるが、それ以上に俺は、こいつの言葉の裏に隠されたものが感じられる。

「・・・・・」

けど、この場でそれを言葉にして訊く事は出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜。
夕食を終えて再び浜辺に戻ってきた俺達は、この旅行最後のイベント、花火大会に興じている。

「くすくす・・・行くわよ、正司」

「いいのかなぁ?」

「それ!」

パンパンパンッ

「だ、だおーっ!?」

真琴と正司によって、音の激しいタイプの花火を近くで鳴らされて、眠りに落ちる寸前の名雪がさすがに驚く。
危険なので、よい子は真似をしてはいけない、と思う。

「真琴、正司、またそんないたずらを・・・」

「「あぅっ」」

「ちょっとこっちへいらっしゃい」

「「あぅーっ」」

きっとあのまま連行されて、線香花火を前に説教くれるんだろうな。
相変わらずだ。

「おらおらぁ、ちまちまやってんじゃないわよー!」

ドバーン

「あははーっ」

「・・・綺麗」

先輩はこの時間になってもまだまだ弾けている。

「けっ、甘ぇな」

夜になって戻ってきた鮫島が手にいくつものねずみ花火を持って前に進み出る。
その先にはいくつも花火が並んでいた。

「よーく見てやがれ、これが男の花火ってもんだぜ!」

手にしたねずみ花火に一気に火を点けると、それらを地面に投げ出す。

パパパパパパパパパンッ

さらにそれらの火花が並んでいる花火に次々点火していき。

ドバババババババ
パンパンパンパンッ
ドシューーーンッ

「きゃー」

「きゃーきゃー」

「おー、やるじゃん直輝ちゃん!」

「だっしゃぁ!」

「や、野蛮です・・・」

「危ないじゃないですかっ」

この面子はほんとに最後まで騒がないとやってられないらしい。

 

 

 

 

派手なのもひとしきり終わり、最後は静かに線香花火を囲んでいる。
さすがにこの段階になると朱鷺先輩も静かだ。

「・・・綺麗ね」

「・・・・・」

俺の隣りにいるのは紫苑。
いつもと変わらぬ無表情、のはずなのに、花火に照らし出されたその顔には、普段は見られない憂いが感じられる気がして、俺はずっと訊きたかった事をようやく口にした。

「紫苑、何を隠してる?」

「・・・・・」

少し大きかった俺の声は、全員の注目を集めたようだ。
だが構う事じゃない。

「何かあったか?」

「・・・何も」

「おまえは嘘をつくのは上手いと思う。でもそんなおまえが隠しきれないほどの悩みを今持っている」

たぶん、綾香や先輩も気付いてないだろう。
だが俺は、自分の考えに間違いはないと思っている。

「・・・いつから?」

「おまえがこの旅行を考えたって聞いた時から、かな」

「そう・・・」

少し考えるような表情。
と言っても、表向きにはまるで変化は見られないが。

「・・・確かに、悩んでるかもね。話すべきか、それとも黙ったままがいいのか」

「こら紫苑」

声は俺の位置からは反対の方、先輩からだ。

「悩みがあるなら、姉さんに相談しろって言ったでしょ」

「私も、姉さんが悩んでるんなら、力になりたいです。役不足かもしれませんけど・・・」

二人とも、俺が指摘した紫苑の悩みに驚いているようだが、それ以上にこいつを心配する気持ちが感じられる。

「言った方が楽になると思うぞ」

「・・・・・そうね」

線香花火の火が落ちる。
一瞬暗くなるが、町と月の明かりが十分に俺達のいる場所を照らしているので、すぐに明るくなる。
その明かりで照らされた紫苑はいつもと違い、シリアスモードだった。

「朱鷺、綾香」

「うん」

「はい」

「・・・本家に、帰るわ」

「「っ!」」

多少の事には動じないつもりだったが、先輩と綾香はもちろん俺や他の連中もこの言葉には驚いた。

「な、なんで・・・!」

本家というのを嫌っているらしい先輩が食って掛かる。
だが紫苑は静かに続きを語る。

「御宗家が・・・お祖父様が亡くなる」

「あ・・・っ!」

今度は綾香が口元を押さえる。
先輩も紫苑の言った事に言葉を失う。

「紫苑、それは・・・」

「今度倒れたら次はない、そう今年のはじめ頃に言われてたわ。だから、今年中だとは思ってた」

あくまで淡々と述べる紫苑。
先輩と綾香は黙ってそれを聞いている。

「最期を見取って、葬儀の喪主をして、相続問題を片付けて・・・あたしがやる事がたくさんある。だから本家に戻るわ」

それが紫苑の隠していた事。
俺にとっては聞いただけの話の東雲本家。
朱鷺先輩や綾香はそこと色々問題を抱えているらしいから、そんな二人に話す事が躊躇われたんだろう。

空気が重い。
こいつら家族の問題だけに、他の誰も口を出せずにいた。
そして本人達は黙ったままだ。

俺にも何も言う事は出来ない。
所詮他人だからな。
だからせめて、明るく振舞う事にする。

「で、いつ帰ってくるんだ?」

「え?」

「本家の仕事って言っても、ずっとかかるわけじゃないんだろ?」

「・・・たぶん、最低で二ヶ月くらいは」

「なら、それが終われば帰ってくるんだろ」

「・・・・・」

俺の質問には答えず、紫苑は立ち上がってゆっくりと海に向かっていく。
全員が見守る中、再び紫苑が話し始める。
さっきまでとは、少し違う感じで。

「・・・時は移ろい、人も移ろう。けど、思い出はどれほど時が経っても変わらない。あたしは祐一と、みんなと出会って思い出を貰ったから、この旅行は、そのお返しにみんなに思い出を残してほしかった。あたし自身も、思い出を残したかった、ここに・・・」

感情を表に出さないやつが、今素顔をさらしている。
誰にも負けない強さの下に秘めた、無垢な心を。

「あたしは、生まれた時から敵に囲まれていた。だから、ずっと一人だった。それで構わなかった。
そんな中で、はじめてあたしを東雲家次期当主としてでなく接してきたのがすみれだった。それで少し変わって、姉の朱鷺や、妹の綾香に目を向けるようになった。
そして祐一と出会って、今みんなといるこの場所が心地いい。他のどこよりも」

素顔をさらした紫苑が、俺達の方へ振り返る。

 

「だから訊きたい。あたしは、“ここ”に帰ってきてもいい?」

 

人間は誰だって、自分の居場所を探すものだと思う。
こいつも同じだ。与えられた場所ではなく、自分で選んだ場所にいたいと思っている。
俺達のいる場所に、帰りたいと思っているなら・・・。

「当たり前だろ」

「恋敵が戻ってくるのはどうかと思いますけど、それ以前に紫苑さんは友達ですから」

そう答えを返してやるさ。
栞のやつは少々憎まれ口も聞いているが。
他の連中も口には出さないが、顔を見れば思いは同じなのは一目瞭然だ。

「馬鹿なこと訊いてるんじゃないわよ・・・“自分の家”に帰らないやつがどこにいるのよ」

先輩もぶっきらぼうに言い放つ。
この人の方も普段と違う面が見られるが、この方が妹への愛情を感じる。

「だとよ、紫苑。ていうか、絶対帰って来い」

「・・・・・ありがとう」

ほんの少しだったが、紫苑はそう言って笑った。
ほんとに僅かな変化だったが、俺が知る中で一番いい表情だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝。
あたしは祐一と二人だけで駅のホームにいる。

「他の連中も起こしてくればよかったのに」

「・・・いいわ。どうせすぐに帰ってくるし」

「それもそうだな」

本家の事は片付けなくてはならない事だから、あたしは向こうに戻る。
だけど、する事が終わったら、またみんなのところに帰る。
そこがあたしの居場所だから。

電車に乗って振り返る。
そこに彼の姿がある。

「・・・じゃぁね」

「おう」

また会うまで、少しの別れ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻る


あとがき

これにて、紫苑第一期シリーズ(今命名)を終了いたします。
ここまで読んでくれてありがとです。
とりあえず一時終わりますけど、話的にはまだ完結してない部分もありますので、再開はそう遠い日の事ではないでしょう。
外伝を挟んで第二期、さらなる新キャラを加えてやっていきたいと思います。
とりあえず、しばしの別れを・・・。