紫苑  白と紅の追複曲〜kanon〜

   前編





















 夢・・・・・・。
 これは夢か。
 空が茜色に染まる夕暮れ時。
 眼に映る色は、夕日を反射して同じ色に染まる白と、空よりも夕日よりも尚赤く深い紅。
 そこにいるのは子供・・・・・・少女だった。
 少女の姿を見ているのは、幼い俺。
 だとするとこれは、過去の記憶だろうか。
 夕暮れ時で真っ先に思い浮かぶ少女と言えば、あゆだった。
 けれど目の前にいる少女の髪は長い。
 昔のあゆは今より髪が長かった気がするが、この少女の髪はそれよりも遥かに長く、自分の背丈ほどもあった。
 もちろん、名雪でも、舞でもない。
 俺の知るどんな女の子とも違う。
 何故ならその少女の髪は、景色とまったく同じ色をしていた。
 髪自体が色を持っているんじゃなくて、周りの色をそのまま反射しているんだ。
 そう、少女の髪は、辺りを埋め尽くす雪と同じ、純白だった。
 記憶の内にはない、少女の姿。
 だけど俺の目は、少女の姿に吸い付けられていた。
 もっと言えば、少女の瞳に。
 彼女の白い髪が反射する夕日の色よりも、尚赤く、深い、真紅の瞳に。

 ――君は、誰だ・・・・・・?

 声なき問いかけに対する答えはなく、少女の瞳はただ静かに、俺の方へ向けられてるだけだった。
 夢から覚める。
 その時、夢で見た景色はまた、忘却の彼方へ沈んでいった――。









 3月。
 暦の上では既に春だが、現在この俺こと相沢祐一が暮らす雪の町は、ようやく冬が終わろうかという頃だった。
 この町へやって来て早2ヶ月余り、それなりに慣れてきたとは言っても身に染みる寒さが少しずつ和らいできたのは何より嬉しい限りだ。
 所々でまだまだ雪の残っている場所はあるが、太陽に直接照らされている辺りでは、もう大分雪も融け始めている。
 滑って転ぶなんてドジを踏んだわけじゃないが、道が歩きやすくなるのは良い事だ。
 前に住んでいた場所よりも若干遅いが、ちょっとずつ桜の木も色付き始めている。
 先日行われた卒業式の時には、3分咲きくらいではあったが花が咲いていて、いかにもそういう季節なのだという事を実感させてくれた。

「卒業式、か・・・・・・」

 ついでに言えば、終業式も既に終わっている。
 高校2年生が終わり、春休みが明ければ俺も晴れて受験生だ。ご愁傷様、俺。
 思えば俺がこの町へ来てから始まった2年生の3学期は、長かったような短かったような。どちらであれ、色々な事があった。とても、大きな事が、色々と――。
 7年振りに再会した幼馴染。
 食い逃げしていた少女ともやはり7年振り。
 学校の中庭でのちょっとした逢引き。
 俺に復讐しに来たという記憶喪失の少女。
 夜の学校で魔物との戦い。
 改めて並べ立てると、実にわけがわからない出来事の連続だった。
 けれどその一つ一つが、俺と彼女達にとってはとても大切な時間だった。
 みんなそれぞれに、たくさん傷付いて、悲しみを覚えて、でもそれを経て、大切なものを得た。
 そして今、そんな色々な事があったのが嘘のように平和な内に、春休みを迎えていた。
 名雪は春眠暁を覚えずを地で行く勢いで、毎日毎日これでもかというくらい寝ている。秋子さんが入院している間は、落ち着いてからもさすがに眠れない時があったようだが、退院してきてからその分を取り戻そうとしているかのようだ。で、たまに起きると走っている。3年になったら、春から夏にかけて現役最後の大会があるらしく、それに向けて頑張っている。
 真琴は3月に入った頃、ひょっこり水瀬家に舞い戻ってきた。まったく、あれだけ人騒がせな別れ方をしておきながら、拍子抜けするくらいあっさりとした帰還だった。まぁ本人も、それに天野も笑っていたからそれでいいのかもしれない。この春の目標は、天野ともども友達を増やす事らしいが、端で見ている限り、前途多難そうだ。けど、前向きなのは良い事だ。
 舞と佐祐理さんは、無事卒業式を迎えた。魔物の一件を経て、2人の絆はますます深まったようで、羨ましいくらいの仲の良さだった。佐祐理さんは比較的近場の、わりと良い大学へ休み明けから通う事になる。舞は受験はしなかったようで、今はこれからの事を考えているようだ。今まで止まっていた分、ゆっくり考えて答えを出せばいいと思う。時間はいくらでもある。
 栞とあゆは医者が驚くほど順調に快復しているらしい。上手くすれば、新学期までには退院できるかもしれないとの事で、この間見舞いに行った時は2人揃ってはしゃいでいた。とはいえ、栞はまだまだこの先も通院生活が続き、あゆはずっと寝たきりだった体を元通りにするためのリハビリがあり、ドラマのようにすんなり全快というわけにはいかないようだ。けれど、ちゃんと未来に希望があるなら、大丈夫だろう。辛くとも、栞には香里がいるし、あゆの事も名雪や秋子さんがたくさん気にかけている。
 結局、色々あったけど、最後には誰も不幸を味わう事なく、今はそう、幸せなのだろう。
 それは、喜ばしい事だ。
 だけどのその事を、素直に受け入れられない自分がいた。
 栞は件は確かに、俺の手の及ばない事だった。病気を抱える彼女と、もっと上手く接する道があったのではないかと思う事はあっても、彼女が病気になった原因に干渉する事はできない。
 でも名雪は、真琴は、舞は、あゆは。
 彼女達に悲しみを背負わせる原因となったのは、俺だ。
 俺の一方的な都合で、舞や真琴は傷付いた。彼女達の気持ちを考えようともせず、求める声に耳を貸す事もなく、仕方のない事だと勝手に決め付けて、そのせいで2人は、命まで失っていたかもしれなかった。
 名雪にしたって、あゆの事で深く沈み込んでいた俺に、あいつは手を差し伸べてくれたのに、俺はそれを振り払ってしまった。
 あまつさえ、俺はその事を、全部忘れてしまっていた。舞や真琴の事も、あゆの事も、名雪を傷付けた事も、何もかも忘れてのうのうと暮らしてきた。彼女達はずっと、どんなに傷付いても俺の事を想って、俺と待っていてくれたのに。

「どうして俺は、全部忘れてしまっていたんだろう・・・・・・」

 このところ、一人でいる時にはいつもその事を考えている。
 人間の精神は、強いショックを受けると、自己を防衛するためにその事実に関わる記憶を封じ込める事があるらしい。ドラマなどでもよく見る話だ。
 俺が記憶を封じ込める原因となったのは、やはりあゆの事があったからだろう。けれどそれだと、僅かにひっかかりを覚える。
 あゆの事があって、その後名雪を拒絶したところまで、今の俺ははっきり思い出している。
 もしも記憶の封印があゆの事で起こったのだとしたら、その場ですぐにそうなっていたんじゃないのか。
 仮に後からその事実を思い出す度に辛さが込み上げてきて、それで記憶を封じたのだとしたら、それは一体いつだったのか。
 俺の記憶がいつ失われたのか、その瞬間がわからない。
 記憶が曖昧というよりも、その部分だけぽっかり穴が空いているような感覚だった。
 だから思うのだ。

「俺の記憶には、まだ空白がある?」

 まだ何か、過去の事で俺が思い出していない事があるんじゃないか。
 そう思ってここ最近、さりげなく昔の事を名雪や秋子さんに尋ねてみたりしているが、2人が語る内容は、今の俺が既に思い出しているものばかりだった。あゆの事はもちろん、真琴の事や、たぶん舞と遊んでいただろう頃の事も話してくれていたので、2人がそれ以上何かを隠しているという事はないだろう。
 ではもう、俺は全てを思い出したのか。
 単に、いくつも忘れていた事があったから、今でもまだ全てを思い出していないのではという錯覚を抱いているだけなのか。
 いくら考えても答えは出ず、俺は日々を悶々としながら過ごしているわけだ。

「考えてても仕方ないか」

 暗く思い悩んだ顔は、自室にいる時だけだ。
 みんな、やっと大変な事から解放されて、未来に目を向けている時なのだ。
 いつまでも俺一人だけがうじうじと過去の事で思い悩んでるなんて知られるわけにはいかない。
 だから部屋を一歩出たら、ごく自然に、クールなギャグが小粋なジェントルマン相沢祐一を演じるのだ。




「・・・・・・祐一、何部屋の前で変なポーズ取ってるの?」

 部屋を出たところでクールに決めていると、名雪が変な生き物でも見るような目で見つめながら問いかけてきた。

「ふっ、これがジェントルマンのポーズなのだよ、名雪くん」

 俺はちょっと気取ったニヒルな笑みを向けながら答える。
 が、名雪はますます呆れたように首を傾げていた。

「意味わかんないよ」
「そうか。おまえもまだまだだな。ところでおはよう」
「もうお昼過ぎだよ。でも、おはよう」
「ついさっきまで寝てた奴が何を言うか。で、また今日も走りに行くのか?」
「うん、もうちょっとしたらね。休みの間もしっかり体力作りしなくちゃ。ふぁいとっ、だよ」
「精が出るな。ま、がんばれよ。俺は適当にぶらぶらしてくる」

 そう言って俺は名雪の横を通り抜け、階段を下りる。
 うん、部屋を出る瞬間に名雪の姿が見えたので思わず変なポーズを取って誤魔化してしまったが、何とか自然に振舞ってやり過ごせたはずだ。
 他の誰よりも、特にこいつの前で俺がまだ過去の事で思い悩んでるなんてところを見せるわけにはいかないからな。加えてこいつは普段ぽーっとしているようでいてわりと鋭い。一番俺をよく知っている奴でもあるから、一番気取られる事に注意しなくてはいけない相手だ。
 階段を中程まで下りた時だった。

「・・・ねぇ、祐一」

 少し遠慮がちな名雪の声が頭上からかけられた。

「ん、何だ?」

 一瞬ドキリとした内心を顔に出さないようして上を振り仰ぐ。
 名雪は上から俺の顔を覗き込みながらしばらく考え込んで――。

「・・・・・・ううん、何でもない。いってらしゃい、祐一」

 それだけ言って部屋へ引っ込んで行った。

「・・・・・・やっぱ、少しは気取られちゃってるか・・・」

 毎日顔を合わせてれば、それも仕方ない事かもしれなかった。
 それでも、少しでも心配かけないように、誤魔化し続けるしかない。
 しっかり、しないとな。

「ふぁいと、だよ」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 ・・・俺が言ってもダメだな。あらゆる意味で。




 秋子さんに軽く声をかけてから家を出る。事故に遭った時は本当にどうなる事かと思ったが、こうして何事もなかったように家にいて、いつもどおりの笑顔を浮かべてくれているとホッとする。名雪にとってはもちろん、真琴やあゆにとっても、そして俺にとっても大事な人だからな、この人は。いつまでもああして笑顔を絶やさないでいてくれる事を願う。
 特に目的があって外に出たわけではないので、本当に適当にぶらつく。
 来た頃に比べると、本当に過ごしやすい気候になってきた。
 前に住んでた場所に比べたら、まだまだ寒いわけだがな。
 しばらく歩くと、いつもの商店街に辿り着く。春休みなので、学生と思しき姿が結構見られる。
 と、そんな中に見慣れた奴を発見した。

「よう、ピロシキ」

 声をかけると、そいつはニャアと鳴いて寄って来た。水瀬家を我が家とする猫のピロである。

「相棒はどうしたんだ、おまえ?」

 問いかけると、ピロはふいと横を向く。その視線を追うと、喫茶店が目に映った。
 窓際の席に、5人組の少女達の姿がある。
 内3人は1人を囲んできゃっきゃと騒いでいるようで、半ば彼女達のオモチャにされている少女は、真っ赤になって縮こまっていた。真琴である。
 今にも「あぅーっ」と言っている声が聞こえてくるかのような光景だった。
 5人目の少女、天野はその様子を、微笑ましそうに見守っていた。落ち着いたその感じは、やはり他の子達よりもかなり年上の雰囲気を漂わせている。やっぱりおばさんくさいよな、あいつは。けど、時々笑っている表情を見ると、年相応にも見えた。
 きっと3人の少女達は、皆天野のクラスメートなのだろう。それを真琴に引き合わせて、一緒に友達になろうという集まりか。
 真琴はまだ困っている感じだが、逃げ出さないところを見ると、実はまんざらでもないのかもしれない。天野もそれがわかっているから、ああして真琴を友人達に引き会わせているのだろう。真琴にとっても、そして天野自身にとっても良い傾向だった。

「たくさん友達作れよ、と・・・・・・邪魔する事もないから俺は行くか。じゃあな、ピロ」

 ピロの頭をひと撫でしてから、俺はその場から立ち去った。
 次にやってきたのは、駅前だった。
 駅前というと、真っ先に思い浮かぶのは名雪とあゆなわけだが、今日は別のコンビを見かけた。
 舞と佐祐理さんだ。
 あの2人とは卒業式を祝いに行って以来会っていなかったが、元気そうな様子を見る限り、魔物の一件での怪我は2人とももうすっかりいいようだ。
 春休みの間2人は、今までやらなかったような色々な事をやってみたいと言っていた。
 舞はもう何年もの間、剣を持って魔物と戦う事だけを考えて生きてきた。その目的を失い、剣を捨てた今、自分がこれから何をすればいいのか見付けられないでいる。そして佐祐理さんもまた、自分の明確な将来を決めかねている。
 だから、色々な事をして、そこから何かやりたい事を見付けるのだと。
 たくさん遊んで、バイトなんかもしてみたり、新しい事を習ってみたり、とにかく何でもやってみたいと言っていた。
 あんな性格な上に不器用だから、舞は何かと苦労するだろうが、佐祐理さんと一緒なら大丈夫だろう。
 さすがに年上だけあって、あの2人は他の誰よりも早く、未来を見据えて動き出している。
 そして俺は、あの2人なら絶対に、明るい未来をつかめると信じている。

「頑張れ、2人とも」

 声をかける事はせず、俺は駅前を立ち去った。
 せっかくなので、次の目的地をあそこに定める。
 やってきたのは病院だ。
 この2ヶ月余りの間に、やたら縁が深くなった場所である。佐祐理さんが怪我をして担ぎ込まれ、舞も同じく入院して、栞がずっと通っていて、秋子さんが事故で入院して、そしてあゆはずっとここで眠っていた。
 あまり、いい事とも言えないな、病院と縁が深いなんて。
 もう舞と佐祐理さん、秋子さんはとっくに退院しているので、今訪ねるべき病室は2つ・・・・・・だったのだが、どうやら1つで済んだ。
 あゆの病室を訪ねると、そこに栞もいた。栞の方は、もう病院内ならほとんど自由に歩きまわれるくらいまで快復しているらしい。医者も呆れるほどの快復速度だって話だ。本人は冗談だか本気だか判別しかねる口調で「きっとアイスクリームに含まれる成分が、人間の自然治癒能力を飛躍的に高めてるんです!」などと力説していたが「絶対にありえない!」と断言しといてやった。
 俺がやってくると、楽しげに話していた2人の表情が、さらに明るいものになる。
 それを見た瞬間、俺は胸にチクリと小さな痛みを感じた。
 もちろん、絶対に顔に出す事はない。あゆが「お見舞いのたいやきは!?」とのたまうのに対して「そんなものはない」と返して「うぐぅ」と言わせ、場を和ませると同時に俺自身の心も落ち着かせる。
 2人の状況は、決して順風満帆とは言えなかった。
 確かに、普通のケースからすれば驚異的な快復を見せているが、それでも7年という長い年月を寝たまま過ごしてきたあゆの身体は、ひどく痩せ細ってしまっている。町で再会した、あのあゆのように元気に走り回れるようになるには、これから先、長いリハビリ生活を余儀なくされるだろうし、社会生活への復帰は決して楽なものではないはずだった。
 一方の栞は、手術には成功したとはいえ、それでも完治したとは言い切れず、この先後何年生きられるかは医者にも保証できないらしい。長くて後10年、運が良くて15年 。とても本人が夢見るように、何事もなく歳を取るというわけにはいかないようだ。
 きっとこれからも、2人は辛い思いをする事がある。それを思うと、手放しでは喜べなかった。
 それでも本人達はは明るく振舞っていた。栞などは余命の話を聞いても、「それでも次の誕生日までって言われるよりずっとずっとマシじゃないですか」と言っていた。それにそれだけの期間があれば、もっと画期的な治療法や薬品が開発される可能性もあると言う。あゆも「きっと大丈夫だよ」と根拠のない自信を見せていた。
 大変なのは確かだろうが、希望はある。だから2人とも、今こうして笑っていられるのだ。
 だったら、俺が2人の思いに水を差す事もない。
 こうして一緒にいて、時々からかって遊んで、2人の顔から笑顔を絶やさないようにすればいい。俺に出来るのは、それくらいだからな。

「じゃあおまえら、とっとと元気になれよ」

 しばらく話しこんでから、病室を後にした。
 陽は既に、西に傾き始めていた。




 そこを訪れたのは、まったくの偶然だった。
 病院からの帰り道、ちょっといつもと違う道を通った際、たまたまその場所が目に付いたのだ。
 神社だった。
 簡素な鳥居があって、そこからちょっと小高くなっている場所に向かって、石段が続いている。ざっと見ただけでも100段以上はある。
 普段ならば絶対に、この石段を見ただけで上まで登ろうなんて気にはならなかったろう。
 今日が特別だったわけでもない。
 ただ、ほんとに何となく、お参りでもしていこうか。と、そんな気になっただけだ。
 名雪と秋子さん、真琴と天野、舞と佐祐理さん、栞にあゆ、それに俺自身の事。
 数えだせば人間の望みなんて切りがないが、別にそれを全部叶えてもらおうなどとも、そもそも神頼みをしようなんて事を考えたわけでもない。
 言うなれば、自分自身が今思っている事を改めて胸に刻むための儀式、とでも言おうか。
 難しい事なんか考えちゃいない。
 軽い気持ちの、単なる気まぐれだったんだ。
 だからまぁ、とりあえずいきなり後悔した。

「ぐっ・・・・・・ぜぇ、ぜぇ・・・」

 石段を三分の二ほど登った辺りで、俺は息を切らせていた。

「くそっ・・・・・・運動、不足か・・・・・・?」

 そりゃ毎日走ってる名雪なんかとは比べるべくもないけど、舞と一緒に魔物と戦ってた時はもうちょっと体力あると思ってたんだが。

「変な気まぐれなんて、起こすもんじゃないな・・・・・・っ!」

 ここまで来て引き返すのも癪なので、根性で残りの石段を登っていく。
 結局、150段はあったと思しき石段を登り切って辿り着いた神社で俺を待っていたのは――真っ白い髪と、紅い瞳の少女だった。



















中編につづく!