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ハヤカの電気工作 ②
自作 温室自動温度コントロール装置
2018/1/10

昨年の5月頃だったか、近郊の道の駅に季節のものを買い出しに行く家内について行った時、入口前のエントランスに
蕾を付けたサボテンが売りに出されていた。株の状態やら数量からして専門の園芸業者ではなくて、
野菜のビニールハウスの一角で片手間に作られたもののようだ。

サボテンの花は大変美しいものが多いが、いざ自分で咲かそうと思ってもおいそれとは咲いてくれない。
そんな訳でつい手が出てしまった。家に連れて帰ってネットで調べて見ると、サボテンも愛好者がいて
交配で次々と新品種が作られているようで何千種もの登録種があるようだ。今回のサボテンはやはり
古くから栽培されている品種で特別なものではないようだ。


買ってきて数日で期待通り美しい花を咲かせてくれた。だがサボテンの花はほとんどのものが長くて2、3日のものだ。
花は終わって花後の管理、ネットでサボテン栽培法を調べながら大切に育てた。夏から秋にかけてはセオリー通りに
問題なかったが、晩秋霜が心配される頃になると昼は屋外、夜は玄関内へと毎日出し入れ。ものぐさオジンとしては
だんだん苦しくなってきた。そこで思いついたのが温室フレーム。ビニール張りの簡単なものならなんとかなるだろう。

設置スペースから考えて、縦120cm*横90cm奥行き75cm、3段の鉢棚が収まるものとする。ビニールは2重張りとする。
構造は木造パネル組立方式。パネルは前後で2枚、左右で2枚、天井1枚の計5枚。ホームセンターで木材とビニール
シートを買い込んできた。シート材は農業資材売り場で物色、実際はビニールではなくてポリエチレンシートにした。こちらの
方が保温性はやや落ちるらしいが、硬くて伸びたりしないのでパネル枠への張り付けがやり易いと判断した、結果は良好で
正解でした。パネル枠の両面にシートを張ることで、そのまま2重張りの温室が出来上がる。パネルをビスで組み立てれば
出来上がり。                                                                

一部設計変更したのが前面パネル。当初天板を開閉すれば良いと安直に考えてたが、高さ120cmである。鉢の出し入れ
水遣りどうするんだい。踏み台使って逆立ちするんかい。頭から逆さまに落ち込むのが関の山だぞ、と気が付いて前面の
上半分を開閉することにした。それとシート材は半透明であって2重張りだからなおのこと中が見えなくなる。面白くない。
そこで、透明アクリル板にしようとホームセンタに行ったが、アクリル板は値段が高い。どうしたものかと悩んでいたら、隣に
透明の硬質塩化ビニル板というのがあって、厚さも1mmで薄かったが値段は3分の1くらいである。これだ~ということで
開閉枠の両面に張り付けて完成。枠材は4.2cm*3.6cmの角材だがパネル接合で2本合わせだから頑丈である。   



この地域は冬季の最低気温は-3℃くらいになることもある。この容積では加温ヒーターなしではこのサボテンの限界温度5℃は
保てない。そこで熱源をどうするか思いを巡らせ、火災の安全性、植物の温度変化ストレス、ランニングコストからたどり着いたのが
「ひよこ電球」。そうです、ハヤカは古い人間でございます。またまたホームセンターへ、電材売り場に行って探したが見つからない
売り場の担当者に尋ねたが、「それ何ですか?」と言われる始末。園芸コーナー、ペットコーナーにも回ったがほぼ同じ反応だった。
ペットコーナの加温装置は、25W程度のマットタイプしか置いてない、ひよこ電球は今や「絶滅種」となってしまったようである。
う~ん それならネットでと、お得意のヤフオクで検索、ありました「絶滅危惧種」のごとく 数個だけ出てました。100Wもの 即 GET。


ひよこ電球、ガードを取り付けて保護する。温室ですから収容の植物には水を遣らなければならない。点灯中の電球に水がかかると
割れることは必定、防水対策が必要である。何か適当な筒はないか探して見つけたのがジャンボ蚊取り線香の缶。底を抜いて、
下部に通気のスリットを切って胴にする。屋根もいろいろ物色した結果、使わなくなったお皿。屋根として丁度良い。高台があるので
水が溜まるが大勢に影響なし。こうして「蓑」「笠」付けたひよこ電球加温装置の出来上がり。                      

当初100Wのひよこ電球1個 後に2セット200Wにした。所用熱容量計算については省略、計算もやれば出来るんですけどね、
一応技術者だし( -ω-)・・・   足りなければ増やしてやれば良い。




これで完成~ ということで運用開始。夜になったら電源を入れ、朝日が差して温度が上がってきたら切っていたのだが、問題は昼にもあった。
冬でも昼の日差しが強い時には40℃を越えてしまう。霜のきつい早朝には9℃くらいになり、昼は40℃では温度差が大き過ぎて、ヒートショック 
を起こしてしまう。結局、夜は加温、天気の良い日には前面扉を少し開けてやる。またまた毎日の日課が発生してしまって、ものぐさバカヤ苦痛 
 の種となる。          う~ん・・ 「何とかせんと いかんとバイ」 (やっぱり 古!)                                  

温度コントロールで加温と開閉を自動化するしかないか。昔取った何とやらで構想は直ぐまとまる。加温は温度スイッチがあればそれでOK。
開閉装置は温度スイッチと駆動装置を組み合わせなければならないから手間がかかる。駆動アクチェーターは何を使うか。マグネットプラン
ジャーもしくはモーターだなー。マグネットプランジャーなら構造は簡単だが、開閉のいずれかが通電状態になるから、ランニングコストと、電源
部の負担とマグネットの過熱も問題がある。モーターなら開動作と閉動作の時だけ電流を流せば良いから、エコだし、耐久性も心配ない。   
しかし、減速機付モーターとクランク機構の製作が必要になる。どちらもお遊びの範囲を超えてしまう。どうしたものかと思案してしまった。   

以前別件で、材料を検討したときに目にした自動車のワイパーモータのことを思い出した。DC12Vだが減速機モーターで回転アームが付いて
いる。これに押し引きのロッドを付ければ開閉出来る。DC12Vの電源を組み合わせれば使えるぞ、ということで、ヤフオクで物色することにした。

ワイパーモーター  AC-DCコンバー12V 10A  温度コントローラー 

● ワイパーモーター 2000円で落札、これがなかなか優れもので、ワイパーは動いてる途中でスイッチを切っても初期位置に収まるまで
  動き続けるように、カムスイッチ内蔵でコントロールが出来るようになっている。これは開閉装置にはもってこいで扉の閉位置が定まる。 

● DC12Vのコンバータ、電流容量を決めるのにワイパーモーターを事前に、車のバッテリーに繋いで動かしてみて、商売道具のクランプ 
メーターで電流測定をした。無負荷状態で 2.2A、木製の扉を少し開くだけだからほとんど負荷は掛からない、多くても3Aまでだろう。
ヤフオクのものはいずれにしても中国製だろうから安全を見て10A程度の容量にすることにして物色。するとどうだろう、なんとDC12V
10Aコンバータが680円出品。新品でこの値段、同種品も2000円くらいで買えちゃう。国産のメーカー品だと2万円は下らない。   

「え~本当かいな」 ”made in china ”で海外発送なんて品物、なんか怪しいなと思ったけど、取引評価もそこそこの数だし680円なら
詐欺でも口惜しくない。ダメモトで支払ってみた。2週間程見て下さいと書いてあったが意外に早く1週間程で到着。早速モーター単体で
動かして見るとちゃんと動いてくれる。モーター駆動に使うのだから電源品質が多少悪くても、電圧が多少ぶれようと問題ない。OKOK 

● 温度コントローラーも中国製、本体に記載されている文字も中国語、でも出品者は日本で、中国語の取説も日本語に訳したものを付け
    てくれているので問題なく使える。デジタル表示でON温度 OFF温度が設定出来る便利なものなのだ。これも日本のメーカものだと万はする。
 これが1380円也、2台でも3000円でお釣がくる。なんと良い時代になったことよと思うと同時に日本産業界の未来に一抹の不安。    

あと、コントローラー接点で直接負荷の入切は破損リスクがあることと、シーケンスを組むためにオムロンのリレー2台、開位置停止のためのlリミット
スイッチ、配線用の端子台、屋外設置のための防雨ボックスなど購入。製作にかかる。 部品調達の前には制御回路の設計をしているがこれは
本職ですからチョチョイのチョイ、制御盤の製作は元ラジオ少年の特技を活かして楽勝に完成。楽しくてたまらない。                 



機構部の組付け   配線完了

機構部で留意したのは、前面扉の全開が簡単にできること。工具なしで連結を解除出来るようにしなくては日々の水遣り管理が出来ない。
開閉バーはクランクアームの先端金具にはめ込むだけ、自重で外れることはない。開リミットの作動ロッドも上下はフリーにして開けるときは
持上げてかわせば良い。閉止用のスプリングは引っかけてあるだけなので外せば良い。これで従来通り全開ができる。            

 配線完了、試運転に入る。温度設定は加温ヒーター(ひよこ電球)は15℃でON、20℃でOFF、開閉装置は32℃で開、25℃で閉に設定した。
1月2日快晴11時、日差し良好、閉状態で表示デジタル温度を見てると徐々に温度が上がって行く、表示は0.1℃刻みだから31.5℃あたり
からは、秒読みの心境になる。31.8℃、31.9℃、32.0℃、グイッとレバーが押されて扉が開けられる。やったー!と思いきやモーターが止まら
ずにパタパタと開閉を繰り返す。ありゃー停止リミットの微調整をしてなかったー。電源を切って調整をする。リミットスイッチの作動はいわゆる
全ネジというネジ棒にしてあるから、ナットを回して微調整が出来るようになっている。                                 

再度、試験をする。31.9℃、32.0℃ グイッと扉が開かれ、開エンドでピタッと止まる。Good! 扉が開くと外気は10℃程だから徐々に温度は
下がって行って、25.0℃になるとグイッと閉じられた。よしよしこれで良い。加温装置の方は差し込んである温度センサーを引き出して外気に
当てるとスーッと下がって行って15.0℃でON表示が出てひよこ電球点灯、また差し込んでやると室内温度で上がって行き20.0℃でOFFに
なった。動作確認OK 完成である。めでたしめでたし。                                                  

あと確認は、早朝の極寒時間帯の維持温度であるが。1月5日の日の出前の温度、前日夕方から雨があってその水滴がガチガチに凍っている
早朝に9.7℃だったので最低温度10℃維持がほぼ達成出来ていることを確認した。加熱能力はこれくらいで良いのではないかと思っている。  
電熱コンロなど能力の大きなもので、もし温度コントロールが壊れて入りぱなしになるとドライフラワー製造機になってしまうからである。      

 閉状態  開状態

現状だと機構部が雨ざらしで具合が悪いので、ビニールシートで囲ってみたが、折角の傑作が可愛そうである。前面扉に使った硬質塩ビ板の残りが 
 あるので、これでカバーを作ってやることにした。当初、薄板なのでドライヤーで加熱してやれば簡単に曲げ加工が出来ると思ったら、とんでもなかった。
諦めてプラスチックのアングル材を使って接着剤で切り貼りすることにした。合成樹脂系の接着剤は経時変化で劣化するが持論なので、接着剤と  
ビス止併用で組み立てた。                                                                         


年末から正月も関係なしで製作に没頭してしていたバカヤの姿と、出来上がりを見た家内が
「そんな大層な仕掛けをするなら、もっと大きな温室が良かったね」って。
う~ん それもそうだけどね~ 成り行きでこうなったものだからね~
装置はそのまま使えるから大きくすることは出来るけどねー、気力使い果たしたからね~


毎日暇さえあれば、日差しに応じて自動で開閉する様子をニンマリを眺めていると、ある野心が湧いてくる。
それは若いころ、何度か挑戦して失敗を繰り返して諦めた、胡蝶蘭やカトレアの栽培開花である。
これなら出来るんじゃないかと密かに思い始めている。


完成写真


前扉全開


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