月の兎


「ねえねえ、月の兎って見たことあります?」

「そう、あのお餅を搗いているってやつ」


「昔からいろんな物語やイラストでお馴染みのうさぎちゃん、

小さい頃は満月を見上げるたびに目を凝らして探したじゃないですか」

「あれね、本当にいるんですよ」


「最近、望遠レンズを手に入れたもんで満月の夜にお月様を撮ってみたんですよ。

まあそれなりには撮れたんだけど、山脈やクレーターなんぞ地形がモロのお月様で、

その在り様は教科書通り宇宙空間に浮かぶ球形の物体であることをまざまざと実感させられましてね、

空しいと言うか寂しいと言うか妙な違和感に捉われてしまったんですよ」


「そんな気持ちでボケーっと画像眺めていたんですが、

フッと月の兎のことを思い出してね、探し始めたんですよ」

「最初に気がついたのは尻尾でした、輪郭を線でなぞって行ったら見事にうさぎちゃんが描けましたよ」


「いえいえ、私はうさぎの絵なんか描いたことありません、

それがビックリするほど上手に描けてしまったので我ながら驚きでした」

「線の画像と線なしの画像と交互に見比べると良く分かるんですがね、いたんですよ うさぎちゃんが、

いやー感激しちゃいましたよ、初めて月の兎の話を聞いてから それこそ50うん年ですからねー」


「画像にポインターを置いて見てください線描きの画像になりますから」

「ネッ! いたでしょ!」

「イヤー嬉しくてね、みんなに見てもらってるんですよ」


撮影:2006/9/8