奮闘記その1=購入前夜の悩み

日本語ワープロ専用機、しかも「親指シフト」派であった僕は、パソコン導入にあたり、キーボード乗り換えが最大の障害となったのは事実である。この悩みを富士通は知っているのだろうか。僕は、この奮闘記その1で、この経過を簡単に述べるが、実は、もっとも、いいたかったことは、「なぜ、あんなキーボードを『JIS』規格にしたのか」である。ここには、「デジタル時代」の「企業間の確執」があると僕は思う。かって、ビデオの記録方式でも、よく似た状況が起きたと記憶している。「ベータ方式」と「VHS」方式の「戦争」であった。とにかく、デジタル世界の『規格戦争』が、今後も続くとしたら、これは、もう、企業の「エゴ」ではないか。迷惑するのは、僕らである。
しかし、怒っているだけでは、なんの解決にもならない。僕は「親指シフト」の「亡霊」から逃れるために、「JIS」キーボードのバイオを買う決意をしたのである。


■1999年2月に突如として生じた事件            
                   
  1999年2月、僕の日本語ワープロ専用機がおかしくなった。実はこの愛用機は、2代目。キーボードは、富士通の「親指シフト」であった。丁度、その頃、ウインドウズ98が華々しく登場し、僕は、ついにパソコン導入に踏み切ったのである。しかも、キーボードは、「JIS」キーボードのバイオ・シリーズを選択したのである。買うまでに2カ月もかかったが、これには理由がある。定価は、24万円。ソフト・印刷機等々で、30万円ちょっとはかかった。
       
  パソコンはアメリカ生れのためか、キーボードが最大の障害になるだろう。僕が、キーボード付きの機械をかったのは、1988年のことであった。当時、すべてのワープロ専用機のパンフレットを取り寄せ、盛んに研究し、数ヶ月かかって、富士通の「親指シフト」のキーボードを選択、日本語ワープロ専用機を購入したのである。
そのころのパソコンは、MS・DOSで、非常に高価であった。「ラップトップ」タイプで、50万円はした。フル・カラーにいたっては90万円はした。NECの98シリーズが幅を利かせていた。収入の少ない僕は、当時のパソコンは、とても買えなかった。
                   
  さて、ここで「親指シフト」について、簡単に説明しないといけない。「親指シフト」は、1つのキーに2つの文字が配置され、ひらがなが3列に納まるよう配置され、日本語で使う記号類は、最上段の4列目に配置されていた。しかも、真中の列には、日本語で使用頻度の高い文字が割り付けられており(膨大な日本語を統計処理したという)、これは、使ってみてわかったが、本当にそうであった。しかもリズミカルであった。変換は、両手の親指で行う構造であり、キーボードの手前に2つの変換キーが仲良く並んでいた。親指の役割が高いので、「親指シフト」を名づけられたのだろう。これは、素晴らしいボードであった。しかし、先ほど、パソコン導入に踏み切るのに2カ月もかかったが、理由があるといった。それは、「親指シフト」と「JIS」キーボードの「選択の期間」だったのである。
                   
    ★「親指シフト」キーボード
富士通独自開発のキーボードであり、その入力の速さは、抜群であった。いかに早く・正確に打ち込むかのコンテストでは、いつも「富士通の親指シフト」キーがトップであった。両手の親指を使うので、不思議なことに疲れないのである。今でも根強い人気があり、そのホーム・ページがあることを市原市のGさんが教えてくれた。興味のあるかたは、ご覧を・・・。
http://www.oyayubi-user.gr.jp/
                   
■「JIS」=「日本工業規格」だというけれど            
                   
  富士通の日本語ワープロ専用機が故障したので、僕は早速、幕張にあったセンターに修理に出した。丁度、重要な業務に活用していたので、この故障は、死活問題であった。僕の愛用機には、実は100メガのハードディスクがあり、MS・DOSの3.1が起動できた。僕は、この領域を使って、主たる仕事のデータを管理していたのであった。故障の個所は、ハードディスクであった。受付の担当は、バックアップの有無を確認してきた。ハードディスク全部の交換ということになった。
                   
  僕は、このとき、富士通側に、「親指シフトのキーボードを掲載したパソコンはあるのか」と聞いたが、「デスクトップタイプには、別売りの親指シフト用キーボードがあるが、ノートタイプではない」とのこと。高倉健が宣伝している富士通のビブロもすべての機種が「JIS」キーボードであった。「富士通は過去、親指シフトを掲載したパソコンを売り出していたはずだが」というと、「ええ、しかし、どうしてもOSとの関係で、うまくいかないようで」とあいまいな返事しか、かえってこない。僕は、「富士通は親指シフトを放棄したのか」としつこく聞いたが、どうしようもないことであった。受付の担当者は「いちおうJIS規格ですから」ともいった。つまり「日本標準」ということらしい1999年2月、僕は、日本語ワープロ専用機を購入するときと同じ、キーボード問題に直面したのである。
                   
    ★「JIS」キーボード
これには、経過があると僕は聞いている。確か岩波新書の「日本語ワープロ」という本に、現在のキーボードに規格「統一」された経過があったと記憶しているのだが、「打ちやすい」とかの合理性にかけているように思う。幾つかの企業が、お互いに「グループ」を作って、「競い合った」結果、なんとも不可解なキーボードが「JIS」になったのである。
                   
  実は「親指シフト」と「JIS」との大きな違いは、日本語入力の方法のうちの「かな入力」の違いであった。「JIS」は、ひらがなが、1つのキーに1つ割り付けられ、4段に配置されている。ちまたでは「JISは、日本工業規格なので安心だし、標準規格になったのは、それなりの理由がある」との意見が多かった。「JISのひらかなの配置は、使いやすいようにできている」との意見もあった。しかし、どうみたって僕には「あ・か・さ・た・な配置」の一種にしか見えなかった。
                   
                   
■1999年3月「ローマ字入力」に移行を決意            
                   
  「親指シフト」も「JIS」キーボードも、「アルファベット」だけは共通であり、これは英語圏でも同じらしい。つまり、アルファベットは、英文タイプライターと同じ配列ということだ。僕は、ついに「親指シフト」を捨て去る決意をせざるを得なくなり、「ローマ字入力」を採用(アルファベットが26個しかないという単純な理由)することにした。やっと修理を終え、戻ってきた愛機の入力を、親指シフトから、ローマ字入力モードに変え、練習を開始。しかし、「親指シフト」キーボードであるから、どうしても指が「親指シフト」として動いてしまう。これは相当なストレスとなり、せっかく修理した「親指シフト」キーボードが、僕の癇癪で壊れる事態になった。超短気な僕は、「JIS」キーボードを目の前にしないと練習にならないと考え、「親指」の亡霊を葬るために、練習は二の次にして、「JIS」キーボードのパソコンをまず、手に入れる決意をしたのである
                   
    ソニーの「データ・ディスクマン」
ディスクマンを購入して、密かに「ローマ字入力」の練習をしていたのであるが、あまり効果はなかったようである。なぜなら「単語レベル」だったからだ。ディスクマンは、広辞苑・英和・和英辞典などCDで引けるというものであった。デジタル機械が好きな僕は、4万円弱の値段で通販から買った。
                   

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