1. 不正性器出血の原因
女性のライフサイクルのさまざまな時期にさまざまな原因により不正出血がおこります。10代の女性では排卵周期が確立していないための卵巣機能不全の場合が高頻度です。長期間の出血や頻回の出血は貧血の原因にもなりますので婦人科での検査、治療をお勧めします。排卵の有無を確認するために基礎体温の測定が有用です。成熟期 (18歳から45歳くらい)の女性では機能性子宮出血(ホルモンのバランスの崩れが原因の出血)の他、子宮内膜増殖症・ポリープ、子宮筋腫、子宮頚がんなどの腫瘍性疾患、炎症、妊娠関連疾患(流産、子宮外妊娠など)と不正出血の原因も多種に及びます。ささいなことが原因のことも多いですが、すぐに手術などの治療を受けないと危険な場合もありますので婦人科で原因を調べることが大切です。更年期、老年期の女性では機能性子宮出血(更年期)、萎縮性(老人性)膣炎、子宮体がん、子宮頚がんなどが不正出血の原因となります。この時期は腫瘍が原因である頻度も高くなりますのですぐに検査を受けましょう。年齢を問わず過多月経、不正性器出血が持続する場合、まれに血液疾患(血小板減少症、フォンウィルブランド病など)が潜んでいることがあるので注意が必要です。
 
2. 性感染症(STD:sexually transmitted disease)の症状
クラミジア感染症:
クラミジア・トラコマチスという微生物がセックスなどの接触により感染しておこります。最近若い人に非常に増えている疾患です。1〜4週間の潜伏期の後、黄色のおりものがやや増加する程度で症状は軽いことが多いですが、気づかないまま放置して慢性化すると骨盤内まで感染が進み下腹痛が出現します。将来の不妊症や子宮外妊娠、流産・早産の原因にもなるので注意が必要です。症状がなくてもパートナーが尿道炎の診断を受けたときは、婦人科での検査をお勧めします。
 
淋病:
病原菌である淋菌による感染により起こります。3〜10日の潜伏期の後、膿(うみ)状のおりものや、陰部のかゆみ、排尿痛、頻尿、下腹痛などが起こってきます.オーラルセックスによりのどに感染して咽頭炎を起こすこともあります。
 
性器ヘルペス:
単純ヘルペスウイルスによる感染で起きる病気です。2〜7日の潜伏期の後、外陰部に 米粒大の水疱が現れ、つぶれて潰瘍を形成すると歩けないほどの激しい痛みが起こります。妊娠中に発症すると、産道での赤ちゃんへの感染を予防するため帝王切開が必要となることがあり、とくに注意が必要です。
 
尖圭(せんけい)コンジローム:
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染により起こる病気です.感染後2〜3ヶ月して外陰部周辺に小さく先の尖ったイボができどんどん増えて大きくなります。 かゆみや、灼熱感、性交痛を伴います。再発しやすいので徹底的な治療が必要です。
 
トリコモナス膣炎・カンジダ膣炎:
トリコモナス膣炎はトリコモナス原虫という寄生虫による感染、カンジダ膣炎はカビの一種であるカンジダ菌による感染が原因で発症します。セックス以外による感染も起こります。共におりものの増量、陰部のかゆみ、痛みなどが主症状です。


(上記の疾患以外にも毛じらみ、梅毒、HIV感染症、B型ウイルス性肝炎等はセックスにより感染がおこります。セックスの後、何か気になる症状が出たときは勇気を持って婦人科で検査を受けてください。STDの多くはコンドームの使用により予防が可能です。
 
3.更年期と女性ホルモン補充療法(HRT:hormone replacement therapy)
40歳を過ぎた頃より卵巣の機能は徐々に低下します。やがて毎月の規則的な排卵も起こらなくなり女性ホルモン分泌も低下してついに50歳前後で閉経します。閉経を中心にした前後5年くらいの時期を更年期といいます。閉経が近づき卵巣から出る女性ホルモン(特にエストロゲン)の減少が始まるとホルモンのバランスが急激に崩れ、そのため自律神経系の調整がうまくいかなくなり更年期症状が出現してきます。症状は多彩で、ほてり、のぼせ、発汗、頭痛、めまい、不眠、動悸、肩こり、節々の痛み、耳鳴り、憂鬱、元気が出ない等々、まだまだ書ききれないくらいです。またこの時期には社会的、心理的ストレスも多く更年期症状をさらに複雑にしています。エストロゲン減少状態は、長い間には膣や尿道への影響のみならず骨代謝(骨粗鬆症の進行)、脂質代謝(高脂血症)、結合組織(皮膚コラーゲンの減少)にも影響を与えます。女性ホルモン補充療法(HRT)は不足した女性ホルモンを補充することで、老化に伴う女性特有の症状を改善することを目的としています。HRTを始めると1〜2ヶ月でのぼせ、ほてり、多汗、不眠などの更年期症状が改善します。最近では更年期障害だけでなく、骨粗鬆症や動脈硬化症の予防、痴呆予防など閉経後のQOL(クオリティオブライフ)の向上の面からも注目をうけています。