‘10 11月号
#64 LESSON
 D

神様 あなたは連れて行く子供を……間違えた

 自分に冷たかった父、優しかった兄・ニコラス、森へと逃げて行ったダニー…幾度となくレース中のジョニィの前に顕れた白いネズミは神の使者か悪魔の従者か…?
大統領が語った父親の話がジョニィの心を刺激した。
荒い息のもと、声を発する。
「信じるよ……」
「ヴァレンタイン大統領……」
「あんたはきっと『正しい道』を歩いている」
「あんたをそう…信じるよ……」
 ジョニィが決めたこと、我々が口を出すことではないが……。
「ありがとう、ジョニィ・ジョースター」
 無表情で礼を言う大統領。

 すると、ジョニィが半ば地面に埋まっていた拳銃を掘り出し大統領の足元へ投げる。
「その前に……その『銃』は…『あんたの銃』だ…」
「異次元からこの世界へ戻って来る時、体のどこかに隠して持って来て」
「さっきジャイロを撃って…『とどめを刺した銃』……」
「そういう事も出来る『銃』だった。そしてさっき捨てた『銃』」
「その時、弾丸は全て撃ち尽くしたから今…弾倉は空だ…一発も残っていない」
 つまりイワクツキの銃だということである。
その『銃』を試しに拾ってみろ
 相変わらずの無表情だが、動きが止まってしまう。
「僕は…あんたの『誓い』を今…100%信じる事にした。これからあんたに『逆の回転』を撃ち込んであんたの体の中の『無限の回転』を止めてあげたい」
「本当に心からそうしたいと思う」
「だが、あと『1%』信じたい
「あんたの誓いの『裏』のさらなる『裏』に『だまし討ち』と『裏切り』が潜んでいない事を…」
「その『銃』をあんたの自分の『手』で拾い上げてみるだけでいい。きっと何事も起こらないのだろう」
「……何も起こらない…それでいい…」
「何も起こらなければ全てが終る事ができる…」
「それで101%信じられる…」
「拾ってみろ」「ヴァレンタイン大統領」

 空気が張り詰める。
大統領がゆっくりと手を拳銃にのばす。しばし逡巡して手を止める。
「我が心と行動に一点の曇りなし……!」「全てが『正義』だ」
 そう呟く大統領のベルトの背中部には拳銃が仕込まれている。

 その拳銃を大統領が抜き、同時にD4Cがジョニィに襲いかかる。
大統領の拳銃の筒先が平行世界の拳銃と融合する。
ドバァ   ガンッ
 両者ほぼ同時に弾丸/弾爪を発射する。
大統領の弾丸はジョニィの腹部に命中する。だがジョニィの弾爪は大統領の喉に命中する。
血が食道に入り、大量の血を口と鼻から吐く大統領。
右拳を繰り出していたD4Cだが、大統領のダメージに対応して首が破壊され体勢を崩す。
 両者とも身体がグラつくのを耐え、再度撃ち合う!!
「クァッ」
 大統領の放った2発のうち1発がジョニィの左肩に命中する。
だが、ジョニィの放った3発は全て大統領の胸部に全て命中した!
膝をつき、拳銃を握った右腕も地に落とす。

おいジョニィ…
ジョニィ…こっちだ
こっちだぜ
オレはこっちへ…進むぜ……

 ジョニィが霞む目で声の方向を…空を見上げる。
するとジャイロの姿が空に浮かんでいる。

そうゆう事なら……
そうゆう事でいいんだ…
オレの本名は…

約束したよな……
誰にも言うなよ

じゃあな……元気でな

 そして千切れる雲のように空に消えて行く。
「ジャイロ……すまない…」
「信じたかった」「本当に…大統領を信じたかった」
「さようならジャイロ……さようなら」
ドバッ
ジョニィの最後のタスクが大統領の額を貫く。
D4Cが砕け、バラバラになり、地面に散らばり、消滅していく……。

 大地に仰向けに倒れた大統領の身体が、タスクの効果により地面の下へ埋まっていく。
異次元の物と交わった銃も消滅していく。
そして父親の形見のハンカチも地中へ…。

「ううっううううっ」「ううううううう」
あああ…うああああ…ああああああ
うわああああああああああああああああ
 残されたのはヴァルキリー、スロー・ダンサー、ルーシーそして『遺体の全身』。
そして辺りに響くのはジョニィの号泣……

 


今週のめい言

「だまし討ちと裏切り」

○結果から言うと、大統領が行ったジョニィへの説得は失敗しました。交渉決裂による銃撃戦が始まり、平行世界に逃れられず頭部を貫かれ死亡。D4Cも崩壊。これでSBRレースの裏で行われた『遺体』争奪戦も終了ということになりました。

○大統領の直接の敗因は2つ。1つは平行世界同士の銃が融合したために、その衝撃で照準がズレてしまったことです。通常の銃撃は「抜く―狙う―撃つ」に対して、3つの行動が半ば同時に行われるタスクの早撃ちは非常にゆうりです。それに対抗するための不意撃ちでしたが、狙いが外れては元も子もなかったです。

○そして2つ目の敗因はジョニィの残心にあります。警戒心を怠らず、大統領に奇襲をかけられても急所に命中させる技量とぶれない精神面を特筆すべきでしょう。

○何故に大統領は交渉をやめ、武力に討って出ることにしたのか?「100%信じる」とジョニィに言わせ「無限の回転」の解除を目前にしておきながら、何が大統領にに交渉断念を決意させたのか?銃を隠し持っていたこと?個人が自分の身を守るために銃を持つことはアメリカでは当然のことです。というか、それがアメリカの信条でありフロンティア・スピリットですから、先の詭弁と比較すれば言訳は十二分に成り立つはず。「我が心と行動に一点の曇りなし」と言った時点で交渉断念をしていたことは読み取れます。「これから卑劣なことをするが私がするからは正義だ」ということでありますから。「(銃を)拾ってみろ」というジョニィの言葉から何をかんじたのでしょうか?

恐らく大統領は『』を覗いたのです。

○大統領はジョニィが危惧していたように心に「だまし討ちと裏切り」を潜ませていたのです。確実にッ!!ジョニィが銃を拾え、触われ――つまり武器を持っていないことを証明しろと言われた時に、実際に殺意と共に銃を隠し持っていた大統領はこう思ったのでしょう。ジョニィはああは言っているが実は自分を信じていなくて、無限の逆回転を与えずに自分を撃つつもりだと。「だまし討ちと裏切り」の心を持ってジョニィを見ていた大統領が『鏡』を覗くようにジョニィも「だまし討ちと裏切り」を持って大統領を見ていると考えたのでしょう。そして一度その思考に陥った大統領は今まで自分が積み上げて来た弁舌の成果が見えなくなり、銃を抜いたのでしょう。

○D4Cも崩れ去り、そして禅譲されなかったために大統領の連鎖(バトンタッチ)は終りました。タスク・Act.4の効果により地面に埋められて行く大統領。父親の形見のハンカチも運命を共にします。『遺体』争奪戦は終わりましたが、『遺体の全身』が残りました。大統領には「ラヴ・トレイン」という現象をもたらしましたが、ジョニィにはどのような現象をもたらすのか?またはもたらさないのか?

○そしてSBRレースの行方は?愛馬スロー・ダンサーは首の傷も治り復活したが、はたして8th.STAGE/9th.STAGEを巻き返せるのか?刮目せよッ!!


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