コートを残して『基本の世界』から消えたヴァレンタイン大統領。
「最後に……来る」
「きっと……もう一度」「ここへもう一度戻って来る」
「ヴァレンタインは……」
力を使い果たしたようにへたり込んでいるジョニィ。しかし闘いへの残心はあり、警戒は怠らない。クルースも付き添うように…まさしくスタンド(傍に立つ)となっている。
「この『遺体のある』世界へ……」
そしてルーシーの様子はと言えば、かなり『遺体』から人間へと戻って来ている。意識も戻ってきたようである。
そしてどこかの平行世界。
「な…何度だ?ど…どうしても…『穴の中』へ戻されてしまう」
「何とかして…ここから脱出しなくては…この穴の中へ『埋められる事』からッ!」
穴から身を乗り出すD4C。
しかし、またもや身体が輪切りになっていく。
「よ…よく見ると…これは…ッ!」「中も回転している」
「まるで…毛穴のひとつひとつが…わたしの体の細胞のひとつひとつが…」
輪切りになって回転する身体の中がさらにグルグルと回っている。
そして外へ出ようとするD4Cを強制的に穴の中へ戻す。逆落としで穴の中へ落ちる大統領。
再びドシャドシャと土が降って来る。
『い…生き埋めだと!!!このわたしに…こんな災難がッ……!!バカなッ!!』
「さっきから何十という次元を逃げ続けているというのに…」「どこでヤツの回転が止まるというのだッ!?」
『いったいいくつの次元を越えて逃げれば…!!』『…く…苦しい…ち…窒息するッ!!』
『何とかしなくては…』『わたしの『D4C』の体内で回っている…』
「この『回転』を何とかしなくてはッ!!」
「殺さなくては……!!」「『ジョニィ・ジョースター』…絶対に…おまえを消滅させてやるッ!!」
ドギャン
次の平行世界に跳ぶ大統領。そしてD4Cを禅譲する。
「殺してやるぞ……ジョニィ・ジョースター……」
「『遺体のある世界』へ戻って……基本世界のおまえ本体をッ消せば!この能力も消える!」
この世界のジョニィには、この大統領が何を言っているのかは「?」である。
「この回転も止まる!!」
歩道の段差にしがみつき抵抗する大統領。しかしまたもや身体が輪切りになり、再び穴へと引きずられる。
「穴に戻されるッ!」
「ど…どこかにいるはずだ…この次元は『街』だ…」
「ちっ、近くにいないのか!?」
『絶対に殺してやるッ、ジョニィ・ジョースター』『必ず戻ってやるッ!』
すると馬車がガラガラと通りかかる。
『い…いたぞ…』
『この世界だ…『D4C』…いたぞ!これが通る『次元』』
『今だ…!!行けッ!!』
馬車に跳び移り、中に侵入、扉を閉める!!
輪切りが始まるが、馬車の壁に押し付けられて穴に引き戻されるのは防がれている。
「やった!!」「やったぞ!!!…距離が遠くなってる…離れて行けるッ!」
「『穴』からッ!どんどん離れて行ってるぞ…『体』が」
「これでもう戻されたりしないッ!!回転はもう終わっ…」
しかし、馬車の壁も輪切りになる。
ドパアァ!!
結局、外に放り出される大統領。
「はアアアア〜〜〜ッ」
「何だって…」「何だと」
「バ…バカな…」「馬車のドアまで…」
再び穴に戻されてドシャドシャと土が降って来る。
「バ…バカな…馬車の車体の壁そのものまで…」
「どんな『エネルギー』なんだ?こ…この『回転』は……」
『そ…そんなウソだ……』
『無限なのか…』『まさか無限なのか…?』
「うおおおああああああっ」
「そんな事がッ!うあああ…」
「まさか、わたしは『無限』に『生き埋め』にされ続けていくという事なのかッ!」
『暗闇はもういやだ…』
『いったいあと何回こんな土の中に戻されるんだ?もうこんな暗闇は…』
「このわたしにこんな事があああッ!!」「うああああ」
再び闇の中に埋められていく大統領……!
「ファニー」「お母さんこれからおまえに紹介したいお客様がいるの…こちらの方よ」
ファニー・ヴァレンタイン大統領の子ども時代。犬と4匹の子犬と戯れているファニーがお客の方を見る。
「こちらは陸軍騎兵隊大尉ヴァレンタインさん。お話を聞いて」
左ほほから唇にかけて大きな傷が目立つ軍服のガッシリとした男が話しだす。
「この『ハンカチ』……わたしはこの『ハンカチ』の話をしたくて…君に会いに来た」
「この『ハンカチ』の持ち主はわたしではなく…その人はわたしの親友でその人からわたしが預かって来たものだ……」
「彼は…何にでも『日付』を書く習慣のある男で…」
「ブーツを買えばブーツに何月何日と買った日の『日付』を書き…家具を買えばその家具に『日付』を彫刻した」
「結婚した日にはパンツまで『日付』を書き、友人たちから笑われていた」
そういって彼…ヴァレンタイン大尉は「20 SEP.1847(1847年9月20日)」と刺繍されたハンカチを見せる。
「その男は我が国の陸軍の兵士でこの前の戦争で運悪く敵側に捕まって捕虜になってしまった」「その兵士は拷問された」
「毎日のように……『おまえたちの隊は何人いるのか?』 『どこから攻めてくるのか?』 『武器の種類は何か?』 『狙撃兵の隠れている位置を地図で指し示せ』」
「答えないでいるとくり返しくり返し痛めつけられた。彼は決して答える事はなかったが、心がくじけそうになった……」
「そしてくじけそうになった時…彼は持っていたこの『ハンカチ』を何がなんでも『守る』と心に決めた」
「この『ハンカチ』には1847年の9月20日と刺繍がしてある…家族との思い出のある『日付』なのだろう」
「家族を思う事が国を守る事につながるからだ。この『ハンカチ』だけが彼の『心のささえ』で捕虜になっている苦痛と恐怖に耐えれたのだ」
「しかし拷問される時…敵側にそのままだと取り上げられてしまう」
「彼はこの『ハンカチ』をどこかに隠さなければならない…」
「取り上げられて『心』までがボロ切れのように捨てられるわけにはいかない…牢獄のどこかに隠すのはとても無理だ」
「しかも拷問される時は素っ裸にされて体中の穴という穴を痛めつけられる。『口の中』も『鼻の穴』の中も『しりの穴』の中も……」
「だが彼は『隠しとおした』、どこに隠したのか」
「最後まで隠してひと言もしゃべらなかったからこそ、わたしたちの隊は全員生き残れたし、わたしがこの『ハンカチ』をここにこうして持って来れている…」
「そして君は今7歳」「これから話す事はとてもつらくて残酷な事実だが…」
「君が男として大丈夫だと思ったからわたしは話しに来た…この話は終りまで続けなくてはならない…」
「彼はどこに『ハンカチ』を隠したのか?拷問を受けた時……」
「すでに彼は左目をつぶされていた……」
ファニーの母親が泣き崩れる。しかしヴァレンタイン大尉の話は続く。
「そのつぶされた左目を自分でくり抜いて」
「この『ハンカチ』を丸めてその空洞に隠し続けたんだ……」
「そしてこの刺繍…9月20日は君の『生まれた日』だね…」
「愛する子供の『誕生日』」
「君のお父さんだ…」
「死後、君のお父さんを埋葬する時わたしが見つけた」
「『愛国心』はこの世でもっとも美しい『徳』だ」
「子を守るため命をかけるのは動物も同じだが、国の誇りのため命をかける事が家族を守る事につながると考えるのは『人間の気高さ』だけだ…狂信者とはまったく違う心」
「君のお父さんと親友でいれた事を誇りに思う」
「さあ……」
「この『ハンカチ』は君のものだ」
形見のハンカチがファニーに手渡される。
その時のハンカチを現在、生き埋めにされているヴァレンタイン大統領が右手で握りしめている。
「『基本世界』の……ジョニィ…ジョースター」
ジョニィの右手の爪が生えそろっていく。
「ハァー ハァー ハァー」「爪弾が…『5発』…撃てるようになった」
意識を取り戻したルーシーがジョニィに近づいてくる。
「あなたは……ジョニィ・ジョースター……この状況…?」
「来るな…こっちへ…」「まだ終っていない…」
ルーシーを制するジョニィ。
「僕に近づくな……まだ…」
来た…!!
大統領が残したコートの下から再び現れる。
タスクを構えるジョニィ。
「やめろ……もういい…その『無限の回転』……」
「………わたしの『敗北』だ…『完全敗北』!もはや勝てない…『勝者』はおまえだ…」
意外にも敗北宣言をする大統領。
「だが生きている『次元』の『ジャイロ・ツェペリ』もいる。ここからは『取り引き』だが…わたしならこの場所へ『ジャイロ』を連れて来れる」
「可能なのはわたしだけだ」
「もしわたしがこのまま『死ぬ事』になるなら…」
「それはもう永久に失われる事になる」
「ジャイロはもう二度とこの場所に戻ってはこない……が」
ジョニィはこの取引を受け入れるのか!?次号を刮目せよ!!
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