‘10 08月号
#61 LESSON
 A

「ジャイロはこのために…」
「『LESSON 5』はこのために…ありがとう…」
 ジャイロの身体が海に沈んでいく。大西洋が近づいている。
ありがとうジャイロ、本当に…」「…本当に……」
ありがとう…」「それしか言う言葉がみつからない…」

 愛馬スローダンサーに蹴られて宙に浮いたジョニィがタスクを構える。
「自分の体を自ら馬に蹴らせて…回転に『馬の力』を……」
「光の中へ戻れ…『D4C』…すぐにだ…」
 そして乾坤一擲の一発が放たれるッ!!
「『D4C』光の中へ隠れろォォオオオッー――」
『スキ間』の中へ.戻るD4C。窮極タスクが次元の壁に当たる。 

ボオ

 衝撃が次元の壁を貫通して大統領とD4Cの顔に幾筋もの切り傷が刻まれる。
そして壁の表面にクルースが…
「うおああああっ」「う…ひっ付いてる……」
「な…んだ」「これは!?」
「ジャイロ・ツェペリの時と同じだ」
「このエネルギーの『形』、アフリカとか中国とか地球の裏側へ飛ばされずこの壁にひっ付いて入って来ようとしている」
 クルースが光の壁に両手の指をさしこんで力まかせに開けようとしている。
「い…いやそれ以上だ。こじ開けようとしている」
「『新しい力』…これはジョニィ・ジョースターの『スタンド』だ…」
「クッ…くそっ…まずいぞ…」
「ジャイロの時は『楕円球』の回転だった…ジョースターのこれはおそらく完全なるさらにその上の回転!」

チュ…」「チュ…チュミミィイイン
 ついに左肩をこじ入れるクルース。
「このスタンド何をする気だ?」
「光の壁を越えて来て何をする気だ?」
「この中へ入って来てその腕を伸ばしてこのわたしに何をする気だ?」
『この場所はまずい。ここはこの場所から逃れた方が良さそうだ…』
『この光の中に隠れているだけでは駄目だ。さらにもっと奥へ逃げよう』
『この『場所』の……無数にあるさらに隣の…次元へ…逃れて隠れなくては…』

「『爪(タスク)・ACT4』だ」
 ジョニィが呟く。
「『生け贄』は……ヴァレンタイン大統領!」
「どっちになると思う?」

 上半身をこじいれるクルース。
「くそ…入って来たッ。奥だ『D4C』……!!奥へ行くぞ…」
 しかし時機は遅かった!!
オラオラオラオラオラ
 出た…ついに伝説のあのフレーズ!ラッシュの掛け声!
グシャア
 左拳が右顔面を捉えるッ!
「オラオラオラオラオラオラアッ」
 さらに続くラッシュを貝のように両腕を締めて、丸まってガードするD4C。
他の平行世界に逃れるべく、脱いだコートを被る大統領。
しかしその隙をつき、クルースの右拳が大統領の左脚脛(すね)を直接砕く。
「うぐあぁっ」
 さらにコートの上から追撃のラッシュを浴びせるクルース。
ドワンッ
 ついに地面に大穴が空く!!しかし大統領の姿は見えない…他の平行世界に逃れてしまったようだ…。

「ガボォッ ガボッ」「こ…ここはッ!!」
「うぐああおっ!」「ここは地面の……中」
「地中だ…息が…!!」
 やはり地面に殴りつけられた影響であろう、ワープ先がとんでもないところになっている。
「ど…どこだ!?探せ『D4C』…」「このわたしを」
「…早くっ…探せッ!」
「うぐあおおお……ああっ」「この新しい世界のヴァレンタインはどこだ!?」
 土中のヴァレンタインの呼吸が今にも止まりかける。
しかしD4Cがこの世界のヴァレンタインを見つけ出し、無事に禅譲される。
「…いた……新しい世界のわたし…『D4C』は移動した……」
「…あぶな……かった!」
 ジャイロの鐙回術(SBR21巻より“ボール・ブレイカー”と命名されている)により老人となっていた大統領は地中で息絶える。

 この世界でも大統領はジョニィと闘っていた。
この平行世界ではジョニィの右足が切断されている。傍らによりそっているルーシーも『遺体』でない。クルースも前段階のヴィジョンである。
ただし…ジャイロの姿は見えない。
「……(理解した)……」
「すぐに『戻って』…遺体の部位以上にバラバラにしてやる」
「絶対に許さん…『遺体のある世界』のジョニィ・ジョースターだけは…」
「殺してやる…」「『遺体』がどれほどの価値があるかもその意味を理解もしていない…」
「あのとるにたらない小僧の存在だけは…」
「『次元の壁を越えた』だと…!あの『爪弾』の存在…!!許す事は出来ない!」
「今、ヤツの馬は殺った……馬のパワーはもうない…」「指の爪弾が再び生えそろう前の今!」
「今、あの『回転』は終わりだ!」
「戻ってすぐに殺してやるッ……!!」
 脱いでいたコートを拾う…すると爪先がグルっと180度回る。
一瞬、事態の把握にとまどう。すると……

ズバ ズバ カシャ カシャ ズバ カシャン グルウウウー―ッ

 D4Cの身体が次々と輪切りになっていく。まるでゆで卵スライサーに掛けられたかのようである。そして180度回転する。
そしてスタンドの異常事態は本体にも及ぶ。大統領も輪切り回転が起こる。
「うおお!!」「こっ…これはッ!」
 そしてD4Cが後方に走り出す。つられて大統領も引っぱられていく、大統領の意思でないことは明らかである。
ポッカリと空いた大きな穴にそのままダイヴするD4C!
そして何の現象か?土がドサドサと降り注いで大統領を生き埋めにしようとする。
「何がッ!うぐあ」「これは何が起こっているッ!わたしの『D4C』が…」
「『D4C』ッ!穴からはいあがれッ!」
「上へ登るんだッー――!!」
 穴の縁に手を掛けるD4C…しかし再びあの輪切り現象が!そして今度は上下に引っくり返る。
そして同じく大統領も輪切りになり、穴底へ叩きつけられる。

「かっ!!」「くあああっ」
ガバ ガバ ガバッ
『これは……!!』『『穴の中』に戻された…!?』
『体が回転して…!?穴の中に自分で戻ってしまうぞ』
『ジャイロの『鉄球』の時は皮膚が老化した…今度はいつのまにか体が回転している』
『体内で細胞のひとつひとつが回転して…』
 そんなことを考えている間に土が容赦なく降ってくる。
『ジョニィのスタンドの攻撃をくらってしまったからか』『行動する方向が変わるかのように…』
『ヤツのパンチをくらってしまったからか…!!』『これは『後遺症』!!』
『くそっ!息が出来ないッ!』
 もはや全身が埋まってしまっている。
『このままでは『生き埋め』になってしまうッ!』『この世界にいる事はもう駄目だ。脱出しなくては…』
『だがなんて事はない』
『『土』と『土』の間にはさまっている。はさまっているなら好きな世界へ逃れられる』
『そして新しい『次のわたし』と入れ替われば……』
『良いッ!!』

 別の平行世界に跳ぶ大統領。さっそくD4Cを禅譲する。
「どうした?それは何だ?何をしている?」
 新しい大統領が半分埋まっている大統領に声を掛ける。
「始末しろ」
「殺せッ!基本世界のジョニィ・ジョースターをッ!」「始末しろッ!」
「『遺体のある世界』のジョニィをだッ!急げッ!」
「おまえがすぐ戻ってジョニィを殺すのだッ!!」
 この世界の大統領もジョニィと闘っていたようである。ルーシーが側に連れ添い、ジャイロの姿が見えない。
「『理解』した…」
「『遺体のある世界』へ行けばいいんだな」「ジョニィを殺す」
「このドアにはさまっ…」
 ドアの取っ手に手をかけた途端…D4Cの輪切り回転が始まる。
そしてもちろん大統領にもその影響が出る。
またもや穴の中に落ち込むD4Cと大統領。先程の大統領と共にまた土に埋もれていく。
「『D4C』…」「まさかおまえ…『D4C』!!」
「!!」
「ジョニィ・ジョースターからのダメージがッ!」
「まさか…おまえに付いて来ているというのか!!」

「これはジャイロの不完全な楕円球のとは違うッ!!」「これはどこまで?」
「どこまで続くのだ!?」


今週のめい言

「ありがとう…
 それしか言う言葉がみつからない」


感謝…!友に、親に、仲間に…やがて逆境にも、そして自分を襲う敵にも。LESSONのテーマは感謝であろうか?例え敗北すれども、後に闘うジョニィの勝率をあげるために果敢に挑んだジャイロ。ありがとう…そしてさようなら。

「馬のパワー+回転術」=「鐙回術」は単に馬を走らせて馬上から鉄球を投げるというものではない。馬の走行姿勢(フォーム)を黄金長方形としたそのパワーを鐙(あぶみ)を通して自らの黄金回転の鉄球投擲に加えるというものです。その結果、生み出される鉄球は重騎兵を相手には強固な盾と重厚な甲冑を砕く。そして断絶された空間の壁にも有効に作用します。その能力の名は「ボール・ブレイカー」。

○対してLESSONを元に行われたジョニィの鐙回術はどうか?黄金長方形の姿勢どころか首を切られて倒れた死に体の姿勢で蹴飛ばされてもそれは黄金回転にはつながらない。これは鉄球の回転によって馬体が動いたところがミソなのでしょう。回転術によって蹴り出されたパワーは、そのままジョニィに「黄金回転のパワー」を伝えます。そのパワーをさらに爪を黄金回転させることに利用して「タスク Act.4」を完成させたと推測されます。

○つまり、ジャイロとジョニィの鐙回術は「黄金回転に黄金回転を相乗させる」ことと「馬のパワーを利用する」ことにおいて共通しているが、実は微妙な差異があります。LESSONの真意とはこの差異を教えることだったのでしょう。

○「小さい頃はあんなに可愛かったのに…」という両親の気持ちがボンヤリとわかります……あんなにゴリゴリとしたクルースを見ると。『遺体の左腕』の聖霊として登場したが、ジョニィと旅を続けるうちに『遺体の左腕』にではなくジョニィ自身につくようになる。そしてタスクの成長と共に可愛くなくなってくると……。ついには接近パワー型タイプとなりクルース自身の拳でD4Cをゴッツンゴッツン殴っています。小さい頃はあんなに可愛かったのに〜〜。

○クリーン・ヒットはD4Cの顔面への一発だけのように見えますが、D4Cへの効果は次元を越えて作用し続けます。距離という概念を越えて能力射程は無限大です。

○「生け贄」の話をしている時にジョニィに土を掛けていたことの因果応報のように、地面に空いた穴の中で生き埋めにされ続ける大統領。鐙回術タスクによりD4Cには「穴に落ちて生き埋めになり続ける」という行動を繰り返すように能力を刻み込まれてしまいました。大統領がD4Cを他の平行世界のヴァレンタインに禅譲してもその効果は終わらず、次から次へとヴァレンタインを生き埋めにし続けます。

○行動を操られる瞬間、ゆで卵スライサーに掛けられたように輪切りになったかと思えばクルクルと回転して穴の中に落ちていく。D4Cのヴィジョンが変わったのは、この輪切りを描きやすくするためなのではないだろうか…とも思えるデザインです。ホルマリン漬けになったソルベもビックリです。

○この能力を終わらせるのは実に簡単です。大統領がD4Cを禅譲するのを止めればいい。「ナプキンをとってこの世のルールを作る」という野望を諦めれば……安らかに眠れます。それでも無限の地獄を続けるか…?

○ところで、馬の交換が禁止されているSBRレースにおいて馬を失うことは失格を意味します。ジョニィの愛馬スローダンサーの首の傷が浅いことを祈るのみであります。まさか代わりの馬を平行世界から連れてくるわけにもいかないだろうし…。大統領との闘いも気になるが、SBRレースの先行きも大いに気になります。

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