‘10 05月号
 #58 正義と邪悪D 


 自分の左耳が千切り落ちていることに気づく大統領。そしてジョニィの接近も察知する。

 荒い息の下、ジョニィが最終決着の地へ鉄球を届けるべく脚を進める。
「馬を使った『黄金の回転』は確実にあり…今!大統領もそれに気づいた…」
「ジャイロのところに『鉄球』は一発しかない…もし、はずしたら終わりだ…2度はもうない!」
「馬から攻撃される!…ジャイロは今、それを知らない」

「『馬』か…」
 再び『スキ間』の中に身を沈める大統領。
「ここから先は…」周囲を見る大統領。『波…』
戦局でいう所の…『一手』だな…」
「『一手』見誤った者の敗北という事か…」
「ジャイロ、おまえの方か…」「わたしの方ではないがな…」
 ヴァルキリーの歩を進め鐙回術(回転+馬のパワー)を繰り出そうとするジャイロ。
しかし、大統領の姿が徐々に消えていく。……そして完全にこの世から消滅する。
 肩を透かされた形のジャイロだが、周囲を旋回しヴァルキリーの脚を止めない。

『大統領は『何か』と『何か』に挟まった時に隣の次元へ行けるッ!』
『今は『地面』と『海水』の間に挟まった……!!』
『『隣の世界』だろうとこの土地ッ!この場所では…!』
『大統領はこのままだと『帰って来る時』に必ず溺れるッ』
『ずっと隠れ潜んでいるわけにはいかない…この海水の下から攻撃してくるッ』
『どこからか……!!』
「すぐにッ!必ずッ!」
 その時、ジョニィが叫びながら近づいてくる。
「ジャイロォッ!!大統領はすでに『知ってる』ぞォー――ッ」
「『回転』の事をォォヲヲヲー――ッ!!」

 ジャイロが気づく!海の中に大統領が居ることを……しかも2人!!
『大統領が一度『多次元』に行ったなら…そこには『何人』もいる!……どっちだ!?』
『右のヤツかッ!?左のヤツかッ!?どっちを倒す!?』
『どっちが『本物』だ?すぐに決めないと…』
『まずオレの『馬』を攻撃されるッ…』
 鉄球は1個。そしてチャンスは1回、時機は短い。瞬時に決めなくてはならない。
再びジョニィが叫ぶ。
『耳だッ!ジャイロ!本物の大統領はさっき『耳』にダメージを受けているッ!!』
 声と同時に大統領が海から飛び出してくる。
「………『耳』」『耳!』
『こいつだ……』
 耳を損傷している大統領は左だ…。
「いや…『違う』!」「『本物』はスタンドがそばにいるヤツだ…」
「『耳』のヤツとは限らない…『多次元』で他のヤツと入れ替われる」
『スタンドはひとり『一体』…わざとジョニィの『叫ぶ声』を…大統領はすでに計算に入れている』
『ルーシーの皮膚にヒビが…方向は』
うしろだ…
 大統領が接近したことで『遺体』となったルーシーから引き出された能力が、逆にスタンド使いの大統領の位置を指し示していたのだ。

ドグシャアアッ

 後ろに居たD4Cに鉄球を投げつけるジャイロ。それを左手でガードする…が!
しかし回転が止まらない鉄球が左手の指を引き千切る。
「うああっああ」「ぐああっ…」
「『D4C』ッ!!光の中へ身体を隠せッ!!」
 左手から跳ねた鉄球が今度はD4Cの左顔面にぶつかる!
顔面にダメージを受けつつ『スキ間』の中へ入るD4C。
しかし、鉄球から溢れたエナジーが小さな人型を形作る。スタンド?
その小人が大統領に向かって飛び込んでくる。
『バカなっ…これは…』『わたしの『D4C』以外で『次元の壁』を越える『力(エネルギー)』がこの世に存在するなどとは……』
 すると大統領の左側面の髪が抜け、歯が落ち、皺が現れ、身体が痩せていく……。
『何だ…!?これは…?いったい…なん…だ……?』
『ただの『エネルギー』ではない…』
『『次元の壁』を越えていったい何が『しみ出て』来たのだ…』
『この鉄球の『回転』はッ!!』
 後ろに吹き飛ぶD4Cと真の大統領!
ジョニィも喜びの雄叫びを上げる。
「やったぞッ!『黄金の回転』だッ!炸裂したッ!!」

 しかし安心するのはまだ早い。
ジョルノは警戒心を残しており(これを「残心」という)、囮の大統領の動きにも余念がなかった。
D4Cに命中して宙に浮いていた鉄球を掴むと右の大統領に投げつける。
拳銃をブッ放すが鉄球も命中する。
左の…耳が欠けている大統領も拳銃を構えるが、鉄球の効果で右の大統領が左の大統領を撃ち抜く!
筋肉を支配された大統領はそのまま自分の額を撃ち抜いて命を閉ざす。
「か…勝った。お…終わったぞ」ジョニィが叫ぶ。「勝ったぞッ!!」

 鉄球を受け取ったジャイロが、不穏な空気を感じたのか真の大統領の方を振り向く。
「『一手』…」「『一手』見誤ったのは……どっちか……?」
「……わたしの方ではない」
 喜んでいたジョニィに冷水を掛けるように大統領が起き上がる。
「『D4C』」「た…立ち上がった…」
 そしてジャイロの脇腹に銃痕が。大統領の銃撃が急所ではないとはいえ命中していたのだ。
「来るか…その『鉄球』、もう一撃」


今月のめい言

「一手見誤ったのは…
 どっちか…」

○「鐙回術(馬のパワー+回転)」がついに大統領に命中するッ!!命中したD4Cの左手を破壊し、さらに跳ねて左の角が崩れるくらいのダメージを顔面に与え、『スキ間』の中に居る大統領には次元を越える不可思議なパワーで左半身の老化(?)を誘発させる!

○『スキ間』の中に潜んでいた大統領を襲った鐙回術の未知なるパワーが次元を越える際、エナジーが小さな人型をとりました。鉄球でスタンドにダメージを与えられることやジャイロがスタンドを視ることができることから、スタンド使いではなくともジャイロには何らかの霊的パワーがあることは確定していましたが、さらにそれを証明した形です。とりあえず、あのヒューマノイドがスタンドかどうかは保留しておきましょう。

「大統領が自分の耳のダメージと馬を利用した未知の攻撃の存在に気づく」ことを勘付いてジャイロに報せようとするジョニィ。

「自分が耳のダメージと馬を利用した未知の攻撃の存在に気づくことをジョニィが勘付いてジャイロに報せる」ことを予測する大統領。

「大統領が自分の耳のダメージと馬を利用した未知の攻撃に気づくことをジョニィが勘付いてジャイロに報せることを予測した大統領が裏をかく」ことを読み切るジャイロ。

○これだけの心理的攻防を経て、大統領に次元を越える一擲を命中させたはず。しかし大統領は「一手を見誤った」のはジャイロの方だと言う…どうういうことか?

○ジャイロの裏をかくべき、1度「平行世界」に身を移し左耳を落とした大統領(以後、虫喰い大統領)を含めた3人でジャイロを襲った大統領。真の大統領は鐙回術で吹っ飛び、他の2人は拳銃で応戦するが結局やられてしまいました。しかし、1発の弾丸をジャイロの脇腹に命中させることには成功。急所には当たっていないようですが、この怪我/流血が大統領のさらなる一手に関係あるのでしょうか?

○大統領のダメージはD4Cの禅譲で命があればどうにでもなります。つまり大統領にトドメをさせなかったのが「一手見誤った」ことなのではないでしょうか。ジャイロの投げつける鉄球を今度はガードではなく「平行世界」へ送り武器を奪い、次に愛馬ヴァルキリーを狙う。しかしここでジョニィが運んできた鉄球が役に立つのでは……。佳境まっただ中!次週も刮目せよッ!!

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