‘10 04月号
 #57 正義と邪悪C 


「ハア ハアッ」「ハア ハア」
 左手を切断されたジョニィが荒い息ながらも、ジャイロと大統領を追いかけようと身体を起こし、ジャイロの投げ落とした鉄球を掴み、馬に近づく。
「『海』が…」
「せまっている……大西洋が…」

 すっかり海にとり囲まれるジャイロだが…
「海がせまっているがルーシーの周りで止まる」
「ルーシーの呼吸や…肌の感じが…さっきよりももっと戻ってきている」
「ヤツから離れれば離れるほど……ルーシーは助かる可能性がある」
「だが、このまま……あのヴァレンタインから逃げ切ろうとは考えない…」
「さっきから地面とともに『海』がどんどんこの『ルーシー』の場所にせまって来ていて」
「近付いてくるこの地面や海水が地球のどこへ行くのかは知らないが…」
「いずれ『ルーシー』をとり囲む事は知っている」
「だからだ…」
「馬をこの『海』の方向へ走らせたのは……あえてだ…」
この水際ギリギリの場所であの『ヴァレンタイン』と決着をつけるッ!
 ジャイロが馬の足を止めたのは、ここで決着をつけるためであった。

「周囲が『海』である事の方がおそらくだが…このオレにとって有利だ」
「大統領の能力の『あっち側の世界』とは何なのか?…まるで理解出来ないが…だがしかし、このオレを殺そうと攻撃する瞬間は」
「必ず腕を『光から外』へ出す」
 再三ジョニィを襲ったD4Cの傾向を読んだジャイロ。
「必ず『こっち側へ』スタンドを出して来なくてはオレを攻撃できないのは確かだ……ならば闘う『場所』が今みたいな『海』であるなら…」
「ヤツが突然『向こうの世界』へ姿を隠しても…」「こっちに戻ってくる時は海の中に戻って来たら溺れるだろう…」
「向こうの世界の地形の形がたとえ無数にあってもそれが『光の中』であったとしても」
「ヤツがこの海の中の『位置』に戻って来たら周りが水で溺れる事は確かだ」

 ジャイロが馬の脚を止めたため、徒歩の大統領との距離も徐々に詰まって来ている。
「姿を消しても戻って来れる場所はここなら狭いぞ」
「次に現れてオレを攻撃するため動ける場所はこの狭い地面のどこかだけだ」
「そして、その時オレがヤツに『鉄球』をブチ込めるチャンスは……」「『でかい』!」

 そしてついに、大統領は光の線…空間の『スキ間』の射程に踏み込む。
「さっきから……ジャイロ・ツェペリに対するひとつの疑問は…」
「『馬』に乗っている事だ」
「このわたしとの距離が近づけば近づくほどルーシーの『光』の線の中へ『正確に深く入れて』……」
『『D4C』はさらに無敵なるのを知っているというのに。この状況…しっぽを巻いて逃げ切るべきなのに…』
『今もだ』
『『ルーシー』をその場所に置いてすぐに遠くへ逃げ出せ』『おまえの周りは『海』で囲まれるぞ…』
『そこだけが…疑問だ…』
『おまえが馬で向かって来て、その命中しない『鉄球』を繰り出す事に『何』か意味があるというのか?』
「だがジャイロ・ツェペリは夢や理想だけを追い父親ぶる事に幸福を見るスティーブン・スティールとは違うタイプの男」
「行動に理論的な意味のある男、育ちと修練に起因するゆるぎない自信がある」
「『何』か…」「さっきから不気味だが『何』をしようとしている?」
 ジャイロが身体の前で抱いていたルーシーを背中に回す。臨戦態勢である。
大統領もその歩みを止めて、緊張感が張り詰める。

「ハアーッ」「ハアーッ ハアーッ」
 愛馬スロー・ダンサーによじ登るジョニィ。スティール氏を一瞥するが、今は助け起こしている暇はない。
「ジャイロ……!!」
「誰も見た事のない…『黄金長方形』のパワーは確かにある…」「う…うう」
「その存在は…確かだ…!!」

 一陣の風が吹く。その時、大統領の耳に「カサカサカサ」という音が聞こえる。
その音が落ちた耳たぶの痕から発せられているとは思いもしなかった大統領。
そして気付く。
「……!!」「何……!?」
「何だ……!?」「……!?」
「まさか…!!」
 思い当たるのは先程のジャイロの鉄球の一投だけである。
「こんな事が…何だと…いつ!?わたしの……!!」

 再びジョニィ!!
「(今のジャイロも知らないが)大統領の『左耳』は落ちた…」
「確かに『黄金の回転』の未知なる影響で……大統領は痛みや落ちた事にさえ気づいていない程の何らかの力(パワー)!」
「しかし、だがジャイロ!次の鉄球の攻撃はまったく違ってくるぞ…」「今ッ!」
「大統領が自分の『耳』へのダメージに気づいたら…もし『耳』が落ちている事をヤツ自身が理解したなら」

 理解した大統領。しばし呆然。

ドガラッ ドガラッ ドガラッ
 愛馬ヴァルキリーを疾駆させ大統領に突っ込むジャイロ。
「大統領までの走行距離は十分だぜ…『鉄球』も一発ありゃあ十分!!」

 ジョニィ!
「次は違うッ!」
「さっきは大統領は『何も』『回転』の事を知らないから『鉄球』を投げさせた」
「だが今…自分の『耳』へのダメージに……(きっと気づいている)」
「『馬を使った回転』の事を!(疑われているならッ!)」

 ジョニィの言うとおり大統領は気づく。
「『馬』か…それか…ジャイロ・ツェペリ」

 ヴァルキリーの走行形(フォーム)も『黄金長方形』となり、鉄球のを構えるジャイロ。
しかしジョニィは不安を叫ぶ。
「『鉄球』は一発だけじゃあたりないッ!」
「ヤツはもう『鉄球』を二度と自分に向かって投げさせたりしない!」
まず『馬』から殺されるッ!


今月のめい言

「ヴァレンタインと決着をつける」

○ルーシーを中心として縮地する。それは海にも適用され、大西洋が迫ってくる。ただし、ルーシーの周囲数メートルで空間の割れ目に水が落ち込むため、ジャイロが溺れることはない。逆に、平行世界からの奇襲を封じる効果もあり、これはジャイロに有利である。そして、おそらくわざとであろうが大統領に再び『スキ間』に入らせる。『スキ間』に入れば「攻撃は全く受け付けず無敵」という考えが大統領にはあり、それは油断につながる。油断しているところへ目掛けて亜空間を貫く鉄球をぶつけるためにファイナル・アタックを仕掛けるジャイロ。

○左手を切断されるも、致命を避けて再び立ち上がるジョニィ。ルーシーを守りながら、大統領との決着をつけようとするジャイロに対して準備が足りないと心配するジョニィ。ジャイロの投げた鐙回術(馬のパワー+回転術)の二投目が大統領の左耳を引き千切ったとはいえ、大きなダメージを与えていない。それどころか大統領の油断を拭き払ってしまう恐れがある。事実、大統領は未知の攻撃に自分が晒されていることに気づき、その源が「乗馬」にあることに勘付いてしまった。ジョニィは「鉄球が1個では足りない」と直感し、鉄球をジャイロに届けるべく、重傷の身体に鞭打って愛馬に乗りこむ。

○先程はジョニィのアタックをジャイロがサポートしていましたが、今度はジャイロのアタックをジョニィがサポートするスタイルになるようです。2個の鉄球とジョニィのタスクが総動員される攻撃がされるかもしれません。鉄球を鉄球で跳弾させ、その鉄球の軌道をタスクの爪弾で曲げて、もう1回鉄球を当てて…等々。

○同じ号に「JOJO通算100巻」記念特集と「岸辺露伴 ルーブルに行く」が掲載されています。付録として「JOJO 100.5巻」もついてたりと至れり尽くせりです。時間がないので割愛させてもらいます。

○SBRでは馬への攻撃はある種のタブーではある。しかし、攻撃の手が愛馬ヴァルキリーに及びそうな雰囲気になってきました。大統領の行動がジャイロの逆鱗に触れ、勝負の行方を左右するかもしれません。刮目せよ!

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