‘10 03月号
 #56 正義と邪悪B 


多次元の間を『行き来』できるのはヴァレンタイン大統領と
その能力『D4C』だけである
その他の者は『D4C』がそうしない限り次元間を移動できない
しかし…自然界においてこの『D4C』の能力以外のものでひとつだけ
多次元間を移動しているものがある
それが『重力』という力である
もし『重力』という『引っぱる力』がなければ
大統領の肉体が次元間を移動した時―――
その人間としての形や心の力のつながりが
保つことが出来なくなってバラバラに崩壊して
いろんな次元に飛び散ってしまうからである
つまりヴァレンタイン大統領と『D4C』が多次元間を移動する時
―――目には見えない―――
『重力』という力も大統領といっしょに移動していると考えるべきだ
ここで仮に……
異次元空間にいる『D4C』を倒す事の出来る力がこの世にあるとしたなら……
それは『『重力』という力』であるはずなのである
この『『重力』という力』を自由に生み出せて、もし『D4C』にぶつける事が可能なら……

どんな次元もきっと突きぬけて行くだろう……
……そして それはこの世の誰も見た事のない『現象』……


 舞台は再び戻る。

 ジョニィの左手首がD4Cにより切断された!
馬のパワー+回転術(以後、鐙回術と記す)により為されたはずのアルティミット・タスクの弾爪はかすりもせずに…。
右腕で首を掴まれスローダンサーから引きずり降ろされるジョニィ。
ゴッ 
 ジャイロが鉄球を投げつけるが『スキ間』の現象により「運悪き赤の他人」に害を押し付ける。(恐らくインドの地において、馬車が暴走し少なくても2人が死んでいる)
鉄球が傍らに落ち、D4Cの手刀が振り下ろされようとした刹那…!
「!?」眼の端に大統領が何かを捕える。
『何だ?ネズミ…か…『白いネズミ』?…今のは…寄ってくる地面とともに近付いて来たのか……』
 するとクラッチしていたD4Cの 右手が外れる。それどころかジョニィからドンドン遠ざかる方向に移動している。
「引っぱられた…!?」「引っぱられて……移動している…」
「『光』が列車の方へ戻されている」
「ルーシーが…列車の中を…?動いている…?」
「いや…『ルーシー』はもはやすでに呼吸の止まっていた『完成した遺体』だ」
「!?」「列車の中を動けるはずが……」
 今一瞬かもしれないがジョニィは絶命の危機をかわす。
「やはり引っぱられているッ!!」
 ほぼ線路上に待機していたジャイロが、大統領が居る側から列車の反対に視線を移す。
「ハァ ハァ ハァ ハァ」
 何者かがルーシーを抱えあげ、列車から連れ出している。
そう…スティーヴン・スティール氏である。血を吐きながら連れ出すスティール氏…膝をついてしまう。

「何…『ルーシー』は動かされている…」「列車の外に…あいつは」
 大統領も列車越しにスティール氏を視認し、この事態の原因を理解する。

「連れ出してやってくれ…」荒い息の元に哀願するスティール氏。
「この『場所』から…ルーシーはまだ…『生きている』……ジャイロ・ツェペリ」
「ルーシーが完全に『遺体』になる前に…さっきは呼吸が止まっていたのに…ヴァレンタインから距離を離れると…今…呼吸がかすかに戻った…」
「ここから遠くへ連れ出してやってくれッ!!」
「あいつからッ!この場所からずっと遠くにッ!この娘を助け出してやってくれッ!」
 天命、使命…ルーシーを幸福にすることが自分の人生と考えるスティール氏の迫力が勝負の天秤を揺らす。
「…こいつは」ジャイロ。
「スティーブン・スティール……おまえは」大統領。

 ジョニィが動いていることを確認するジャイロ。そしてヴァルキリーを疾駆させるッ!!!
同時に大統領も『スキ間』の中を走って来るッ!
『スティーブン・スティール氏……!!今!!馬で救い乗せれるのはルーシーだけだッ!あんたは無理だ』
『だが、ありがとう…これで少なくとも今!大統領のジョニィへのとどめの攻撃は防げた!』
 後ろから迫る大統領に目もくれずスティール氏に走り寄る!
「頼むッ!!ジャイロ・ツェペリー――ッ」
ガシィッ  スティール氏からルーシーを受け取り馬上に抱き上げるジャイロ!
背後からのD4Cの拳撃をかわし、走り去るジャイロ!

 走り去るジャイロを睨む大統領。スティール氏の顎を掴み、吊り上げる。
「おまえ英雄になろうとしているのか?それとも彼女の父親のつもりか?…やめろ…おまえなんかの薄っぺらな『志』などどうでもいい事だ」
「おまえはこの国の未来への『幸せ』を邪魔している」「今…『女神』が生まれたのだ…この人間世界の『平和』と『幸福』は」
「うぬぼれたバカ者同士の手と手をとり合った平等なんかで治まったりしない」
「『強い国』がナプキンをとる事で始まる」
「それには『女神』が必要だ…あの『遺体の力』が平和に必要なのだぞ…それをお前は邪魔している」
 首を締めあげ、しかも銃創をエグルというエゲツナイ行為をする。
「だがわたしはこの指を放しておまえを許す……列車に乗る前…おまえを決して殺さないとルーシーに誓ったのだからな…彼女がそう望むなら……」
「この指も放すし、あとでその傷の治療もしてやろう」
 手を放し、スティール氏を大地に落とす。
「くっ、でもやっぱりッ!!」「今!かなりムカついた行為だから痛みだけはたっぷり味わってもらうがな」
 そしてスティール氏を足蹴にして再び苦痛を味わさせる。「ところで今のあのジャイロ・ツェペリ…逃げようとしているが…ヤツもすでに追いつめられている」
「こっちへさっきから『海』が近づいて来ている」
「『木』や『山』だけじゃあない…『女神』のところへ…今、『大西洋』がとり囲んで来ている」
 縮地の影響で海さえも迫る。世界が小さくなって来ている。
そして大統領は再び『スキ間』に入りジャイロを追う。

「うう…う…」
 ジョニィ。あることに気付き、慌てる。
「うおおあああおおおお」「き…傷口が」
「…また、のぼってくるッ!!」
 例の現象がジョニィにも起きる、しかも致命傷クラスの…
「きっ『傷口』が心臓に向かってッ!!」
ドバッ ドバッ ドバッ
 タスクを3発自ら…いや、登って来る傷口に撃ち込むジョニィ。
3発の銃痕が傷をとり囲みそのまま後方の木に移動させ消滅させる。木はその影響で倒れてしまう。
「ハアーッ ハアーッ ハアーッ」「て…手首が」
「ジャ…ジャイロッ!」
「『鉄球』でぼくを救ってくれた…でも鉄球を置いて行った」「ジャイロの手元には今『一発』しかない」
 しかしジョニィがジャイロの鉄球を見て気付く。
「『耳』……ま…まただ」「鉄球に…こびりついているのは!?これはッ!!」
 鉄球に耳たぶがへばりついている…。
『スキ間』の中に入り、ジャイロを追いかけている大統領の左耳がなくなっている。しかし本人は気付いていない。

「ま…まただッ!『黄金長方形』だ!」「ジャイロの鉄球は半分成功している!!これは馬の力を利用した『黄金の回転』だッ!!」
「間違いなく『何か』が起こっている!」
「だがいったい何がッ!?」
 ジャイロの鉄球を持ち、ジャイロと大統領を追いかける体勢をとるジョニィ。
「大統領は『自分の耳』に起こっている事をまだ気づいていないほどの『何か』がッ!」
 いよいよアメリカ横断の終着地「大西洋」が目前に来る。そして同時に大統領との決着もすぐそこなのである。
刮目せよッ!!


今月のめい言

 「何かがッ!!」 

○何が起きているのか!?冒頭においてD4Cの秘密の一端が明かされています。「鐙回術(馬のパワー+回転術)」が何故『スキ間』に潜む大統領に影響を与えるのか?

○全ては「重力」が鍵である!次元を越えるD4C/大統領を維持する「重力」という力。逆に言えば「重力」は次元を越えて作用する力ということであります。「鐙回術」はいかなる理論であるのかは不詳ですが、重力を強く発する攻撃が可能になるということです。『スキ間』という亜空間に入り攻撃を遮断する大統領に対して、次元/空間を越えた攻撃を当てられるようになります。最初は毛髪数本、今回は耳たぶを千切り引きずり出しました。このまま行けばもっと大事な部分や器官、それこそ『遺体の心臓』さえも引きずり出せるかもしれません

○スティール氏とルーシーの物語はSBR16巻に詳しく載っています。父親の借金のカタにマフィアに売られるところを、スティール氏の機転でルーシーは暗黒街に落ちるところを救われました。形だけの夫婦となったわけで、スティール氏曰く「君はいつか誰かに恋をして、家を出たい時にいつでも出て行けばいい」。ルーシーに対する無償の愛を誓い、それを実行するスティール氏。その本気度はこの最終決戦のさ中でも変わりません。生命を落としかけているルーシーを大統領から引き離すことで好転することに気付くと、自身の危険を顧みない救出を行います。

「おまえなんかの薄っぺらな志などどうでもいい事だ」。例え、大統領にとっても薄っぺらでもその根本となる感情/思考は我々の胸を打つものです。薄っぺらでも何枚も重ねれば剛くなる。ましてそれが薄くても本物ならば…!事実、事態は大統領の思惑通りには全く進んでいない。

○ジョニィの人生において「白いネズミ」というのは良い感情を持てるものではないでしょう。兄の死の象徴であり、ゲティスバーグではトラウマをあおられている。しかし今回は、(ジョニィは気付いていないようですが)ジョニィの生命を間一髪で救うのに関与した一つの原因として、大統領が白いネズミに気をとられたということがあります。もちろんダニー(ジョニィが飼っていたネズミ)ではないでしょうが、やはり一概に良し悪しとは言い切れない縁や因果があるようです。これを呪縛と言うべきか?それとも人生の不可思議なのか?

○縮地の効果で「大西洋」も迫ってきている。大統領曰く「すでに追いつめられている」「大西洋がとり囲んで来ている」。サンディエゴの太平洋海岸からスタートしたレースだが、ついに大西洋に到着しつつある。西の果てから始まり、東の果てで決着をつける。大統領はジャイロを海岸線に追いつめたと思っているようだが、ジョニィを仕留め損ねたことにより逆に追いかけられる形になり、問題なのはそれに気づいていないことでもある。つまりジャイロとジョニィによって大統領を挟撃することになる。ましてアキレスの如く自分は無敵であると思いこんでいる大統領が、その踵を鐙回術という矢で貫かれるのは目に見えるようである。…が、追いつめられてからの大統領が手強いのはDioとの戦闘を例にとれば理解できることである。勝負の天秤はどちらに傾くのか?刮目せよッ!!

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